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蛙の倒し方も力業ではあるものの一応わかったのでここはさらに進むことにする。
それにしてもみんなのレベルアップ音をカットしたら一気に寂しくなったな……。
ステータスを見ると、ミオが1レベル、リオが2レベル、リンカとライカが3レベルずつ上がっていた。
『ステータス』
名前 ミオ(水緒)
種族 ヒト{隠密スライム(中忍)}♀ Lv16
称号 忠臣 (癒し系 抱き枕)
HP 2340
MP 390
攻撃 78
防御 156
速さ 234
知識 78
精神 78
器用 156
運 46
忠誠 100
スキル省略
名前 リオ(莉緒)
種族 獣人 (ブラックウェアウルフ)♀ Lv3
称号 (亜種)
HP 780
MP 1040
攻撃 104
防御 52
速さ 104
知識 156
精神 52
器用 52
運 42
忠誠 100
スキル省略
名前 リンカ (燐火)
種族 獣人(猫)♀ Lv13
称号 なし
HP 345
MP 460
攻撃 23
防御 23
速さ 46
知識 46
精神 46
器用 23
運 22
忠誠 90
スキル省略
名前 ライカ (雷火)
種族 獣人(猫)♀ Lv13
称号 なし
HP 460
MP 345
攻撃 69
防御 23
速さ 46
知識 23
精神 23
器用 23
運 22
忠誠 80
スキル省略
やはり進化後のレベルアップは違うな、能力値の上がり方が断然いい。
リンカとライカも順調にレベルアップしている。
ダンジョンに入り、九階への階段までは進路上の敵だけを排除していく。
蛙も倒してドロップアイテムとして蝦蟇の油を入手した。
レアドロップなのか?
蛙の正面に立ち、口元に引きずられる感覚は恐怖を覚えるものであったが頑張った。
そうこうしているうちに階段を見つけ、降りることに。
入ってすぐに以前にも感じたことのある違和感がした、これは気配察知が誤魔化されている?
ミオを見る。
「大まかな位置はわかりました。でもそれ以上は近づいてからでないと、難しいです」
ミオをして難しいか、どうやら巣穴で餌が通りかかるのを待つタイプなのか?
今まで以上に注意してミオの案内で通路を歩いていく。
すると小部屋の前でミオが上を気にしだした。
「マスター、気配を掴みにくいですが、天井付近で待ち構えているようです」
「そうか、ありがとう」
部屋に入る前に外から石を投げてみる。
……反応はなし。
となると、考えられることは……!
火腕を使い、石を暖めていく。
火腕その文字が如く腕から火が出ます。
……いや、違うんです、厨二とかじゃないんです! イメージが強すぎて一つ目の火魔法はこれになってしまったんです! 俺も遠距離攻撃とか欲しかったんです!
でも忍者で花火師のお義父さんがいる主人公や邪気眼の元になった人? 妖怪? やら火星で石を着けて超人になった主人公とかが俺のイメージを侵食したんです! きっと!
いや、たしかにできた瞬間はテンション上がりましたよ、腕が燃えてるのに熱くないんだから。でも剣や刀を使う俺に腕が燃えてて意味あるの? それに気が付いたら燃えてる腕がもう恥ずかしくてたまらなかったよ……。
うん、忘れよう、こうして役に立ったのだから……。
暖めた石を投げる。
パスッ! という軽い音と共に黒いデカイものが落ちてきた!
まだこちらに気が付いていない!
急ぎみんなでそいつに迫り攻撃しようとする。
そいつは暖められた石に引き寄せられたが餌でないことに気が付いたのか、視線を彷徨わせ、こちらに気が付いた!
「シャー!!」
威嚇して俺たちに噛み付いてこようとするが、こっちの方が速い!
リュミスとリオの魔法が敵の大きく開いた口に吸い込まれるように入っていく。
「シャ、シャー!」
ダメージが大きかったのか動きが鈍った!
