20
朝起きるともうミオは起きていた。リュミスはまだ寝ている。
洗面台で顔を洗い、ギルドカードで時間を確認すると六時、ということでご飯を取りにいった。
朝ご飯は、パンに野菜とソーセージのスープだった。パンはあのパンではなく焼きたての柔らかなパンだった。
ミオは嬉しそうに食べていたがリュミスは、柔らかなパンに不満気だった。まさかあのパンを気に入っていたのか? 気にしないことにして食事を摂った。
というか木造建築ばかりだけど、文化レベル高いな。もう日本の文化とか伝わり過ぎていてそれでお金稼ぎができないとみるべきだな。
小説とかだとこれが一番の利益になるのに……。真面目に冒険者稼業に励めということだな。
おかみさんにカードキーを返して必要なことを聞いてみる。
「おかみさん、オススメの防具屋と鍛冶屋ってないかな?」
「それならちょっと行ったところに盾の看板とハンマーの看板を掲げている建物があるからそこに行きな」
「近くにあるんですか?」
「ここは冒険者通りと呼ばれていて冒険者用の店が多いのさ。そしてここにまだ店を残せているのが優良店の証なのさ」
少し誇らし気に語ってくれた。
「ありがとうございます。では行ってきます」
「小さいお嬢ちゃんもいるんだから気をつけるんだよ」
ミオの方が強いんだけどね、と思いつつ頷き、宿を出た。
まずは鍛冶屋かなと思って周囲を見るとどちらの看板も見えた。近かった防具店に向かった。
ギルドと比べると小さいが立派な店だった。そうだ、防具店に入る前に
「ミオは防具や服って欲しい? お金はあるから遠慮しなくていいよ」
少し悩む素振りを見せたが
「きたことがないですが、じゃまになるとおもいます。それにふくはみればまねできます」
確かにミオはスライムで関節など関係ない動きをするもんな。だとすると
「じゃあ、帽子とかどうだ? これなら邪魔にならないんじゃないか?」
名案だと思ったのだが、ミオは申し訳なさそうに
「このじょうたいのとき、めでも みていますが からだぜんたいでも じょうほうを かんじとっています。あたまに ぼうしがあると わかりづらく なってしまいます」
いい案だと思ったのだが。
「じゃあ、ミオには防具が必要ないどころか邪魔になってしまうんだね。何か買ってあげたかったんだけど」
そしたらミオは
「ありがとうございます、ますたー! でもまずはますたーのそうびをゆうせんしてください!」
と忠臣発言。嬉しくなり、頭を撫でる。
そして店に入ってみると店内は盾や鎧、革製と思われる服が置いてあった。鎧とかよくわからないので革製の防具を見て回る。
革のベスト、グローブこの辺は欲しいな。ぐるぐる見回していると店員に話しかけられた。
「いらっしゃいませ どのような品物をお探しですか?」
「軽く動きを阻害しない、そこそこ防御力のある装備が欲しいのですが」
「ならモンスターの革製品かミスリルなどの希少金属製品ですね。ただミスリルですとかなりお高くなります」
出たファンタジー金属! でも弱い奴が高い物を持ってもトラブルの元だ。
「ミスリルだとおいくらくらいになりますか?」
いや、気になるじゃん?
「ミスリルをあまり使わない鎖帷子でも金貨10枚ですね」
うん、買えるけど高いな。今は初心者装備にしよう。
「革鎧一式と服などが欲しいんだけど」
「はい、ではこちらです」
案内されてどんどん積まれていく。
「こちらがオススメのボア革の装備です、軽いですがある程度の防炎効果もあり、刃物などもなかなか通しません」
兜、鎧、グローブ、ベスト、ズボンなど積まれた物を見ていく。
確かに良さそうだ。でもグローブは入るか怪しいので試してみることにしたが、手を入れる直前に膨らんだ。そして手を入れ終わるとちょうどの大きさに変化した。フィット感抜群、さすが異世界防具、全サイズ対応とかファンタジーすげー!
サイズは問題ないことがわかったが一応全部着けてみた。
確かに軽いのに丈夫だとわかる。そしてフィットしているからかなり動きやすい。これを買おう。
「今着てるものを全てもらおう。いくらになる?」
「セットでお買い上げということで、銀貨5枚でどうでしょうか?」
うん、あの宿屋の半月分か、結構するが気に入ってしまった。
ポケットから出した振りをして銀貨5枚を渡す。
「ありがとうございました。修理の際はお気軽にお申し付けください」
と頭を下げられた。ありがとうと告げ、次は鍛冶屋に向かう。
よし、ここで高くても良い物をミオに買ってあげよう。うちで一番の戦力だし。
そう決めて店内に入った。
うん、防具店ではじっとしていたミオが嬉しそうに店内を見渡している。俺も店内を見渡すと剣や槍が壁に飾られていたり、一纏めに樽に入れられていたり、棚に置かれていた。
カウンターには若い兄ちゃんが、よかったードワーフのムキムキのおっさんじゃなくて。
鋼の剣を研いでもらうとき、怒られないかヒヤヒヤしていたんだよね。
とりあえず、いらないものの処分から
「いらっしゃいませ。どのような用件で?」
カウンターに近づくと聞かれた。
「ゴブリンを討伐した時に手に入れた錆びた武器と鉄くずを売りたいのだが」
「あ、買取も行ってますよ。見せてもらっても?」
ということで錆びた短剣99個と鉄くず45個を手渡した。
「随分多いっすね。ちょっと調べるんで待っててください」
と言われたのでミオと武器を見ていく。投擲用の武器と短剣ないかな? と探していくがあまりパッとした物が見つからない。
剣や槍は良さそうなのがあるのだが。
ミオも最初とは違い、残念そうにしている。
見て回っていたらいつの間にか時間が経っていて店員に呼ばれた。
「錆びた短剣は状態が悪く、素材としての値段で、一つ鉄貨50枚で買取です。鉄くずも調べましたがほとんどは銅貨1枚の価値でした。そして剣一本分に少し足りないくらいの量のダマスカス鋼がありました。買取なら銀貨5枚です」
おっとお宝があったらしい。しかも防具の代金と同じだ。
「すまないがそのダマスカス鋼で短剣を作ってもらえるか?」
え? という表情で固まっているミオの頭を笑顔で撫でる。
「はい、そうですね二振りできます。三振りには少し材料が足らないです」
「じゃあ二振りとこの剣を研いでもらいたいんだが」
と言って鋼の剣を取り出す。
「これは酷いっすね。ちょっと親方に見せてみないとわからないんで短剣と同じ日にお渡しでいいですか?」
「大丈夫です」
「あとは、ダマスカス鋼の余りはどうします?」
「売ることはできるか?」
「はい、大丈夫ですよ。ダマスカス鋼の持ち込みでの短剣作成と研ぎ直しは、ダマスカス鋼の余りを代金として請け負いますがよろしいですか?」
「うん、ではそれでお願い」
「では、素材買取の分、銅貨89枚と鉄貨50枚になります。お受け取りください」
「ありがとう」
「短剣は一週間後にはできていると思うので、取りに来てください」
「了解した、ありがとう。また」
店を出ると
「にいさま、あたらしいぶきありがとうございます。でもわたしのでよかったんですか?」
「俺の武器には量足りなかったみたいだし、何よりうちのエースはミオだからね。良い武器を持ってもらわないと」
「ありがとうございます、にいさま!」
さっきより元気良くお礼を言われた。
機嫌も良いようでニコニコ笑っている。頭を撫でながら今日の予定を考える。
予想外に時間が掛かってしまった。さてどうしよう?




