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 そうして先生は消えていった。

「あ、忘れてた。娘は、喋り方が少し変わっているけど笑わないであげてね」

 しんみりした雰囲気だったのにまだ喋るんかい! と思ってしまった。シリアスは本当に向いていないんだな。


「……スタ! ……マスター!」

「……うん」

「マスター! 意識が戻られたんですね!」

 呼びかけに応えて周りを見渡すとみんなに囲まれていた。頭の柔らかい感触は、やはり膝枕か。相手はリオだ。

「リオありがとう。俺はどのくらい意識を失っていた?」

「ジップンくらいかな〜〜」

「そうか、ありがとう」

 どうやら本当に移動したのではなく、頭に情報を流し込まれたらしい。


「……ん……」

 俺たち以外の声が聞こえた。

 その声の元、箱に目を向けると千花ちゃんが目を覚ましていた。

 あ、千花ちゃんと目があった。

「初めまして、三上千花れす」

 頭を下げられた。礼儀正しい娘だ、流石先生の娘さん。正直先生の株は今日暴落したが。

「初めまして長谷川佑衣斗です、よろしくね」

「あなたがらんなしゃまれしゅか、お父しゃまから聞いていましゅ。よろしくお願いしましゅ」

 そう言ってまた頭を下げてきた。がそれよりも、え、喋り方が少し(・・)変わっている? 少しか? いや先生の娘さんだ。それに本人が望んでそうなっているわけではない。笑っちゃダメだ。

 それとらんなしゃま? たぶん旦那様だな。

「旦那様はやめてよ、先生の娘さんなんだし、俺は預かっているようなものだ。だから畏まる必要なんてないんだよ」

「いえ、しょういうわけにはいきましぇん。ケジメがありましゅ。らんなしゃまがらめならなんとお呼びしましょうか?」

「ケジメと言われてもねぇ。ユーって呼んでくれればいいから」

「わかりました、ユーしゃま」

「様もやめてほしいんだけど……」

「しょれはいけましぇん」

 うーん、表情が一つも変わらないのか。舌足らずな喋り方も抑揚がない。これが心がないということなのか? それにしても俺が心を与えられる可能性? 考えられるのは眷族化くらいだよな。

 眷族化によって俺たちはみんなの心を感じられる。それを感じさせられればあるいは、ということなのだろうか……。



『鑑定』

 名前 三上千花(みかみちか) 

 種族 ホムンクルス♀ Lv7


 預かるにしても、眷族化して隠蔽が必要だな。

「千花ちゃん、眷族になってもらえるかい? たぶんこれが先生の言っていた心を手に入れられる可能性だと俺は思うんだよね。それに千花ちゃんの種族はどうやら見られたら少しマズい、これは確かめたわけじゃないけど、そう思うんだ。だから眷族に、俺の家族になってもらえるかな?」

「はい、お父しゃまからしょれも聞いていましゅ。ユーしゃまに従うようにと。しょれと千花とお呼びくらしゃい。しょれでは、よろしくお願いしましゅ」

「そうなんだ、わかったよ、千花」

 この娘は先生の娘さんだ。そして俺に託された。自分の娘を託すなんてどんな気持ちだったのだろう、心の拠り所だったはずの娘を……。俺には想像もつかない。でもこの娘が先生を失い、天涯孤独の身だと知っている。

 その意味を彼女はまだ理解していないだろう、心を持てたとき本当にその意味を理解するのだろう。

 そのときに、支えてあげられる家族になろう。心からそう思った。



『眷族化』

 すると一瞬、今までに感じたことのない何かを感じた。一番近い感覚で言えば寒さ? わからないが、その感覚に恐怖を覚えた。

 もしかしてこれが千花の、ないと言われる心に繫がったということなのだろうか……。



『ステータス』


 名前 ユー(長谷川佑衣斗)

 種族 ヒト♂ Lv7

 称号 (異世界人)


 HP 1673

 MP 1143


 攻撃 211

 防御 182

 速さ 230

 知識 128

 精神 106

 器用 202

 運  38

 (エクストラスキル)

 (眷族化 ダンジョン作製 不老)


 ユニークスキル

 {異世界言語 異世界文字 異世界武術(剣道)} 心眼(擬) リペア


 スキル省略


 {眷族(7/7)}

 (ミオ リュミス リオ クオン リンカ ライカ チカ)


 眷族化はちゃんと成功か、あとリペア? これが千花に必要なユニークスキルなのか?


