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 しばらく歩き、街が近づいてきたころ

「はわ〜! え、え? どうなってるの? 草原? え、え? ご、ご主人様ぁ?」

 クオンは意識が戻ってきたのか慌てている。

「お、クオン正気に戻ったか。もうすぐ街に着くからな」

 一応報告。

「あ、あと俺らだけの時は今みたいに砕けた口調でいいからな。他の人がいると奴隷が生意気なとか思われるかもしれないから念のため前の口調で頼む」

 まあそんな奴いるのかわからないけど。

「砕けた口調で話したことなどありません、ご主人様」

 え、えー⁉︎ 凄い嘘ついてきたな、クオン。

「いや、それは流石に無理だから」

「言ってないですもん!」

 出てる、出てる。


 落ち着いたのか

「ご主人様、クオンって素敵な名前ありがとうございました。砕けた口調は頑張ってみます」

 凄くいい笑顔でそう言うクオンに目を奪われた。

「そうか、気に入ってくれてよかった。口調はまだ難しいだろうから慣れてからでもいいよ。改めてよろしくね」

「ありがとうございます。お優しいご主人様でとっても嬉しいです。よろしくお願いします」

 そんな話をしながら歩いていく。


 クオンがリュミスの方をチラチラ見て、こちらに何か聞きたそうにしているが

「聞きたいことはわかるけどその話は、宿屋でしよう。もう街に着くからね」

 宿屋で何を想像したのか頬が赤く染まった気がしたが無視する。


 それにしても、スライム、ドラゴン、魔王を今連れている訳だが、字面で見るとプレイしていたゲーム通りだ。が、目の前には幼女三人。

 いや、不満なんて何もないんだ。可愛いし、強いし、俺を思ってくれている。

 けど魔物使いって話じゃなかった? これじゃない感が半端ない……。

 現実って厳しいよね。


 とりあえず門番の所へ行く。お、変わりなしで彼だ。

「ただいまです、騎士さん」

「おお、ユー無事だったか。ところでお前さんとこまたお嬢ちゃんが増えてないか? どうなってるんだ?」

「実はちょっと事情がありまして」

 と言ってステータスカード五枚を手渡す。

「ん⁉︎ いつもの場所に来てくれ。そこで話そう」

 三回目だがいつもの場所になってしまったか。

 いつもの場所に入って少し待つ。


「待たせたな、とりあえず話を聞かせてくれ」

 ということで不審なパーティーが探していたのは自分たちだったこと、そのパーティーを倒したこと、証拠隠滅のためか商人が仲間に殺されたことなどを話した。

「なんと言うか大変だったな。で、そっちのお嬢ちゃんは?」

 と言ってクオンに視線を向けるとクオンは俺の影に慌てて隠れた。

「この娘はその商人が虐待していた奴隷です。罪科持ちの奴隷ですし、本人の希望もあり、俺が主人になりました」

「なるほどギルドカードだけ見せてもらえるか、そこに情報が記載されてるから」

 という言葉に素直に従う。俺の背に隠れたクオンの身が強張るのを感じた。


「うむ、珍しい髪色だが、ヒト族の奴隷だな。よし、いいぞ。奴隷用のギルドカードもあるから作った方が便利だぞ」

 と言いギルドカードが返却された。後ろでクオンが戸惑っているのを感じる。

 ちょっと待つと袋を手渡された。

「これが報酬金貨15枚だ」

「多くないですか?」

 素直に聞く。

「ああ、罪科持ちは何をするかわからんからな。報酬を高くしてでもなんとかしたいのさ。あとは今回は貴族のご子息が巻き込まれた事件なのでその対象者は個別の報酬が加算されている」

 また貴族か、俺としては金を払ってくれてありがとうだな。

 そんな話をして街に入った。


 クオンがこちらを見ているので

「それも後で。今は行かないと行けないところがあるんだよね」

 と言って服屋に向かい、下着と赤いワンピースを二着買った。


 必要な物は買ったので宿屋に帰ることにする。

 カウンターにおかみさんがいた。

「ただいまおかみさん、また一人増えたんだけど大丈夫?」

「おかえり、またお嬢さんが増えたんだね。この娘も事件に巻き込まれたのかい?」

「ある意味被害者というか、商人に虐待を受けていた奴隷でして……」

 と門でもしたような説明をした。


「そうかい、まああんたなら大丈夫そうだね。小さい娘の扱いにも慣れてそうだし」

 いや、それはどうなんだろう?

