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 食休みを済ませ、北の草原でウルフの討伐をすることにする。期限は二週間、まだ余裕はあるが早めに終わらせたい。もし、ウルフが出なくてもクオンを交えた戦闘訓練をすればいいし。ということで索敵を開始する。


 すると久しぶりにウルフを発見することができた。はぐれなのか、一匹でいたのでちょうどいい。

「ミオ正面、リュミス右、クオンが左で俺はクオンのサポート。クオンが基本攻撃、あとのみんなは防御主体で」

 一匹なのでクオンに任せよう。

 一応ちゃんとみんなで位置について対処したのだが、はぐれウルフはレベルが低かったのか、横からのクオンの一撃で倒れた。

 ……正直、これならクオンだけに任せても良かったな。


 その後の索敵でウルフが見つからなかったので索敵の合間を使い、強敵が1体だった場合を想定して、さっきのフォーメーションを練習した。


 日が暮れる前に帰ろうとしたとき、ウルフ一匹の反応があった。今回はクオンに任せてみることにした。


 ウルフもこちらに気がついた様で向かってきた。クオンは俺たちの前に出て構える。

 草原で火魔法を使うわけにはいかないので近接戦闘となる。

 襲ってくるウルフに少し腰が引けながらも、両腕でウルフの引っ掻きをパリーし続けて火のダメージを与える。焦れて噛みつこうとしたところにコメカミにフックを決めた。

 その攻撃によってウルフは倒れた。


 すぐにクオンの元に駆け寄る。

「一人での戦闘だったけど大丈夫だった?」

 話しかけてから気がつく、クオンの身体が震えていた。

「ごめんな、俺が冒険者じゃなかったら戦ったりしなくても良かったかもしれないのに」

 謝りながら抱きしめる。

「いえ、ご主人様が謝ることではないです。それに私は魔王です。どの道強くならなければ自分の身は守れません」

 気丈にもそう言うが、身体の震えは止まっていない。

 罪悪感も感じるが、本人の言うとおりきっと強くならなければならない。街に魔族が居ないことからも関係が良好でないことがわかる。


 しばらく抱きしめていたら震えが止まり

「もう大丈夫です、ありがとうございました。次からはこんなことが無いように頑張ります」

 と少し力無い笑顔で言われた。その笑顔に少し不安になるが一人ではないのだからきっと大丈夫だ。その間何かあってもいいように警戒してくれていたミオ、リュミスにお礼を言い、街に帰った。


 次の日は、朝からウルフを探して回った。ウルフ二匹、ブラックウルフ一匹を狩ることに成功した。しかし、なぜか一匹ずつしか出なかった。ブラックウルフと戦って、昨日のフォーメーションでは魔法を使う相手だった場合対処に困ることが分かった。魔法を使う相手はリュミス、物理攻撃の相手はミオが正面で戦うことになった。

 クオンは昨日の今日でそんなに変化はなかったが心なしか引けていた腰がマシになった気がした。


 翌日、飽きてきているが北の草原を歩いている。俺よりも身体が小さく草に埋まってしまっている三人が文句も言わないので俺が弱音を吐くわけにはいかない。


 索敵を続けると今度は群れと遭遇した。しかもウルフ三匹、ブラックウルフ二匹の群れだった。ウルフと遭遇するようになったことと合わせ、何か変化があったとみるべきだろう。


「ミオは隠蔽で横から強襲! クオンは俺と正面! 魔法と攻撃を防ぐ! リュミスは遠距離攻撃を潰せ!」

 ミオの話ではブラックウルフは後ろにいるのでこちらもリュミスを後ろに配置する。そして魔法を纏わせた攻撃ができる俺とクオンで正面を担当する。これらは防御中心だ。本命はミオで隠蔽を使ってブラックウルフの排除、一人では無理そうなら一当てして逃げる。


 俺の気配察知でもミオを察知できなくなった頃、ブラックウルフが魔法を放ってきた。リュミスが対応するが、二匹が同時に放った場合など撃ち漏らしもあり、俺とクオンで弾いていく。その魔法の合間を縫ってウルフが襲ってきた。

