弐拾九つ目の記録 悪魔を殺す悪魔 ③
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
高龗神は左腕を白い蛇の鱗で纏っており、その腕を昴に差し出していた。彼は何の感情も浮かべずに、獣の様にその腕を噛んでいた。
その行為に特に意味は無い。作るとするなら、昴の精神の安定だろうか。これは彼の悪癖なのだ。
そんな昴を他所に、彼等彼女等は話を進めていた。ここは昴のセーフティーハウス。誰にも見付からない隠れ家。
「獣の気配、と言いましたね」
「ええ、何度も殺してきたので」
ディーデリックとジョヴァンナの会話に入り込んだのは、アンジェリカだった。
「それって分かる物なのか?」
「見た所、貴方も何時か分かるでしょう。特に赤い瞳は魔術的に大きな意味があるので。……どうやら、それの所為で苦労をして来た様ですね」
「……成程、ボスがお前を嫌う気持ちが良く分かる。ずかずかと人の過去を分かったつもりで身勝手に我儘に歩み寄って来るその言動が――」
「傲慢、でしょうか?」
「ああ、そうだ。私も嫌いだ」
険悪な風が二人の間に吹いた。
すると、居た堪れなくなった虹が声を出した。
「恐らく詳しい個人までの特定は難しいのでしょう?」
「一人一人見れば可能です。まあそんなことをしてしまえば、すぐに逃げてしまうでしょうね」
「成程……私の魔道具も活躍させたい所ですが、死屍たる赤子の教会とは一切接触して来なかったのでどう探知すれば良いのか……」
「知ってはいたのですね」
「ええ。もう気付いているとは思いますが、私は魔女の逆十字所属の魔法使いですので。ある程度の接触は中世中期まであった様です」
「……死屍たる赤子のサンプルは一定量あります。冷凍保存なので解凍すれば一瞬で塵になるでしょうが。それがあれば出来ますか?」
「無理、ですねぇ。死屍たる赤子が必要、と言うよりはそれの原理その物が分からなければ……。……ついでにそのサンプルは何処に? 今すぐにでも持ってこれますか?」
「エジプトにあります」
「……今は入国が厳しいですね。内紛中でしょう? 中東諸国も情勢が不安定ですし」
「……一応、そこの軍事上層部に我等の同胞がいます。しかし……時間は掛かるでしょう。二日か、三日」
「現実的ではありませんね……」
すると、クラレンスが声をはっきりと出した。
「じゃあもうあのあっかい盃、盗んでトンズラすればええやろ。最初の目的はそれやろ?」
「死屍たる赤子の教会の目的が分からない以上、これまでの議論には意味が無いですわ。」
オリヴィアはそう言った。
「目的は何か。財産? それともわたくし達と同じ大きな力が宿る盃? それとももっと別? 何か分からない以上、死屍たる赤子の教会の構成員を何としてでも見付け出し、殺す。それを最優先にするべきですわ」
「だが何も分からない。人を殺すつもりなら発見された直後に使用人を殺すはずだ。だがそんな様子も無い。私達を狙ったのは単純に邪魔だったからだろうな」
「ええ、その通りですわアンジェリカ。流石御主人様の側近。……さあ、わたくし達がやるべきことは、死屍たる赤子を燃やすこと。それに依然変わりはありませんわ」
すると、昴の膝の上で跳ねている飛寧の頭まで、声を出し始めた。
「一応僕分かるんだよ! 不味そうな人間! メイドさんだったんだよ!」
その発言に、この場の全員が目を丸くさせた。
「ああ、そう言えば前にも……凄いですね貴方……」
「えっへん!」
「……それで、メイドですか。名前までは分かりますか?」
「さあ? だって言葉が違うんだよ。僕日本語しか聞こえないんだよ!」
「……まあ、ある程度特定は出来ますね。外部の人間では無いと言うことが分かれば、後は簡単です」
リーガンは事前に調べておいたあの屋敷で働く使用人の素性を纏めた紙を、机の上に広げた。
「死屍たる赤子の教会の信者には死亡届が出された人物もいるらしいですが、今回は確認出来ませんでした」
「……いえ、充分過ぎます。国籍から出身地まで、しかも両親、指紋からDNAまで調べ上げるとは……」
「怪しいとするなら、あくまで私の意見ではありますが、住み込みで働いている十人の使用人でしょう。この中でメイドは二人です」
リーガンは二枚の紙面を上にして、二人の女性の顔写真に指を指した。その二つの内の、片方にオリヴィアは指差した。
「……この、アーデルトラウトと言う女性、恐らくこの女性ですわね」
