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「まずわたしが いんぺいすきるを つかうので そのかんかくを つながりから かんじとってください。そしてそれをまねてください」
嬉しそうな表情から真剣な表情に変わって教えてくれる。
そうしたら、すぐ近くにいたはずのミオを見失ってしまった。すぐに繫がりの方に意識を集中させるとミオが何をしているのかがおぼろげながらわかる気がした。
その感覚に従い、自分を周りに同化させていく。まあイメージだけど。
そんなことを続けていくと頭に突然声が響いた。
『スキル【隠蔽】を習得しました』
うお、驚いて集中が途切れてしまったのでもう一度イメージを高めていく。
するとこれまでよりも楽にイメージできるようになっていた。効果も高い気がする。
次第に無心となり、空気に溶け込むようなそんな感覚になっていった。
時を忘れていたが、何かの足音が聞こえそちらに意識を向けると、緑色の肌を持つ小人のような生き物が居た。
手には錆びた短剣を持ち、周囲を見回していた。ミオにこのことを伝えようとしたら、ミオは先に気がついていたらしく、もう動き出していた。
隠蔽を使っているのだろう、相手に音もなく近づき、後ろから短剣を持った腕を掴みそのまま突き刺した。
「グギャー‼︎ ゴブ⁉︎ ゴブー!」
痛みに叫び、短剣を手放した。その隙にミオは短剣を奪い取った。相手はこちらに気がつき驚いたように鳴いたあと、怒りに満ちた表情で叫んで飛びかかって来た。
ミオが相手をしてくれているので鑑定と念じた。いや、そんなことより戦いに行けって? いや、無理でしょ⁉︎ 武器も無いし、何よりアイツは生理的に受け付けない。いやらしい笑みを浮かべつつ襲いかかってくる奴の相手なんて平和な日本にいた者にできるわけがない。なので、できることをしよう。
『鑑定』
種族 ゴブリン♂ Lv2
これだけしか読み取れなかった。下級鑑定はあまり使い勝手が良くないらしい。
てか、最初の眷族にスライム選んでよかった! ゴブリンは無理だった。うん、仲間にしようとか思えないわ。
そんなことを思っていると特に苦戦した様子もなく、ミオがゴブリンの首に一撃入れていた。
「グブッ」
そんな鳴き声を発して、ビクビクした後動かなくなった。
『ポーン♪』
今度は、頭の中にそんな音が響いた。そんなことは気にせず、慌ててミオの元に駆けつける。
「ミオ大丈夫だった? 怪我とかしてない?」
見ていた限りでは、大丈夫そうだったが念のため確認だ。
「もんだいありません、ますたー。はじめてのせんとうでした。ますたーはだいじょうぶでしたか?」
逆に心配されてしまった。とりあえず抱きしめて感謝を示す。
「ありがとう、俺はミオが戦ってくれたから大丈夫だったよ。ミオありがとう」
そう言うとミオは、嬉しそうな照れたような笑顔を向けて
「ますたーをまもるのがわたしのしごとですから」
と言ってくれた。しばらく抱きしめていたが、頭に響いた『ポーン♪』音や隠蔽スキルが気になり調べることにした。
『ステータス』
と念じる。
名前 長谷川佑衣斗
種族 ヒト♂ Lv1
称号 異世界人
HP 136
MP 106
攻撃 11
防御 12
速さ 13
知識 11
精神 11
器用 12
運 11
エクストラスキル
眷族化 ダンジョン作製 不老
ユニークスキル
異世界言語 異世界文字 異世界武術(剣道)
スキル
下級鑑定 アイテムボックス小 隠蔽Ⅱ
眷族(1/1)
ミオ
スキルに隠蔽が増えていた。しかも隠蔽Ⅱ、どうやらスキルレベルが上がるときはアナウンスが無いようだ。
あとレベルも上がっていない。
『ポーン♪』音は、レベルアップのアナウンスだと思ったのだが……。ステータスは少し伸びている。レベル上がって無いんだけど?
次にミオのステータスを確認してみる。
名前 ミオ(水緒)
種族 隠密スライム(下忍)♀ Lv2
称号 忠臣
HP 360
MP 60
攻撃 12
防御 24
速さ 36
知識 12
精神 12
器用 24
運 11
忠誠 100
種族スキル
スライムボディ弱
ユニークスキル
人化(特)
スキル
隠蔽Ⅶ 気配察知Ⅴ 投擲Ⅲ 短剣Ⅲ 全状態異常耐性Ⅲ
どうやらミオのレベルアップ音だったらしい。そしてミオのステータスに影響されて俺のステータスが上がったみたいだ。
どうやらミオのステータスの一割が俺のステータスに加算されるようだ。
ミオだけレベルが上がったが、おれが戦闘に参加しなかったからか? まあ、現状ではわからないので放置で。できることをしよう。
俺も隠蔽スキルを手に入れたので称号、エキストラ、ユニーク、眷族の欄など見られて困るものを隠した。ミオにも頼んで、不都合のある欄は隠蔽してもらう。
そんなことをしていたらゴブリンの死体が消えていた。……いや、本当に。そしてそこには緑色の皮とゴブリンが着ていた腰ミノだけが落ちていた。
なんとなく、ドロップアイテム系なんだ、そんなことを思ってアイテムボックスに入れてみることにした。
『アイテムボックス』
念じても何も起きなかった。皮や腰ミノを持ち、収納するイメージをした。そしたら手の中から消えた。取り出すイメージをしたら、手の中に出た。楽な方でよかったと思いながら、また収納した。
そしてもう一つのゴブリンの持ち物だった短剣は短剣スキルを持つミオの装備とした。
そんな作業が終わったので、ふたりで村? を目指して歩き出した。