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7.魔物使いギルドにて

 砂の国は今日も快晴。ギラギラの太陽が道行く人々の肌を焼いていく。


(木がもっとたくさんあれば木陰ができるのになぁ)


 街の中心部にはデザートシュロの並木があったりもするが、少し外れると半分枯れているような木がポツリポツリと生えているだけ。木陰なんて現状では夢物語である。

 いつか国中を緑でモリモリにしたい。そんな野望を抱きながら、冒険者ギルドで教えてもらった場所へと向かう。


「……ラクダ屋さん?」


 たどり着いた先は、たくさんのラクダがのんびりと過ごす放牧地だった。角ラクダならまだわかるが、魔物でもなんでもないごく普通のラクダのようだ。


「そう思われても仕方ねぇな。副業なんだがなぁ、貸しラクダ」


「わっ!?」


 わずかな草を食んでいるラクダを見ながら思わず呟くと、真後ろから声がかかった。思わず驚いて大きな声をあげてしまう。


「おっと、すまんすまん。驚かせたか。魔物使いギルドへようこそ。貸し出し希望かい?」


「いえ、こちらに所属できないかなぁ……と」


「お嬢さんがかい?」


 途端に訝し気な表情をされる。


(そりゃ珍しいわよね。多分これからもこんな風に見られるんだろうけど……ううう、くじけそう)


 この国の若い女性は、大概お金持ちの花になることを望む。働く女性は所謂「負け組」と目される。そんな中、進んで働こうとしているザハラはかなりの変わり者というわけだ。

 覚悟してはいたものの、やはり毎度こんな視線を浴びるのかと思うと心が折れそうになる。脳内に楽しそうに踊るナプを召喚してどうにかやり過ごしたいところだ。


「つまりなんだ。お嬢さんは働きたいってわけか?」


「はい、そうです」


「まぁ……魔物使いギルドは来る者拒まずではあるが……なんかできんのかい?」


「魔物のペットがいるんです。なので魔物について学びたくって」


「はぁ~そりゃまた珍しいな。けど、学んだ方がいいってのは合ってるぞ。基本的に魔物ってのはペットにするようなモンじゃねぇからな」


 魔物使いギルドの職員らしいおじさんはウンウンと一人頷きながら、ポツンと建っていた天幕のような場所へ案内してくれた。どうやらきちんと学ぼう、という姿勢を評価されたらしい。嬉しくてちょっと頬が緩んでしまう。


「読み書きはできるか?」


「はい」


「ほんと変わってるな……。んじゃそこに名前と使役してる魔物を記入……するんだが、さっきの口ぶりだと使役はしてなさそうだな?」


「すみません、使役とペットに明確な違いがあるんですか?」


 ナプとはずっと一緒だった。それこそ家族のように。機嫌はなんとなくわかるし、進化した今は身振り手振り踊りで感情を伝えてくれる。

 だが『使役』という言葉については全く耳馴染みがなかった。


「おっと、そこからか。使役もせずよくペットにできてるもんだ。使役っていうのはまぁ魔法の一種だな。魔力で魔物と繋がりを作り、主従関係を結ぶんだ。……魔物によってはどっちが主でどっちが従かわからんくなる場合もあるが」


「そんなことが!? すごいですね! 物凄く強い魔物の場合とかですか?」


 好奇心が刺激され、勢いよく食いついてしまう。

 ザハラの勢いに押されたのか、おじさんは若干引き気味だ。


「お、おう。まぁ、強いってのもあるし、賢い、というのもあるな。つっても、そんなのは例外だ。大抵は使役できりゃあ人間が主になる」


「賢い魔物、なるほど……。私、魔物に関して全然知らないんです。ここに所属したら調べることとかはできますか?」


「へ? いやぁ……魔物使いがそれぞれ自分のやり方でやってるからなぁ。そもそも、使役するための魔法、従魔法っつーんだが、それも感覚でやってるところが多い」


「えっ……できれば私はその従魔法、ですか? を覚えたいのですが……」


 今後もナプと生きていくのであれば、恐らく従魔法というのは必須スキルになるだろう。ザハラがいくらナプが良い子だ、と主張してもその言葉に力はない。けれど「魔物使いギルド員が従魔法によって使役している魔物だ」となれば、少しは信用されるのではないか。

 とは言え、その従魔法を自分が覚えられるかどうか。


「あぁ、そっちはなんとなく体系化できてるから大丈夫だろう」


 あっさりとした言葉が返ってきたので、一旦胸を撫で下ろす。言葉尻に少々不安を感じるけれど。


「なんとなく、ですか?」


「色々と系統があってなぁ。元々魔法が使える人間であれば魔力を対象の魔物に渡して終了なんだ。だが、お嬢さんは多分魔法を使うタイプじゃないだろう? つーか、この国の人間はなんでか魔法に対する適性が低いらしいしな」


「知りませんでした。そうなんですね」


 この世界に魔法がある、ということは知っていた。しかしながら、ザハラは魔法を見たこともなければ、魔法使いだという人物に会ったこともない。強いてそれらしいのを挙げるとすれば魔道具だろうか。この砂漠の国でもなんとか乾かずに済むのはそれらのお陰だ。ただ、非常に便利な道具だと重宝していても、それが魔法だという認識はほとんどなかったように思う。おそらくこれは砂漠の民の、一般的な感覚ではなかろうか。


「お嬢さんも例に漏れず魔法があんまり上手くない可能性がある。そうなると、別の方法で使役するべきだな」


「ちなみに使役する明確なメリットというのはあるのでしょうか? 他者に対して『安全な魔物ですよ』と言える点の他に」


「今お嬢さんが言ったのはメリットっつーか、最低限の保証だな。他者に対しても、自分に対しても。使役されてない魔物っつーのは危険だからな。ギルドとしちゃ絶対に使役してもらいたい。あと、メリットとしてはギルド証があると堂々と連れ歩けるってのがあるな」


「わかりました。頑張ります!」


 ナプと一緒に街中を歩けるというのは、とても魅力だ。


(ナプはずーっと部屋にいたものね。魔物使いギルドに入ったら一緒にお散歩まで行けるんだ……。あ、ていうか、研究にも必須よね? ナプが自由に出歩けないと研究できないわけだから)


 この時点で既に魔物使いギルドに所属するメリットが満載である。


「他のメリットっつーと、魔物が野生の状態よりも強くなりやすいな。進化がある魔物だと、進化もしやすくなる」


「えっ!?」


「主人と繋がったことにより与えられる魔力が、何らかの形で進化に関与するのだろうってのが現在言われる通説だな。解明はいずれどっかの研究者がしてくれるだろうよ」


 その分野の研究にも興味をそそられるが、本題はそこではない。

 何故かナプは既に進化をしている。


「あ、あの、使役っていうのは魔法が使えない場合はどうしてるんですか?」


「ん? あぁ、そうだそうだ。そっちが一番大事だな。まぁやり方は色々あるんだが、一番手っ取り早いのは、主人の体液を与えることだな。一般的には血だろう」


「体液って言うと、涙とかでも!?」


「お、おう。そうだな。もしや、もう使役してるのか?」


「はい、多分。実は進化もしていて、もしやって思ったんです」


「ほう? もう進化を? そりゃあ大事にしてきたんだなぁ。種類はなんなんだ?」


「マンドルです」


 胸を張って告げると、何故か相手の表情が曇った。


【お願い】


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