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80 バレンタイン

ここ3話くらいはこれが書きたくて、急いでしまった感があります。

「ら、らん、らんら、らんな、だ、らんなしゃま……ユーしゃま、あしゃれしゅ」

 途中で吹き出しそうになってしまった。

 でも笑ったらいけない。彼女は真面目なのだ。

「おはよう、チカ。無理に旦那様と言わなくてもいいんだって言ったよね。様もやめてくれると嬉しいんだけど」

「しょれはらめれしゅ、ケジメはつけましぇんと」

「いや、先生の娘さんなんだから俺は預かっている身ってこれまた繰り返しか。それにもう家族になっているのに……。まぁチカがそれでいいならいいんだけどね」

「ありがとうごじゃいましゅ、ユーしゃま」

 そう言って頭を下げたので、すかさず頭を撫でておいた。

 さて、いつも通りギルドカードで時間を確認しよう、そう思ったところで嫌な予感がした。

 見ないでそのままにしたかったのだが、ギルドカードは生活と結びつき過ぎている。

 ここで見なければもしかしたら変なところで見てしまい、前回のように叫んでしまうかもしれない……。

 苦渋の決断……!

『ハッピー! バレンタイン!』

「ぎゃぃやアアァァァ〜〜〜」

「マスター、どうしたのですか⁉︎」

「マスターあぁ、しっかりぃぃぃ、心を強く持つんだよ!」

「あるじサマおちつく!」

「ご主人様、メイドが来ました! ご安心ください!」

「どうしたんだろうねぇ?」

「……トノ、おいたわしや……」

「ユーしゃま、ごようれしゅか?」

「母さん、叔母さん、姉さん、チョコをありがとうございます。同情チョコありがとうございます。ありがとうございますぅぅぅ〜〜!」

「「マスター⁉︎」」

「あるじサマ⁉︎」

「ご主人様⁉︎」

「「トノ⁉︎」」

「ユーしゃま」


 気がついたらうつ伏せに寝転んでいた。しかもみんなに乗られたり、両手足に抱きつかれたりしていた。

 何があったんだ?

「マスター、正気に戻られたのですね!」

「正気? あぁ、バレンタイン……」

 そうか、あの記憶を思い出していたんだな……。その他にも家の前に後輩の女の子が三人いて、家に入ろうとしたら『弟君に渡してください』って……。

 その後、漫画で後輩は、先輩を勝手に憧れてくれるとかの台詞を読んで、雑誌を破きそうになったとかない、ないったらない。

 あ、目から光が失われているのか、みんなが心配そうに見ている。

 とりあえず、バレンタインという行事について説明した。

「元々は企業戦略でチョコをたくさん売ろうとしたのが始まりで……つまりは女性が好きな男性に渡す……最近では友チョコとかよくわからない……ほにゃほにゃ」

 そうするとみんなは興味を持ったようで色々と聞いてきた。チョコって? とか、そういえばここでチョコ見たことないよな。今日は2月14日なんですか? たしかに、今日は2月14日なのか? この間クリスマスじゃなかったか?

『この世界の法則です』

 そんなことを考えていたら、いつもの無感情、女性の天の声ではない声が聞こえてきた。

 これは男性だろうな、でも世界の法則か、なら仕方がない気がしてくる……。

 は? イヤイヤおかしいだろう! どんな法則だよ、今なんか催眠みたいに無理やり納得させられそうになっただろ!

『ッチ!』

 舌打ちしやがった、なんか態度悪いぞ、コイツ!

『おい、自称神、コイツなんか効き悪いぞ! ああ、そうそう、見てみろよ! へぇーってなんだよ、なんかわかったのか? いや、教えろよ! へ、声が流れたまま? おいコラ自称神! そういうのは先に言え!』

 それを最後に声は聞こえなくなった。

 いや、今のなんだったの?

 不思議に思っていると手を引っ張られた。

「マスター、今日はダンジョンの二階に行きたいのですが……」

 珍しいな、こういう提案は。

 みんなを見てみると納得しているみたいだ。

「うん、いいよ。チカには戦闘に慣れてもらわないといけないからね」

 でもチカの装備とかどうしよう?

 チカに聞いてみるとゴスロリ風のこの服、実は錬金術の産物で魔法防御に優れている物なんだと。

 先生の趣味かと思ってた……。

 鑑定しても全く情報が見られなかったことからかなりの品だろう。

 先生……そういうのもっと残してくださいよ……!

