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いつもより遅い朝ご飯を食べて、これからダンジョンに行ってもよいか、悩んでしまう。
正直、微妙な時間になってしまった。
ここは魚を釣りに行こう。
やっぱり野菜だけじゃ力が出ない。
そこで俺は気になっていた、リンカとライカが二つの魔法を一緒に発動していた、適当に魔法融合と名付け、これを習おうと思う。
河原に移動し、ミオ、クオン、リオ、チカに釣り道具を渡した。
「みんな、ミオを手本に釣りをしててね」
「わかりました、マスター」
「はい、ご主人様! お昼ご飯は任せてください!」
「さっかな〜! さっかな〜!」
「釣りでしゅか、がんばりましゅ」
そして俺たちはかなり離れた所で魔法の練習だ。
メンバーは教官役のリンカ、ライカと複数魔法を持つ、俺、リュミスだ。
魔法融合はリュミスの龍の知識にもまだないようだ。
まずは魔法の強化からだな、リュミスのことはライカに任せよう。
次にライカから教わり、さて魔法融合だ! そう思ったのだが
「マスター! できないよぉ〜!!」
と叫びながら近づいてきたリュミスに抱きつかれた。
受け止めて、抱きしめ頭を撫でて落ち着かせる。
器用の高いリュミスができないとか俺にできるのか? そんな不安もあるが頑張らねば。
「リュミス、次は俺も一緒だからもうちょっと頑張ってみよう」
「う〜、うん……」
なんとか頷いてくれ、再開することに。
とりあえず繫がりから感じる分には簡単そう。
魔法レベル3と1の魔力を合成発動か、いきなりは色々と怖いからライカが発動できている雷と火だな、これをレベル1ずつで発動!
……? お互いが反発し合っている? 弾かれた、失敗か……。
感覚ではそんなに難しそうじゃないのに……。
リュミスの魔法発動を繫がりから確認する。
レベル1ずつで発動しようとして、俺と同じように弾かれている。
リュミスが俺を涙目で見てくる、それには苦笑いで返した。
うーむ、何が悪いのか? 属性を変えてみる? いやライカは成功している。
ならすべての組み合わせを試してみるべきか? 実際に成功しているのはレベル3と1の合成か、うーん、これが正解な感じがするけど……今発動できる最強の魔法に手を加えるって凄く怖い……。
ちょっとのミスでさ、火を纏わせた腕が爆発したら……とか思うとちょっと躊躇うっていうか、やりたくない。
やりたくないけど、こういう強化を進めていかないと後で後悔するのは俺なんだよなぁ……。
少なくともあの時強化をしておけば……というのは勘弁したい。
さて、頭の中でうだうだ考えて、やっとやる気を奮い立たせられたな。
よし、レベル2と1で試してみて、失敗したら3と1な。
……失敗か。
やりたくないなぁ、レベル3と1は……。
とりあえず、地肌に直接魔法をかける系はやめて、新しく覚えた雷魔法で試すことにしよう。
リンカとライカには十分に離れてもらった。
「リュミス、もしものときはお願いね」
「わかってるよ、マスター!」
俺の魔法が暴走してもダメージの一番少ないリュミスに託す。
腕が吹き飛んだくらいなら今の魔力を全部注ぎ込めばなんとか繋がる気がしている。
もちろん、ちゃんと発動できれば……という条件付きだが。
……できました。
めっちゃ身構えていたのが恥ずかしいほど簡単にできました。
そしてできてはっきりした。
主となる魔法のレベルに対して、二段階下の魔力量でしか融合はできないようだ。
例えばレベル3と1、レベルが上がるとその魔法に込められる魔力が変わってくる。
そのため、魔法レベルが上がると威力が上がる。
魔法融合はレベル3相当の魔力とレベル1相当の魔力の融合で可能になる。
もしかしたらレベル4と2でも可能かも、これは今は検証できない。
