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とりあえず、しばらくの間は私がアップしたインスタを魔王様が見るだけにして試験的に使ってみることにした。


「それで、なぜお前はこんなに飯ばかり載せるのだ」


「え、美味しそうじゃないですか?」


「そりゃまあ、うまかったが...」


屋台の朝食デートはすごく楽しかった。

何しろ見たこともない食べ物や豪快な調理法で地球に送れたらフォロワー数が爆上がり間違いなしだよ。


最初に買ったサンドイッチの中身の肉はベーコンみたいに燻製してあってそれにハラペーニョみたいに辛いソースがかかってた。

「このソースがおいしかったからパンを開けて見せてるの」

「そうか...」


ショッキングピンクのパンは着色料かと思ったら、なんと素材そのものの色だと聞いてびっくり。今度畑に連れていって欲しい。

「だから本当は畑の写真と並べたらもっと面白いよね」

「ああ、なるほど...」


肉串は屋台の後ろで捌いているのが見えたんだけど、足が八本もある巨大牛だった!

「捌いているところ見てたらお店の人が喜んで写真撮らせてくれたけど、やっぱりグロは駄目だわ。モザイクかけて正解」

「モザイクってなんだ...?」


魔王様とユリウスさんは一問一答づつ驚いてくれる。

しばらくして気がすんだのか魔王様は腕組みをしてため息をつく。


「俺にしてみれば普段の街だが、人間にとってみると珍しいんだな。見方が変わると新鮮に思えるもんだ」


「そうだね~、ここの人間の生活はわからないけど、地球と魔王様の国は全然違うから面白いよ」


「...?」


「うん?」


「お前、人間じゃないのか?」


「人間だよ。でも生まれはこの星でないのは確かだけど」


「な、なんだと!なぜそんな重大なことを黙っていた!?」


「え~?聞かれなかったから?」


「...お前は会話能力に重大な欠陥がある」

「やはりそんなに知能が高くなかったんですね」


「だって人間達には異世界人怖いって捨てられちゃったし、魔王様にも異世界人怖いって捨てられちゃったら困るしね」


「...一度拾ったものは簡単に捨てはしない」


ぷいって顔を背けているけど、魔王様いい人~。


「まあそんなこんなだから、また遊びに連れてってよ。インスタアップしたいしね」


「「軽いな...」」


何故か魔王様とユリウスさんに呆れられた。



インスタ開始初日

#異世界#魔王様#朝食#屋台#馬車#巨大牛



◆◆◆


「おはよう~」

「おお、おはよう。飯食ったか?」


魔王城の生活にも慣れて来て、お城のみなさんとも打ち解けはじめている。

厨房のコックさんであるワグナーさんは特によく話す。

2メートルくらいある筋肉質なボディにつぶらな瞳、羊の角がチャームポイントな彼はマトンとか調理するのは気にならないのかな。いつか聞いてみたい。


「今日の朝ごはんはなにかな~」


お城と言っても毎日舞踏会開いているわけでもなく、ドレスの女子がうろうろしてガラスの靴を落としたりしているわけでもなく、大抵の人は普通に働いている。

なので職員向けにでっかい食堂があるのだ。


「おお!なんか今日は朝からこってり~」


カウンターに数種類の料理が並べられ、ビュッフェみたいに自分でお皿によそうんだけど、私は毎回全種類を載せる。


今日のメニューは、赤と青の対比が目に優しくないサラダ、ビーフシチューのような煮込んだ肉、カリカリの干物、真っ黒なさやに入った豆。パン。


「いっただきまーす」

ちゃんと手を合わせて頂く。


赤と青の葉っぱはしゃきしゃきで苦味もなく食べやすい。ドレッシングは柑橘系だ。

ビーフシチューのような煮込み肉は舌で押し潰せるくらいホロホロで少し甘辛い味付けだ。

カリカリの干物は魚かと思ったけど肉だった。縦に割くと繊維質な肉がホロホロになる。みんなの食べ方を見ると細かくしてパンに挟んでる。具なのか?

真っ黒な豆は一つが親指と人差し指で丸を作ったくらいの大きさで、齧ると中から甘い汁が出る。デザートだ、これ。


一通り口にしてから写真を撮るためにもう一度サラダの葉っぱをよく見ると、双葉の右が赤、左が青なんだ。

フォークで持ち上げてしみじみ見てると、メイドのケリーが向かいにやって来た。


「何やってるの?」


「いや、どんな気持ちで半身を赤と青に分けたのかなって思って。私だったらどんな状況で必要に迫られるのかなって」


「相変わらず変なこと考えてるわね~。それより写真撮ってあげよか?」

催促するように手を出してくる。


「じゃあお願い」


「いくよ~はい、ポーズ」

カシャリ


「ありがとう」


「見せて見せて~」


私が城の中をうろうろしては写真を撮って、うろうろしてはそれが何か聞きまくっていたので、最初は怪訝な顔をしていたが今ではみなさんすっかり慣れてくれてむしろ写真に興味津々だ。


「これ、陛下も見るんでしょう?」


「そうだね、っていうか魔王様しか見てないね」


「お城の掲示板にこういうのの大きいのがあったらいいよね。そしたら今日のメニューとかわかるし」


「ああ、ケリーがサボってるところをスクープしたりね」


「さ、サボってないし!」

プードルみたいな耳をぱたぱたして慌ててる。


「おい、飯は終わったか」

魔王様降臨。


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