 その後、狸より狐のが似合うという俺の判断の元、リオがチカに狐の着ぐるみをプレゼントした。

 服の上から着だして、ちゃんと着せると、着ぐるみが消えた。

 驚いて話を聞くとこれがユニークスキル、装備収納らしい。

 好きなときに出したり、仕舞ったりできるそうだ。

 劣化アイテムボックス? 先生の話にあった魔法の袋ってこの能力の為に使われたんじゃないかと邪推してしまった。

 まあ便利だからいいか。


 なんか色々あり、朝練どころではないので早めに朝ご飯を食べて、まずはギルドに向かった。

 ギルドカードの作製を頼み、今度は防具屋に。

 髪飾りなどの一式を購入して、魔法耐性の高い装備の話を聞いた。

 海の魔物の鱗とかが効果が高いらしい、金額も高いらしい。

 ギルドに戻り、出来ていたギルドカードの登録をしようとしたが、できなかった。

 ここでマズいと思ったのだが、魔力適正の無い人が稀にいるらしく血での登録となった。

 魔力が無くても怪しまれなくてよかった……。

 あの受付嬢がいつの間にか出現して、チカを見て興奮していた。防具屋より先にギルドに行ってよかった。先ほどの受付嬢の元に無視していき、何事もなく出てこれた。

 背後でなんかうるさかった気がするが、気のせいだろう。


 ミオに確認をとって、人が見ていないのが確定したところでチカにリペアをかけた。

 指の傷がすぐに治った。

「ありがとうごじゃいましゅ、ユーしゃま」

「登録の為とはいえ、針で刺すんだもんな……」

 まあ仕方がなかったのだが、受付嬢すげーな。こんな小さな娘の指に針刺せないよ、俺。


 防具は決まったので、次は武器だと思ったのだが、何を使えばいいかわからないようだ。

 うーん、二階なら武器も必要ないだろうし、攻略を再開するまでに決めよう。

 ということでダンジョンに入った。


 ……いや、無茶苦茶じゃね? 何がってチカが。

 鴉が飛んでくる、チカが視界から消える。

 鴉が消し飛ぶ。

 ……え?

 そう思う間に戦闘は終わるのだ。

 まあまだ鴉だしね、魔法を使わないもっと強い敵で見てみないといけないかな。

 まあ今日のところは二階か。


 はい、二階です。

 小豆イタチも変わらずに蹂躙されています。

 というか、今回はチカのみならずみんなが蹂躙しております。

 何がみんなを駆り立てるのか、狩り尽くすんじゃないかというほどの速さで狩っている。

 この階層のドロップアイテムはまたも謎の提案でカバンの中に全て詰めています。

 俺は見ているだけだったのだが、事情が変わった。

 アイテムボックスにまたアイテムが混入されているのが確認されたのだ。



 義理チョコ


 異世界人期間限定ドロップアイテム

 一口サイズの (ホワイト)チョコ


 ホワイトチョコは10対1の割合ぐらいのレアドロップか。

 これはあれですよね、みんなの為に俺が頑張る流れですよね、頑張らせていただきます!

 ……小豆イタチ、恨みはないがみんなの笑顔のため、狩らせていただきます!