なので魔法レベル2が最高のリュミスは最初からできなくて当然だったのだ。
おそらくリュミスの魔法レベルが上がれば、龍の知識からその情報が手に入ったのではないかな。
その話を聞き、剥れるリュミスを宥めて他の組み合わせを試してみた。
そこで魔法融合の組み合わせは幾つかに分けられることを知った。
相性の良過ぎるもの、相性の良いもの、普通、相性が悪いものの4つだ。
例えば火と風、恐ろしい程勢いよく燃えて、小爆発付き。相性が良過ぎて思うように操れない……。
例えば黒と闇、黒魔法の効果を強化している。相性が良い。
例えば雷と火、水辺でよくわからないがおそらく威力は上がっている、もしくは複数属性ダメージを与えている。普通。
例えば火と水、融合できないし、もしできたとしても少量の水蒸気が出るだけだろう。
火と風を試したときはリュミスのお世話になりました……。
器用か精神どちらかが上がればなんとかなるのかな? 今のままなら立派な自爆技だ。
「リュミス、庇ってくれて本当にありがとう。リンカとライカも教えてくれてありがとうね」
「それはいいんだけど、もう少し自分の身体を大切にしてね。さっきのは危なかったよ」
「そうだよぉ、トノがキズつくとみんながかなしむよぉ」
「……トノ、ごジアイを……」
「……ごめんなさい……」
俺としては無茶苦茶ビビりながらだったから大切にしているつもりなんだけど……まあこういうときは謝るしかないよね。
こうして新技を得て、昼ご飯にすることに。
「マスターの為に沢山釣ったので、沢山食べてください!」
「うう、釣れませんでした……。任せてください! なんて言ったのに……」
「さっかな……さっかな……」
「ユーしゃま、しゃかなをどうじょ」
クオンとリオはダメだったか。
クオンは涙目で保護欲を誘う。
リオは言葉は同じなのにテンションが全然違う、可愛い。
ミオは珍しく褒めて! 褒めて! といった感じ、可愛い!
チカは淡々と魚を差し出した、クールだ。
クオンとリオを慰め、ミオを猫可愛がりして、チカにお礼を言った。
クオンを中心に調理の準備をしてくれていたようで、その魚をみんなで火に近づけて設置し焼いていく。
焼けたところでみんなで食べる。
魚ならやはり美味しく食べられた。
「ミオ、チカ釣ってくれてありがとう。クオン、リオ調理をありがとう。とっても美味しいよ」
パンなどもアイテムボックスから出して一緒に食べた。
そうして食休みを済ましてダンジョンへと向かう。
十一階は省略して、十二階はちょっとみんなに鎧の隙間や人体の急所を狙うようにしてもらった。
せっかくのヒト型、そういう役にも立ってもらおうというわけだ。
捕獲する場合はケツ狙い、ここなら変に刺したり、斬ったりしても死にはしない。
動こうとしてもケツが痛くてまともに戦えなくもなる。
許せない敵にはアキレス腱など筋狙い、障害を与えられる。
まあ回復魔法があるのでどこまで効果があるのか不明。
殺さなくちゃいけない相手には急所狙い、大体は身体の正中線に集中している。
確実に仕留めるには首か心臓。
動かなくなったとしてもどちらかを刺し、トドメを刺す、もしくは死んだことを確認する。
こんな感じに場合分けしての戦闘も経験させた。
相手はアンデッド、捕獲の場合は全く効果がなかった。
まあ痛みがないだろうしね。
筋狙いも動きを止めたり、遅くする効果はあったがしばらくすると動きは戻った。
回復能力高いんだな。
急所狙いは効果がある攻撃もある、といった感じだ。
首を断つのは効果的、後の急所は効果なし。
火で燃やすばかりだったが、他の倒し方や新たな情報が手に入った。
効果がない攻撃でも練習のために注意しながら攻撃した。
そうして少し滞在時間が増えたが階段のある部屋に着いた。
すぐに降りた。




