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ギルドに入ったら黄色い声がした。なんだなんだと思っていたら彼女らの視線はリオとクオンに注がれていた。着ぐるみ幼女ウィズ子猫はこの世界の女性にも通じたらしい。
黄色い声を上げながら迫ってくる女性たちにおののいていると、その女性たちより先に俺たちに近づいてくる男が一人。
「おい! 俺の名はホーク。お前の名は?」
「俺はユー、用件はなんだ?」
テンプレじゃないのか? 名前を聞くなんて。
「こんな時代だ、こんな小さい娘たちが戦いを決意するのは仕方がないのかもな。だが、三日前に見たときも思ったが、ちゃんと心構えや準備をしてんのか? なんなんだ、その格好は! 前見た時より酷くなってんじゃねぇか! 冒険者舐めてんのか!」
リオやクオンの方を見ながら言った。女性冒険者からはブーイングの嵐。それにも顔色一つ変えないホーク。
「あ、すまない、そういうことか。実はこの着ぐるみ見た目と違って魔法のかかった防具なんだ。前の革のドレスよりも防御力が高いのは中級鑑定で確認もしてある」
中級鑑定と言ったところで周りがざわめいた。
「え、まじか……。なんていうか申し訳ない」
恥ずかしそうに言うホーク。
「いや、見た目だけならそう思っちゃうよな」
これをきっかけに話してみるとお節介とは知りつつもこういったことをしているそうだ。
すぐにこちらを心配してくれている良い奴だってことはわかっていたが、話してみるとやはり良い奴だった。
俺がホークと話している間、みんなは女性冒険者たちに揉みくちゃにされていた。これに巻き込まれるのが嫌でホークと話していたりもする。だが話は終わってしまった。
「そろそろ妹たちを解放してくれないかい?」
俺がそう言うと不満そうな表情をしていた女性冒険者たちだったが、みんなが嬉しそうな表情で俺に近づいていくのを見て諦めてバイバーイと挨拶して去っていった。
「兄様見捨てましたね」
「だね」
「うん」
「はい」
「みゃー」
「がぅ」
とみんなから責められる俺。
「どうもああいうのは苦手なんだよな」
「いやみんな苦手だと思うぞ」
なんて言ってくるホークに別れを告げ、何やら熱い視線を向けてくる受付嬢の元に行くことにした。行きたくないけどあそこしか空いてないんだよな。しかも他の人が受けに行っても追い払ってるみたいだし、それでいいのか受付嬢。
「ゆ、ゆ、ゆゆ、ユーさん、なんで、なんで、なんでなんですか⁉︎」
なんなんだよー。
「なんでミオちゃんとリュミスちゃんにも着ぐるみを着せてあげないんですか‼︎」
あ、そこですか。
「いや、この娘たちが着ているのは着ぐるみより高性能なんだよね、見た目は普通だけど」
「そ、そんな〜……。じゃあミオちゃんとリュミスちゃんは着ぐるみ着ないんですか?」
「いや、夜寝るときなんかは着てくれるよ」
「そ、そんな、なら私は見ることができないの?」
「うん、そうだね」
そう言うと全てに絶望したような表情になった。
「で、ここにきたのはダンジョンの敵について調べたかったからなんだけどどこでわかる?」
「二階、右、本、ある」
「そうなんだ、自由に見ていいの?」
「はい」
「じゃあまた」
「はい」
突然受け答えが雑になったな。
ということで二階の右にあった部屋に入り、妖宮初級という本を読んでいく。へぇーやっぱり戦闘メインな迷宮だけあって罠とか複雑な知恵を使うギミックなんかは無いんだな。その代わりどんどん強くなる敵とどこまで続いているかわからない深さ、そして恐ろしいボスが行く手を阻む難攻不落の迷宮と。
一応二十階層までの敵をメモしようとしたが紙ないや。でもミオが覚えてくれるそう。最近忘れかけていたけどさすがサポート役。いつもお世話になってます。
