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 次の日から魔法の訓練を再開し、計三回もぶっ倒れた。案の定風魔法、黒魔法を初めて使った時だった。最後の一回は調子に乗って魔法を使いまくったことによる魔力不足が原因だった。

 ミオに涙ながらに怒られた。魔法を使えて上がっていたテンションが急降下した。泣かれながら胸に両手がポクポク打ちつけられた。

 罪悪感で死にそうだった。リュミスにも頭の上でペチペチされ、怒られた。


 謝り続けて、宴会の始まるギリギリの時間に許してもらえた。

 その成果もあって、水、風、黒魔法は、それぞれⅠに成長し、使用可能となった。


 急いで村に戻ると商人を紹介された。



『鑑定』


 名前 ウォルク

 種族 ヒト♂ Lv17

 罪科 ???


 40歳くらいの髭の男性だ。行商をしているだけあってちょっと粗野な感じで筋肉質だ。この人も罪科を持っている。ある程度年を取るとそうなってしまうものなのか? 村長も悪い奴とも思えないし。


「先ほど話していたユーさんです。街まで護衛として乗せて行ってくれるそうですよ」

「初めましてユーです。今回はよろしくお願いします」

「おう、ナッツってもんだ。おめえがユーか、強そうには見えねぇがゴブリンの集落を潰せるなら大丈夫だろう。よろしくな」


 さらりと偽名を使われた。怪しいな、罪科持ちだし。

「はい、護衛は任せてください。盗賊だろうが、モンスターだろうが倒してみせますよ」

 怪しいので力には自信があると強がっておく。


 するとウォルクは、ニヤッと嫌らしく笑い

「威勢もいいじゃねぇか! 頼んだぜ」

 と背中をビシビシ叩いてきた。


 その後、宴会が開かれた。お酒なども振舞われたが警戒していた為、飲むのはやめた。たまにポケットに食べ物などを入れ、リュミスに食べさせた。飲み食いを始めて一時間くらい経った頃、他の住人や村長家族も寝るということで去っていった。残ったのは、俺、ミオ、村長、商人だけだった。


 そろそろ俺らもと思って立ち上がろうとしたら何故か立ち上がれなかった。なんだ? と思っても痺れて身体が動かない。横を見るとミオは大丈夫そうで不思議そうな顔をしている。

 言葉には出さず、繫がりからじっとしてるように伝える。


 ミオも同じものを食べたはずだが、毒が効いていないようだ。状態異常耐性スキルの効果だろう。集中するとミオの体内で魔力が若干高まり、抵抗力を高めているように感じる。それをマネしながら

「そろそろ効いてきましたな、村の恩人にこんな事をするのは心苦しいのですがな」

 と村長、言葉とは違い顔は笑っている。


「じゃあ、これらはもらっていくぜ」

 と商人。それだけでなんとなくわかる。きっとこの世界は奴隷制度があるのだろう。

「な、ぜだ?」

 とりあえず、状態異常耐性スキルを得るまでの時間稼ぎに聞いてみる。

「私の村は稼ぎが少ないですからな。なにかあれば食料の蓄えなど、すぐになくなってしまいます。そうなれば、村の娘などを奴隷として売らなければなりません。なのであなた達はその代わりです。恨んでくれても構いませんよ、村の護衛となってくれていれば、こんなことをしなくても済んだのですが」


 勝手なことを言っているな、しかも恨んでいいって、奴隷になるからなにもできないだろ? ってことか、挑発だな。

「わか、た。おま、え、のくび、とり、にくる」

 震える口で言い切り、口元を歪める。


「はい、お待ちしております」

「まあ、お前は奴隷として一生を過ごすから無理だろうがな」

 ニヤニヤしながら笑う男どもを見ながら、殺意が高まっていく。この世界、人間が敵になることも多そうだ。いつかは経験しないといけなくなるのだろう。そう殺しを。なら恨みが有るコイツ等で経験しようと心に誓った。まあ、罪科について詳しく調べてからになるがな。こんなの殺して自分が犯罪者とかありえん。


