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白い部屋に居た。え、いや、部屋で寝たはずなんだけど? ってかどこ? ここ?
「こっちにいらっしゃい」
いきなり妙齢の女性の声が届いた。なんというか、従わなければいけないような、そんな気持ちにさせる声だった。
そんな声のした方に向き、足を踏み出した。見ると、黒髪の艶やかな女性が居た。スタイルは妖艶で、出るところは出て、引っ込む所は引っ込んでいる、顔も美しく見事な美女だった。表情は気怠げで、そこもまた魅力的だった。
近くまで行くとテーブルとイスが出現し、座るよう促された。テーブルなどの出現に本来なら驚くべきなのだろうが、この美女なら可能なのだろうと、なぜか頭が理解していた。イスに座り、話しかけた。
「初めまして、長谷川佑衣斗と申します。どういったご用件でしょうか?」
どういうわけか言葉がすらすらと出てきた。普段の自分なら、こんな美女と対面しただけで間違いなく緊張して動けなくなってしまう筈なのに。なので理解した。これは間違いなく、夢だ。
「初めまして、私は一部ではヨミなんて呼ばれているわ。今回は、貴方の選んだスキルでは、転移直後に死んでしまう可能性が非常に高かった為にここに呼ばせていただきました」
どうやらパソコンで開いた妙なページでスキルなどを選んだ影響でこんな夢を見ているらしい。まあ、こういった夢も楽しいのかもしれない。
「その場合どうすれば良いのですか? スキルを変更するのは、できればしたくないのですが……」
そうなのだ、あのスキルは、苦渋の選択だった。普通なら、攻撃系、回復系、特殊なものとバランス良く選ぶだろう。だが、俺は魔物と仲良くなりたいのだ、共に生きていきたいのだ、強くしたいのだ。
「貴方の情熱は、理解できませんがわかりました。本来ならばそのまま送り出すのですが、こちらにも事情があり、特別に貴方の手伝いができる眷族を作りましょう」
若干こちらの熱意に引いたような顔をしながらも協力を申し出てくれた。
「貴方がこれから行く世界は、魔物使いの存在が非常に珍しいです。魔物を倒すと極稀に出現するモンスターカード、これを浄化し、特殊な召喚魔法を使うことで魔物を配下にすることができます。貴方の場合は、眷族化のスキルがありますので、モンスターカードに眷族化のスキルを使うことにより、眷族となる魔物を召喚することができます。ただし、非常に珍しい魔物使いは、ほとんどがお金のある貴族がなっています。その為、弱いうちは、魔物使いであることを隠す必要があります。なので、貴方の最初の眷族は、よく考えて選ばなければなりません」
気怠げな表情から一転、真剣な表情でそのようなことを告げてきた。これにはこちらも真剣にならねば、夢だけど。
「隠蔽の達人で、人化でき、また気配察知のできる魔物をお願いします」
先ほどの条件から考えるに人化ができて、そのステータスを隠蔽できる魔物であれば、大丈夫なのではないか。また、気配察知は隠蔽から隠密のイメージが思い浮かび、選んだ。隠蔽で気配を消し、相手の気配を察知して暗殺なんてこともできるのでは? と考えたからだ。
「へぇー、そういう考え。なかなか理にかなっているわね。だけど、その条件だと、スライムやゴブリンなどの最下級の魔物、それも人化したとき、成人ではなく、子供になってしまうわ」
渋い顔で言われたが、こちらはスライムと聞けてこの選択が間違っていなかったことを確信した。スライムは強い。そう信じている。あのゲームをプレイしたことがあるならば理解できる感覚だろう、全魔力を解き放つことができるのだから。
「では、スライムでお願いします」
「スライムでいいのね。では、それで作るわ」
そういうと何やら呪文を唱えだした。そのうち女性の腕あたりから、光り輝きだして一瞬何も見えなくなった。光が収まるとその手には、一枚のカードが現れていた。
「成功したわ、スライムのメスで貴方の希望通りの能力を持った子よ、早く眷族化を使って召喚してあげなさい」
そう言われ、カードを受け取り、あれ? ここからどうすればいいの? あれか、詠唱か? とりあえず、念じてみた。
『眷族化』どうやら念じるだけでよかったようで、カードが消え、直径30cmほどのスライムが現れた。
「成功したようね。では、ステータスと唱えて、自分のステータスから下の欄にある眷族を選んで、スライムのステータスを見てみて」
言われるまま、ステータスと唱えると突然目の前にゲームなどで見たステータス画面が現れた。
名前 長谷川佑衣斗
種族 ヒト♂ Lv1
称号 異世界人
HP 133
MP 105
攻撃 11
防御 12
速さ 13
知識 11
精神 11
器用 12
運 11
エクストラスキル
眷族化 ダンジョン作製 不老
ユニークスキル
異世界言語 異世界文字 異世界武術(剣道)
スキル
下級鑑定 アイテムボックス小
眷族(1/1)
スライム
うお、本当にステータスが見れた。流石俺の夢、無駄にリアリティ溢れてる。驚きつつも、眷族欄のスライムの場所に触れてみる。
名前 なし
種族 隠密スライム(下忍)♀ Lv1
称号 忠臣
HP 330
MP 55
攻撃 11
防御 22
速さ 33
知識 11
精神 11
器用 22
運 10
忠誠 100
種族スキル
スライムボディ弱
ユニークスキル
人化(特)
スキル
隠蔽Ⅶ 気配察知Ⅴ 投擲Ⅲ 短剣Ⅲ 全状態異常耐性Ⅲ
うん、俺より断然強いんだけど……。
まあ、俺のサポートの為だから、護衛なども含んでいるからなのだろう、うん、きっとそうだ。そうじゃないと俺はスライム以下、たしかにこれでは転移直後に死んでしまうだろう。
というか、なんか忠誠だけ異常に高いんだけどナニコレ?
他にも気になる点が幾つかあるので、沈んでいるばかりではなく、質問していこう。
「まず、自分のステータスがスライムのステータスに影響を受けているようなのですが? またスキルに下級などと数字のものがあるのですが、違いはあるのですか? あ、あとなんで忠誠がこんなに高いんですか?」
「貴方のステータスは、たしかに眷族の影響を受けます。忠誠によって変わっていきますのでご自分で確かめてください。
スキルについては、数字のものは使えば使うほど熟練度が上がっていきます。階級で表されているものは、熟練度が無く、使っても上がることはありません。特殊な方法で入手、昇格することはあります。これもご自分で探してみてください。
このスライムの忠誠の高さは、貴方の為に作られた存在だからです。貴方を守る為なら命すら惜しまないでしょう。この忠誠心溢れる眷族にぜひ名前をつけてあげてください」
なるほど、やはりステータスは影響を受けていたか。あと忠臣を最初から得ているなんてたしかに凄い。ただなんとなく、♀で忠誠心溢れると聞くと少し不安になるのは、なぜだろうか? ヤンデレキャラ達が頭の中に浮かんでは消えていく。うん、育成を間違えないようにしよう、夢だけど。
とりあえず、人化を見てみよう、本当は名前は決まっているのだが。スライムに話しかけてみる。
「まずは、人化を見せてくれないかな?」
スライムは了承したのか、『ぷるん』と震えて、姿が変わりだした。ヤバイ、震えるスライム可愛い‼︎
少し時間が掛かったが、五歳くらいの髪も瞳も水色の全裸の可愛い女の子に変身した。うん、ロリコンアウトと頭に響いた。こんな夢を見るなんて、俺は大丈夫なのだろうか、少し心配になった。