「今日からクオンもお世話になります、よろしくお願いします」

 とクオンを前に出し、頭を下げさせる。

「はいよ、扱いは他のお嬢ちゃんたちと一緒でいいのかい?」

「はい、それでお願いします」

 奴隷だと差別する気はない。

「じゃあ、料金も同じように銀貨三枚でいいよ」

 ということで銀貨三枚を渡し、部屋に入った。


「まず、することがある。わかる人?」

 部屋に入ってすぐにみんなに聞いた。

 ミオとリュミスはわかっているようで俺とクオンを見ている。

「買った服をクローゼットにかけるのですよね?」

 と言うクオンを掴み、みんなで風呂場に連れ去った。

 ボロ布を脱がそうとすると少し恥ずかしがったがそんなロリに反応しません。

 二人にも手伝ってもらい脱がせ、まずは頭を洗っていく。二人には身体を洗わせた。

「そういったことは私の仕事で……」

 とか言ってるクオンを無視して綺麗にしていく。


 全員で洗い合い、風呂に入っているとクオンが脱力していた。

「す、隅々まで洗われてしまいました……」

 人聞きの悪いことを言わないでほしい。とても汚れていてみんなで夢中になって洗ってしまっただけだ。

「クオンは汚れていてわからなかったが、薄紅の綺麗な色の髪だな。顔も可愛いじゃないか」

「そうですね、かわいいとおもいます」

「きゅ! かわいいよね。凄く似合ってるし」

「う、うう……」

 照れて唸っていたが、次第にリラックスしてきて

「とても気持ちがいいです。私がお風呂に入れるなんて思ってもいなかったです」

 とそんなことを言ったので

「風呂は一般に普及してないの?」

 と今まで疑問だったことを聞く。

「何代か前の勇者様が疫病対策にお風呂とトイレの整備をさせたそうです。一般家庭にも補助金などが出され、多く作られました。ですが奴隷商では入る人数の多さや経費、主人の怠慢などで入れてもらえない場合も多いです。私は嫌われていましたので、みんなと入れず、かといって一人風呂などはあり得なかったので……」

 少し聞いただけで悲しい話になってしまった。

「これからは旅以外は毎日入るからな。嫌だと言っても無理やり入れる!」

 と空気を変えるように強く言う。

 ミオとリュミスが笑い、最初はきょとんとしていたクオンも笑った。


 その後身体を拭くと買ってきた服をクオンに渡した。それをミオとリュミスに着せようとしたのか二人を見て困ったようにこちらを見た。

「どなたの服でしょうか?」

「それはクオンの服だよ。そもそもミオには服が必要ないしね」

 俺がそう言うとミオは服を作り、着た。俺のスウェット素材を真似したパジャマか。

 それを見て驚きつつも

「もしかしてなのですが、この服は私に買ってくださったのですか?」

 既にクオンのだと言ったのに、期待のこもった目をこちらに向けつつ聞かれる。静まれ、静まるんだいたずら心、この娘にはまだ早い。

「そうだよ、これから赤い服はクオンのにしよう。数があるとわかりにくいし」

 あ、目が輝いた! と思ったら俯いた。

「嬉しいのですが、奴隷に新品の服を着せるのは常識的ではありません、ご主人様」

 どうやらおれが常識について疎いから教えてくれと言ったことを実践してくれたらしい。

「教えてくれてありがとう。ただクオンには新品の服を着てもらうよ。俺の名誉のためにもお願いだ」

「は、はい! ありがとうございます、ご主人様」

 どうやら着せるための方便だと気づいているようだ、でも仕方が無い。服を遠慮されるのとかはテンプレだったので、その通りに言っただけだし。


 服の着替えも終わり、少しくつろぎ夕ご飯を取りに行くことにした。

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