 そうして昼までみんな修羅と化した。止める者はいなかった。


 本命チョコってアイテムがドロップしないのは思いやりなのか、嫌がらせなのか、とりあえずある程度、揃ったので家に帰ることに。

「このドロップアイテムはこのまま持ち帰りたいのです」

 パンパンに膨れているカバンをちょっと手伝ってもらってアイテムボックスに収納。

 ギルドに行くともうチカはDランクに昇格となったのだからどれだけ蹂躙したのかわかるというものだ。

 銀貨9枚銅貨23枚一人頭、100匹は狩ったんだな……。


 家に戻る。

「最初からハイペースな狩りになっちゃったけど大丈夫だった?」

「はい、らいじょうぶれした。この後の活動に支障もありましぇん」

 初戦がこんな蹂躙劇だったので心配していたがタフだな。

 タフなのはみんなもか、昼食の準備をチャチャッとしてくれた。

 チカは料理もできた。器用さも高いからなのか凄く丁寧なのに早い調理が可能なのだとか。


 さて、どうしよう? チョコをみんなに見せるのはあれだし、台所に立つと怒られるし。

 そう思っていると意外なところから助けが。

「マスター、あのカバンを持ってみんなで少し出かけたいのですが、よろしいですか?」

 驚いた、本当に驚いたがチャンスでもある。

 でも寂しい。別行動なんて初めてのことだから……。

 いつかは親離れしていくのを想像した。

 娘はやらんぞ! いや、いや、想像し過ぎたな。

 みんなのことは心配だが、俺が足手まといになることが多かったのだから大丈夫だろう、俺も台所に入れるし。

「わかったよ、早めに帰ってくるんだよ」

 そう言ってみんなと別れた。

 ああ、なるほど、一応俺の護衛つきか。

 まぁでも邪魔することはないし、いいか。


 まずお湯を沸かして、器にチョコを全部入れて、湯煎。

 チョコを溶かして、型なんて洒落たものはないから汁物の器に入れて、冷蔵庫で冷やす。

 冷えたところに、今度はホワイトチョコを湯煎したものを箸につけて、名前を書いていく。

 なんとか全員分足りたな。後は冷やして、丁寧に剥がすだけ。

 この作業は器用が上がったからか思ったより簡単にできた。

 アイテムボックスに収納して後はみんなが帰ってくるのを待つだけなのだが、なんかスッゲー不安。

 いや、繫がりからみんなが近い位置にいるのはわかっているんだが、そもそも一人になる、正確には一人じゃないけど、って久しぶり過ぎて、ダメだ。落ち着かない。

「リオ、出てきて」

 そう俺が言うとリオが俺の影から出てきた。

「ナニ〜、あるじサマ?」

 そのリオを捕まえ、壁を背に座り、膝の上にリオを乗せて、抱きしめる。

 幼女がいないと不安って俺はもうダメ人間なのか、そういえばリオは幼女なのか少女なのか? まだJSくらいだから幼女? ……こんなダメな方向の現実逃避はやめよう。


 リオは体温がちょっと高めだな、子どもだからかな? 抱きしめていたらなんだが眠くなってきた。

「リオ、このまま寝てもいい?」

「いいけど〜ベットでねないと〜ミオねぇにおこられるかも〜」

 確かに、リオをお姫様抱っこでベットに運ぶ。

「わーい! わーい!」

 なんか喜ばれている?

 リオを抱き枕にして寝た。


「マスター、りーちゃん起きてください」

「みーちゃん、リオちゃんが羨ましいんだけど……」

「え? 眷族が私だけの時は毎日抱きしめてもらってたよ」

「みーちゃんもズルい!」

「じゃあ、腕枕の代わりに1日交代で抱きしめてもらう? ローテーションは眷族化の順番で!」

「じゃあ、それで!」

 ガシっと握手する音が聞こえた。どんだけ力を込めているんだ?

「起こしてくれてありがとう」

 まだ寝ているリオを抱っこして移動した。


 どうやらもう晩ご飯の時間のようだ。

 リオを起こして宿に移動しようとするが止められる。

「宿にはご飯が食べられるようなら行くと伝えてあるのです」

 どういうことかと思ったらみんながハート型のおはぎを持ってきた!

「ちょこ? が無かったのでご主人様が好きな故郷の物で甘く黒色のおはぎにしました」

 そう言ってみんなからおはぎを手渡される。

 ドロップアイテムで作ってくれたんだろうか? でももち米とか1日水に浸けないと、いや今はそんなことはどうでもいい。

「みんなありがとう。とっても嬉しいよ!」

 一人一人頭を撫でていく。

「俺もみんなにプレゼントがあるんだ!」

 そう言ってみんなにチョコを配っていく。

「凄い! 名前が書いてあるのです、ありがとうございます、マスター!」

「これがチョコ? ありがとうねマスター!」

「ありがとうございます、ご主人様! でも女性が渡すチョコを男性が女性に渡すとどういう意味になるのでしょうか?」

「あるじサマ、あまくておいしいよ〜、ありがとう〜」

 もう食べたのかよ⁉︎

「ジンカしてないときにたべるとすこしキケンなきがするよぉ、でもありがとう、トノ」

「……だいじょうぶ、だよ……リンカ……トノ、ありがとう、ございます……」

 そうか猫や犬にカカオってダメなんだっけ。

 魔物だから大丈夫? いや少しずつ食べてもらって様子を見るか。

「ユーしゃま、ありがとうごじゃいましゅ」

「じゃあ食べようか、いただきます」

「「「「「「「いただ(ら)きます(しゅ)」」」」」」」

 みんなでおはぎやチョコを食べた。

 どうやらリオにもリンカ、ライカにも異常はないようだ、あれば解毒を使ったが。

 クオンの質問に、逆チョコってのがあって……と説明したら、慌てていた、可愛い。


 話を聞くと、みんなには内緒で宿の人が準備済みの材料と交換してくれていたみたいだ。

 みんなでお礼を言いにいった。

 今日は久しぶりに右側にいるミオを抱き枕にして寝ることに。

 左側にはリュミスがいて、後ろから俺に抱きついている。

 明日はリュミスが右側にきて、俺の抱き枕になるらしい。

 左側にくるのは次の日の抱き枕要員なのか。

 これもいつの間に決まったのか、新たな眷族ルール、よくわからないが俺は安眠です。

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