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もうお昼なので、クエストは受けずに外でご飯を食べることにした。その辺の屋台でサンドイッチとスープを買い、外に向かった。
出る時は特に声をかけられることもなく出ることができた。
街の東側が景色が良いというので向かってみると林になっていた。しばらく歩いて、人もモンスターもいないことをミオが確認した後、昼食を摂ることにした。
切り株に腰掛けて
「じゃあこの辺りで昼食にしようか。リュミスいいよ、いただきます」
「いただきます」
「きゅきゅきゅ」
リュミスをポケットから出してサンドイッチを口に近づけた。そのサンドイッチをパクパクと食べている。反対の手に俺のサンドイッチも持ち食べる。
「それにしてもリュミスも人化できるようになれば隠さなくてもいいんだけどな」
「きゅー?」
と不思議そうな顔をしている。
「だいじょうぶですよ、ますたー。どらごんはかしこいのですぐにおぼえますよ」
そうなのか。リュミスの眉間をクリクリやりながら
「早く人化できるといいな。そしたらご馳走を食べよう。良い店見つけなきゃな」
「きゅ、きゅきゅー!」
嬉しそうにはしゃいでいる。
スープも取り出し、みんなに配った。
「ありがとうございます、ますたー」
「きゅー!」
楽しい食事を終えて、しばらく散策するとミオの気配察知に反応があった。
「ますたー、こがたのもんすたーのむれがちかづいています。かずは8、はやいです」
「今から逃げて間に合う?」
「まっすぐこちらにむかってきているのでなにかをたんちされたのだと。なのでむりでしょう」
「わかった、みんな迎撃体制に」
アイテムボックスから銅の短剣を10個取り出しミオに渡す。
ミオが投擲体制になったので後ろに俺が回る。リュミスは俺の右肩に乗り威嚇している。
練習したフォーメーションを試すいい機会だ。
ミオが前方に短剣を投げた。
「キャウン!」
何かに当たったようだ。音のした辺りで
『鑑定』
種族 ウルフ♀ Lv8
レベルが高い!
「こいつらレベルが高い、注意してくれ!」
「はい、ますたー!」
「きゅー!」
返事をしながらも警戒を怠らない。次のウルフが出てきた。と同時に後ろからも出てきた、ニ匹による挟撃だ。
しかし、気配察知で俺もミオもわかっていたのでミオが前後に投げる。後ろのウルフが目に短剣が突き刺さり、怯んだところに駆け、首に剣を突き刺さす。気配察知で後ろに敵がいないことを確認して元の位置に戻る。
その間にもミオが短剣を投げ、牽制。
俺が元の位置に戻る頃、前方に五匹のウルフが姿を見せ、こちらの様子を窺う。
野生動物ならここらで危険を感じ取って逃げてもいいと思うが……。
俺の弱気を感じ取ったのか、五匹同時に突っ込んで来た。ミオが素早く両手で短剣を投げ、二匹の目に突き刺さる。その確認すらせず、二本の短剣を太ももから抜き、構える。
一匹のウルフが飛びかかってきた。こいつは俺が対処しなければならない。爪を振りかざしてきたので、剣で受け止める。そのウルフにミオが両手を上に突き出し、腹を裂いた。リュミスは、ヘイトボールを口から放ち、一匹のウルフを混乱させている。
ウルフは、鼻が利きそうなので悪臭を感じているのだろう。最後の一匹にミオが近づき、爪や牙を上手く捌く。大口を開けて噛みつこうとしたところに、口から斜めに剣を突き入れた。ビクンビクンとして動かなくなる。
後は、目を貫かれおどおどしているウルフとヘイトボールを喰らい混乱しているウルフに止めを刺した。途中、『ポーン♪』と数回音がした。ドロップアイテムのウルフの爪や投げた短剣を集め、アイテムボックスに収納した。
フォーメーションを試してみたが、リュミスのヘイトボールの威力がわからなかったから中途半端にしか指示できなかった。これは今後の課題だ。それに思ったより、ヘイトボールの威力があった。
黒魔法は、状態異常引き起こしたり、相手のステータスを下げる効果のある魔法だ。
