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「もーなんですか、あれ?勇者より私の方がHP失いましたよ!中二病かと思いきやまさかのイケメンセリフで殺しにかかるとはさすがは魔王様、お見それしました!」
いつもの執務室に入ると恥ずかしさで叫んでしまう。
「なにを言っている。お前を勝手に持って行かれては困るし、お前だって人間達に言ってやりたいこともあるだろう?」
まさかのド正論!恥ずかしい、なんだかとっても恥ずかしい!
「全く、人間達はいつの時代も思い込みで生きていますからね。魔王様にきっぱり言って頂いて、ちょっとは伝わったと思いたいですね」
ユリウスさんもため息をつく。
本当に勇者の言っていることは人間だけの視点で、自分勝手で独りよがりだ。
「でも、勇者を一人にしていていいんですか?」
「ああ、どうせ監視はついているし、あいつ程度では何もできないさ」
勇者、ダメダメじゃない。て言うか、魔王城セ○ムついてんの?
「さあ、それより遅くなったが今日の朝飯だ。ワグナー達にいつも通りに動けと伝えておけ」
「畏まりました」
魔王様とユリウスさんの態度に毒気を抜かれて、かえって日常に戻ってしまったのだった。
◆◆◆
「娘よ、少し話がしたいのだが...いいか?」
今日も1日を終えて部屋に帰ろうとしていたら廊下で勇者に捕まった。
「え、ちょっと嫌かも」
「嫌...?だが‼️俺は知りたいんだ!なぜお前は魔王を信頼しているんだ!?なぜお前は魔族と暮らしていられるんだ!?なぜお前は」
「はい、ちょっと黙ろうね~」
思わず手で口を塞いでしまう。うるさいわ、この勇者。
私の部屋に入れてようやくほっとする。いくら魔王様が放っておいても城内のみんなに悪口を聞かせたくない。
「魔王様を信じるのは当然ですよ。人間が崖から捨てた私を拾って、怪我を治してくたんですよ?おまけにペットとして衣食住も完備だし休日もありだしなんならお出かけで奢ってくれるし」
「ペット!?やはり邪悪な魔王め...。若い娘をペットにするなど...」
「いや!言い方間違えた!いや間違ってないけど、意味が違うから!」
勇者は悲しそうな顔をして私の手を握る。
「大丈夫だ。もう誰にも後ろ指を指させない、一緒に帰ろう」
私は勇者の顔をじっと見つめて
「あなたはわかっているんじゃないの?本当は、人間と魔族、どちらが間違っているか、わかっているんじゃないの?」
と聞いた。
「な、なにを」
「あなた、魔族の血が入ってるんでしょ?どうして親戚かもしれない人達を攻撃できるの?もしかしたら、あなたの従兄弟かもしれない、祖父母かもしれない、そうでしょう?」
勇者の顔は驚きから、青から白く、そして真っ赤に変わっていった。
「俺が魔族混じりだって!?誰がそんなことを!俺は人間だ、俺は」
「ならいいじゃない、なんで怒るの?それに、魔族は恥じゃないから!あんた達みたいな心ない生き物じゃないから!」
二人で睨みあう。
「...なぜ、俺が魔族混じりだと思った?」
「魔王様が言ってたから。あなたの持っている剣はただの鉄屑だけど、あなた自身に魔力があるから魔王城の守りが壊れたって」
勇者は崩れ落ちて顔を両手で覆った。
「やはり...やはりそうなのか。俺は勇者になったはずなのに、魔族だったんだ」
面倒くさいなあ、この勇者。
放っておいてインスタの写真の整理を始める。
「...おい、娘」
「...」
「おい、聞こえているだろ!?」
「いや他人の部屋に居座って尚且つお前呼ばわりってなんですか?」
勇者はしゅんとした顔で
「す、すまん」
良く見ると金髪は汚れているし、顔色も良くない。
きっと急にやって来て魔王様にはかなわないし、救う予定の娘には拒否られるしで、途方にくれていたんだろう。
仕方ないなあ。
勇者を部屋から引っ張り出すと、城の食堂に連れて行ってご飯を食べさせ、私はぴちぴちの女子高生なので付き合ってやれないが城の共同風呂に突っ込んでおいた。