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フォー

作者: ある

夢の中で、携帯電話に着信があった。画面に表示された名前を見ると『フォー』となっている。おかしな名前だと思った。一瞬、ベトナム料理の『フォー』を思い浮かべ、店の名称かとおもったが、それにしても、そんな店名を入力した覚えは無い。着信音は鳴り続け、訝しく思いながら電話に出ると、電話の向こうから切羽詰った様子の男性の声が「○○ちゃん?」と私に呼びかけてきた。声にはまったく聞き覚えがない。声の主にどなたかと尋ねると、名前は『フォー』で同級生だという。そんな名前の同級生は記憶に無いと言うと、彼は私と4番目に仲の良かった人物で、覚えていないはずが無いと言う。記憶の糸を手繰ってみたが、まったく見当がつかず、『フォー』という名前が『4番目』に由来するのであれば、本名を教えて欲しいと言うと、それとは関係が無いし、本名など無いという。不可解に感じたが、口調は真剣で、からかっている様には思えない。用件を聞くと、とても大事な話だが、私が彼を思い出せないのなら、それを伝えることは出来ないと言う。そして、それを私に伝えられないと『フォー』は消えてしまうのだと言い、自分の存在を思い出して欲しいと必死に懇願してきた。些かの気味悪さを覚えて困惑したが、『フォー』の事を一生懸命に思い出そうとした。結局、思い出すことは出来ず、意を決してそれを告げようとした時、電話は既に切れていた。無性にやるせない気持ちになって『フォー』のために絵を描いた。筆を執り、キャンバスに絵の具をのせると、画面に次々と大きな白い花が咲き、キャンバスは白い花で一杯になった。それはとても美しく、絶え間なく繰り返される白い花の開花と消滅を、私はずっと眺めていた。



鮮明に覚えていた夢を文章にしたもの。

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