「何故ですか?」
ジョヴァンナの問い掛けに、オリヴィアは僅かに顔を顰めながら答えた。
「こちらの方が美人だからですわ」
「……理由になって――……あー……成程」
「屋敷の主人は独身。しかもまだ三十代ですわ。可能性としては高いはず」
「あー……そう言うことな……」
「説得力が違うな……」
「成程、流石オリヴィア。……これは流石と言って良いものか」
「色々闇深い……いや、まあ、独身なら良いのでしょうか?」
アーデルトラウト・ケルヒェンシュタイナー。整った顔立ちの彼女が死屍たる赤子の教会の信者だと言うことで、全員の意見は固まった。
すると、今まで一切言葉を発さなかった昴が、ようやく一声を出した。
「眠い」
「膝を貸しますよ」
「いらない」
「……ずっと私の腕を噛んでいて、ちょっとは労りの心とか無いんですか?」
「無い」
「何だか烏滸がましくなってません?」
「煩い」
昴はもう一度高龗神の腕を噛み始めた。
そんな昴にため息を吐きながらも、満更でも無さそうな顔を高龗神は見せていた。
その後の動きはとても素早い物だった。何せ特定まで出来たのだ。そして住み込み、帰る場所と言えば一つしか無い。
アーデルトラウト・ケルヒェンシュタイナーは、その屋敷へ他の使用人と共に帰っていった。
屋敷にやって来た祓魔師達は、この屋敷にいる悪魔は祓ったと主人に言った。その言葉を信じ、住み込みで働く者達を呼び戻したのだ。
アーデルトラウト・ケルヒェンシュタイナーは、自室に入った。しかしその部屋のベッドには、見覚えの無い女性が座っていた。
純白のドレスを身に纏い、その艷やかな長髪を靡かせ、仮面に隠された顔の瞳でじっと彼女を見詰めていた。
「初めまして。アーデルトラウト・ケルヒェンシュタイナーさん」
その女性の声は、不思議と聞き入ってしまう人魚の歌声の様だった。一瞬だけ虜になったが、アーデルトラウトはすぐにその場から離れようとした。
しかし彼女の足を止めるのは、座り込んでいる女性の次の言葉。
「死屍たる赤子の教会で、貴方は誰を生き返らせたかったの?」
その言葉に、アーデルトラウトは足を止めた。ゆっくりと振り向き、女性を穏やかな目で見詰めた。しかしその瞳の奥には、決して悟られない様に隠そうとしている、石炭の火の様な熱と苛立ちがあった。
その全てを見透かす様に、女性は微笑む。
「まあ、貴方もこんな所で話をしたく無いでしょう? 場所を変えましょう」
女性はそう言って立ち上がった。何をするでも無く、自分の後ろを着いて来る様に促しながら瀟洒に歩いていた。
アーデルトラウトは、何もせずに着いて行くしか無かった。
女性の白いヒールによって奏でられる一定の音色は、女性をこの世ならざる何かと声を出しているとさえ思えてしまう。
女性の奥に渦巻く禍々しい濁流、しかしその奥に確かにある妙な温かさ。アーデルトラウトは混乱の濁流に巻き込まれていた。
やって来たのは庭園の端に位置する薔薇の低木が並ぶ場所である。
「……何時、分かった」
「分かってしまうのよ」
「……そうか。……私は、救われたかっただけなんだ」
「……前に、殺したあいつも、同じ様なことを言っていたわ。どいつもこいつも救われたい、救われたかっただけ、反吐が出る」
「何が分かる」
「何も分かりたくない」
「何も分からないのに何故侮辱する」
「それは本来あってはならない。それは死者への冒涜になる。それは死者の眠りを妨げる。……せめてもう、眠らせてあげましょう」
「違う、彼は死んでいなかった」
「その彼は死んだのよ」
「違うッ!!」
アーデルトラウトはそんな怒声を浴びせた。
女性はそれ以上何も語らなかった。
「……貴方、何がしたかったの? 子を産んで、それさえも利用して、連れて来た悪霊にも細工をして、けれどそれも役に立たなかった。何もかも中途半端だし、もう少し上手く出来たはず」
「……私、私は、私がすることは、全部正義、正義なんだ。神が私の脳髄の裏にいる。脳髄の裏に潜んでい蠢いて、九本の触手を伸ばしている。だから、違う。私は、私は、正義……セイギ……? 私は、それを望んでいなかったはずなのに……」
アーデルトラウトは膝を崩して、その場に項垂れてしまった。
「……救われたかった、だけなのに」
昴はそれ以上何も聞かなかった。左手で前髪を掻き上げ、その瞳を正鹿火之目一箇日大御神と同じ色にさせた。
そして、昴は右手を項垂れているアーデルトラウトに向けた。
