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red wing 改訂前1

red wing最新話の改訂前の文章です。

 あたしをイカそうとして、油断したのだ

 そういうのを早漏っていうんだよね

 怒りと苦痛に満ちた、あいつの絶叫が聞こえる

 ダメだよ

 まだ終わってない

 あたしたちはまだどっちもイツてない


 そこには夢などなく

 怯えもない

 ただただ純粋な命の交わりがあって

 その二つの命が、死という細い境界線の上でダンスする

 最高のセックス

                             ~詠み人知らず、そして偉大なる師匠~


 なぜ山を登るのか? そこに山があるからだ。どこかで聞いたことがある、そんなやりとり。そうだ、何かをするのに理由なんて必要は、ない。

 人間は、僕はいつも一つのことだけをする。それはできることだけ。出来ること以上のことをする気はないし、そんなことする必要がある時は。自分でやるには怖くてできないこと、死ぬときだけ。

 僕は臆病なんだ。それも母親や、婆ちゃんが強姦されていようと、幼馴染が競りにかけられていようと、一緒に遺跡やら街やらを荒らしてバカ騒ぎしてきた仲間が目の前の、妙ちくりんな翼の生えた、2m前後の青入道にぶっ飛ばされていようと。たった一つのことしかできない。できない以上、何かしらの工夫をしなくちゃ、殺しなんて出来ない

 あたりを見回す。

 少なくともあの、子供にしか股間が反応しないモグリの医者はこの部屋のどこかで熟睡してるだろう。あいつは確か女の股から出るアレ以外の血を見るとデカイ杖持ってすっとんでいく奴だ。じゃなきゃあっちでせわしなく"まほう"とかいうのを編んでたあいつは挽肉になっていない。どっかの王国で騎士やってたらしい、やたらと身だしなみを気にするあいつも、そこらの化物よりも不気味な格好で天井に引っかかっていたりなんかしない。

 青入道はほぼ、どこでつけたのかわからない円形状の古傷とかを除けば擦り傷ひとつ負ってなくて、にやにやしながらこちらに歩み寄ってくる。

 そういえば、いきつけの酒場のオヤジが言ってた。オマエは騙されやすいんだから、やたら慣れ慣れしいヤツには注意しろって。僕にはあんな肌の青い友人なんかいない、記憶力に自信がなくてもわかる、完全に初対面だ。

 にやにやしながら、血まみれのツーハンドソードを持ちながら、歩み寄ってくる。



 じゃあ、敵だ。



 どうしよう、怖い。自然に、口の端が釣り上がる。

 心臓が、何時もより速い。

 自分の右腕の延長線上にあるブロードソードを、握り直す。

 親指と人差し指をリカッソにかけ、握り潰すように、強く、強く

 バックラを前に突き出す

 バックラの中心線は正中線と直角、それでいて、腕が千切れそうなほど前へ、前へ

 脇を締めて、切っ先まで全てをバックラで隠す

 フラウエン・ハット

 僕らしい、怖がりの構え


 青入道はいつの間にかにやにや笑いをやめてセンターガードに構え、いやアレはソードが正中線の左にズレているからプルークか?

 正直、どっちでもいい


 青入道のヤツはおそらくこちらを舐めきっている

 だってほら、重心の移動が遅い

 だから、やることはひとつだ


 構えを解かずに飛びかかる

 ヤツの切っ先をくぐり抜け

 牽制替わりのハウ

 案の定、ソード同士がぶつかり合う

 そのまま鍔で下に押し込む

 固定して、まずは腹に一発

 ソードが弾かれる

 下からアッパー気味に柄頭が打ち出される


 こいつは本命じゃない


 僕は顔で柄頭を受け止め

 間髪入れずに飛んできたシュナイデンを受け止め

 そのまま、ヤツの顔に唾を吐く


 たたらを踏んで後ずさるヤツの顔は目が点になったりこっちを二度見してみたりと中々愉快に変化する。

 コウモリを連想させる翼が生えていたり、肌が青かったり(殴った感じではペイントの線も薄そうだ)ソード使ってる癖に筋肉のつき方が拳闘やってるやつみたいに絞まっていたりでなんとなく気がついてはいたけど、どうやら青入道のヤツは人間ではないらしい。

 だってほら、相手の顔に唾を吐くって結構メジャーな、親愛の挨拶らしいじゃないか。そう酒場のオヤジも言っていた。だから間違いない。

 それを受けて、眉間にシワを寄せて怒り狂うなんておかしいじゃないか。みんなもそう思うだろう。


 だから、こいつは人間じゃない。

 人間じゃないなら、罪悪感なんて、湧かない。

 今、ヤツの目が据わった


 今度はヤツから飛びかかる

 オルクスからの突き

 バックラで弾く

 更に飛びかかる

 アッパー気味に柄頭が打ち出される

 よけられない

 顎を打ち抜かれる

 気合でカバー

 更に上からののハウ

 無理やりソードで受け止める

 重なりあう、ソード

 まずい

 相手のリール

 ソードが巻き込まれ、体の外に出る

 ソードが弾かれる

 スラスト

 下半身は崩されている

 ソードもバックラも弾かれている

 まずい

 避けられない

 まずい

 まずい

 まずい


 ぼきり


 青入道のソードが左腕に突き刺さる

 そのまま貫通して首筋を掠める

 首から血の吹き出す、ぬるりという感触


 助かった

 そして、チャンス

 僕の左腕ごとリール

 脇の下に挟み込む

 ぶらり

 バックラが垂れ下がる

 顎へと、切っ先を打ち込む


 青入道は悔しそうで、恨みがましい、この世の全てを呪い殺すような顔をしていた。

 もっと、楽しみたかったね


 ぼきり

 ヤツの失敗した、首へのスラスト

 血が吹き出す

 ぴーって、笛みたいな音

 まだ、死んでいない

 首からソードを引き抜き、今度は胸へ

 ばきり ぷちゅう

 心臓を潰した

 まだ、死んでいない

 横薙ぎにハウ

 そして、股間へ蹴り

 ぽきり ぶち


 青入道は全身をびくり、と大きく震わせた後、ゆっくりと地面へ倒れて行く。

 殺した

 青入道を、殺した

 あたりを見回す

 僕の足に、白い粘液がついている。


 ああ、なるほど


 こいつも、興奮していたんだ。

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