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そのスキャンダル私が頂きます

恋愛小説を書いてみることにした

作者: 菖蒲月ゆふ
掲載日:2023/06/23

 俺は、新作を執筆しようとしていた。ジャンルは、巷で流行りの『恋愛』ものだ。


 しかし、俺はこれまで一度も恋愛ものなど書いたことがなかった。

 故に、いくつもの作品を読みふけり研究に研究を重ねる日々を送った。

 そして今こそ、その成果を実践する時と意気込んだものの、筆が進まずにいた。


 椅子に腰かけてから幾分の時間が過ぎたのだろう。腹が減って仕方がない。


 よし、一筆も書けていないが飯にしよう。俺は迷わず飯を食べることにした。

 先日買っておいた新作だというパンを頬張る。


 うまい……なんということだ。あまりの美味さに先ほどの焦りさえ吹き飛んでしまった。

 よし、今なら書ける気がする。俺は高まった闘志を筆に乗せ、執筆し始めた。


 主人公である少女の生い立ちを書き始め……やがて恋愛の相手との出会いのところまで書き進める。


 さあ出会いだ……出会い……情景が頭の脳裏に浮かんだ。

 よし、そのまま書いていくぞ……腕が動かなかった。

 何故だ。頭に浮かんでるんだぞ。何故書けないんだ。うごけ……だめだ。腕が拒否する。


 どうしても書けそうにない。

 仕方ないので紅茶でも飲んで休憩することにした。

 付け合わせに、果実のパイを頂く。


 この今までにない組み合わせはなんだ。甘酸っぱさと、渋みの出会いは!

 出会い……出会いか!!


 俺は、インスピレーションをへて、さっそく執筆の続きを行った。

 いける、いけるぞ! さっき迄の不調が嘘のようだ。

 心なしか筆か軽く思えるほどの速度で執筆が進んでいった。


 日々の研究は無駄ではなかったのだ。そのお陰でここまで書けているのだから。

 などと浮かれながら執筆していたが、またしても行き詰ってしまった。


 ヒロインと相手の逢瀬が書けない……。

 くそ、手が震える。変な汗まで出てきた……。

 ここまで書けたんだ。あと少しなんだ。がんばれ俺。


 いいか、書くぞ……腕が振るえるが書け……書くんだ。

 俺は、遂に一文字を書くことが出来た。


 やったぞー、この調子で次の文字も……。

 ま……まずい。吐き気がしてきた……。


 だが負けない! 俺は流行りに乗るんだ! ここで諦めるわけにはいかない!!


 俺は、何とか一行を書くことに成功した。


「あ、これやばいかも……」


 血の気が引いてくる。眩暈がする。

 なんだか……あたまが……。


 そこで俺は意識を失った――。




 ◇




 翌朝になり、俺は目を覚ました。

 気絶していたせいか、体が重く血の気も引いていたせいか、顔が青白くなっていた。

 まともに動けそうにないので、暫く横になることにした。

 なんでこんなことになった。

 恋愛ものを読んでる時は、こんなことはなかったはずだ。


 執筆すると、こうなるということは、まさか体が恋愛ものを書くことを拒絶しているのか……。

 そうなってくると致命的だ。自分の意志ではどうすることもできない。

 ……意志……意思か!

 意思をなくせばいいのか。


 俺は、動けるようになった後に町へと繰り出した。

 目的は、酒だ。こいつを飲めば拒否反応も鈍るはず。


 俺は大量の酒を買い込んで家に帰った。


 まず、一升を空けた。

 久々の酒は美味かった。研究の日々に明け暮れた体に、酒が染渡っていった。


「初めはこの位で書き始めてみるか」


 よし、多少汗が出てくるものの書けるぞ。

 また倒れるといけないからな。もう少し飲んでおこう。


 俺は更に、もう一升空けた。


「ハハハハハハハ、やばい気分が上がってきたゾ」


 俺は、ノリノリで執筆を続けた。


「そろそろ、酔いも醒めるかもしれないな。それはまずい、ひじょーにまずい」


 俺は、更に一升空けた。


 俺は、酔っぱらいながら書き続けた。もはや何を書いたか、いつ寝てしまったのかも覚えていなかった。


 気づけば、またしても朝になっていた。

 二日酔いのせいか、頭痛がする。


 俺は、出来上がっていた小説を見て驚愕した。



「エリーゼ、エリーゼったら、あなた今日はお茶会に行くのでしょう。ねぇ、聞いているの?」

 私は、声のするほうを




 ◇




「あっ、しまった」


間違えて書き込んでしまった。


「ちょっと、趣味の執筆に夢中になって……ちゃんと聞いていたの?」


 私は振り返ると、後ろにはお母さまが立っていた。


「すみません、お母さま。執筆に夢中になりすぎて聞いていませんでした」


「まったく、令嬢と在ろうものが嘆かわしい。もう一度言いますよ。」


「はい、お願いします」


「あなた、今日はお茶会があるのでしょう?」


「あ、忘れてた」


 私は、慌てて支度を済ませお茶会へと向かった――。




エリーゼについて知りたい方は、短編小説『婚約破棄ですって? ~そのスキャンダル私が頂きます~』を見ると分かると思います。

下部にリンクを貼って置きました。

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