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 ちょっと慌てて

「服を! この娘に服をお願いします‼︎」

 と気がついたら叫んでいた。


「この娘はスライムなんだから服は自分で作れるわ」

 ヨミと名乗った女性が笑いながらそう言った。俺が慌てたのがそんなに面白かったのだろうか?


「じゃあ、なんでもいいから服を作ってくれないかな?」

 スライムの女の子にそう話しかけた。女の子は頷き

「これでいいですか? ますたー」

 と少し舌足らずな感じで尋ねてきた。即座に水色のワンピースが現れ、彼女の身体を覆った。


 マスター呼びなんだ。なんとも言えない感覚になる。なんという、犯罪臭。

「うん、ありがとう。水色でとても良く似合っているね。ただ、マスターはやめてもらえないかな?」

 最初の褒めた所で嬉しそうに笑い、続く言葉に悲しそうな表情となった。

「ますたーは、ますたーなのです。それともわたしでは、まずだーのぢがらになれまぜんか?」

 話してるうちに涙声になり、もうほとんど泣いていた。

「ごめん、大丈夫だから。君以上に眷族に適した人材? は、居ないから。大丈夫だからね」

 突然のことに慌てながら、弁解し抱き上げて慰めた。涙は卑怯だと思います。


「泣ーかせた、泣ーかせた♪」

 ヨミがからかってくるが相手にする暇がない。美人だからって許されると思うなよ! と、殺意を抱いた。


 ようやく落ち着いたところで、名前を告げてみた。

「君の名前は、最初から決めていた。スラみだ」

 女の子は、突然キョトンとした顔になり、泣き止んだはずの顔をまたしても泣き顔に変えていく。え、なんで?

 ヨミもそれは無いわあって顔で睨んでくる。え、ええ? ダメだったらしい……。悲しく思いながら今度は真剣に考える。


 う〜ん、スラみが駄目となると、水から連想できるのは、忍なら水蓮(すいれん) 守りとしては水守(みもり) 洋風にもいける名なら水華(みか) 悩むなあ……。


 うん、決めた。

「君の名前は水緒(みお)だ!」

 また泣かれないか、心配で顔を覗き込んだら、花咲くような笑顔で

「ますたー、すてきななまえをありがとうございます‼︎」

 と言ってさらに強く抱きついてきた。

 これは、水咲(みさき)でもよかったかもしれないな、なんて思いながら受け止める。これだけ喜んでくれるなら悩んだ甲斐があるというものだ。なんて喜んでいると


「流石にスラみは、無いわよね〜、ネーミングセンス無さ過ぎ(笑)」

 なんて水をさす奴がいたが、無視をする。


「あと、まだ他に重要なことありますか?」

 と聞いておく。


「つまらないの〜、あとは当分の生活費、これはアイテムボックスの中に入れておくわね。貨幣の細かい内容は、現地で聞きなさい。

 あ、ダンジョン作製を選んだ人に与えているアイテムもあるから、それも一緒に入れておくわ。内容は、鑑定して自分で確かめなさい。

 最後に一番重要なことだけど、スキルは鑑定で見破られることがあるわ。最初にたどり着くだろう村は、下級鑑定も使えない人だけのようだから、隠蔽Ⅰを取得してステータスの特殊なスキルを隠しなさい。

 貴方は、眷族であるミオと魂に繫がりができているはずよ。彼女からその繫がりを通して隠蔽を教わりなさい。

 これくらいかしら? まあ他に問題があっても自分で解決しなさい」


 最後は、駆け足で伝えられてしまった。なんか適当な気もするが、夢なんてこんなもんだろう。うん、きっとそうだ。

 抱き抱えたままだったミオを降ろし、一礼して別れを告げた。


「長く時間を取らせて申し訳ありませんでした。満足できる内容となりましたので、これにて失礼させていただきたいと思います」


 そう告げたら

「じゃあ、くれぐれも早く死なないでね♪ 行ってらっしゃい」

 と軽い口調で送られた。足元が光りだし、意識が遠のいていった。





 佑衣斗の去った空間で

「やっぱり変わった人だったわね、少しは期待できそうだわ」

 ヨミ以外誰も居ない空間に一人呟く。


 すると、黒い霧のようなモヤが突然現れ、中から黒衣の男性が出たきた。

「本当によろしかったのですか? あのようなことをして」


 少し咎めるような態度で聞いた。

「仕方がないじゃない、彼本当に戦闘スキル無いんだから。異世界武術も本人の経験に基づくスキルだし」

 少し慌てたように弁解した。


 黒衣の男性は、呆れたように

「そちらではありません。そちらはギリギリセーフでしょうから。私が言いたいのはあえて眷族化のスキルを魔物にしか使えないように説明した点です。これは協定違反と取られる可能性がありますよ」


 そう、眷族化のスキル対象は、魔物だけではないのだ。モンスターカード以外では、受け入れる意思があるものに限るが眷族とすることができる。その説明をあえてしなかったのだ。


「それこそ仕方がないじゃない。協定の内容とはいえ、他の転移者は人類側が有利となるスキルを選んで、大体敵になってしまうのだから」

 不貞腐れたように言い放った。


 この言葉を聞き、頭を押さえつつ

「確かに面白い御仁でした。精神安定と思考制御の魔法が掛かったこの部屋でそれを上回る感情を表に出せたりと。その代わり、魔法の影響でいつもと言動が異なり、夢だと勘違いしていたようですが」


 その言葉に頷きながら

「それは、あの世界の住人なら当然信じられず、そう思うでしょう。まあ、協定の方は、バレないように少し気をつけておくわ」


 その言葉を聞き、一礼しながらモヤの中に黒衣の男性は、帰っていった。


 一人になった空間で

「彼ならこの不利な状況を少しは変えられると思うのだけれど。これからが楽しみだわ」

 心底楽しそうに呟いた。



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