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 朝、鍛錬を終えて汗を流し、ご飯を食べる。いつも通り美味しい食事だ。

 お昼ご飯も屋台でサンドイッチや串焼き、果物を買い準備万端で北の草原に向かった。


 草原に入ってすぐに違和感を感じた。ミオを見るとミオも感じているようだ。だが、今までと違いミオもはっきりとわからないようだ。慎重に違和感を感じた場所に近づいて行く。


 そして一本の木の生えている場所に辿り着いた。それ以外に特に何もなく、念入りに調べたが結果は変わらなかった。俺とミオ、二人が違和感を感じたのだから勘違いということはないと思うのだが。

 それでもぐるぐると木の周りを回っていたが、みんなの集中力が切れてきている。


「え⁉︎ きのちかくになにかきます‼︎」

 突然ミオが叫んだ。少し遅れて俺の気配察知にも急に反応が現れた。

「何があるかわからない、密集して!」

 と声を出し皆を集める。

 そして、それは木の影から姿を現した。



『鑑定』


 種族 ブラックウルフ♀ Lv43


 ⁉︎ 43! これはヤバイ! 身の危険をバリバリ感じる。威圧されているようだ。

「この相手はヤバイぞ! リュミス威圧を使ってくれ!」

 ともすれば身体が萎縮してしまいそうなので声を張り上げる。


「きゅー!!」

 リュミスが威圧を使ったのか、少し身体の強張りが解けた。やはり相手は威圧を使っていたらしい。


 俺たちが会話をしたりスキルを使っているというのに相手は微動だにせず、まるでこちらの準備が整うのを待っているかのようだ。

 相手を見る、一際大きな身体に傷痕が無数に有り、歴戦のツワモノと思わせる雰囲気を纏っている。

 少し注意を払いながら陣形を整えた。俺とミオが正面、リュミスが左斜め前、クオンが右斜め前の練習していたのとは違う陣形だ。

 攻撃力の有るリュミスを正面で守らせる余裕はこの相手にはない。


「ウウォーーン‼︎」

 こちらの陣形が整ったのを見て取ったのか、一吠えしてこちらに向かってきた。

 こちらに近づきざま、魔法を口から放ってくる。

 黒魔法を剣に纏わせ、魔法を迎撃していくが一発一発が非常に重い。また纏わせた魔法が剥がれ落ちていく。クオンもリュミスも迎撃しているが威力に押され気味だ。


 その魔法を耐えると、こちらに飛びかかり、爪を振り下ろした。その一撃をミオが防ぎ、その隙にリュミス、クオンが一撃を入れていくが大したダメージを与えられたようには見えない。逆の前足でミオに追撃しようとしたのを俺の剣で防ぐが腕が痺れるような一撃だ。よくミオは普通に防げるものだと思う。


 クオンが攻撃しようとしたところにブラックウルフが噛みつこうとして、あわやというところで俺の蹴りでそれを逸らす。

 これには頭に来たのか少し下がり、筋肉を収縮させ、一気に解き放ち、体当たりをしてきた!


 赤い光が視界を染めたのでどうしていいかわからず、剣を盾として左肩に当てて踏ん張る体勢を整えたが、吹き飛ばされた。

「ウグッ!」

 と口から漏れて、三メートル程宙に浮いた。身体中が痛い。肋骨が折れるとこんな痛みなのか? と思わせる程少し動くだけで肋が痛い。治癒魔法をかけようにも痛みで集中できない。が、俺が吹き飛ばされただけの甲斐があったようだ。


 俺にぶつかる前にブラックウルフの身体の下に潜り込んだミオが腹を斬りつけ、リュミスは怯んだところに左手で右前足の爪を右手で右牙と右目を奪っていた。クオンも相手の鼻を左手で握り、右拳を左目に叩き込んでいた。この攻撃で相手の視覚、嗅覚を奪い、腹を斬り裂かれ動きが鈍くなっていた。


 もがくように暴れているブラックウルフに飛びかかる二人と俺に駆け寄るクオンを見て、もう大丈夫だと安堵した瞬間、目の前が真っ暗になり意識が途切れた……。



「兄ちゃんもっとモンスター強くしてから配合に出してよ!」

 どうやら弟は俺の出した七色の孔雀がお気に召さないらしい。まあ他国のマスターから肉でパクった火食い鳥と、最初の他マスターとの罠配合イベントで作った猛吹雪鷹とでの、お手軽配合だったのであまり強くなかったからなぁ。

 というか、あの配合イベントは絶対一度は間違えるよね。金のゴーレム作りたくて、赤い魔人を配合に出しちゃうと、赤い魔人が生まれるんだよね。そして相手が金のゴーレムという……。あれ以来ずっと鳥系魔物しか出さなくなったよ……。



「兄ちゃん俺の彼女連れてくるからさ、ちゃんと帰ってこいよ」

 ああ、わかったよ。俺なんて彼女居たことすら無いってのに。でも今回の相手は結婚を意識しているって言っていたしなぁ。



「ゆー兄俺、遂に彼女出来たんだ!」

 お前もかよ! お前は俺と同じ非モテやったやん……。まあおめでとう! 泣けてくるが焼肉でも奢ったるよ!



