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気配察知スキルなどを使っていて、少し魔力というものがわかるようになった。その感覚が言っていた、周囲の魔力があの建物内に集められていると。
だからこの土地は魔力が極端に少ないのだとわかる。こんなに吸い取っているのだ、 かなり強力な何かがある、もしくはいるらしい。
「ミオ、わかるか?」
「はい、まりょくをうばっているものは、ちいさいものです。いきものじゃないです」
流石ミオ、気配察知Ⅴはそんなことまでわかるらしい。
頭を撫でて、褒める。街に着いたら何か買ってあげよう。
嬉しそうにはにかむミオを眺めながら近づいていく。
そこには小さな社のようなものがあった。周囲にも建物があったようだが風化したのかボロボロで形を保てているものはなかった。その社に慎重に入っていく。
そこにはこれまたボロボロのカードが祭壇のようなものに祀られていた。手に取って見るが、何のカードかよくわからなかった。
「ますたー、それたぶんにせものです。このしたにまりょくがすわれています」
と祭壇の下を指差す。
祭壇をなんとか退かすが、床があるだけだった。ミオが床を確かめる、小さな隠し扉を発見した。
「ミオスゲ〜! こんなのまで見つけるなんて!」
ミオを抱き上げ、くるくる回って喜ぶ。
ミオははにかみながら
「おんみつですから」
と一言。カッコイイ! そんなこと言ってみたい、憧れてしまうわ。
少しくるくるして、ミオを降ろして扉を開けてみた。罠もミオが確認済みです。隠密スゲ〜!
出てきたのは作りのしっかりした小さな黒い箱だった。開けてみると一枚のカードが入っていた。これには見覚えがある、モンスターカードだ!
『鑑定』
???????のモンスターカード
鑑定本当に使えねぇ……。色々と確かめていたら突然倒れそうになった。なんだ?
「ますたー! はやくかーどをはなしてください! まりょくがすわれています!」
カードの所為だったらしい。素早くアイテムボックスに収納した。すこし倦怠感があるが治まった。
「ますたー、だいじょうぶなのですか?」
心配そうに話しかけられるが
「なんか凄いモンスターカードなんだろう。眷族にしたら頼もしい仲間になってくれそうだね」
と陽気になっていた。
ミオが少しムッとして
「わたしではふまんなのですか? ますたー‼︎」
聞きようによってはなんか危ないセリフだなと感じる一方、背筋に寒気がした。
『スキル【危機察知】を習得しました』
『設定されていたヤンデレ回避に従い、警告を発します。回答しだいで、ヤンデレへと至る可能性があります』
なんか、変なアナウンスきたーー⁉︎
これたぶん前にヤンデレにしないように育て方を間違えないようにと考えていたからか?
その予兆を経験則で捉えたからスキル習得?
よくわからんがこの回答は慎重にしなければ。
「ミオに不満なんてないさ。でもね一人ではやはりできることは少ないよ。協力できる仲間は必要だ。それにね、眷族が増えるってことは、ミオはお姉さんになるってこと、だから弟や妹の面倒をみてあげてね」
なるべく、爽やかさを心がけて朗らかに笑ながら告げる。
最初は不満気だったが、お姉さんのところで目をキラキラさせてこちらを見つめていた。
「ますたー、ごめんなさいなのです。しっかりおとうとといもうとの世話をするのです!」
ニコニコして喜んでいる。
よ、よかったー‼︎ 見事ヤンデレフラグ回避らしい。
危機察知の対象にさらに命の危機を追加するイメージをするのも忘れない。
とりあえず、村に帰ってこの建物のことを聞いてみよう。
食料を探しながら村に帰り、さっそく村長に聞いてみる。
「南に向かったら、建物のようなものを見つけたのだが、あれはなんなのだろうか?」
もう探った後などとは告げない。
「まさか、あの祠に入られましたか⁉︎」
「いや、魔力を吸い取られそうで怖くて近づきませんでした」
いえ、入りました。
「それはよかった。今では知る者が少なくなりましたが、あれは封印の祠です。なんでも邪悪なモンスターが国を襲い、当時の勇者様がパーティメンバーの命と引き換えに討伐したそうです。なぜか、国家に災害をもたらすほどのモンスターはモンスターカードを落としやすいらしく、問題になりやすいのです」
やはり勇者が居たか、まだ味方か敵か決まっていないが。
それより気になる
「問題というと?」
「それらのモンスターカードは、その状態でさえ、災害を引き起こすのです。あの祠のものは、魔力を吸い取ります、さらに一定量吸い取るとカードから復活すると言われています。他のものも詳しくは知りませんが、どれも恐ろしい被害だそうです」
なるほど、倒されてすら害があるのか。
「まさかこの辺りの魔力が少ないのは? あとそんな害になるようなら壊すなり燃やすなりしないのですか?」
「ここらは元から魔力が少なかったので復活までの時間稼ぎに社が建てられたのです。またモンスターカードは、燃えも壊れもしません。アイテムボックス持ちに入れさせて封印しようとしましたが、これもすぐに身体中の魔力を吸い取られ、死んでしまったそうです」
そこでミオさん心配そうな顔をしないで。バレちゃうから。俺は平気だから大丈夫、なぜかはわからないけど。なのでミオの顔が村長に見えないように抱きしめる。
「どうやらミオには怖い話だったようです。社に入りたがっていましたから」
罪を被ってもらう、抗議なのか両手を振り回し、胸にポクポク当たる。
「そうでしたか、危ないところでしたね。
ささ、晩御飯もできたようなのでどうぞ」
空気を変えるためにご飯を勧めてくる。こやつできるな。ミオの頭を撫でて、居間に向かった。
いつものパンを削り、ミオを抱き枕に寝ようとしたら
「ますたーおからだはだいじょうぶなのですか?」
やはり聞かれてしまったがどう答えたものか。
「不思議なことになんともないんだよね。でも何があるかわからないから眷族化できるようになったらすぐに眷族にしちゃおう」
とりあえず、そう決め、心配そうなミオを抱き枕に寝た。
朝、まだ日が出ていないのでミオに挨拶をして、スキルや眷族を確認する。
『ステータス』
名前 ユー(長谷川佑衣斗)
種族 ヒト♂ Lv1
称号 (異世界人)
能力値省略
(エクストラスキル)
(眷族化 ダンジョン作製 不老)
(ユニークスキル)
{異世界言語 異世界文字 異世界武術(剣道)}
スキル
下級鑑定 アイテムボックス小 (隠蔽Ⅲ) 気配察知Ⅱ 危機察知Ⅰ 剣術Ⅰ
{眷族(1/1)}
(ミオ)
隠蔽と気配察知のレベルが上がって、危機察知と剣術が増えている。剣術のときはアナウンスなかったな。ゲームではパッシブスキルなどと呼ばれる類だからかもしれない。
わからないこと多すぎ、ヨミとかちゃんと説明していけよ!
まあスキルが増えたんだから喜ぼう。まだ眷族の数も増やせないようだし、がんばってゴブリン退治しますか。
あと村長の話で今後のやることがわかったな。ミオにも説明しておこう。
「ミオ、これからの予定だがゴブリン退治が終わったら封印されたモンスターカードを探しに行こう。どうせ厄介者扱いされてるなら仲間にして、こちらの戦力を増やそう」
「わかりました、ますたー。かぞくがふえるんですよね」
「ああ、そうだ。それでダンジョンでも作って楽しく暮らそう」
「まいはうすですね、ますたー!」
「おう、がんばろう!」
「はいです、ますたー!」
そんな感じにテンションを高め、パンを削り、ゴブリン退治に出かけた。