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買取窓口でゴブリンの皮と肉、ゴブリンリーダーの牙を売った。
皮67個、肉15個、牙1個で銀貨3枚銅貨76枚だった。皮は銅貨3枚、肉は銅貨5枚、牙が銀貨1枚で売れたので、銅貨は100枚で銀貨1枚と等価のようだ。ゴブリンの腰ミノは、なんでそんなものを持ってきているんですか? とキレながら言われた。臭いもキツいので、ただの廃棄物らしい。ちなみに錆びた短剣などは、鍛冶屋で売れるらしい。
でも貨幣価値もわからないとかやはりまずいよな。誰かに聞いてもいいんだが、聞いた瞬間怪しまれるかカモられるのは見えている。奴隷という言葉がチラつく。
でも奴隷も問題があるんだよな、ミオやリュミスに怯えられても困るし。
でもまあとりあえず、今はベッドで寝たい、ということで宿に向かった。冒険者ギルドの隣の建物だけど。
大きな木造の建物で、ギルドの建物より大きかった。扉を開けて中に入ると、食堂とカウンターが見えた。カウンターには恰幅のよいおばさんがいた。
「いらっしゃい、食事かい? 泊りなら一泊二食付きで銅貨50枚だよ」
「初めまして ギルドで紹介されて来ました。とりあえず、この娘と二人、一週間お願いします」
ミオを抱き上げて見せる。
「ああ、ギルドから話があった二人組だね。お嬢ちゃんは子どもだから半額の、ギルドから一ヶ月くらいは安くしてやれと言われてる。長期滞在ならサービスもあるし、一ヶ月滞在するなら銀貨10枚もしくは金貨1枚でいいよ」
ギルドの仕事が早い、もう話を伝えていたとは。それと銀貨10枚で金貨1枚と等価か。銀貨100枚分だと期待していたのに……。
「じゃあ、それでお願いします。あと食事は部屋で摂りたいんだけどできますか?」
食堂だとリュミスと一緒に食べにくいし。銀貨10枚を手渡す。
「それは構わないけど自分で取りにきなよ。部屋まで運んだりはしないから。はい、まいど、これは部屋の鍵、部屋は三階の奥301号室ね」
手渡された鍵は、カードキーだった。すげーハイテク。
「食事は、朝の六時から九時までと夕方の六時から九時までならいつでもいいから好きな時間に取りに来るんだよ」
その言葉を聞きながら、部屋に向かった。ドアにカードキーを差し込み開けた。自動ロックか、カードキーを部屋に置いたまま出ないように気をつけないと。
部屋に着いて感動したのが、水洗トイレと風呂があったことだ。どういう構造になってるのか全くわからないが、素晴らしい。
テンションが上がってくる!
「ミオ、リュミス風呂に入ろうぜ!」
「はい、ますたー!」
「きゅー!」
ということでみんなで風呂に入りました。小さい風呂だったのでみんなで入るとキツかったが身体を洗い合い、楽しく入った。
そういえばご飯を食べられる時間帯が決まっていたがどうやって時間がわかるのだろうか? もうわかってないことが多すぎる。
そんな事を思っていたらお腹が減ってきたので、一応食堂に向かった。そしたらありました、時計。風呂や水洗トイレを見つけた時にも思ったけどこれ完全に他の日本人来てるわ。
腕時計とか売ってないかなと思って食堂にいた人に聞いてみるとなんで必要? って顔された。よくよく聞いてみると、ギルドカードに時間が表示されるらしい。マジチートアイテムじゃん! なんでも三代前の勇者がギルドカードに時計の機能を組み込むことを考案。試行錯誤の末、成功したらしい。
ギルドカードってスマホサイズだったし、そいつも日本人だな。そんな彼? 彼女? に感謝しながらギルドカードを取り出した。
アイテムボックスに入れていたが、食堂の時計と見比べても正しい時間だった。チートアイテムなのでもう気にしないことにした。
いつの間にか食事を受け取れる時間になっていたので、ミオと二人で受け取り、部屋に運んだ。
「ミオやっと美味しいご飯が食べられそうだね」
そう、ここまで文化を伝えた日本人達が料理を伝えてないわけが無い。食事にはうるさい国民です。なんと本日のメニューは、カレーとナンです! 米はこの辺りだと貴重品なのか? わからないがちゃんと肉も入ってる! 久しぶりの肉!
「しげきてきなにおいでおいしそうなのです!」
ミオも美味しそうな食事に興奮している。
部屋に戻り、みんなでテーブルについた。リュミス用の皿も借りてきたので、そこにカレーをつけたナンと肉を載せてやる。
「じゃあ、みんなでいただきます」
「いただきます」
「きゅきゅきゅ」
ナンを千切り、カレーに漬ける。そして口に、うん日本で食べたナンカレーです。
まともな食事なんて半月ぶり? あの味気ない食事を耐えた後だと本当に美味い!
「おいしいのです。ますたー!」
「きゅー! きゅー!」
「美味しいね、あ、もう食べたのかリュミス、はいおかわりね」
リュミスの為に、ナンを1枚多めにもらってきたのだ。どんどん食べて成長しろよ。
ミオを見ると感動の為か泣きそうになっている。生まれて初めて食べるまともな食事だからな、と己の不甲斐なさに涙しそうになった。
「これからお昼ご飯は、宿で出ないから何処かで買って外で食べたり、外食になるね」
「はい、ますたー! おいしいりょうりがたべたいのです!」
「きゅー!」
ということで明日は朝に屋台か何かで昼食を買おう。それをアイテムボックスに入れてからクエストでも受けて、外で食べるとしよう。そう決めて、ポケット以外で食事ができて嬉しそうなリュミスと美味しい食事に感動しているミオを眺めながら、食事を終えた。
「よし、寝るぞ」
「はい、ますたー」
「きゅー」
この部屋にベッドは一つしかなかった。いわゆるダブルの部屋である。でもいつも抱き枕にされてたミオももう気にしていないのか普通にベッドに入ってきた。前は恥ずかしがっていたので打ち解けてくれたと嬉しくなる。
リュミスは枕元に寝っ転がっている。一緒に寝ると少し危ないからそこが定位置となっている。
久しぶりのフカフカな布団とベッドに抱き枕のミオと安心要素もプラスですぐに眠くなった。
「み、お、りゅ、みす、おや、すみゅ……」
「おやすみなさい、ますたー」
「きゅ、きゅきゅー」