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う〜ん、なぜか背中が痛い。それに胸に少し圧迫感がある。なんなんだと気になり、目を開いた。
「へ?」
思わず、声に出てしまった。なぜなら目の前には雲一つない青空が一面に広がっていたのだから。
意味がわからない。昨日のことを思い出そうとしたが、本能がやめておけと言っていた。うん、後回しにしておいた方から確認しよう。
恐る恐る視線を下げていき、胸の圧迫感の正体を確かめた。そこには、五歳くらいの見覚えのある、水色の女の子がいた。
……うん。現実逃避していたけど、ちゃんと覚えているんだ。ヤバいと本能で感じていたから何度も自分に夢だと言い聞かせていたけどさ……。だってあれ、異世界転移ものにはお馴染みのシーンじゃん?
とりあえず、テンプレ通り頬を引っ張ってみた。
「いたひれふ、まふたー」
女の子にジト目でツッコまれた。うん、テンプレ。巫山戯てないで自分の頬も引っ張った。うん、痛い。さて、諦めましょうか。
「マジかーー! おはようミオ!」
とりあえず叫んでから、ミオに挨拶した。ミオは何が何だかわからないと目を瞬かせていたが、なんとか挨拶を返してきた。
「おはようごさいます、ますたー。いろいろとだいじょうぶですか?」
心配されてしまった……。確かに変な態度だったけど色々悲しい。大丈夫だと伝えて立ち上がった。ミオは、胸に乗っかって居たのでゆっくりと降ろした。少し残念そうな表情になった気がする、俺の気のせいでなければ、だが。
とりあえず、周囲の状況を確認しようと視線を向けた。草原だった。うん、のどかだな。深呼吸した。新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、吐き出す。どうしても現実逃避しがちな頭をスッキリさせているとミオにスボンを引かれた。
「ますたー、どうしたのですか?」
やはり心配そうな表情で言われてしまった。
ミオがいる。このことで間違いなく昨日のことは夢ではないとわかる。そして大切な忠臣であり、俺を守ってくれる安心できる存在である事もわかる。
だから彼女を安心させるように抱きしめる。そして、これからのことについて相談する。
「とりあえず人の住んでる場所が何処かに見えないかな? 俺が見ても周りが草原ってことしかわからないんだが」
そう言ったらミオは俺の腕からモゾモゾ動いて、頭の方に登って肩に座った。肩車になったが、何がしたいのかな? と思っていると、目を両手で塞いできた。ますます何がしたいのかわからなくなって混乱していたのだが、突然視界が開けた。
しかも遠くまでよく見える。なるほど、ミオは、スライムだから手をレンズのようなものに変質させて、遠くまで見えるようにしてくれたらしい。
「ますたー、どうですか? よくみえるようになりましたか?」
「うん、よく見えるよ。ありがとうね」
感謝を伝えながら周りを見渡すと、少し遠いところに村かな? と判断に迷う程度の微かに生活感を感じさせる場所を見つけた。たぶん畑や小屋だろうものが見える。
ここでヨミの言葉を思い出した。隠蔽のスキルの話だ。そこに行くまでにこれをミオから習わなければならない。
「ミオありがとう。それでね、あそこに向かう前に隠蔽のスキルを教えて欲しいんだけど」
とお願いすると嬉しそうに説明してくれる。
「はいです、ますたー。まずは、つながりをたしかめてみてください。いま ちょうど ますたーと ふれあっているので すぐにできると おもいます」
と言われたが、うーん。とりあえず目を瞑ってみよう。で、ミオとの繫がりを……。
うん、さっばりわからん。なんて思っているとポカポカした気持ちが伝わってくる気がした。
それを何処からか、なんて考えているとミオからな気がした。なのでこちらからもミオにありがとうの気持ちを送るイメージをしてみた。そしたら伝わってくるものが強くなった気がした。どうやら成功したらしい。
「ますたーからのきもちがとどきました。こちらこそありがとうございます」
ミオが肩から降りて、こちらを見ながら伝えてくる。
なんだろう、今は離れたが見なくともミオのいる場所が大体わかるし、気持ちも伝わってくる。これが繫がりってものなのか。
ちょっと感動していたが、このままではいつまで経っても村? に行けない。この雰囲気を惜しみつつ、隠蔽スキルを教わることにした。