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 村に近づいた頃、リュミスを隠さなければいけないことを思い出す。封印の祠にあったモンスターカードであるし、ドラゴンだからだ。


 なので、リュミスにお願いしてポケットに入って鳴かないようにお願いする。

「きゅ、きゅ……」

 寂しいのかな? と思ったら、お腹が減った! と頭に浮かんだ。

 そっちかよ! どうやら喋れない分繫がりから強く気持ちが伝わってくるようだ。

 とりあえず、ゴブリン肉とツキの実を出して与えてみた。鼻をヒクヒクさせてゴブリン肉に近づいたが、嫌そうに顔を背けてツキの実を食べた。


 ゴブリン肉は、本当に食用に向かないらしい。ドラゴンに実の方を食べさせるとは、恐ろしい。

 ツキの実を食べて満足したのか自分からポケットに向かった。そして、すぐに眠ったのがわかった。


「リュミスもう寝ちゃったよ。やっぱりドラゴンだね」

 ドラゴンは、よく食べ、よく寝るイメージ。

「りゅーちゃんはまだあかちゃんですから」

 どんどん食べて寝て、大きくなってもらいたい。俺の安全の為にも。


 村に帰り、村長に報告する。

「ゴブリンの集落を潰してきました。これでゴブリンが襲ってくることはないでしょう」

 ドロップアイテムの皮やゴブリンリーダーの剣などを見せて話す。

「ありがとうございました。できるならあなた方にこの村に残って警護をしていただけると嬉しいのですが……」

「申し訳ないですが、それはできません。私たちにも目的がありますから」

 なにがあるかわからない世界だから、自分たちを鍛えなければならない。モンスターの出ない辺境ではダメなのだ。


「そうですか、残念です。いつ頃出発する予定ですか? 三日後に商人がこの村に来ることになっています。帰りに乗せてもらうことも可能でしょう。あなた方なら護衛にもちょうど良いですし」

「すみません、お願いしてもよろしいですか?」

「はい、任せてください。商人にはこちらから伝えておきますので」

「ありがとうございます」

 頭を下げる。

「では、三日後は宴会をしましょう。せめてものお礼に」

「そんな宴会だなんて……」

 正直めんどくさい、食べ物もあのパンだろうし

「いやいや、こんな機会でなければお酒が飲めませんからな」

 はははと笑いながら告げる。どうやらただ、お酒が飲みたいだけらしい。

「それならば参加させていただきます」

「それは良かった。楽しみにしていてくだされ」


 宴会参加が決定された。とりあえず、投擲に使った短剣は返して、水浴びをすることにした。

 水場に移動し、昼食を済ませる。ツキの実を食べたのだが、どうやらアイテムボックス内に入れると時間経過が止まるらしい。いつでも採った頃のままの新鮮な実が食べられるのだ。これによってドロップアイテムも腐ることがないし、非常食もいつまでも保存可能だ。

 この優秀さ、あまり知られない方がいいスキルなのかもしれない。隠蔽しとこう。


 リュミスも起きたので、魔法を教えてもらうことにする。

「リュミス、水魔法を使ってみてくれないか?」

 水場で使いやすいだろうし、水魔法ってゲームによっては回復魔法としても使えるからね。


「きゅー!」

 と一鳴き、リュミスの体内の魔力が高まるのを感じた。

 しばらく見ていると水場の水が浮き上がり、リュミスの周りに漂っている。なんとなく、防御魔法だとわかる。

「リュミスありがとう。疲れない程度でいいからその状態を維持してもらえる?」

「きゅー」

 同意を得られたので目を閉じて集中する。


 リュミスの身体から高まった魔力が水に影響を及ぼしているのがわかる。周囲に魔力を流し、思い通りに改変しているのか? わからないがまずは魔力を高めるイメージをしていく。なんとなく身体が暖かくなってきた気がする。


 よし、水分を操れるんだ、操るんだと高まった魔力を放出するイメージをする。

 途端に身体中が痛みだした。特に脳が痛い。脳ってどうやって痛みを知覚するんだよ、なんて意味の無いことを考えたところで痛みに耐えられず、意識が……

「ますたー!」

「きゅ、きゅきゅー!」

 という声を最後に意識を手放した。



 気がつくと頭に覚えのある柔らかさと額にひんやりとした感触を得た。目を開けるとやはりミオの泣きそうな顔があった。こんな顔ばかりさせていることに申し訳なく思ってしまう。

 上を見るとリュミスが水を纏って額に乗っかっていた。

 ひんやりとした感触は、リュミスだったのか。

「ますたー! だいじょうぶですか? おぼえておられますか? まりょくをたかめていらしたら、とつぜん さけびだして たおれられたんですよ!」

「きゅー、きゅきゅー!」

 そうだよ、そうだよというようにリュミスも鳴いている。

 そのことは覚えているがなぜかわからない。

 とりあえずわからないときの



『ステータス』


 名前 ユー(長谷川佑衣斗)

 種族 ヒト♂ Lv2

 称号 (異世界人)


 能力値省略


 (エクストラスキル)

 (眷族化 ダンジョン作製 不老)


 (ユニークスキル)

 {異世界言語 異世界文字 異世界武術(剣道)}


 スキル

 下級鑑定 (アイテムボックス小) (隠蔽Ⅲ) 気配察知Ⅱ 危機察知Ⅰ 剣術Ⅰ 水魔法0 


 {眷族(2/2)}

 (ミオ) リュミス


 スキルに水魔法が増えている。0だからまだ使えないが。これが原因じゃないのか? まだわからないがそんな気がする。


 でも試してみる気にもならない。みんなに不安を与えてしまうし、俺も苦しいし。

「ミオ、リュミスありがとう。そして、心配かけてごめんね。多分だけど水魔法を覚えたのが原因だと思う。魔法を使えるように身体を作り変えたんじゃないかな?」

 予想を伝えてみる。

「ますたーはまほうをつかえるようになったのですか⁉︎ でしたらそうかもしれません。ふつうは、うまれつき きめられた ぞくせいのまほうしか つかうことが できませんから。

 りゅーちゃんと けんぞくとして つながることで そのぞくせいを えた のではないでしょうか」

「じゃあ、リュミスが使える魔法以外を使おうとしても無理か。今日はもう練習はやめるよ」


「そのほうがいいのです。ますたーのいうとおりだとしたら、むりはいけません」

「きゅ、きゅきゅ」

「もう少しここで休んでいいかな? 正直、動くのも辛いや」

「いいですよ、それにひがくれるまえまでうごいてはだめなのです、きょうにどもたおれたんですよ」

 日が暮れるまでか、ちょっと長いが我慢しよう。ミオもリュミスも近くにいるんだから。


「街に行ったら美味しいもの食べようね」

「おいしいものたべたいですますたー、ここのしょくじはまずいです」

 はっきり言っちゃった! まあ不味いから仕方がないんだけどね。

「リュミスにもあのパンあげるからね」

「きゅ?」

「あごがきたえられていいかもしれませんね、ますたー」

「きゅきゅ?」

 そんな取り留めのない話をしながら、時間を過ごし、日が暮れる前に村に帰った。


 ポケットに入れたリュミスにパンの欠片を与えたら、無心になって寝るまで削っていた。

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