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 朝練も調子が良く、今日ボスに挑もうと思う。

 そのつもりだとみんなに伝えた。

「マスター、頑張ります!」

「きゅー、みんなを守るよ!」

「妹は必ず守ります!」

「あるじサマ、リオがんばる〜」

「トノぼくヤクにたてるかなぁ」

「……エンゴ、する……」

 ちょっとリンカは自信がなさそうだけど、お姉ちゃんになった二人なら守ってくれるよな。もちろん俺も。


 確認もできたところでダンジョンに行きますか。

 少し遠回りをしても良いので敵と出会わない道をミオには頼んだ。

 少し時間はかかったものの、ボス戦前の慣らしという程度の戦闘で済んだ。

 そして俺たちの前には大きな扉が。

「みんな、準備はいいか?」

 ミオ、リュミス、クオン、リオ、リンカ、ライカの顔を順に見ていく。みんなは一斉に頷いた。

「ッシャー! 行くぞ!」

 俺は恐怖を押し殺し、叫びながら扉を開けた。


「ヒョー」

 とてつもなく広い部屋にそいつはいた。

 顔は猿、胴と手足は多分虎、尻尾が蛇の……。



『鑑定』


 種族 鵺♂ Lv20


 鵺、それもレベル20か。わかっていたこととはいえ凄い迫力だ!

「ヒョー‼︎」

 不気味な叫び声だ。しかもこれは、威圧!

「イヤァァァァ‼︎」

「きゅー‼︎」

「ウウォン‼︎」

 身体に圧がかかる前に、こちらも威圧し返す!

 すかさずリュミスとクオンが前に出る。

 ミオとリオは後衛としてみんなの邪魔をしないように手裏剣と魔法を放つ。

 俺とライカは中衛、前衛をサポートだ。この日の為に学んだ長巻、この間武器顕現のレベルが上がり、顕現させられるようになった柄の長い刀だ、練習中に名前を思い出せた、で突く動作を中心にクオンの手助けだ。

 ライカもリュミスと連携して攻めている。

 リンカは人化を解いて、ちょこちょこと動いてもらっている。


 長巻は刀の一種だ。スキルが教えてくれるところには右手の位置は普通の刀と変わらない。左手を柄の中程に持ち、刀よりも遠心力を利用でき、それでぶった斬るという感じと理解している。

 これについてはスキル任せなので自信がないが、知識として大太刀より扱いやすいというのは知っていたので練習しておいた。

 刀を何度も折り、歪めても斬る練習をしていたのが良かったのか、長巻を初めて扱ってもそこまで違和感はなかった。

 今回は中衛として動きたかったので突きを使っているが、どうやら突きは普通の刀の方がいいのかもしれない。

 というか、剣道経験者でこれだけ斬る動作に苦労しているのだからラノベとかで刀をいきなり使える奴とかありえないだろ……。

 絶対に折れず曲がらない刀を手に入れても、斬る動作を知らなければ宝の持ち腐れなんだよ! なんて関係ないことも頭に浮かんでくる。

 戦いの最中に考えることではないがこの長巻を拙いまでも扱えていることが俺のテンションを上げていた。

 クオンが左前足をしゃがんで躱したところに横からその足を薙ぎ払う。

 骨に届くどころか、皮膚を浅く傷付けるにとどまった。

 これは思いっきり遠心力を利用しないと斬り飛ばせないな。


 前衛、中衛の連携で浅い傷が多くなってきた、鵺が苛立っているのがわかる。

 ここを隙だと判断したリンカが鵺の横を抜けようと走る、フリをする。

 そのとき、尻尾の蛇が黒い球形のバチバチと音を立てる雷のようなものを口から飛ばしてきた。

 リンカが本当に横を抜けようとしていたら直撃だったな。

 しかもあの蛇、ここまで動きを見せず、狙ってやがったな!

 これで本体と蛇は別思考だとわかった。

 リンカありがとう。

 別思考の敵なんて厄介だよな、実はリオは頭が増えてオルトロスにならないかな、なんて期待していたと本人には絶対に言えない。

 実際にオルトロスになっていたとしたら人化の姿がどうなっていたのかもわからないので良かったのかもしれないが。


 苛立った鵺が雷を身に纏う。

「ヒョー! ヒョー‼︎」

 第二ラウンドか。

「交代!」

 俺が叫ぶ前からみんな動いていたが気にせず叫び、長巻を刀に戻し左手で握り、右手でバスタードソードを抜き構え、前に出る。

 次の前衛は状態異常耐性持ちの俺とミオだ。

 中衛にライカ、後は後衛だ。

 ライカは俺のサポートをしてくれ、なんとか俺でも前衛を務めていられる。

 襲い来る爪、牙を両の武器で受け流し、凌ぐ。

 隙はないが、黒魔法のレベルが上がったことで覚えた毒霧を、両手を動かし、攻撃を受け流しながらも口から吐き、鵺の目を狙う!

