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 今日も少し長めの鍛錬をしてから朝食を摂った。

「今日は東の林に行こうと思う」

「林で何をするんですか?」

 特に決めていなかった……。

「散策をしよう。自然の中を歩いたり、景色を楽しみながらご飯を食べたり、遊んだり、うん、そうしよう」

「賛成だよ!」

「さんさく! さんさく!」

「何か必要な物はありますか?」

 必要な物? 何かあったっけ? あ、おやつ?

「特にないかな、欲を言えばお弁当なんかが欲しいけど」

「食堂で聞いてみましょうか?」

「そうだな、そうしよう」


 宿に泊まりもうすぐ一ヶ月、弁当が買えたことを今日知る……。いやいやいや、おばちゃんそんなこと言ってなかったよね⁉︎ 聞くとなんでも宿に泊まったお客限定のサービスらしい。俺たちは昼食に困った様子がなかったので二食の文化圏から来たと思われていたようだ。あの村は確かに二食だったが……。

 それはもうしょうがないので、弁当五つをアイテムボックスに収納し、宿を出た。


 そしてみんなで東の林に向かう。

 ここでは休んでいたらウルフに襲われたなぁ。モンスターが出ないと聞いていたから驚いたんだよな。一応、気配察知を使っておく。

「ミオとリュミスとは一緒に来たけど、クオンとリオは初めてだよね」

「うん、はじめて〜」

「はい、そうなります」

「じゃあ、見て回ろうか」

「うん」

「いいよ」

「「はい」」

 同意も得られたのでしばらく散策することにする。


「リオはなんで俺の背中が好きなの?」

 今日も俺の背中に引っ付いているリオに聞く。

「なんだかね〜、あんしんできるの!」

 嬉しそうにそう言われ、ちゃんと背負い直すことにした。


「私の種族は森と共に生きる、魔族の中でも比較的穏やかで珍しい部類に属する者たちらしいのです。故郷の記憶はありませんが、木が近くにあると安心します」

 クオンはたしか、ドリュアス族って言ってたな。木魔法を使えるし、住処も森、そんな種族から火魔法を使う子供が生まれたら……そりゃ追放されてしまうかもしれない。


「木魔法を見せてもらってもいい?」

 そういえば魔王の情報に目を奪われ、こちらの存在を忘れていた。

「大したことはできませんけどよろしいですか?」

「うん、どんな魔法か知りたいだけだしね」

 その言葉を聞き、魔力を高めていくクオン。

 すると木の根が地面から突き出てきた。数は10に満たず、その長さも5cm程だ。

「確かに見た目は地味だけど、なかなか効果は高そうだよ、ただ準備時間が少しネックかな」

 撒菱(まきびし)としても使えるし、足止め、落とし穴に使えば怪我を負わせられる。

 どちらにしろ使い方次第か。

「木がない場所でも使える?」

「もう少しスキルレベルが上がれば大丈夫だと思いますが、今は無理です。申し訳ありません」

 頭を下げられるが、その頭を撫でる。

「それなら、そのうちってことで大丈夫だから。練習していけばいいだけだし、レベルが上がればスキルレベルも上がるかもしれないしね」

 そんな会話をしながら林を歩いた。


 ギルドカードを確認し、お昼になったのでシートを敷いてみんなで食べることにする。

「食べる場所って大事だよなぁ。いつもの宿屋の食事なのにより美味しく感じるよ」

「そうですね、マスター」

 右横に座ったミオが相槌を打つ。

「リオ、あ〜ん」

「あ〜ん」

 俺の膝の上に座るリオにご飯を食べさせる。リオは賢いのだが、まだまだ行動が子供で構ってしまう。

 まあリオももう少し成長したらこんなことさせてくれないのだろうな。なんか娘の成長を喜びつつ、少し寂しく感じる父親みたいになっているな。


 そういえば、弟の子供は無事に生まれたのだろうか? この世界と同じ時間の流れかわからないが同じだとしたら生まれてもおかしくない頃だ。

