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 隠蔽を使いながらミオが三人に音もなく近づく。草に隠れながらなので姿も全く見えない。


 三人は気づいた様子もなく

「ギャーーー‼︎」

「きゃ、なになに? え、痛い、ぎゃー‼︎」

「なんなんだよ⁉︎ え、お前らどうした? あ、イッテェーー⁉︎ なんなんだよ‼︎」


 リュミスを肩に乗せ、痛みに倒れ叫んでいる三人に向けてヘイトボールを放たせる。


「今度は魔法? 臭い! 臭い、臭い臭い!」

「何が起こっているのよ‼︎ 痒い! 痒い痒い!」

「イテェよ、イテェよぉ!」


 さらにうるさくなったが、冷静になりかけていた二人を混乱させることに成功した。だが人間相手ではそこまで効果を発揮しないようだ、一人にはまるで効いていないし。

 隠蔽スキルを使い、素早く近づき首を刎ねようとしたが、手が震え、心臓がバクバクと音を奏でる。幸い相手にまだ気づかれてはいない、だが時間の問題だ。吐き気がし、涙が滲む、戸惑いが生まれる。

 相手がこちらに気づいた! リュミスが殺そうと動く。俺は振り上げていた剣を反射的に降ろし、男の首を刎ねた。


 その場で蹲り吐いた。男の首がこちらを見ている気がする。吐いているとリュミスが近づいてきて

「大丈夫ですか、マスター。でもまだ戦闘中です、気を抜いてはダメです。敵はミオ姉が止めを刺します」

 と真摯な態度で言いながら背中を摩ってくれた。そうか、俺が吐いてしまい、手を下せなかった女はミオが……。情けない、人の血で手を汚させてしまった。


 ミオが戻ってきたので少し離れた位置で休んだ。

「リュミスさっきはありがとう。ミオ、戦闘は見事だった。そしてごめん、ミオに人を殺させてしまった……」

 悔しさで涙が滲む、そんな俺を二人が抱きしめてくれた。

「わたしはもとよりますたーのためにそんざいしています。ますたーのからだもこころもおまもりするのです。だからかなしまないでください」

「マスターの悲しい気持ち伝わってくるよ。でもマスターが言ってくれたように私たちは仲間なんだから、もっともっと頼ってくれていいんだよ」

 二人に慰められ年甲斐もなく泣いた。なんでこんな世界にと何度も思った。でもその度に支えてくれる彼女たちの存在に感謝した。だから俺は進まなければ! より安全な生活のために、彼女たちを失わないために。


 しばらく抱きしめ、泣いたあと

「ありがとう二人とも。二人がいるおかげで寂しくないし、心も守ってくれているよ。本当にありがとう」

 お礼を言い、二人の顔を見ると笑顔だった。


 落ち着いたところで、ミオに聞く。

「ちょっと時間が掛かっちゃったけど見失ってない?」

「だいじょうぶです、ますたーあいてはうごきがおそいので」

 あえて生かした一人はまだ察知範囲内で逃走中らしい。


 今回の作戦はミオが奇襲で敵の足を斬りつけ、動きを制限する。そこへ魔法を放ち、さらに混乱させ、俺がトドメという流れだった。レベルの高い男と女を殺し、レベルの低い男を足に怪我させた状態で逃がし、敵地に案内させるという目的もある。

 動揺を見越し、足に怪我を負わせたが思ったより掛かってしまった、急がなければ。


 まずは死体に向かった。死体の胸辺りから何かカードのようなものが出ていた。手にとってみると



『ステータス』


 名前 ローエル

 種族 ヒト♂ Lv17

 罪科 殺人、殺人幇助、強盗、強姦etc.


 と出た。これがステータスカードか。それにしても吐き気がするクズだった。これ以上被害者が出る前に殺してよかったとすら思えた。


 女の方も見てみる。



『ステータス』


 名前 リエル

 種族 ヒト♀ Lv16

 罪科 殺人、殺人幇助、強盗、詐欺etc.


