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あと何かあるかと考えているとライカに袖を引っ張られた。
「……ヤリ、ほしい……」
「あ、ぼくはツエほしいよぉ」
鍛冶屋と防具店だな。
鍛冶屋に入り、目ざとくリンカとライカを見つけた店員が言ってくる。
「懐刀、ご入用ですか?」
ニヤニヤしやがって、でも買うんだよなぁ。
「聖銀のを二振り、この字を鞘に彫ってくれ」
そして、槍と杖だったな。
飾ってある槍をとり、ライカに渡す。
少し振って一言。
「……ちがう……」
ショートランスなども試してみるが違うらしい。
うーん、頭の中で槍っぽいものを考えていき、漫画かゲームで見た刀の柄が伸びたような武器を思い浮かべた。
頭の中でその姿を思い浮かべていたらなんかできそうな気がしてきた。相棒もなんとなく乗り気な気がする。
魔力を流してみると顕現した。柄が120㎝ほどに伸びて全体で2mほどになっている。
顕現させてから人が見ていないかキョロキョロしたが、大丈夫だった。
それを渡してみるとライカはパッチリ目をさらに見開いた。
「……これ、ちかい……けど、ちがう……これ、かたな……わたち、つかえない……」
「わたち?」
「……いってない……」
「いや」
「いってない」
「……聞き間違い、だったよ……」
「うん」
なんだろう、理想の自分を目指して無理しているのかな?
そしてライカと色々と話して、たぶんだが薙刀ではないかと感じた。
これはドロテアさんに頼まないといけないかな。
ついでに杖も聞いてみるか。聞いてみた。
「そのナギナタってぇのが、オメェさんのカタナみたいのが先についてんだな。それに似た武器なんだが、グレイブっつーのがある」
倉庫のような場所に案内され渡される。薙刀は刀が先についた感じだが、これは剣が先についているんだな。
これでどうかとライカに聞いてみる。
「……うん、これで、ガマンする……」
「言ってくれんじゃねぇか」
やばい、でも倉庫にあったってことは売れなかったんですよね?
「うっ……金貨1枚だ」
いきなり値段の話に移った。逃げたな。
あと杖は?
「杖は木工屋へ行けよ、専門外だ」
ありがとうございます。合計金貨5枚払い、買い物を終える。
「オメェさんの話を聞いて色々と試してみるつもりだ。暇な時寄れ」
「わかりました。薙刀などできたら買わせていただきますんで」
店を出て、名前の彫られた懐刀を二人に渡した。
「たいせつにするねぇ、あにサマ」
「……ありがと、あにじゃ、たいせつする……」
これは誰かに何か言われたな、みんなを見るが目を逸らされた。えぇ〜!
ドロテアさんに聞いた木工屋に着いた。
「えらっしゃい!」
なんか店を間違えた気がするが杖も置いてあった。
「杖を買おうとドロテアさんに聞いてきたんですが」
「姐さんの紹介ですかぃ、あらっす。誰が持つんで?」
「この娘です」
リンカを前に出す。
「あいっす、木は硬い材質の殴れるものが良さそうですねぇ。長さはうーん、こんなんでしょっか」
なんの木かわからないが硬そうな木でできた60㎝くらいの杖を選んでくれた。
「にぎりやすぃ! これすごくいいよぉ!」
おお、そうなのか、実は凄い人なのか?
