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 重い足を引きずってようやくギルドに着いた。

「こんにちは、本日はどのようなご用件でしょうか?」

 無言でステータスカードを渡した。

「これは……、ありがとうございました。しばらくお待ちください」

 しばらく待つと戻ってきた。

「こちら報奨金の金貨3枚になります。もしまた見つけましたらよろしくお願いします」

 なぜ金貨を渡されたのかもわからないが受け取りギルドを出た。


 その足で川に行った。もう昼でいつもならご飯を食べている時間だったが、肉を見ると嫌なことを思い出しそうだったので魚にした。

 下処理済みのアイテムボックスに入っていた魚をクオンに手渡し焼いてもらう。他にも買ってあったおにぎりをみんなに配り食べた。

 食事も終わり、川に入った。

 この頭を冷やしたかった。

 冷たさが気持ちいい。しばらく浸かり、身体がすっかり冷えきってしまったあたりで出た。少し頭がすっきりした。

 すっきりして、次に考えたのは自分の馬鹿さ加減だった。

 なぜ敵の群れを最高でも十数だと思っていたのか。

 実際千匹以上の猫を見ていたにもかかわらずなぜ……。

 もう少し早くダンジョンに入っていたら、もしかしたらあの食われて死んだ冒険者らしき者たちの代わりに、俺たちが食われていたかもしれない。

 そこまで考えて、ミオと俺で気配察知に違いがあった理由に気がつく。俺の気配察知は、熱とこの間の反省から追加された魔力だ。熱は死んでからも少しは残る。魔力もきっとそうなのだろう。だから俺には気配が感じられたんだ……。


 タオルで身体を拭き終わり、焚き火の近くに座る。

 そうしていたらリオに後ろから抱きしめられた。

 ぷにぃ、そんな擬音が聞こえてくるんじゃないかと思えるほど柔らかな水風船のような感触を背中に感じた。

「あるじサマ、だいじょぶ?」

 冷えきった身体にリオの高い体温が熱く感じる。ぷにぃという感触も。

 なんだろう、俺にシリアスな展開を許さないのか、この世界は……。

「ありがとう、リオ。ちょっと落ち着いた」

 リンカとライカも近づき、慰めるように足を舐めた。

 そんなリンカとライカを抱き上げる。

「リンカ、ライカ、ありがとう。それとごめんな、今日人化を覚えさせてあげられると思っていたんだけど、ダメだったよ」

 俺がそう言うと二人は光に包まれた! 眩し! とっさに目を逸らし、光が収まったので視線を戻すと全裸の女の子が二人いた。

 アイテムボックスから無言で着ぐるみを取り出して渡す。

 もうわかった、シリアスは許されないんだ。うん、わかったよ! 半ばやけになりながら沈んだ思考を引き戻した。

 とりあえず、もうみんなと毎日風呂に入っているので、リンカとライカが人化したときに裸を見ても落ち着いていられるだろうとか思っていた昨日の自分を殴りたい。

 なんかすごく恥ずかしい。二人の幼女を見る。今はクオンやミオに着ぐるみを着せてもらっている。

 リンカは肩より長いくらいの橙色の髪でタレ目のおっとり系、105㎝くらいの身長だ。猫耳、尻尾可愛いです。猫獣人の姿だ。

 ライカは黄色に所々黒のメッシュが入っている長い髪をポニーテールにしている。パッチリとした目にキリッとした眉で力強い印象を与える、110㎝くらいの身長の美人系だ。こちらも猫耳、尻尾の猫獣人だ。