さて各階層の敵を調べていくがこれおかしくない? 十階のボスがおかしい。なんで最初のボスがこいつなの? そりゃギルドがCランク以上になってから挑むのをオススメするわけだわ。個人的には次の階層でもある六階の敵もちょっとな。嫌いじゃないけどダンジョンで出るこいつはデカそうで不安になる。八、九階層は人によってはダメだろうけど俺は好きだし。
そんな感じで調べている間、みんなは好きな本を見ていたり、静かに待っていたり、暇そうにしていたりした。静かに出来たことを褒めてみんなを撫でてから受付に戻る。
まだ復活していない受付嬢を見てちょうどいいとギルドカードを渡し討伐金を受け取る。よし、猫大量討伐については何も聞かれなかった。計画通り。
ダンジョン探索と猫事件による大量のドロップアイテムにアイテムボックスが圧迫されていたのでそれも売る。合わせて金貨2枚銀貨1枚銅貨52枚となった。買取窓口でこまめに売りに来てくださいと怒られてしまった。本当のことは言えなかった。
用が済んだのでギルドを出る。女性冒険者たちにまたねーと見送られ食事にも誘われたが止めておいた。クオンの目が少し怖いし、好きだと言ってくれている手前、ホイホイついて行くのも不誠実だ。てかどんだけ食い付いて来るんだと思って聞いてみたが、どうやら受付嬢との話を聞かれていたようだ。目的はミオとリュミスの着ぐるみ姿か。まあ間違っても俺目当てじゃないよね、わかってた……。
ギルドから出て歩きながら考える。ギルドにて中級鑑定で防御力を確認したと言ったときに気がついたのだが、この着ぐるみ鑑定されたら異世界人だとバレるよな。隠蔽スキルさんどうにかなりませんか?
『鑑定』
大熊猫の着ぐるみ
大熊猫をデフォルメした着ぐるみ。
隠蔽は鑑定と違って万能だな、ヨミに最初に聞かれた時に隠蔽が使えることを条件に出してよかった。
それから必要なものを買いに行った。爪研ぎ器とブラシだ。どこで売っているのかわからなかったがポケットに入っているリンカとライカの可愛さに惹かれて近づいてくる猫好きに聞けばすぐに分かった。雑貨屋のようなところで両方購入。銅貨20枚、高いのか安いのか。
さて、では宿屋でミカちゃんと対面といこうか。
「あー! その服どこで買ったの?」
リオとクオンの姿を見たミカちゃんが最初に言った言葉である。素直に迷宮品ですとは言えないので地元の品ということにしておいた。
めちゃくちゃ欲しがられたが八枚しかないし、それももうプレゼントしたものだ。先生のお孫さんのミカちゃんなのでなんとかしてあげたいのだが、この着ぐるみを持つことで何かあるかもしれない。女性冒険者たちがあんなに熱狂していたし、それに見た目と防御力を両立した品だと分かれば商人が欲しがり、何かしらしてくることも考えられる。俺たちなら少しは戦えるがミカちゃんには厳しい。
ということでこちらもできるなら願いを叶えてあげたいのだが泣く泣く断った。
「ふぅーん、どうしてもダメなんだ……」
心が痛い。痛いです、先生。
「ごめんね、でもこの娘たちを見て機嫌を直してくれない?」
と言って隠れているリンカとライカに出てきてもらう。
「え、え、凄く可愛いんだけど! お兄さん隠してたな!」
ミカちゃんは猫可愛がりするようにというかそのままだな、可愛がり撫でたり話しかけたりしていた。そんなこんなで笑顔になってくれたミカちゃんに見送られ部屋に戻った。
とりあえず買ってきた物を試してみるか、リンカとライカをブラッシングしてみた。気持ちよさそうにしている。羨ましがったリオが人化を解いてせがむのでリオにもブラッシングをした。されるがままになっているな。
するとそれを見て今度はクオンが羨ましがったのでブラシと爪研ぎ器を渡してあげた。
さて、今まであえて避けていたことをしなければ。十階のアレを倒すためには少しでも力が欲しいし。ということでブラッシングをし終えたクオンに頼んで協力してもらい、俺は激痛でまた気を失うのだった。