 そんな寂しい気持ちが伝わってしまう、心が繫がっているのも考えものだな。

 ミオやリュミス、リオが抱きついてくる。

 クオンも巻き込み、抱きついてそのままみんなを押し倒し、シートに寝っころがる。

 空を見上げて涙が流れるのを抑える。

「ご主人様突然どうしましたか?」

 一人伝わってないクオンになんでもないと頭を撫でておく、でも眷族の皆を見て何かに気がついたように少し辛そうな顔をした。気にはなったが、聞いても何も言わないのでそのままにするしかなかった。


 食休みの後、みんなで遊ぶことになったが、おれは深く考えていなかったことを後悔した。

 こんな林、俺が思いつく遊びなど鬼ごっこかかくれんぼなのだ。

 さて、この条件だとある娘の独壇場となるのだ。


 全速力で逃げる。木や根を避けながらになるのでいつもより遅いが、俺史上最高の速さだ。

 だが、まず後ろにぴったりとリオが付いてきている。そういう遊びじゃないって教えてるのに……。そして、息も切らせず付いてくるとか余裕があるのがなんとも悲しい。

 そして、本命が

「マスター、ここまでです」

 来たー! 振り向く余裕もなく、走り続ける。上からザワザワと音がする、これは枝を足場に走っている? ミオまじ忍者、アホなことを考えているとあえなく捕まった。

 後ろを見るといつの間にかリオはいなくなっている。あの娘こういうところしっかりしてるよ……。


 あまりにもミオの独壇場だったので、ミオ対みんなで遊ぶことになったのだが、それでも負けていた。能力値の上で三倍は速さが違うので仕方がないのかもしれないが俺がいつも一番に捕まっている。

 ただ、かくれんぼでミオを見つけられるのは俺だけなのだ。眷族としての繫がりから見つけているのだ。もちろん反則だけどね、仕方がないじゃん、誰も見つけられないんだから。


 それでも続けていくうちに、周りを把握しやすくなってきた気がする。走りながらでも意識せず、足を取られる木の根の位置がわかる。正面の木で見えない位置にある木もわかる、気がする。


『スキル【空間把握】を習得しました』

『スキル【気配察知】【危機察知】【空間把握】が揃いましたのでユニークスキル【心眼(擬)】を習得しました』


 どんどん周囲の状況がわかるようになってきたと思ったら空間把握なんてスキルがあったのか。それに、複合スキル? なんか出たな。心眼、俺の知識通りなら見なくても相手がわかるって能力なんだけど……。

 ゲームとか漫画だと凄く強い能力で、強キャラが持っているイメージなんだけど、俺手に入れちゃったよ!

 気になるのは、擬ってところだ。まだわからないのでとりあえず使ってみる。


 逃げながら使うもよくわからない。

「マスター、見つけました!」

 ミオに見つかった! まだ反応のない心眼、オイオイオイ!

 反応があったのはミオが1メートル内に入った時だった。ある程度ミオがどう動くのか、予測ができた。ここに触ろうとしてくる、と頭に浮かんだのだ。そこに触れられるのを避けるように走る。

「⁉︎ マスター、今なぜわかったのですか?」

 ミオが驚いている。それはそうだろう、俺は振り返らずにミオの動きを察知し避けたのだから。

 だが、ただミオのさらなる速さを引き出すだけに終わった。無理、無理、察知できても身体が反応仕切れない。

 でもこれは能力値の低い俺には切り札となるだろう、鍛えねば!


 遊んでいただけだったのだが、新たなスキル、新たな力を手に入れ、有意義な時間となった。代償に足がプルプル震えるほど疲れたが。明日は筋肉痛だろうな、回復魔法効くのかな? 試してみよう。

 今日も疲れて、風呂に入り、ご飯を食べたらすぐに眠りに落ちた。

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