 これ、完全にモンスターよりの技? 魔法? だけど手を使わずに口から出せるところがいいよね。

 人が相手なら鍔迫り合いのときに必ず使える。

 鵺が嫌がり、目を閉じた瞬間、両の武器を揃えて思いっきり薙ぐ。

 だがこうなることがわかっていたのか、臭いで判別したのかわからないが後ろに下がられる。

 ッチ! 奇襲その1は失敗か。


 目を開いた鵺とまた距離を詰めて戦う。

 でも俺の口の動きに注意を払っているのが感じられる。

 失敗ではあったが、効果はあったようだ。

 これなら試してみたくなるよな。

 左手の刀を消し、両手でバスタードソードを握る。

 そして思いっきり振り下ろす。

 鵺もそれに応え、強烈な薙ぎ払いだ。

 当たる瞬間、力を抜き、バスタードソードが吹っ飛んでいく。

 これを予想していない鵺は振り切りすぎてバランスを崩す。

 今! 一気に横を駆けて、長巻を顕現! 横から思いっきり遠心力を利用して後ろ足を薙ぎ払った。

 足一本もらった! 足を斬り飛ばすことに成功!

 長巻を脇に控え、素早く駆け、残心。

 迫る蛇を叩き斬る。

 これが残心か。剣道時代は形だけで全く出来ていないとよく怒られたものだが、身に危険が迫りわかるようになってきた。

 そのおかげで蛇の一撃も防げた。

 蛇は牙から毒を垂らしているようで一撃喰らえば危なかったかもな。

 それにしても蛇まで倒せるとは好都合。

 一緒に横を抜けてきたリンカに火を纏わせ、鵺の背中に貼り付ける。

 四足獣なら背中に足は届かないだろう、背中を焼かれるがいい。


 これを嫌がったのか、足を奪った俺を憎悪したのか、両前足を地面に叩きつけるような動作をして、その力で俺に残った後ろ足で回し蹴りのような攻撃をしてきた!

 とっさに柄でカードし後ろに飛ぶが、柄は砕け散り、俺は壁に叩きつけられた。

「グフッ!」

 肺の空気が抜け出て苦しい!

 むせながらも呼吸を整え、鵺を見る。

 さっきの動きは前衛には隙が大き過ぎたのだろう、ミオの両の短剣が鵺の両目を奪っていた。

 鵺の背中にいなかったリンカを探す、ちょうど俺の反対側の壁手前でリオに抱えられていた。

 振り落とされただけで、しかも受け止めてもらえたのでダメージはなさそうだ。

 ナイスお姉ちゃん!


 鵺は両の目、後ろ足の一つを失い、完全に戦況はこちらに傾いた。

 このまま焦らず、回復を終えた俺はバスタードソードを回収し前衛に戻った。

 中衛のライカの突き、後衛の魔法に長く晒され、ついに鵺はその巨体を横たえた。

「ビョー、ビョー……」

 痛みを長引かせるものではない。注意して鵺に近づき、長巻で一気に首を撥ねた。


『ポーン♪』


 久しぶりにその音を聞き、疲れてそのまま横たわった。

「ご主人様、やりましたね!」

「途中壁にぶつかっておられましたが大丈夫だったのですか、マスター?」

「鵺は強かったね!」

「あるじサマ、おつかれ〜?」

「ボスはつよかったぁ」

「……うん、つよかった……」

 そんなことを言いながら俺の周りに集まってくるみんな。

「ミオ、大丈夫だよ。みんなお疲れ! みんなのおかげで鵺を倒せたよ!」

「「「お疲れ様 (でした)!」」」

「がんばったよ〜!」

「おヤクにたてましたでしょうかぁ」

 コクコクと頷くライカ。

 一応みんなに回復魔法をかけるとリンカやライカ、そしてリオが俺の上に乗ってきた。

 もうちょっと休ませてください。胸にすりすりして匂いをつけないの。

 三人纏めて抱きしめ、ゴロゴロ転がってからドロップアイテムである石を拾った。



『鑑定』


 魔石


 魔力の込められている石。強いモンスターを倒すと稀に手に入る。


 魔石か、ファンタジーの定番だな。

 そして、入り口とは反対にある扉を開けた。

 小部屋があり、魔法陣と階段があった。

 疲れたんでもう今日は休みます。


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