「俺さ、兄ちゃん……結婚するわ」

 マジかよ! おめでとう! 父ちゃん母ちゃんが孫見たがっていたから悪いなぁなんて思ってたんよ……。お前が結婚するならその心配はなくなったわ!



「ゆー兄、彼女に振られた……」

 マジかぁ……。辛いよな、その辛さ俺にはまだわからんがとりあえず酒奢ったるから飲み行こうか……。



「あんた彼女くらいできないの?」

「ゆーは、俺に似て顔は悪くないと思うんだけどなあ……」

 母さん、くらいって言うけど彼女いない歴=人生の息子に言う台詞じゃないよね……。

 父さんそれは何か? 俺の性格の所為だから自分に文句言うなってことか?



「……」

「早くこっちに帰ってこんといかんよ。やっぱり長男は地元にいるもんだから」

 爺ちゃんはいつも寡黙だよね、必要なこと以外話さないし。

 婆ちゃん、顔合わせるとその話で結構辛いっす。



「好きです! 付き合ってください!」

 初めての告白がこの娘かあ。可愛いし、俺の話をちゃんと聞いてくれていた。

「ごめん、まず君は学生だ。付き合うことはできない」

 断ることしかできない。初めて告白されたのにな……。



 ああ、懐かしいなあ。懐かしい? そりゃ子供の頃のように家族に毎日会えるわけじゃないけど、大型連休には顔を見せているのに……。

 なぜか家族が恋しい。こんなのは県外の大学に入学して酷い寮に入っちゃった時以来だ。

 あの寮が日本三大悪寮に選ばれていることを後で知ったのはいい思い出。


 なんか家族のことを考えると胸が痛くなる。なんでだろう? それに誰かに呼ばれている気がする。

「……たー……」

 ん? なんだ?

「……すたー……」

 ああ、そうか……、だからか。

「マスター‼︎」

 あまり心配をかけちゃいけないからな。


 意識が戻り、ゆっくりと目を開ける。

「ミオそんなに怒鳴らなくても大丈夫だよ。おはよう、みんな」

 身体を起こそうとすると脇腹に激痛が‼︎ あ、そうか俺空飛んだんだった。

「マスター、起きてはダメなのです。先に治療をしなくては」

 俺を膝枕しながら覗き込むようにこちらを見る女の子がそう言った。

 ……うん、ミオだよね? あれ?

「ミオでいいんだよね?」

 少し不安になる。

「はい、その話は後でしましょう。マスター、回復魔法を使えますか?」

 そう言われ、脇腹に水系回復魔法をかける。痛みもあるが今回はなんとかなりそうだ。回復魔法をかけながら周りを見る。

 なんかみんな一回りは成長している……。


 回復魔法をかけて痛みが落ち着いた頃、話を聞くと、俺が倒れた後ミオとリュミスでブラックウルフを倒したようだ。

 クオンは苦し紛れに放たれた魔法が俺に当たらないように防いだりしてくれたということだ。

 そしてブラックウルフを倒すと、ミオとリュミスの身体が光に包まれ、光が収まると身体が成長していたらしい。


 そしてミオが膝枕をしてくれていたが、それまで穏やかに寝ていた俺が苦しそうな表情をしたから起こしてくれたと……。


 なんか迷惑をかけてしまったな。それに身体が成長したのは多分進化だろう。あ、突然成長したのなんて街の人に説明しよう……。

 うわぁ、無理っぽくね? 違う街に行くべき?

 なんて悩んでいるとニコニコ顏のミオが話しかけてきた。

「マスター、これを見てください」

 心配掛けた後のニコニコ顏は怖いんですが……、ってそれは!

「モンスターカードか! おお、やったー‼︎」

 みんなで喜び合う。


「モンスターカードは高値で売れると聞いております。それも今まで見られなかったブラックウルフのモンスターカード。いったいいくらの値が付くかわかりません」

 ああそうか、クオンには説明していなかったな。

「クオン、このモンスターカードは売らないよ」

「それではどうするのですか?」



『ステータス』


 名前 ユー(長谷川佑衣斗)

 種族 ヒト♂ Lv3

 称号 (異世界人)


 省略


 {眷族(2/3)}

 (ミオ リュミス)


 奴隷

 クオン


 おお! レベルが上がり眷族の数が増えている。

 百聞は一見に如かず、モンスターカードを持って念じる。

『眷族化』によってモンスターカードは消え、黒い子犬が現れた。あ、でもウルフだから子狼か。


 子狼が俺に向けて駆けてくるのでしゃがんで抱きとめる。

「あ、あの、これはいったい……」

「これも俺のスキルなんだけど、眷族化といってモンスターカードから眷族を作ることが出来るんだ」

 と言って眷族についてわかっていることを説明していく。

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