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「おはようございます!」


「早起きだな...散歩は自分で出来るようになって一流のペットだぞ...」


いやもう太陽が登ってずいぶんたってるから。

ついでに勝手に散歩するペットはただの野良だから。

私も学校休みの日にお母さんにカーテン勝手に開けられるとキレてたけどいい加減起きてください。


「魔王様、今日は街に連れて行ってくれるって言ったじゃないですか、早く行きましょう!行かなければ、行きます、行くときは、行けますですとも!」


「なんだその無駄な言葉使いは...」


真っ黒な前髪で片目を隠した顔色の悪い魔王様はのろのろとベッドから起き上がる。

寝るときも真っ黒なパジャマって中二病が根深いなあ。


「...おい、着替えるところを見るな」


「ええ?恥ずかしいんですか?あ、ねぼすけさんな魔王様ってタイトルで写真撮っておきます?」


「外で待ってろ!」

ぽいっとドアの外に出される。


「あなたはなにをやってるんですか...」


「あ、おはよー。血まみれドクターもう仕事?」


「私は血まみれドクターではないと何度も言ってるでしょうが。全く、名前も覚えないペットは捨てられますよ」


はいはい、宰相ユリウスさんね。

初めて会ったとき魔王様の部下だから血まみれコスなのかと思ったら、崖から落とされた私を担いで来て血まみれだったんだって。つまりその血は私のだったってこと。返り血ではないが血まみれだったのは私のせいだった、てへ。


「魔王様は今着替えてるよ」

「今日は街へ視察でしたか?」

「そう!すっごく楽しみだったんだ!」


がちゃり。

魔王様が部屋から出てきた。

前髪で半分隠した方の目に黒い眼帯をして、両手に黒い手袋、黒いローブに黒いシャツ、黒いパンツに黒いロングブーツってどんだけ黒が好き?


「いや~今日も中二病炸裂...」

「病気ではないぞ、朝が苦手なだけだ」


地球でこの格好の人と歩くのは無理でも異世界なので気にしない。というより気にしたら負けな気がする。


「さあ、行きましょう!どんどん行きましょう~」

「待て、朝食もまだだぞ」


「朝食は街で食べます!だって初めてのお出かけですよ?おしゃれなカフェとか見つけてテラスでモーニングとか食べてかわいいカフェとか見つけてお茶飲んで素敵なカフェとか見つけてランチとか食べて」


「食ってばかりだな」


「デートの基本はおしゃれな店でお茶でしょ?あとは映えスポットとかあるといいけど、魔王様って観光スポットとか知ってる?」


「...朝食を食おう」


「だよね!じゃあ、行ってきまーす!」


魔王様専用の馬車に乗り込んで走り出す。


「いやだから、視察、ですよね?」

ユリウスの呟きが置いていかれた。





「おお~結構広い!なんか街がヨーロッパ調?と言うかゴシック調?」


「朝食と言ったが、庶民は大体ああいう屋台で買って食べたりするぞ。あとちょっと値が張るが座れる店もある。どちらがいい?」


「どっちも!」


「はは、言うと思った」


魔王様は馬車を広場から少し離れた場所に停めさせる。

魔王様専用馬車っていうから刺々とかチェーンついてたり髑髏マークとか描いてあるのかと思ったら、案に反してなんの紋章もないただの黒い馬車だった。

なぜなら魔王様は人気者なので乗っていることがバレるとお忍びにならないからだそう。


「ほら、降りろ」

と言って手を出してくれる。


馬車なんて軽井沢の結婚式でしか見たことないけど、乗ってみると振動はすごいし車高が高くて乗り降りが大変だった。

魔王様はこうして手を貸してくれるのでなかなかジェントルマンなのだ。


「屋台は盛り上がるよね!あ、あれなに?」

すぐに突撃していこうとすると首根っこを掴まれた。


「勝手に歩くな。まったく散歩は主人の歩幅に合わせるってのを知らんのか?」

そう言って首にチョーカーみたいなものを巻かれた。


「なにこれ?あ、初めてのデートの記念?」

「なにがデートだ。迷っても見つけられる首輪だ」


まさかのマイクロチップ!? 埋め込まれなくてよかった...。


ご主人様に首根っこを掴まれたまま、屋台に向かう。


「へい、らっしゃーい...って大丈夫かお嬢ちゃん?」

屋台のおじさんがぎょっとしている。


「あ、気にしないで!これは私のお財布だから」

「誰が財布だ、こら」

「あ、間違えた、スポンサー。と言うことで、これ一つちょうだい!」


あいよ!と元気な声でおじさんが包んでくれる。


「ちょっと待て。なぜ一つなんだ」


「そりゃたくさん試すには半分こが基本でしょ?え、まさかその細さで大食いですか?」


「いや、普通だと思うが、ってそうじゃない。たくさんってなんだ?」


「屋台はここからですよ?まだまだ試すものいっぱいじゃないですか!」


ちらっとみると終わりが見えないほど連なる屋台の数々。


「これを全部か...」

「今日で無理ならまた次回もありですけどね!」


しかし試す気満々の笑顔に駄目とは言いづらかった。




読んでくださった方に感謝です!

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