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昨今流行りの異世界転生と言えば、事故にあった女の子がヒロインになったりはたまた悪役令嬢になったりしてイケメンと恋に落ちたりするらしいけど、これはどういうことなんだろう?
体を縄でぐるぐる巻きにされて、なぜか崖の上に立たされている。ねえ、まさかここから落とすとか言わないよね?
こんなの火サスかお笑いのバンジーじゃないんだから、無理無理無理!
しかし話の通じない異世界人達はあっけなく私を奈落に突き落とす。
なんてことすんじゃ!死んだら絶対絶対怨んで呪いに行ってやる~!!
◆◆◆
目が覚めると、そこは白い部屋だった。
「夢...?」
「夢ではない。迷惑をかけおって」
びっくりして振り向くとそこには中二病最盛期みたいな格好をした男の人とハロウィンの仮装みたいな血まみれ白衣の医者がいた。
「あの、ここはどこですか?」
「魔王城だと言うことも知らずに捨てられたのか? お前は我が城の前庭に生ゴミとして落とされた。全く、何度言っても人間どもはここをゴミ捨て場だと勘違いして困る」
いやいやいや、魔王城ってなに?
学校帰りに歩いていて事故にも遭わないのに次の一歩が異世界で、現れた街の人々に病原菌みたいに扱われたと思ったら魔王城に廃棄って!?
「魔王様、捨てられるだけあってあまり頭が効いてないようです。これは飼っても仕方がないんでは」
「しょうがないだろう、拾っちゃったんだから。拾った以上飼う義務があるって教えたのはお前だろう?」
魔王様は義理堅いらしい。
人間より義理堅い魔王ってなんだよ、と思いつつも崖から落とすような人達と暮らすより断然いい。
「ここで働かせてください!」
あれ?なんか某アニメみたいな台詞だな。
「働くって、お前子供だろう?」
「私、17歳ですよ。はっ、もしかしてそんな目で...?でもパパ活みたいなことは募集してないんで!」
「なんか言ってることは分からんが不名誉なことを言われた気がする」
「魔王様、やっぱり捨てて来た方が良いんじゃ」
「わー! 魔王様が言ったでしょ?拾った以上飼う義務があるって! ACジャ○ンの広告見たことないの!?見せてあげるよ、優しく言っても捨てるのは罪だから!」
そう言ってポケットに入れていた携帯を取り出す。
よかった、持ってたカバンは人間に捕まった時に落としちゃったけど携帯だけは助かった。
電源を入れるとホーム画面が開く。
「うお!なんだこれは!?」
魔王様が飛び退く。血まみれドクターは指で十字を切る。いや、そっち?
「なにって、携帯だよ。これがあればグー○ル先生に何でも教えてもらえるし、コンビニで買い物もできる、ドラ○もんいらずでしょ」
検索エンジンを押しても現れたのは〈ネットワークに接続されておりません〉
そっかー!そりゃそうだよね!?異世界ネットワークは繋がらんわ。
がっくりと肩を落としていると魔王様が恐る恐る近づいてくる。
「そこに入れているのは、妖精か?」
は?妖精?
なんのことかと思ったら、ホーム画面の写真が小さい人を入れているのかと思ったらしい。
「これは写真って言って、その場を絵みたいに写すことができるの」
そう言ってカメラを向けてボタンを押す。
カシャリ。
あ、カメラ機能は使えるんだ。
びっくりして固まっている魔王様に写真を見せてあげる。
「ほらこれ魔王様」
「お、俺か?」
「確かに魔王様です。小さな魔王様がこんな板の中に転移させられるとは!」
いやいや、転移って本体あんたの横に立ってるでしょうが。
「これを~、こうして~、こうすると~。出来た!どう?かわいくない?」
プリクラ風に盛ってあげると血まみれドクターが吹き出した。
「ぶっふぉ!ま、魔王様の目がキラキラに、唇がぷるぷるのつやつやに!」
「やめろ!気色悪い!俺はこんな化粧をしてないぞ!はっ?もしかして俺に魔術で化粧を塗ったのか?!」
いやいや、そこまで出来たらリアルドラ○もん機能ですわ。
「いや~知能が足りぬかと思ったら我らが知らぬ文明を持っているとは思いませんでした」
「ほらな、見た目では分からぬものよ」
失礼なやつらだな。
「で、どうですか?働かせてくれるでしょう?」
魔王様は深く頷くと
「わかった。お前は俺の正式なペットに任命しよう!」
さすが魔王様、発想が鬼畜だわ。
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