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 戸惑っている俺を見て何かを察したのか店員が

「四振りも買われたのでこんな小さな娘全員にプロポーズする気なのかと訝しんでおりましたが、安全の為の懐刀でしたか」

 と納得する。

「私だってわかっていたんです……。でも言ってみたかったんです。好きな人に懐刀を贈られるなんて女の子の夢ですから……」

 クオンが少し力なく言った。

 詳しく聞いてみたところ男性が女性に懐刀を贈る行為がプロポーズで、了承なら一生大切にすると答える。保留ならお礼だけ、拒否なら受け取らないとなるらしい。

「それなら一生大切にします、兄様!」

「私も一生大切にするよ、にぃ!」

「りおもりおもいっしょうたいせつにする!」

 と口々に言い出す。

「あ、ああ、みんなありがとね……」

「おモテになるのですね」

「あはは、あはははは……」

 こんなこと言ってくる店員は、殴ってもいいですか?


「記憶が確かなら母親から娘に十歳の誕生日プレゼントとして懐刀を渡す習慣があるところがあったはずなのでおかしなことではありませんよ」

 そんなフォローなのかわからないことを言ってくる。

「まあ、この娘たちは家族ですからね。じゃあまた」

 こちらも無難に返して去ることにする。これ以上何かやらかす訳にはいかない、俺の羞恥心的に。

「またのご来店お待ちしております」

 それまでの笑顔よりずっと良い笑顔で言われてしまった。そういう笑顔は女の子からされたいんじゃ! とか思いながら店を出た。


 うーん、なんて話していいかわからん……。

「そんなにお気になさらずとも大丈夫ですよ、ご主人様」

 とクオンが苦笑しながらフォローをしてくれた。

「いや、告白してくれた相手に知らずとはいえプロポーズ紛いのことをして、知りませんでしたとか鬼畜の所業だよ。さすがにこれには反省する」

 と頭を下げる。

「そんな謝らなくて本当に大丈夫です。嬉しかったです、懐刀をプレゼントされて。家族として大切にしてくださっているのが凄く伝わってきましたし」

 そう言われると恥ずかしい。

「わかったもうこの話はやめる。次は防具屋に行くよ」

「はい、ご主人様」


 ということでやってきました防具屋です。ここも大きな店で良い品がありそうだ。

「いらっしゃいませ」

 中に入ると同時に挨拶される。このちゃんとしたところに懐かしくなる。この街がどんどん好きになっていく。

 今日はもう欲しい物が決まっていたので店員の元へ。

「こんにちは」

「こんにちは、何をお探しですか?」

「ミスリルの鎖帷子が欲しいんだけどいくらですか?」

「ミスリルの鎖帷子ですか、金貨8枚になります」

 お、オリエの街より安い!

「他の街より安いですね」

「皆さんのような冒険者あっての街ですからね。それなりには頑張らせていただいております」

「なるほど」

 ここでミオたちに問いかける。

「みんなの分も買うつもりだけどミスリルの鎖帷子でいい?」

「兄様、私は必要ありません」

「私は一応お願いするよ」

「にぃにとおそろい、やったー!」

「ご主人様、そんな高いものをよろしいのですか?」

「わかった。あとリオこれは服の下に着るからお揃いかは微妙だぞ。クオンは遠慮しないの、命に関わるものなんだからさ」

 店員に向き直り

「ミスリルの鎖帷子四つお願いします」

 と注文。

「今準備しますので少々お待ちください」


 しばらく店内を見て回っていたら気になるものを発見。多分ミスリルだよな、その腕輪。何か紋様のようなものが彫ってある。

「あ、そちらはミスリルの腕輪で魔法の威力を増大させる効果があります」

 じっと見ていたからだろう、店員が説明してくれた。

 それを四つ取り、魔法の使えないミオ以外につけようとしたがクオンは籠手があり、腕輪は邪魔かもしれない。

「これと同じ効果の他の物って置いてませんか?」

「それならこの指輪なんてどうでしょう?」

 差し出されたのはミスリルの指輪。これなら邪魔にならないかな。

 でも指輪かあ、なんかあるといけない。

「クオン、指輪のプレゼントには変な意味はないよね?」

 一応確認を取ると目を逸らされた。

「はい、ありませんよご主人様」

 いやいやいや、じゃあなんで目を逸らしながら言うの? 怪し過ぎるよ。

「うーん、指輪はやめるか」

「いえ、その指輪が気に入りました! 是非その指輪を!」

 この喰いつき、絶対なんかあるよ……。でも戦力的には欲しいし、欲しがっているなら買ってあげたいと思うのが親心? 兄心? だからな。

「じゃあこのミスリルの腕輪三つと指輪を一つを追加で」

「はい、合わせて金貨35枚銀貨5枚になります」


 お金を渡し、商品を受け取って試着コーナーでみんなと装備していく。

「「にぃ(に)ありがとう」」

「ご主人様ありがとうございました」

 そう言ってクオンが左手の薬指に指輪をはめようとするのを俺は阻止した。

「そこはやめたほうがいいんじゃないかな、人差し指とかどうよ?」

「いえいえ指輪は薬指にはめるものですよ、変なご主人様ですね」

「なら右手でいいんじゃないかな」

「左手の方が魔力の影響を与えやすいんですよ」

「へぇ、それは知らなかった。血流と同じ感じか? でも薬指はやめようよ」

 俺の制止を振り切りクオンが薬指に指輪を強引にはめようとする。俺がそれを全力で防ぐ。

「なんで邪魔するんですかご主人様‼︎」

「次第に外堀を埋められていっている気がするからだ!」

「何を言っているのかわかりませんがご主人様は観念するべきです」

「見返りは求めないんじゃなかったんですか、クオンさん?」

「チャンスは活かすべきなんです!」

「うーん、くーちゃんと兄様どちらを応援するべきなのか……」

 え、えー⁉︎ 忠臣のミオが迷っているだと⁉︎ いつも俺の味方だったのに……。地味にショックデケー……。

「恋する乙女は強いんですね」

 リュミス、完全に傍観する気なんだね。

「にぃにとけっこんするのはりおなの〜!」

 ありがとうリオ、でもね今は戦いの最中だから入ってこないでね。


 どんなに抗っても悲しいかな三倍近い筋力差で左手の薬指に近づいていく。そして現実は非情だ、指輪は左手の薬指にはまった。

「指輪ありがとうございます、ご主人様!」

「やっぱり左手の薬指にはめる指輪って結婚指輪なの?」

「そこは異世界でも変わらないのですね」

「ああ、じゃあやっぱりそうなんだ」

 まあクオンはどうせグローブに籠手をつけるから外からは見えないから大丈夫なんだけど。

「お客様、試着室で騒ぐのはやめていただきたいのですが」

 試着室の外から店員に怒られてしまった。

「申し訳ありません、装備し終わりましたのですぐに出て行きます」

 逃げるように店を出た。というか逃げた。


「申し訳ありませんでした、ご主人様」

 クオンが頭を下げて、しょんぼりして謝ってくる。さっきまであんなに嬉しそうだったのに。その変わりように笑ってしまった。

「人が謝っているのに笑うのは酷いと思います!」

 今度は怒った、コロコロ表情が変わるようになったよな。最初の頃とは全然違う。

「ごめんごめん。でもあとさっきのは俺も騒いでいたから謝らなくていいよ」

 そう言って頭を撫でる。ついでにみんなも撫でる。

「さて、ちょっと遅くなったけどご飯でも食べに行こうか」

「「「「賛成 (さんせい)!」」」」

 ということで屋台などを見て回ることにしよう。

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