 二人が着替えが終わり、こちらに歩いてくる。

「トノ、ぼくジンカできたよぉ」

「……ソレガシ……トノ、の、チカラ……なる……」

 ボクっ娘にソレガシ? え、ライカは侍系? っいうかトノ、殿? 俺最近なんて呼ばれても気にしなくなってきた。

「そうか、よかった。おめでとう、あれ、でも人化はさっき確認した時にはなかったけど」

「……トノ……かなしんでた……」

「だからジンカしたいっておもったのぉ」

「……なれた……」

 俺が悲しんでいたから、人化を欲してくれた。それによって人化を与えられたのか。

 ありがとう、愛しい気持ちを込めて抱きしめた。

「わ、わぁ」

「……テレ……」

「ありがとうね、二人とも」


 二人のステータスを隠蔽し、さて、行かねばならぬ所がある、俺は服屋へと駆け込んだ。

 リンカとライカの服、下着類をミオたちに選んでもらう。

 俺とリオはこっち、女性の店員を見つけてお願いする。なんとなく他のみんなには教えられないと感じたのでこそっとだ。特にクオン、なんでかはわからない、わからない。

「あら、いらっしゃいませ、どうしました?」

「この娘に合う下着をお願いしたい」

「? まだこちらのお嬢様には早いのではないかしら?」

 客の注文だぞ、何も言わずにやってくれよ! 恥ずかしいんだぞ、俺だって!

「……この服はゆったりとしているからわからないんだが……成長しているんだ……」

 言わせんなよ!

「……わかりました、ピッタリのブラジャーをお選びしますわ」

 お前、お前ぇ! わざと下着と濁した俺に謝れ! しかもまだ疑っているだろ!


 しばらくミオたちにどちらの服が似合う? というカップルのような質問をされたり、リンカは橙色、ライカは黄色をベースに服を選ぶことに決めたりして過ごしていたら、少し頬を赤らめた店員さんがこちらに来た。

 みんなから隠れて店員さんに近づいた。

「……あの年とは思えないものをお持ちでしたわ。サイズで言うとBです。これからの成長を考えると末恐ろしいお嬢様です……」

 なんでこの人が恥ずかしそうなの?

「少しボーイッシュな感じの非常に整った容姿とアンバランスな胸が醸し出す妖しげな魅力、女の私でも少しクルものがありましたわ」

 なるほど、この店員は変態なんだな。次からみんなに近づかせないようにしよう。

 ついでにみんなの服を買ったりして金貨1枚吹き飛んでいった。女の子を着飾るのに高いなんてことはありません。


 服屋を出て宿に戻り、借りる家の中を見せてもらう。

 平屋のそんなに大きくない建物だ。中に入って見回りながら日用品やらを置いていく。

 ベッドもキングサイズで大きかった。みんなで寝れるベッドでよかった。

 家具も確かに年季を感じるが問題なく機能していた。

 おばあさんにお礼を言い、布団屋へ。

 布団一式を購入、掛け布団は羽毛、でも金貨1枚くらいのにしておいた。

 上を見たらきりがない。羽毛布団とはそういうものだ。


 他にも必要なものを見つけては買い、追加で銀貨5枚飛んでいった。

 あとはリンカとライカの冒険者登録か。

 もう一度ギルドに行き、冒険者登録をした。

 リンカもライカも身分証を持っていなかったが特に問題なかった。なんでもCランク冒険者からは、ギルドがその身分を保障しているようなもので、その身内ならそういったものが必要ないようだ。

 まあ冒険者は様々な場所に行く。身分証などは国ごとに違ったりすることへの対応なのだろう。

 そんな訳でリンカとライカはちゃんと冒険者登録ができた。


 そしてついに聞いたステータスの話。

 俺と同じCランク冒険者の平均がこれらしい。



 種族 Cランク冒険者 Lv20


 HP 220

 MP 220


 攻撃 120

 防御 120

 速さ 120

 知識 120

 精神 120

 器用 120

 運  30


 俺のHP平均の5倍近いのか、他は負けている。これでわかったのはモンスターはHP、MP高めだが、他は人より伸びにくいということだ。だから冒険者はモンスターに勝てるのだ。もちろん例外はいくらでもあるだろうが。その例外、リュミスの凄さがこれで浮き彫りになったな。でも使徒や勇者の称号持ちも負けてはいない。

 一般人がレベルアップで1〜7能力値を上げるところを使徒なら30〜70、勇者は100上げるようだ。

 ここでわかるのは俺の驚くほどの弱さだ。使徒でありながらこの弱さ……、これは前にも思ったことだが、ヨミに心配されるわけだわ。普通に考えたら地雷スキルだろ、眷族化!

 まあ、みんなに会えたんで文句はないけどさ。

 本当は内緒らしいステータスの情報を教えてくれたお礼を言ってギルドを出た。

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