 ミオに動くなと目で伝え馬車の後ろの檻に乱雑に閉じ込められた。夜のうちから街に向かうらしい。毒の効果も長いようだ、自慢しながら伝えられた。

 そのまま、馬車が出発したが酷い揺れだった。それにも耐えていると


『スキル【全状態異常耐性】を習得しました』

 よし! これ欲しかったんだよね。どうやったら手に入るか考えていたんだけど、まさかこんな機会に得られるとは……。

 御者をしている商人を見るとこちらのことなど気にもしていない。まあ、普通なら毒で麻痺中だもんな。


 とりあえず、リュミスが麻痺しているか確認すると、スヤスヤと寝ていた。状態異常耐性とか無かったけど効いていないらしい。ドラゴンってすげーなと思いながら、ミオに小声で

「馬車が街に近づいたら教えてくれ、そのとき逃げ出そう」

「ますたー、だいじょうぶですか? もうしわけありません、どくをみぬけませんでした」

 項垂れながら答えるミオの頭に手を添える。


「大丈夫だよ。それに、料理か酒に麻痺などの毒が入ってると思ってたし。で、麻痺しなくても毒を食らった振りはすることになっただろうしね」

「どうしてですか?」

 不思議そうに尋ねられた。

「うーん、偽名使ったり、罪科持ちだったからね。あと振りの理由は、街までの足が必要だったから。ほらこうやって無料で街まで運んでもらえるよ」

「ますたー、むちゃしすぎです。どくが はいってると わかったら さけるべきですし、しょうにんが ぼうりょくを ふるった かのうせいも」

 困ったような表情で言われた。怒りたいけど毒を見抜けなかったことを気にして強く言えないのだろう。


「そのときはミオにお願いしたよ、信頼しているからね」

 と言いながら頭を撫でる。

 照れているミオを眺めながら

「ごめん、ちょっと寝るよ。なにかあったら遠慮なく起こしてね」

 と告げ、寝ることにする。

「はい、ますたーおやすみなさい」

 揺れが激し過ぎて痛いが寝ることにした。


「ますたー、ますたーおきてください」

 と小声で起こされた。

「ミオおはよう」

 よくわからないが小声で挨拶して、辺りを見渡して気がついた。ああ、毒盛られて監禁中だっけ。小声で話しててよかった。


「まちにちかづいてきましたが、どうやらこのままではちがうところにむかいそうです」

 ミオに目に手を当ててもらい見てみる。

「そうだね、街から遠ざかりそうだ。このまま自分たちの住処に行くつもりか?」

 との俺の言葉に

「たぶんそうだとおもいます。はんざいしゃはもんばんにばれますから」

 流石ファンタジー。犯罪者は街に入れないのか。


「じゃあこのままだとマズイね。馬車から降りて街に向かおう」

 と言ってからどうやって檻から出ようか考えていたら

「ますたー、はやくでてください」

 とミオに催促された。え、ってかミオもう檻の外にいるんだけど、早過ぎない⁉︎

 というかどうやって? など疑問は尽きないがこのままでは街から遠ざかるので素早く出た。


 二人で音を立てないように注意しながら降りて、見つからないように地面に伏せた。

 草原で草が生い茂っていたので楽に身を隠せた。

 俺たちが降りたことなどには気がつかず、そのまま馬車は走り去っていった。


 しばらくは地面に伏せたままで過ごしたが、立ち上がり街に向かった。

「じゃあまず、どうやって檻から出たの?」

 とミオに道すがら疑問をぶつけてみた。

「すらいむなので」

 スライムなのできたー! とか馬鹿な事を思いながら、スライムなら檻の間を通り抜けられるかと気がつく。

 最近、ミオがスライムって忘れそうになるんだよね。


「鍵はどうやって開けたの?」

「しのびなので」

 いや、なんとなくそれでもわかるけどね。

 詳しく聞くと鍵穴に指を突っ込み開けたらしい。スライム便利だなと思った。


 そんな雑談を続けていると街に近づいてきた。

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