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日常の一場面

男三人、東京へ行く

作者: はてな小僧
掲載日:2026/08/11

登場人物

渚 : 母

翔 : 父

昴 : 11歳・小学5年生

朔 : 7歳・小学1年生


「お母さん、ここ見て」


東京から帰ってきた昴が、膝をこちらへ向けた。


見ると、擦ったような傷ができている。


「どうしたの? 転んだ?」


「うん」


男三人で出かければ、まあ、そんなこともあるだろう。


今回は夫が息子二人を連れて東京へ遊びに行っていた。行きは新幹線、帰りは飛行機。どこで何をしてきたのか、私はまだ詳しく聞いていない。


「どこで転んだの?」


「空港」


「空港?」


「うん」


「走ってた?」


「走ってた」


「空港で走ったら危ないでしょ」


「だって、飛行機乗らないといけなかったから」


「飛行機に乗るのに、なんで走ってたの?」


「時間だったから」


「搭乗時間?」


「うん」


それなら急いでいたのも分かる。


「それで走ってたの?」


「名前呼ばれたから」


「名前?」


「放送で」


「……空港の?」


「うん」


「呼び出されたの?」


「うん」


「……お父さん、何してたの?」


「知らない」


一緒にいた昴が知らないのなら、留守番をしていた私にはもっと分からない。


「それで三人で走ってたの?」


「うん。お父さんが朔に『転ぶなよ』って言って」


「うん」


「俺が転んだ」


「昴が転んだの?」


「うん」


「どこで転んだの?」


「飛行機乗るときにつながってるところあるでしょ? そこ」


「ああ、タラップ?」


「そう」


「どんな転び方したの?」


「二メートルくらい滑った」


「二メートル!?」


思っていたより、ずっと派手に転んでいた。


「……それで、お父さんには何か言われた?」


「お前が転ぶのかよ」とか、「転ぶなって言っただろ」とか、そんな言葉が返ってきたのだろうと思った。


「言われた」


「なんて?」


昴は、そのときのお父さんを再現するように片手を上げた。


「うぇ〜い」


何をしてるんだ、あの父親。


※実話をもとにしています。

「うぇ〜い」も実際に言われたそうです。

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