「へい、ありがとうごさっす!」
「いくらになりますか?」
「姐さんのご紹介なんせぇ、銀貨3枚でどうでっしゃろ?」
いろんな言葉が混ざってない? 疑問に思いつつ払った。
「ありあとでした!」
なんか疲れた。
あとは防具店でミオと同じ簪を二つ、グローブ、靴なども買っていく。忘れてはいけないのがミスリルの腕輪だな。あ、ミスリルの鎖帷子、残金の確認。
金貨11枚銀貨20枚銅貨53枚、結構あったお金が装備を整えだしてどんどんと減っている。やばいかもしれない……。
とりあえず、リンカが後衛だからライカにと言ってくれたのでライカにミスリルの鎖帷子を買った。
これで金貨1枚、銀貨12枚かぁ。やばい、本格的に稼がないと……。
家に戻り、色々と設置していく。家事のレベルが高いクオンが先頭に立ち、指示していく。さすがだ。
さて俺の懸案事項を確認しよう。
風呂場に行き、俺は愕然としていた。なぜこのサイズの家でこの風呂の大きさなのだ! デカい、大人一人、子ども六人みんなで入れるほどに。俺に逃げ場は用意されていないのか……。
どうするか考えながら家の中を見回っていく。冷蔵庫や炊飯器なんかもあるのか。
そういえば結局のところこれの動力ってなんなんだ? これも聞いてみないとな。
あれやこれや、クオンの指示で掃除なんかもしていたら結構な時間になっていた。
宿での行動でわかるだろうが、俺は風呂に入ってから晩ご飯を摂る派だ。
一人風呂に入ろうとして捕まった。
「どうして今日に限って一人で入ろうとするのですか、マスター?」
なんと言っていいのかわからず無意識にチラリとリオを見てしまう。しまったと思った時には遅かった。
涙目になったリオが正面にきて俺の服を握り、見上げてきた。
「リオのこときらいになった? リオだけみんなとちがう、そうなのあるじサマ?……」
その視線に俺は負けた。
諦めて脱衣所で服を脱いだ。リオが服を脱ぐと様々な反応があった。
「え、りーちゃん!」
「デカ!」
「ぎゃーわー!」
「おおぉ!」
「……たわわ……」
なぜ俺が服屋でこそこそしていたのかわかったのだろう、驚いた表情でみんなが俺を見てきた。今度は俺がみんなから目を逸らした。
そんな一幕もあったお風呂タイムを終えて、今さらなる苦難の時間を迎えている。
「ご主人様は胸の大きな娘の方が好きなんですか?」
「無いのと有るのでは、有る方を選ぶのが一般的ではないのかな?」
一般論にすり替える逃げの手段。
「では質問を変えます。ご主人様の好きな女性のタイプを教えてください」
泣きそうな表情でそんな質問をしないでいただきたい。でも嘘を言ってもバレるんだよなぁ。
「年下で俺と同じかそれより高い身長のDカップ以上の女性」
「な!?」
ガーンという音が聞こえてきそうなほどにショックを受けたという表情をしている。
「大丈夫だよ、くーちゃん。マスターはそんなこと言っていますが二次元? ではつるぺたな娘を好む傾向にありましたので」
なんでそんなことまで知ってんだよぉぉぉ! そしてそんな秘密を喋っちゃうんだよおおぉ、ミオぉぉぉ!
「にじげん? よくわからないけどそうなんですか、ご主人様?」
期待半分不安半分な表情だ。
「二次元と現実を一緒にしてはいけません!」
そう言っても二次元がわからないよな。どう説明すればいいんだ……。
「私はこのまま成長すればマスターの好みになりそうだね! マスター楽しみにしててよ!」
まあ確かにリュミスは俺の身長くらいになったら長身の美人で好みのタイプバッチリだろうな。
「私にはどちらも無理そうなのです……」
自分で俺のタイプをバラしておいて凹まないで欲しいんだが。
「私はこのままで成長しない方がいいんですか? ご主人様?」
そのままのクオンでいいんじゃないかな。
「あるじサマ、リオは? リオは?」
無邪気に背中に押し付けないで! リオは十分可愛いから気にしないでいいんだよ。
「ぼくたちはこれからだねぇ、ライカ?」
「……そうだね、リンカ……」
君たちはマイペースだなぁ。
なんかカオスなこの場をなんとかしていただきたい。誰か助けてぇ〜〜。
でも、元気がなかったリュミスが元気になってよかった。たぶん驚きとかで一時的に忘れているだけだろうけど、リュミスのこともなんとかしてあげたいな。




