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 アウラのにっこり笑った顔が可愛かったからとかそんな理由ではないが、ついていくことにした。

 俺としても気になっていたこともあったし、どちらにせよソラの本性がこれで見られるだろう。

 そうしてついていくと隠し通路に案内された。

「ここからは少し暗いですが罠などはありませんので安心してついてきてください」

 罠、ということはこの通路を見つける手順やらに罠があるのだろうな。

 そんなことを考えつつ、さらに歩き続けた。

 そしてようやく小さな部屋へとたどり着いた。


「改めて挨拶を……つけられたな、アウラ」

 その言葉にハッとしてアウラたちが小さな気配、おそらく小動物たちを排除した。

「これでようやくか、今のは狸ジジイの契約魔で俺たちを探っていたのだろうよ。この度はお越しいただき感謝するユー殿」

 先ほどとはがらりと態度の変わったソラに挨拶を受けた。

 なるほど契約魔、なにやら気配察知にチラチラと小動物が引っかかると思っていたんだ。

 おそらく契約魔法で使役している小動物の使い魔のことなんだろう。

 この行為はわざと契約魔を連れてきて倒すことでツナ伯爵との繋がりを否定するパフォーマンスかなにかか? でも甘い

「ミオ」

 俺の合図でミオが動き、隠れていた契約魔の首を刎ねた。

 ミオが動いた瞬間、アウラたちが動きそうになったが、それはリュミスたちが牽制した。

「御自身で狸ジジイとお認めになった相手に油断してはなりませんよ、ソラ様」

 そんな俺の言葉を受けてソラは笑い出した。

「あは、ははははは……これは狸ジジイを利用しようとしたのも見抜かれているな。模擬戦には負ける、心理戦にも、となれば笑うしかないな。それに俺の話し方が変わっても動揺もない、年下相手に完敗だ」

 いや、それはおかしいだろう。

「ソラ様、私は29歳なんですが……」

「29!? い、いやぁ、29には見えないぞ、下手したら10代でも通るかも知れん……」

 アウラたちもみんなビックリして俺を見ていた。

 え、そんな驚くほどなの!?

「ユー殿の方が年上とわかり安心した、これで俺もなんとかプライドが保てるというものだ。あとこの場は非公式の場だ、様付けやそんな謙った態度はやめてほしい」

 まあその方が俺もありがたい。

「それでソラさんはなぜ私をここに?」


 ソラは少し背筋を伸ばし、俺の目をしっかりと見てから話し出した。

「一つは忠告のためです。ユー殿は父の前で有能さを証明されました、これはかなり危険なことです。まず間違いなく夕食時になにかしらの契約を結ぼうとしてくるでしょう。不用意な返事をしてしまい、この家に縛られたくなければ夕食は辞退し帰った方がよいでしょう」

 この話を聞くと依頼を受けるべきではなかったのか? いや、そんな反省は後だ。今後のことを考えなければ、伯爵も忙しいだろう、夕飯は逃げてダンジョンでレベル上げした後、街を離れることも視野に入れて……

「もう一つは父の息のかかっていない味方が欲しかったからです」

「先ほどの契約魔を見てもわかりますが、なぜ次期党首である貴方とツナ伯爵が対立しているのですが?」

「次期党首、俺の立場はそんな良いものではないですよ。俺が王子のお遊び役だったことはご存知ですか?」

 聞いていたので首肯する。

「あの狸ジジイのことだ、どうせ王子のお遊び役のことを人質、なんて言ったんでしょう。本当はその人間の性質を見極めるためです。王家が平穏に存続するために、公爵家、または俺たちのような伯爵家でも特殊な家はある程度無能でいてもらわなければならないのです。だから能力が王子より高ければ殺します。ただでさえ子供の死亡率はそこそこ高いというのもあるし、事故や病気、また王家の近くなら毒で死ぬことさえある、いくらでも誤魔化せるというものです。無能なら忠誠心を植え付ける。有能でも従順なら生かされる。有能過ぎれば消される。そんな中で幼少期を過ごしてみてくださいよ、そりゃあ歪むし演技も得意になるというものです。そして王宮から生きて帰ってきたお遊び役は、伯爵家にとってはそう有能ではないということです。だからあの狸ジジイは俺にユー殿をぶつけて何かを見極めようとしたらしいのです。もしくは俺のことを全く気づかず、ダメな奴の相手をさせ、ツナ伯爵家を心配させひきこむつもりだったか、そんなところですかね」

 ……なんというか貴族社会も大変なんだな。

「なるほど、自分を偽ってなんとか助かったが今度は次期伯爵家党首としての能力を疑われていると」

「そうなんですよ、生きて帰ってきたことが無能の証明で、ですが本性を露わにすると王宮では無能のふりをしていたとバレて暗殺、もしくは適当な罪状をでっち上げられて死罪の可能性もあります。今の俺は非常に危うい立場なのです。なので早急に自分の足場を父に気づかれずに築く必要があるのです」

 それにしてはアウラたちはかなりの能力を持ち、それを見せつけていたような……

「ああ、そちらの能力は次期党首としての最低限必要な能力ですし、弟に負けるようでは本当に次期党首の芽が詰まれてしまいますから」

 なるほど、そちら方面の才能は別に見せても良いと、ならお家を存続させる能力やら発展させる能力のことなんだな。

「お話はわかりましたが、私が育てられるのは妹たちなど近しい者だけです。そしてそんな子たちを本人が望まない主人につけるなど到底できません。貴方が望む人材は私ではないと思います」

 と、はっきりと断った。

「……そうですか、確かにユー殿は思い入れが強いタイプに感じてはいました。だからこそ味方になってくれたら心強いとも。次、ユー殿がこの街を訪れたときにはなんとかあの狸ジジイから実権を奪っておきますのでまた模擬戦やらをお願いしますね」


 そう言ってソラとは別れることになった。

 帰りは違う道でアウラの案内で屋敷の外に抜けた。

「夕食の件、旦那様にはご主人様が言い訳をしておきますので大丈夫だそうです。ご歓談いただきありがとうございました」

 ソラの事情、ツナ伯爵家の秘密など聞いてはいけないような話をされた気がするんだが、それにしては普通に帰されたな。

 ソラの方はツナ伯爵に会うと契約で縛られそうだから避けるだろうという考えだと思うが、ツナ伯爵の方が怖い。もしかしたら契約で縛るからいいやくらいで情報を与えていたとしたら……早くレベルを上げてしまおう。

 そんな風に考えながら家に向かっていたのだが

「痛て!」

 何もないはずの空間で頭を何かにぶつけた。

「マスター! 私たち以外の生命反応が消えました!」

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