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しばらくミオを抱えながら歩いていると村が見えてきた。なぜ抱えているのかって? 歩幅が違いすぎるのと抱えていると安心するからさ!
なんてことを考えていたが、少しマズイことに気がついた。すなわち名前である。ステータスにはバリバリ漢字で書いてあった。他の人が鑑定で見た場合、漢字になるのか、ならないのか。それに目立つ名前だと思う。他に転移者が居た場合に備えて偽名を使うことにする。俺は弱いし、相手はチートだろうからね。ミオなら相手ができるかもしれないがわざわざ危険を冒すこともない。
「ミオ、偽名をつけようと思うんだけど、どんなのがいいかな?」
同行者に聞いてみる。
「ますたーの おなまえに ちかいのがいいと おもいます。はなしかけられて わかるように つけられていた あだなとかどうですか?」
凄い、しっかりしている。五歳児に見えるけど、流石サポートの為の眷族、知識もしっかりしたものだ。そんな風に感心しながら
「そうだね、ミオの言うとおりだね。うん、じゃあユーにしよう。簡単だしね」
さて、名前を隠蔽しますか。
『ステータス』
名前 ユー(長谷川佑衣斗)
種族 ヒト♂ Lv1
称号 (異世界人)
HP 136
MP 106
攻撃 11
防御 12
速さ 13
知識 11
精神 11
器用 12
運 11
(エクストラスキル)
(眷族化 ダンジョン作製 不老)
(ユニークスキル)
{異世界言語 異世界文字 異世界武術(剣道)}
スキル
下級鑑定 アイテムボックス小 (隠蔽Ⅱ)
{眷族(1/1)}
(ミオ)
よし、ユーの方が名前になってるし大丈夫だな。村が近づくとミオが降ろしてくれと言ってきた。恥ずかしいのかな、とかちょっとショックを受けていたら、なんとなく察したのだろう、慌てながら
「あ、あのいやなわけではないのです! ますたーのあんぜんのためなのです! ひとがいるばしょで いざというとき すぐにうごけるように するためなのです!」
一生懸命言ってくれるのを見て、嬉しくなった。この娘にあまり心配をさせないように早く強くなろう。そう心に誓った。
村に着いたが門番みたいなのは居なかった。小説ではいつもいるのに。当てが外れたので人を探して村を散策した。
建物はやはり少ない、十軒も無いくらいだ。畑と思われる物も小さく感じる。小さい村なのですぐに人が見つかった。
茶髪で日に焼けた小麦色の肌をした小汚い格好の男だ。話しかける前に鑑定を使う。
『鑑定』
名前 アルキオ
種族 ヒト♂ Lv3
レベル低⁉︎ いや、普通なのか? 三十歳くらいに見えるんだが……。わからないがこれならミオが倒せるだろう。安心して少し距離をおいて話しかけた。
「初めまして ユーと申します。こちらは妹のミオです。この村に宿屋か商店は、ありますか?」
村人は、訝しげな顔をしながら
「こんな辺境の村に何の用だ? 宿屋や商店なんて大きな街にしかないぞ?」
と教えてくれる。
「実は、兄妹で旅をしていたのですが、モンスターに襲われて持ち物をほぼ失ってしまったのです。なので、寝る所と食べ物を求めて来たのですが……」
一応考えておいた言い訳を告げながら相手に近づいて行く。
村人は、少し慌てたように
「モンスターに襲われただって? ここら辺はあまりモンスターも出ない場所なのだが……。詳しく知りたいから村長に話してくれないか、寝る場所や食事についても村長に相談した方がいい」
そう言うと他の家よりちょっと大きな家に向かって歩き出した。その後ろを歩こうとしたらスボンを引っ張られる感覚があった。
もちろんミオなのだが
「ますたー、なぜきょうだいとせつめいしたのですか?」
「うん、まあ疑問に思うよね。そもそも髪も瞳の色も違うしね。でも他にうまく説明できる関係もないし、兄妹と言っておけば何か事情があると勝手に考えて深く聞こうとしないだろうし」
と考えていたことを歩きながら説明した。
「なるほど、ますたーのけんぞくとせつめいもできませんしね」
納得したようなので一言
「だからマスターではなくて、兄と呼んでね」
と告げた。
それを聞いて、顔を赤くしながら
「は、はい、に、にいさま」
と照れていた。
なにこの可愛い娘。人がいる所で抱き上げるのはダメなので頭をなでなでした。撫でてるこっちが癒される、さらさらな良い髪だった。ミオも嬉しそうだし頭を撫でながら村長の家に向かった。