 リペア


 修理する、回復する


 いや辞書の説明かよ⁉︎

 でもなんとなくわかった、ホムンクルスであるがゆえに回復魔法の効果が低かったり、無かったりするのではないか? そして錬金術などのスキルもない俺でもその真似事ができるようにこれを先生は与えたんだろう。

 本当に娘さんの為だな。でも装備品の修理とかにも使えそうだし、感謝します。

 それに俺の能力値が伸びすぎだと思うんですよ。

 ちょっと千花のステータスを見るのが躊躇われる……。


 名前 三上千花(みかみちか)

 種族 ホムンクルス♀ Lv7

 称号 人造人間


 HP 1400

 MP 0


 攻撃 700

 防御 700

 速さ 700

 知識 0

 精神 0

 器用 700

 運  16

 忠誠 100


 種族スキル

 無心 人工生命 自己修復


 ユニークスキル

 装備収納


 これは……魔法を使われたらヤバいということだな。

 魔法防御の高い防具を装備させるしかないかな?

 そこも問題だが、スキルがない。覚えることはできるんだよね?


 ……はい、現実逃避終了。他の能力値どうなってんだよ⁉︎ 勇者か? 勇者レベルなのか? 戦力としてはとても頼もしい。

 うん、そうだよ、頼もしいんだよ。あとなんで忠誠最初から100なの? あ、でもこれは心がない所為なのかな?

 まあいい、心強い家族が増えたということだな。


 他にはリュミス以外はレベルが1上がっていた。

 レベルが上がってくれるのは良いことだ。

 千花のステータスを隠蔽して、ステータスを閉じた。


 チカにも聞いたが、先生の遺品などはもう生前に復活炉を残して全て処分したらしい。

 悪用される恐れがある物や俺には全く使えない物が多かったのか? わからない。

 みんなに脱出の準備をしてもらい、復活炉をアイテムボックスに収納しよう。

 確かにダンジョン作製をするときにこれは必要だろうな。

 家族を守る為なら敵対者は殺すだろうが、入ってきた冒険者を殺す気はないし。

 ダンジョン作製も使ってみたいんだけど、ダンジョン物の小説をよく読んでいたが、あれには逃げ場が無かったり、苦労していた。

 だから強くなってから使おう。……使う機会ちゃんとあるよな?

 それにドラゴンの巣といえばダンジョンだよな、リュミスを見る。

 うん、立派な巣作りをしよう。


「みんな、いくよ!」

 一応声をかけて、ミオとリュミスが人化を解いたリンカとライカを抱えているのを確認してから、復活炉をアイテムボックスの中に入れた。

 瞬間、ダンジョンがグラついた!

 みんな無言で走る! チカ速い! リュミスより、ずっとはやい!!


 能力値の上がった俺の速さはミオに負けるが迫るものがあった。リオと同じくらいの速さは出ている。

 そうしてダンジョンが崩れる前に出ることができた。

 ホークはもういなかった。なんかゴタゴタしてると言っていたし、この迷宮のことは説明し終わって、死ぬ危険はないだろうと去ったのか?

 まあよかった。直接見られていないならダンジョン崩壊も関係ないと言い張れる。

 それに攻略するようなやつもいないのだから崩壊時期すら誤魔化せるかも。


 それにしてもチカは様付けのままだし、妹と説明するのは難しいよね……。

 使用人見習い? 苦しいけどこれにしようか。

 とりあえず人に見つからないように家に帰った。

「チカはご飯は食べられる?」

「はい、食べられましゅ。ちゃんと人としての活動はみなれきましゅ」

 なるほど、では宿にチカの分の夕食を追加してもらわないとな。

 俺は宿でミカちゃんに話しておいた。

 ミカちゃんも先生のお孫さんなんだよな、チカと仲良くなれればいいんだけど。そんなことを思った。


 家に帰るとみんなが自己紹介をしていた。

 ダンジョン内では一応警戒していたからしていなかったが、家に帰って落ち着いたところで、ということかな。

 でもなんとなくぎこちない。予測だが眷族同士の繫がりから伝わってくるはずの心が感じられないから距離を測り損ねているのかな?


 何かきっかけがあれば距離感なんかも掴めると思うんだけど。

 チカはみんなもしゃま呼びしようとしたみたいだが、反対されしゃん呼びになった。

 みんなからはチカをなんと呼ぶか微妙に悩んでいるな。眷族としては新入りで、歳の観点では年上だもんな。ミオは安定のちーちゃん、リュミスとリオはチカ、クオンはチカちゃんとこの辺はスムーズに決まったんだがな。

 まあおいおい決まってくるよな。


 その後は、普段通りに過ごした。チカはご飯もちゃんと食べられるし、お風呂とかも大丈夫なんだな。

 寝るときにはチカが主張したわけではないが、眷族ルールなのかチカが隣だった。

 もう片方はプチじゃんけん大会に勝ったライカだった。

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