 負けず劣らずのクズだった。死体から使えそうな装備を奪い、アイテムボックスに収納していく。罪科持ちのアイテムは、討伐者が貰っていいと聞いている。


 一応念のため、自分とミオを鑑定したが、罪科は付いていなかった。

 死体は置きっ放しでいいらしい、モンスターが食べるし、魔力にも還元されるらしい。

 よくわからないがそんなものみたいだ。


 作業が終わり、逃げた男を追いかける。

 男は後ろなど気にせず、必死に逃げている。方角が変わらないことからちゃんと目的地があるのだとわかる。

 相手が遅いのでゆっくり追い、しばらくすると違和感を感じる場所に来た。気配もわからなくなる。

「これ結界だよ、マスター。ドラゴンが宝物庫とかに仕掛けるのより弱いけど」

 なるほど結界か、そりゃあドラゴンより弱いだろう。というかドラゴンって宝物庫に結界仕掛けんのかよ⁉︎ 宝に釣られないようにしよう。


 違和感の正体がわかったので気にせず進む。すると気配がわかるようになった。

 外からの気配察知を避ける結界だったようだ。

 まあミオには察知できていたようだし、完璧ではないみたいだが。


 少し歩くと木の建物が見えた。これが敵の本拠地らしい。ミオに銅の短剣を渡し、指示を出す。ミオは集中し、短剣を投げた。

 狙い違わず喉に突き刺さる。苦しそうに喉を引っ掻くような仕草をしている。

「リュミス、見るに堪えないから楽にしてやってくれないか?」

 俺が指示したことだが悪人であっても苦しそうな姿を見る趣味はない。それにリュミスは頼ってくれと言った。

 ここでまた人を殺し動揺する訳にはいかない、敵地なのだから。

「わかったよ、マスター」

 と真剣な顔で言い、男の首を折った。そして、ステータスカードと装備を抱えて帰ってきた。



『ステータス』


 名前 クラスト

 種族 ヒト♂ Lv12

 罪科 殺人幇助、強盗、詐欺、強姦etc.


 殺人を犯していないので下っ端か、レベルも低いし。装備を受け取りアイテムボックスに収納した。

 そしてミオと隠蔽を使いながら建物を覗いた。


 そこにはあの商人と男が二人、女が一人、女の子が一人居た。

 長い髪はボサボサでボロ布のような服を着た女の子は両腕に結晶のようなものが嵌め込まれているようだった。首にも黒い首輪のようなものが見える。

 その女の子を商人が足蹴にして

「くそ! くそ! くそ! 本部の奴ら売れる奴隷と金目の物を持っていって病気持ちや怪我人の売れない奴隷を押し付けてこいつらでなんとかしろ、だと? ふざけやがって!」

 大声で叫びながら、さらに蹴る。女の子は小さくうっと呻いている。頭に血が上り、突入しようとするが我慢する。今はまだ作戦も決めてない、女の子を人質にされたらどうしようもない。

「あはは、見捨てられたね! どうするの? その貴重な奴隷ももうそれだけだよ。勝手に死んだり、遊び半分で壊したり、あんたが犯し尽くしたりしたから」

 何が愉快なのかわからないが笑いながら言っている。正直反吐が出る。

「と言ってもとりあえず隠れるしかないでしょ。ていうか、あなたのミスなんだからなんとかして欲しいんだけど」

 と女が商人に言う。

「そうですな、私まで巻き込まれてしまいました」

 と、あんの糞爺がいた! 約束を果たさせてもらおう。

 蹴り疲れたのか息を切らしながら

「なっちまったもんはしょうがねえだろ‼︎ 原因のクソガキどもは見つけ出して殺してやる! ローエルたちならすぐに見つけるだろう」


「あっはっはっは、でもそのあとどうするのさ、僕たちだけしかいないんだよ。食料も減ってるしさ」

「キチガイの癖にまともなこと言いやがって……。とりあえず、このガキ殺して魔結晶を売って生活費を稼ぐ」

 と言ってさらに女の子を蹴った。

 あまり時間が無いかもしれない。欲しかった情報として追加の敵もいないようだし



 鑑定


 名前 アリスト

 種族 獣人♂ Lv19

 罪科 ???


 名前 アンリ

 種族 獣人♀ Lv18

 罪科 ???


 よし、全員討っても大丈夫だな。女の子を助けることにしよう。

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