ヘイトボールも例に漏れず、相手に不快な情報を思い出させる魔法だ。
耳が良い相手なら爆音が、鼻の利く相手なら悪臭が、相手が一番不快だと思う情報を思い出させる。
ウルフは、鼻が利き過ぎたのだろう。まさか行動不能に追い込めるとは。ちなみにヘイトボールと命名したのは俺だ。
とりあえず、またモンスターが出ないとも限らないので、街の方に向かった。林を抜けた辺りでミオの気配察知で安全を確かめたのでステータスを確認する。
『ステータス』
名前 ユー(長谷川佑衣斗)
種族 ヒト♂ Lv2
称号 (異世界人)
HP 193
MP 138
攻撃 14
防御 17
速さ 19
知識 14
精神 14
器用 17
運 18
(エクストラスキル)
(眷族化 ダンジョン作製 不老)
(ユニークスキル)
{異世界言語 異世界文字 異世界武術(剣道)}
スキル
下級鑑定 (アイテムボックス小) (隠蔽Ⅲ) 気配察知Ⅲ 危機察知Ⅱ 剣術Ⅱ 全状態異常耐性Ⅰ 水魔法Ⅰ 黒魔法Ⅰ 風魔法Ⅰ
{眷族(2/2)}
(ミオ) リュミス
能力値が大幅に増えているし、スキルも順調に育っている。レベルは上がらないけど……。あ、リュミス隠蔽しとかないと。
名前 ミオ(水緒)
種族 ヒト{隠密スライム(下忍)}♀ Lv12
称号 忠臣 (癒し系 抱き枕)
HP 660
MP 110
攻撃 22
防御 44
速さ 66
知識 22
精神 22
器用 44
運 21
忠誠 100
(種族スキル)
(スライムボディ弱)
(ユニークスキル)
{人化(特)}
スキル
(隠蔽Ⅶ) 気配察知Ⅴ 投擲Ⅲ 短剣Ⅲ 全状態異常耐性Ⅲ
レベルアップ以外、特にないかな。
名前 リュミス
種族 ダークドラゴン(幼)♀ Lv3
称号 龍種
HP 300
MP 300
攻撃 30
防御 30
速さ 30
知識 30
精神 30
器用 30
運 75
忠誠 90
種族スキル
ブレス0 龍鱗弱 龍爪牙弱
ユニークスキル
小型化 人化(劣)
スキル
黒魔法Ⅰ 水魔法Ⅰ 風魔法Ⅰ 威圧Ⅰ
へ? 確かにドラゴンは、レベルアップで能力値を大幅に上げると聞いていたけど、まさか2レベル上がっただけで三倍になるとは……。
龍族強い訳だ。ミオの能力値より高いのがもうあるし。忠誠も90と高くなっている。
それより人化(劣)だな。さっき話していたのにもうできるようになってるよ。
とりあえず話も聞きたいし、話してもみたいから
「リュミス、人化してみてくれない?」
「きゅー!」
と答え、光に包まれた。光が収まると五歳くらいの幼女がそこにいた。
「また全裸かよ! てかちょっと考えればわかるだろ、俺ぇ!」
と自分のポンコツ具合に驚いた。
黒髪で黒い瞳をした、五歳くらいの幼女は首を傾げて
「きゅ、マスターどうしたの?」
と聞いてきた。
ミオより流暢に話せるんだ! というか話せるんだ!
「リュミス凄いね! 話せるようになったんだ!」
とりあえず、革のベストとズボンを脱いで着せた。ファンタジー凄すぎるな、五歳児にもピッタリになったよ。
「マスターありがとう!」
とりあえず、全裸はあかん。
「りゅーちゃんおめでとう!」
ミオも喜んでいる。
「ありがとう、ミオ姉。でもこの人化は、ミオ姉のおかげだよ」
うん?
「リュミスどういうこと?」
「マスターとの話で人化したいと思ったら、ミオ姉から何かが流れてきて、レベルアップでそれが形になった? 難しいけどそんな感じだよ」
うーん、ミオの人化は特と書いてあったし特殊な能力持ちなのか?
「ミオ何かわかる?」
「はい、わたしの じんかすきるは とくしゅな のうりょくを ひめています。くわしくは わかりませんが、ますたーに ゆうりな ように、じんかさせる ちからを わけあたえているのではないかと」
ヨミも序盤は魔物使いと明かすなと言っていたし、そのために必要な能力を与えられたとみるべきか。
「ミオありがとう」
リュミスも人化したとなると、一番の問題は門番になんと言おう? いきなり妹増えました、でいけるか?
無理だろうな……。