そこにミオとクオンが迫り首を斬りつけ、殴る。
斬りつけられたところに殴られたので首が飛んでいった! なかなかショッキングな映像だが、ショッキングさなら胴体も負けてはいない。
首を失ってもまだ動いており、近づけば絞め殺されるのは想像に難くない。
しばらくのたうちまわるのを離れて見ながら、消えるまで待った。
ドロップアイテムは蛇の毒牙だった。
敵は毒持ちの蛇だった。
体長は4m程、大人も丸呑みできるだろう。
だがその身体はやや平べったかった。
爬虫類はフォルムがカッコいいと思う派の俺だが、この蛇はかっこ悪いな、うん。
その平べったさと腹や背に見えた波打つような鱗か何か、これを使って天井に登り、張り付いていたのか?
それとやはり持っていたなピット器官。
熱感知と待ち伏せ、なんて嫌な戦法なんだ。
しかもミオの気配察知を鈍らせるということは何かしらの気配を断つ方法も持っているということだ。
さすが蛇だ! フォルムは気に入らないがその性能の高さには惚れ惚れするね。
そんなことを思っていたらリュミスにジト目で見られていた、なんで?
「マスターはあんな翼のない、手もない、足もない、這うしかできない蛇の方好きなの?」
え、蛇なんだから翼も手も足もないのは当たり前じゃない。それにあの極力無駄を省いたようなフォルムが素晴らしいと思うんだが。
正直、このフォルムじゃなくて普通だったら眷族に欲しいです。
そんなことを語ったら、リュミスの目頭にジワっと涙が浮かんできた。
え、なんで!? 驚いているとクオンに袖を引かれ、しゃがまされて耳打ちされた。
「だ、ダメですよ、ご主人様! 蛇は龍に連なるものです。蛇より上位の龍の前でよりにもよって蛇の方を褒めるなんて!」
え、そういうものなの? あ、さっきのリュミスの『蛇の方が』って龍よりも蛇の方がって意味か!
「いやいや、蛇も好きだけど、龍の方がカッコいいと思うな〜。龍の方がも〜と好きだな〜」
リュミスの頭を撫でながら伝える。
ヤキモチなのか、プライドを刺激してしまったのかわからないが涙目にしてしまったのだし。
「そ、そうだよね! 蛇より龍の方が良いよね! ……よかったぁ〜〜」
その小声で安堵したのは聞こえているよ。
難聴系ではないもので。
「クオン、ありがとう」
小声で伝えて頭を撫でる。
この小ささは凄く撫でやすいな。
ところで、さっきの戦い、俺何もしてないよね!? いや、石は暖めたけれども! リンカとライカも参加できなかったし、ここでのレベル上げは厳しいかもしれないな。
そう思ったものの、その後は蛇が待ち伏せている場所に行き、そう苦労せずに倒した。
どうやら待ち伏せはどの個体もしているようだが、入り口の天井で構えている個体が一番倒し難い敵のようだ。
他の場所であれば襲われるギリギリまで近づき、そこで魔法を放ち、落ちてくるところに武器を構えて、突き刺す。弱ったところをタコ殴り。
という戦法も可能だった。
どうやら奇襲することはあってもされることには慣れていないようだ。
壁の下の方に隠れていた個体なんかもいた。
たしかに敵を襲いやすい場所だろうが、反撃もされやすいのがわからないのかね?
リュミスが頭を、クオンが尾を素早く押さえるともう何もできなくなりタコ殴りにできた。
それでも入り口の天井付近で待ち伏せている敵も一定数いた。
こいつらは他の個体より大きく、狩り慣れている気がする。
罠にかけて、気づかれる前に一気に倒しにいくので鑑定したことがないがレベル19の個体なのではないだろうか?
これは気配察知のスキルを持たない冒険者なら上から降ってきてそのまま丸呑み……なのか? 恐ろしいな!
改めてミオの偉大さに頭を撫でておく。
なんだかわからなそうだが、にへらっとこちらに笑いかけ、すぐに真剣な顔に戻り正面を向いた。
真剣に気配察知をしてくれているので邪魔をしてはいけないな。
俺ももっと危機感を持とう。