 慌てず、左にズレ引っ掻く動作をしていたウルフの右前足に斬りつける。少し切り傷を与え、怯ませることを狙ったのだがスパンと斬れてしまった。銅の剣とはまるで違う。

 バランスが崩れてもがいている隙に首を刎ねた。


 クオンの方を見ると攻撃を必死に捌いていた。次第に火傷によりウルフが怯んでいるのがわかった。そこにリュミスが近づき、風爪で切り裂いた。

 あれ? と思ったが魔法が止んでいた。ミオがブラックウルフを二匹とも倒したようだ。

 残ったウルフ一匹は俺たちに囲まれ、逃げるに逃げられず一番弱い俺に向かってきた。


 俺は中段に構え、あえて敵が近づいても動かなかった。ミオやリュミス、クオンが慌てているのがわかる。

 いつでも動けるように心の準備を整え、赤い光が首辺りに灯った瞬間そこに全力で突きを放った。


 そこへ噛みつこうと飛びかかってきたウルフの口に剣が突き刺さる。ビクンビクンとしてウルフは消えた。


 怖かった〜、危機察知を使えばカウンターが放てるかもと思ってやってみたがこれはダメだ。爪が俺を襲おうとしていたし、噛みつき以外の攻撃だったら隙が大きすぎて反撃も受けていた。反省していると三人が抱きついてきた。

「ますたー、しんぱいさせないでほしいのです……」

「きゅー! 心配したんだから!」

「ご主人様、怖かったです。あのような真似はなさらないでください……」

 ミオは泣きそうに、リュミスは怒りながら、クオンは悲しそうに言ってきた。

 これ……罪悪感で死にそうなんですが……。

「ごめん。少し試してみたくて……」


 本当に思いつきで行動してしまったので言い訳もできない。謝りながら三人を抱きしめた。謝罪を続けていくと、治まったのか許してくれた。だが、ミオにまた泣かせないでくださいと釘を刺されてしまった。


 その後、軽く調査をして早めに帰ることにした。ギルドに向かい、ウルフに出会うようになったこと、ウルフとブラックウルフの混成の群れと戦闘になったことを報告して宿に帰った。


 あと一匹ウルフを倒したら、草原でのウルフ討伐は終了なので頑張ることにする。早く終わると思って受けたのだが、意外に時間が掛かってしまった。


 宿でくつろぎ風呂に入ることにする。いつものようにみんなでお風呂に入っていると

「あれ? クオン少し背が伸びた?」

 クオンの背に違和感を感じた。

「え、そうですか? もう何年も伸びていないのですが……」

 と悲しそうだ、だがミオやリュミスと比べやはり伸びた気がする。

「いや、絶対伸びてるよ! ってか昨日まで伸びてなかったのにいきなり伸びた?」

 それはそれで少しおかしい。とりあえず、クオンのステータスを確認する。



『ステータス』


 名前 クオン(紅音)

 種族 ヒト{魔族(未覚醒魔王)}♀ Lv9

 称号 {憤怒の化身(未解放)} 奴隷


 HP 630

 MP 270


 攻撃 63

 防御 27

 速さ 63

 知識 27

 精神 27

 器用 63

 運  10

 忠誠 55


 スキル省略


 レベルが二つ上がっている。これが原因かな?


「ステータスを見てみたら、レベルが二つ上がっていたよ。魔族ってレベルの上昇で肉体が成長したりするの?」

 その言葉に最初はきょとんとしていたが、突然喜びだした。

「やったー‼︎ やったー‼︎ これで子供じゃないもん、大人になれるもん!」

 そりゃ、ずっと子供の姿じゃ嫌だよな。でもまだまだ子供だ。10歳児くらいの身長かな?

「よかったね、クオン! 成長の方法がレベルアップだったら20レベルになれば大人だね」

「ありがとうございます、ご主人様。これもご主人様のおかげです。でも、大人は15歳からですよ」

 あ、この世界では15歳からなのか。

「いいなぁ、くーちゃん……」

 とミオが羨ましがっている。ていうか、くーちゃんって呼んでいたの⁉︎

「きゅー! 私も負けない!」

 と対抗意識を燃やすリュミス。

 そんなみんなを眺めながら、こういうのをささやかな幸せっていうのかな、なんて思いながら時間を過ごした。

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