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 今日、いつもとは違い、朝練中に多くの人の気配を感じた。

 今までも人が来ることはあった。

 それでも暗黙の了解なのか、部屋にまで入ってこなかったり、入ってきてもお互い不干渉だった。

 日本人としては挨拶や頭を下げる行為をしてしまうところだが、無視されたり、おどおどされたので今はやめている。

 最近では俺たちがここで朝練をしているというのが噂されているのか女冒険者が遠巻きに見ていくこともあった。

 さすがに冒険者、人の鍛錬を邪魔するようなことはなかったのでそのまま朝練を続けた。

 稀に紳士ではない、ロのつく性癖の者が怪しげな目つきで見ていくこともあった。

 これらには威圧を全開にして、殺気を飛ばしまくった。

 それでも怯まない奴には投擲武器や剣を、誤ったフリをして飛ばした。

 謝りつつも何度も! 何度も! 何度も!

 それで慌てて去っていった。

 本当にどうしようもない奴らだ! 『 YES ロリータ NO タッチ 』という言葉も知らんのかね、常識のない……。

 まぁあれらはこの娘たち一人で滅殺できる程度の実力しかないようなので放っておこう。

 手を出そうとしやがったら生まれてきたことを後悔させながら殺してやるがな。

 正当な防衛だろう。


 ……まぁいい、そんな奴らもいたがこんな集団で現れることは今までなかった。

 だが、魔力は低く、体温は高い感じだ、子ども? 中には大人もいるな、三人か。

 いや、この気配、一人は知っている奴だぞ!

 そうして朝練を続けつつ、念のためみんなを集めた。


 その集団はホークを先頭に現れた。

 続くのは思った通り子どもだ。

 30人くらいの子どもの後に大人二人が殿を務めていた。

 殿の二人はホークのパーティーメンバーだ、前に見たことがある。

 こちらに向かってくる。

「すまない、気配で警戒させてしまい、鍛錬の邪魔をしてしまったようだな」

 そう謝ってくる。

 一緒に近づいてきた子どもたちを見ると服装などはかなり質素だ、ボロいと言ってもよい。

「ああ、この子たちは俺たちが世話になった孤児院の子たちだ。みんな挨拶をしなさい」

「「「「「おはようございます」」」」」

 一斉に挨拶をされた、これはちゃんと返さねば!

「「「「「おはようございます」」」」」

 以心伝心、寸分違わず一斉に挨拶を返した。

 この感じ、懐かしい。

 挨拶を返したら子どもたちがミオたちに近づいて、遊びたそうにしている。

 遊んできなとミオを見るとみんなで遊びだした。

 大人二人が見守っている。

 それにしても孤児か、やはり冒険者が多く集まるだけあって色々と発展しているが、その裏で多くの冒険者が亡くなっているんだな……。


「それで何か話があったのか?」

「やっぱりわかるか。先日は悪かった、あいつらを殴るくらいなら大丈夫だから、それで許してやってくれ」

「それならここの文化、慣習として無理矢理納得させた。だからいい、でもお言葉に甘えて殴らせてもらう」

 みんなでな。

「ああそうしてくれ、あいつらあの後すぐに酒場で酒を飲んでやがった。俺に尻拭いさせやがったくせに……。まあ一番高い酒を奢らせてやったがな」

 せっかく忘れていたのに……思い出したらまたムカついてきた。

「それで本題は?」

「警告、かな?」

「警告?」

「ユーは裏近衛メイド部隊って知ってるか?」

「いや、知らんがなんだそれ?」

「知らんか。この国で昔からまことしやかに噂されている幻の部隊だ。それは王族や有力貴族の最後の砦、懐刀、教養と武力を兼ね備えた最強の女部隊。一般のメイドに混じってこれらが王族や有力貴族を護っているという噂があるんだ」

 へぇー、そんな部隊がねぇ。

「それで?」

「その教官だと噂されている」

「誰が?」

「ユーが」

「俺が!?」

 いや、話の途中から嫌な予感がしてましたけどね。

 それにしても旅の神官に、今度は裏近衛メイド部隊の教官? 変な噂ばかりだ……。

「それでどう警告と繋がるんだ?」

「この裏近衛メイド部隊ってのはもし存在していたら王に近しい存在が親玉だと思われるよな? ということは近づきたい貴族は山ほどいる。こんな噂を本気にする貴族はいないとは思うが……」

「貧窮した貴族、頭の悪い貴族なんかがちょっかいかけてくる可能性があるってことか……」

 め、面倒クセェ! 

「ユーはCランクだよな? だったら指名依頼に気をつけな。Cランク冒険者への指名依頼なんてまずあり得ない。もしあったら厄介ごとだ」

「わかった、ありがとう。わざわざ知らせに来てくれたのか?」

「まあなんだ、謝りたかったのと、あいつらのレベル上げ兼食料集めのついでだ。それに俺らは調査団に選ばれちまって今日から出るからな」

 話を聞くと二十階のボスの調査に行くらしい。

 そういえばあの受付嬢が言ってたな。

 ホークに鑑定を使ったことはないが、明らかにベテラン冒険者、俺が心配するのもおこがましいことだろう。

 それとレベル上げは、疫病対策らしい。

 HPが高ければ高いほど生命力が高くなり免疫も上がるらしい。

 この世界では脳筋と呼ばれるほどの戦士などは風邪を引かないらしく、馬鹿は風邪を引かないが事実と認識されているのだと。

 悲しい……。

 でもそういえば、俺たちは誰も調子を崩していないな。

 他にも昇格試験で相手を倒したから有名になり、そんな噂が流れ出したと知った。

 どうやら倒さなくてもよかったらしい、まあ普通に考えれば、現役の上のランクの相手を倒さないとランクアップしないとか相当厳しいよな。

 よくて引き分け、そんなものなのに全員勝利、それもちびっ娘たちは圧勝、そして全員礼儀正しく、見目麗しいのが噂の決め手らしい。

 ……まあ後悔先に立たず、諦めよう。

 そして面倒に巻き込まれたらここを出よう。

 こんなに良い鍛錬の場はなかなか無いと思われるが、面倒事はごめんだ。


 ホークとかなり話し込んでしまった。

 だが、色々と知れてよかった。

 特に俺みたいに低レベルにしては能力値が高い者もユニークスキル次第ではいるなどの情報も得られたのは大きい。

 ホークとお互いに気をつけてと言って別れた。

「みんな、長くなってごめん。それで楽しかった?」

「うん! 楽しかったよぉ!」

「……はい……」

「楽しい、でしゅか?」

「うーん、愉快? うきうき、わくわくする感じ? 言葉ではこういうのって説明できないよなぁ……、ごめん」

「いえ、ありがとうごじゃいましゅ」

 そうして遅くなったが家に帰った。

 それにしても教えてくれたのはありがたいが、面倒だな。

 貴族とか絶対関わりたくないわぁ……。

 もし指名依頼来たら断ろう、決めた!

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