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「マスター、これはどういうことですか?」

 そんな不機嫌そうなミオの声に起こされた。

「おはよう、ミオ。どうしたんだ?」

「どうしたんだ? ではありません! そこは私の定位置です! どうしてそこにくーちゃんがいるのですか⁈」

 え、なんのこと? とも思ったが今、俺の右にクオンが寝ている。寝るときに問題が起こらなかったと思ったら朝にやってきてしまった……。

 そうか、人数が増えるとこういう問題もあるのか、知らなかった。

「ん、ふふぁ〜、朝からどうしたんですか?」

 騒いでいたのでクオンが起きてしまった。

「くーちゃん、なぜマスターの右横で寝ているのですか?」

 笑顔だけどなんか怖い……。

「ひぃぃ……。あ、あの、あのですね、ご主人様のお話が怖くて、ご主人の右腕が離せなくなっちゃいまして、そのまま寝てしまったんです」

 最初怯えていたが、話しているうちに恥ずかしくなってしまったのか俯いてしまう。

「うぐっ、くーちゃんが可愛いのです。卑怯なのです」

 はい、それは俺もそう思います。


 そんな話をしていたら、みんなが起きてきた。

「おはよう、朝から何を騒いでるの?」

「おっはよ〜! なになに?」

「おはよう!」

 元気に挨拶して誤魔化す。有耶無耶にしたが、後でフォローを入れないといけないな。

 みんなが起きたのでリュミスに水魔法で顔を洗うための水を出してもらい洗って完全に目が覚めた。


 外に出ると落日の刃のメンバーがいたので挨拶をする。

「おはようございます」

「おう、おはよう、どうやらちゃんと眠れたみたいだな、でちょっと聞きたいことがある。気がついてるか?」

「モンスターが遠巻きに見てますね。昨日もこっちを見ては逃げるモンスターがいましたが」

「ヒュー、本当に索敵能力が高いんだな。そうなんだよ、下手に刺激すると襲ってくるかもしれなかったからあんたらを起こさなかったが、これでこちら側には変化があったわけだ。どう動くと思う?」

「順当に考えれば、アレらは見張りで罠でも仕掛けてるんじゃないですか?」

「そうだな。群れてるし、不用意にこちらに仕掛けてこない。嫌な敵だねぇ」

「こちらは様子見ですか?」

「依頼主次第だな。このまま進んで出たとこ勝負か、数人ここに残して退治に行くか、どちらかわからないが準備をしときな」


 装備を整え、テントをテキパキと片付ける。いつでも動けるようになった所で朝食が配られる。朝は少し豪華にパンとスープと果物だった。これが豪華に感じるとは俺も染まったものだ。まあ草とか食べたしな……。

 リュミスはパンを美味しそうに食べていて、本当は美味しいのか? と疑いそうになるが、パンを見るクオンの瞳が物語っていたので、素直に取り替え、柔らかいパンを食べる。

 朝は休みながら摂らせてくれるんだなと思いつつ、ゆったりとした時間を過ごした。


「決まったぜ、今日中にアルヘムに着きたいそうでな、このまま突っ込んで跳ね除けろとさ。護衛の人を残して倒しに行くのも大変だが、こちらのが難しいと思うんだがな。そういうことで注意深く進んでくれ」

 ドルトンが教えてくれる。また無茶な注文をしてくれるよなぁ。要するに攻撃されても無理に討伐せず、往なして進めということだろう。

「大丈夫なのか? 不安で仕方がないんだが……」

「こういうのが護衛任務の難点さ、こちらの助言を聞きやしない奴らなんていくらでもいるんだよ。大変なのは付き合わされる俺ら冒険者さ。まあ荷物を取られても命を取られないように注意しな」

 最後は商隊の者たちに聞こえないように小声で言って去っていった。


「見張りのモンスターがいるがこのまま進むことになった。みんなも固まって注意してくれ」

 そう言って先頭の馬車に移動した。

「ミオと俺で少し見てくる、危なくなったらすぐに引き返してくるから、御者はリュミスが守ってやってくれ」

「危ないので私だけで行きますが」

「了解だよ」

 相反する答えだ。リュミスはミオがいれば安全と判断したのだろう。

「ミオのことは信頼しているが、一人ではあまり動かないようにしてくれ。基本二人以上で行動するんだ」

 そう言って、二人で少し探る。

「どう、何かわかる?」

「やはり遠巻きに見ているだけですね。それ以外の気配は今のところ探れません。もうしばらくは受け身でいるしかありませんね」

 俺たちが先行したにもかかわらず近づいてくることもない。ちょっと対応が難しいな、モンスターって襲ってくるばかりだったし。

 まあ襲ってこないなら少し話をさせてもらおう。

「ミオ、朝はごめん。ミオにとって自分の定位置を奪われたのがどれだけショックなのか、わからなかったんだ。朝には悲しさと憤りを感じた。そこは俺の不注意だった。ただ、クオンはこれまで頼れる人が居なかった。俺にはミオが、ミオには俺がこの世界に来た時から居た。でもクオンにはミオにとっての俺が居なかったんだ、それだけじゃない、周りは自分を怖がり、嫌う、敵と言ってもいい者達ばかりだったんだ。だから許してあげてくれないかな」

 その言葉を受け止めているのか、目を閉じて何かを考えている様子だ。

「私の方こそ、朝はすいませんでした。初めてのことだったので感情的になってしまいました。くーちゃんに謝らなければいけません」

 よかった、わかってくれたようだ。

「じゃあ、みんなのところに戻ろう。何かあってはまずいからね」


 みんなのところに戻る。

「何かわかりましたか?」

「いや、わからない。罠があるんじゃないかと疑ってるんだけど、まだ予兆もないよ」

 そう話した後、クオンはミオを見る。話したいけど話しづらそうだ。

「朝はごめんなさい、くーちゃん。兄様の隣にいるくーちゃんを見たら感情的になっちゃって……」

「ミオ様の気持ちなんとなくわかります。私ももしミオ様と同じ立場なら動揺してしまったかもしれません。私こそごめんなさい」

 そういって二人で頭を下げる。仲直りもできたみたいでよかった。


 あとはこのモンスターの対処だけだな。一定の距離を保ちつつ、見張られているのは正直良い気分ではない。このストレスだけでも敵の作戦なんじゃないかと疑ってしまう。それとも索敵能力が高いのが裏目に出ているだけなのか?

 俺の気が立っているのが感じられたのか、リオが俺の腕に頭を擦り付けてきた。その頭を撫でて落ち着く。

「ありがとうリオ、平常心だよな」

「ん、きもちいい」

 言葉通り気持ち良さそうに笑っている。

 チラチラと気になるものの、それだけなのでどんな事が起こるのか、身構えつつ敵の動きに集中するのだった。


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