表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/104

103

 ああ、周りの目がすっごい気になる……

 みんながこっちを見ている気がする。

 おそらくは被害妄想だとわかってはいるのだが、どうしても人の視線に晒されている気がした。

 それでもなんとか迷宮に辿り着いた。

 実際に執事服で素振りや模擬戦をしてみると思ったよりも動きやすかった。

 さらに剣道の防具やスーツを着た時に感じていた背筋が伸びるような気持ちになった。

 メイド服組も大丈夫なようで、ミオ、リュミス、チカ以外は好んでメイド服を着ている。ミオも見た目はメイド服になっているがもちろん身体から作ったものだ。

 ふとみんなを見つめる。うん、メイド服は似合っていて可愛らしい。

 しかし、執事服の男が率いるメイド服とゴスロリ、ワンピースの幼女達、なんの集団なんだよ!?

 いや、着ぐるみの幼女達を迷宮に連れて行っていたのに何を、と思わなくもなかったが……

 どちらにしろ客観的に見ると謎な集団だなと思いながらギルドに向かった。


 見られている、間違いなく見られている。

 特に受付からの視線が強い……

 ミーアの強すぎる視線を無視できずにそちらに向かう。

「ユーさん、もう隠す気が無くなったのですね?」

 私わかってます、みたいな態度はやめろ!

「本当に裏近衛メイド部隊の教育係だったんですね!」

 大声で言い出した、これはダメなやつだ。

「いや、違うけど。この服はツナ伯爵の指名依頼を無理矢理(・・・・)ギルドから押し付けられて、その達成報酬に貰ったんだよ」

 こちらも大声で言い返す。

「ツナ伯爵がなぜこんな服を持っていたかは知らないけど、大層俺たちの成果に喜んでくれてね、プレゼントされたんだ。動きやすいし、性能も高いから使わないと勿体無いからね」

 こう言っておけばツナ伯爵の方で噂をなんとかするだろう。

 それに本当に疑われていたとしても逃げてしまえば関係ない。


「そうだったんですか、そんなことよりミオちゃんたち可愛らしいですね、えへへへぇ〜〜」

 そんなこと呼ばわりされてしまうのか。

「あ、そうでした、ユーさん、ミオちゃん、リュミスちゃん、クオンちゃん、リオちゃんは今回指名依頼を達成なされましたのでBランクに昇格です。リンカちゃん、ライカちゃん、チカちゃんへの昇格試験はチーム登録無しで受けることが可能となりましたがどうなさいますか?」

 どうするか確認すると試験官のリオ、受けるみんなが頷いたので、今から受けることにした。

 俺としても自称神が言っていた敵との戦いがあるのなら早くランクを上げてレベル上げを行うのは賛成だ。

「では今から受けていきます。それとチーム登録もお願いします、チーム名は逆鱗で」

 龍が持つという鱗であり、触ると激怒する、龍と憤怒の魔王がいる俺たちに相応しいと思った。

 それにこの娘たちが俺の逆鱗であるという意味もある。

「はい、わかりました、登録しておきます。では訓練所にお願いいたします」

 ということでミーアに別れを告げ、訓練所へと向かった。


 訓練所で準備をしているといつかの審判役の受付嬢がきた。

「では、ユーさんにチカさんの、リオさんにリンカさん、ライカさんの模擬戦を担当していただきたいのですが、よろしいですか?」

 うん、チカの模擬戦相手とか嫌です。

「はい」

「うん」

「ではお願いいたします」

 ということでチカとの模擬戦となりました。

 やはり執事服とメイド服、保護者と幼女の対決なのでここでも視線を集めてしまっている気がする。

 気にはなるが、模擬戦に集中しよう。チカが相手なので木剣と木刀の二刀流とした。

 チカも盾と杖のフル装備だ。

「チカ、試験だから俺が死なない程度に本気で頼む」

 うん、本気でと言った場合は、チカの力なら何が起こるかわからない。俺のHPは四桁あるが、頭が吹き飛んだら終わりだろうし……

「わかりました、ユーしゃま」

 このやりとりを受付嬢は不思議そうに見ていた。

「では始め!」


 ……はぁ!? 目の前に盾があった。

 合図とともに左に全力で逸れたはずなのに。

 時間がとてもゆっくりに感じる、これが走馬灯なのか?

 とりあえず後ろに飛ぶようにする。

 後は……後は、何もできないな。

 パーン! 空気が弾けるような音を聞いた気がする……



 う、うーん、何か熱い。これは、なんだ?

 心臓の方に血が集まっていくような、そしてとてつもない熱を感じる。

 あ、でも額にはひんやりとした、後頭部には柔らかな感触がする。

 意識が覚醒しつつあるのだろう、周りの言い争うような声も聞こえてきた。

 目を開くとクオンと目があった。

「ご主人様! 大丈夫ですか?」

「ま、兄様! よかった!」

 あ、ミオの声が、見ると額に手を添えてくれていた。

 道理でひんやりと気持ちよかったはずだ。

「二人ともありがとう、でどうなったの?」

「ご主人様が後ろに飛ぶとチカちゃんは思っていなかったようで少し打ち所が悪く、昏倒してしまわれたようです」

 ……どうやら走馬灯のせいで超反応をしてしまい、結果邪魔になったらしい……泣きたい。



「……もうこいつらぶちのめしたい!」

「ガルルルゥ!」

「は、どうせあんなひょろっこいのがリーダーなんだ、お前らも弱いんだろ!」

「あにサマを、またブジョクしたぁ!」

「……バンシに、アタイする……」

「はぁ?」

「皆しゃま落ち着いて、ユーしゃまが後れ困りましゅ」

 向こう側は騒然としている。よくわからないがむさい男連中とリュミスたちが一触即発な感じ。

 そしてミオとクオンもそちらを憎そうに見てらっしゃる。

 数秒後にはむさい男連中が肉塊になる未来しか見えない。

 急がなければ!


「どうしたんですか?」

 とりあえず中立の受付嬢に話を聞く。

「それが……」

 どうやら俺がチカに瞬殺されたのが問題の始まりだったようだ。

 その後、リンカ、ライカの昇格試験も終わったところで俺がBランクだと知った連中が騒ぎ出したのだと。

 曰く、あんな簡単に幼女でCランク昇格試験者に負けるのはBランクに相応しくないだとか、奴が上がるくらいなら俺たちも上げろと。

 どうやらそいつらはリンカとライカ、そしてリオの戦いは見ていなかったようだ。

 それでも俺としてはチカの動きを見ていたらわかりそうなものだと思うのだが……

 そんな風に騒ぎ出した奴らに対して眷属のチカを除くみんなが激怒、俺に膝枕と額に手を添えてくれていたクオン、ミオと冷静なチカ以外がむさい男たちと言い争いに発展してしまった。

 ここで俺が起きる。

 という流れらしい。


「先ほど聞いたチーム名の逆鱗とはリーダーのユーさんのことだったのですね……」

 え?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