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「うお、焼きおにぎりがある!」
「あっちには焼き鳥!」
「おお、みたらし団子‼︎」
と一人騒いでいる大人がいた、もちろん俺だ。
「ご主人様、少し買い過ぎなのでは?」
「あ、ごめんごめん。久しぶりで見るもの全部食べたくなっちゃって……。でも俺やクオンが食べられない量でもミオたちが食べてくれるでしょう?」
「はい、兄様」
「美味しそうだし、食べるよ」
「いいにおい〜!」
「久しぶり? ここにある食べ物をご主人様は食べたことがあるのですか?」
「うん、故郷の料理だ、ここにあるのは。ただ故郷の人が伝えたのか、ここにもとからあるのかはわからないけど」
買い過ぎくらい買ったのでベンチを見つけてそこで座って食べた。
「焼きおにぎりうめぇ〜〜!」
久しぶりに食べる醤油味、それも焦がし醤油、テンションが上がっていく。
「みたらし団子、最っ高! 俺ここに住むわ!」
俺の興奮っぷりに少しみんなが驚いているのが伝わってくる、が今の俺は食に取り憑かれている。気にせず食べた。
一通り食べ終わり落ち着いてきた頃。
「兄様凄い勢いで食べてましたね」
「うん、やっぱり故郷の料理は思い出もあって別格だよ。ああ、満足〜」
「みたらし団子気に入ったよ」
「俺もみたらし団子は大好きだ」
「りおはやきとり〜」
「肉食系だなリオは」
さすが狼。
「この料理の再現は難しそうです……」
「落ち込まなくても大丈夫だ、クオン。聞いたら調味料なんかは妖宮で稀に出るらしいし。あ、手に入ったら一緒に料理しようか」
「一緒に料理……! いいですね、よろしくお願いします!」
「私たちもお手伝いしますよ、兄様」
「え、みーちゃん?」
「今何かくーちゃんから不穏な気配を感じたから」
「みーちゃん!」
なんて戯れ始めた二人を眺めながら、背中に乗ろうとしているリオを背負い、俺と一緒に二人を眺めているリュミスを膝に乗せてゆったりとした。
食休みも終えてダンジョンに一度潜ってみることにした。その前に一度ギルドで情報を集めようと思いギルドに行くことに。
そういえばクオンのギルドカードも変更しないと。
ということでまだ先ほどの受付嬢がいたのでクオンのギルドカードを奴隷用から通常のものに変更してもらった。またダンジョンの地下1階から5階はEランクの冒険者相当ということがわかった。
調査の結果、安全そうだし、ダンジョンに向かった。
四方を壁に囲まれ、頑丈な門があった。門は開けられており、門番もいたが特に何も言われることなく中に入ることができた。
たぶんあの門も門番も外から守る為ではなく、内から外に出さない為のものなんだろう。
中に入ってみると本当に地面に穴があり、ダンジョン中に降りられるように階段があった。ミオを先頭に注意しながら中に入った。
「壁が光ってるよ……」
原理は全くわからないが、壁が光ってダンジョンを照らしている。眩しい光でもなく、若干薄暗く感じる。ダンジョン内は通路と小部屋、大部屋で構成されていて本当にゲームのようなダンジョンだ。
一階には罠なども無いそうなのでモンスター、下への階段を探しつつ歩いていく。
「マスター、前から敵らしきものが接近中です。おそらく空を飛んでます」
いきなり飛行系の敵! これは優しいのか厳しいのか判断に迷うな。
「うーん、ミオ手裏剣試してみる?」
「あ、はい、試してみます」
「後のみんなはミオが撃ち漏らしたら魔法で迎撃、撃ち落とせたらとどめを刺すってことで」
「はい」
「「うん」」
お、俺の方にも気配がわかる距離まで来たな、なんかバサバサという音も聞こえるようになってきた。
うん? 近づいてきているはずなのになかなか見えないんだけど?
あ、ミオが手裏剣を構えて投げた。
「グガァ〜〜!」
という鳴き声? とともに墜落したらしい敵、近づいてみるとそこには烏がいた。
『鑑定』
種族 鴉♂ Lv2
種族 鴉♀ Lv2
烏と鴉ってたしか一緒だよな? 鴉の方がかっこいいけど。てか妖怪でもなんでもない烏なんだけど。たぶんハシブトガラスだな、一度こいつは解剖したし。
そんなことを俺が考えていたらリオがとどめを刺していた。
それにしても黒色で飛行してって、最初の敵にしては不親切だろ、でも攻撃力もなさそうだしこいつに負けるなら帰れってことか?
とりあえず近接戦闘も試してみることになり、あえて近寄らせた。心眼があるから捉えた動きに合わせて剣を振り、簡単に倒すことができたが近くでも黒くてわかりにくい。それに何より自分が知っている生き物が襲ってくるのが超怖い‼︎ 想像してほしい、大きい鳥である烏が群れで襲ってくるとか超怖いぞ!
ある意味ファンタジーの存在より身近なものに襲われる方がよっぽど怖い。
そんな恐怖感を覚えながら、襲ってくる鴉を倒し、手裏剣とドロップアイテムの嘴を拾い集めながら歩いた。
しばらくそんな風に歩いていると大部屋にたどり着いた。
そこにいた五匹の鴉が一斉に襲ってきた! まあ気配察知でわかっていたけどね。
「クオン!」
「はい!」
その声でクオンは火魔法を放った。名前はそのままファイヤーボール、命名は俺では無い。火の玉が飛び、敵にぶち当たった。炎で照らされ明るくなったところにリュミスとリオが爪でミオが短剣で切り裂いた。
さすがに一階では敵にならないと思って気が緩んでいた時にそれは現れた。
俺たちが入ったのとは反対の通路から音も無く一人の男が歩いてきた。
ミオを見る、気配察知に引っかからなかったのだろう、驚愕の表情をして入ってきた男を見ている。気配を消して近づいてきているがまだ敵とは限らない、でも一応鑑定。
『鑑定』
名前 白刃
種族 ???
漢字⁉︎ 種族がわからない? というかレベルは? と混乱している間にも男は近づいてきている。ミオたちは武器を構え臨戦態勢に。
それ以上近づくとミオたちが襲いかかる寸前でやっと男は足を止めた。武器は刀かな? 両腰に一振りずつ装備されている。
近づいてきたのでよくわかるようになったが、大柄な男で髪の毛が右と左で色が違った。いや、瞳もだ。右が黒、左が白。これ左目見えているのか? 整った容姿をした男だが近づくのを躊躇わせる雰囲気があった。達人なら感じ取れるという殺気、達人でもなんでもない俺でもこの男はヤバいとわかる。なんというか生物的に階位が上というか、生態系の頂点に立つ人間より更に上位者だと本能が告げている。
ミオたちもそれを感じ取っているようでいつの間にか俺を守ろうと俺を囲んでいる。