「死ね」
その手を、誰かが握った。アンジェリカだった。アンジェリカが昴の右手をしっかりと握り締めていた。
「……アンジェリカが、まさかこんな悪巫山戯をするとはな」
「私がすべきことは、ボスが受けられる最大限の利益を生み出すことです」
「この行為がそれだと?」
「ええ、私が思う限りは」
「……気でも狂ったか? それとも何だ、お前が思う僕の幸福は、弟の弔いでは無いとでも?」
「ええ、そう言ったつもりでしたが」
その隙に、クラレンスは項垂れているアーデルトラウトの頭部に向けて虹が作った旧型銃を突き付けた。
彼の手作りであり、試行錯誤の跡が良く見える。その弾丸は銃弾と言うより火の玉であり、着弾と同時に小規模な爆発を引き起こした。
アーデルトラウトの頭部は跡形も無く砕けた。その後は実に醜い物だった。体中から蛆虫よりも大きな蛞蝓に似た軟体生物が這いずり出て、悶え苦しんでいた。
不思議とそれに対しての嫌悪感は無かった。むしろ哀れにも思えてしまう。人の中でしか生きられなかった虫共は、所詮踏み潰せば命を散らす。
完璧を求めて抗いながらも、結局燃やされて死んでしまう。何を思って生きているのかは、想像しなくても良いだろう。結局そいつは意思も持たない蛆虫なのだ。
昴の頬に、飛び散った血が僅かに付着した。それをアンジェリカが拭うと、一切変わらない表情で呟いた。
「……もう、辞めて下さい」
「何を辞めれば良い。何を、辞めれば良い。答えろアンジェリカ」
「……不本意ではありますが、ボス、日本へ帰国して下さい。後処理は私達がやります。光にも連絡しますので、せめて精神が落ち着くまで、もう、何もしないで下さい」
「答えろ、アンジェリカ」
「……分かっているはずです。分からないと言うのなら、貴方はもうここにいては駄目です。本当に壊れてしまう」
「……大丈夫、心配のし過ぎだ」
昴は微笑み振りをした。
彼は、白いドレスを着たまま、セーフティーハウスに帰って来てしまった。
リーガンがある程度の雑務を熟しており、そんな彼を昴は労いの言葉も無く横を通り過ぎた。
「ああ、ボス。新しく仕入れておきましたよ」
「……そうか。ありがとうな」
昴はリーガンが投げた煙草の箱を受け取った。すぐに包装を開いて、そのまま一本咥えて、その場から立ち去った。
ふと立ち寄った場所には、ジョヴァンナがいた。チェスの駒を並べているが、どうにも配置がバラバラだ。しかし一人でやっているとも思えない。
ジョヴァンナが昴に気付くと、二度か三度手招きをした。椅子に座り、チェス盤のある机を挟んで、二人はチェスを始めた。
勝負が決まっていなかったチェスを呑気に始め、昴は火の点いた煙草を吹かしながら白い駒を動かした。
「自分勝手で我儘ね、駒の動かし方で分かるわ」
「嫌な言い方ですね」
「……何も言わないのね」
「何か言う必要がありますか?」
「いいえ、何も」
昴の一手は実に堅実で、しかし何処か奇抜さを感じさせる。それに比べてジョヴァンナの一手は攻めを重点に置いているのか、守りが少々疎からしい。
「私は敬虔なる信者。罪人に容赦はしません」
ジョヴァンナは盤面に力強く駒を置き、そう言った。
「イエス・キリストは罪人にも別け隔て無く接し救いました。罪人にも救いの手を。それが私の持論です」
「……慰めてるつもり?」
「まさか。私は敬虔なるキリスト教プロテスタント派、貴方を慰めている訳ではありません。勘違いも甚だしい」
昴は僅かながらに驚いた瞳をした。だが、直後に昴は口角を僅かに上げた。
煙草の灰を、チェス盤のすぐ横にある銀色の灰皿に落とすと、昴は僅かに強くジョヴァンナのクイーンの駒を自軍の駒で弾き倒した。
「ああ、成程、ジョヴァンナらしい。……私の思い通りにならないなんて」
「私は最近貴方のことが気になり始めましたよ。それこそ、惚れてしまう程に。全てを語らなくて良いですからね。楽で良いです」
昴の微笑みは崩れ、苛立つ様にチェスの駒を力強く盤面に置いた。
「……やっぱり、苛立ってしまうわね」
「……ステールメイトです」
「え? あ、本当ね」
昴は煙草を吹かしながら、背後に現れた魅白の手を撫でていた。魅白は昴を心配そうに抱き寄せているが、昴はそれを然りげ無く拒絶している様に見える。
「不倫相手とのキスは美味しいですか?」
「不味い。けれど病み付きにされてるの。それにこれは一度別れたのに、もう一度縒りを戻してしまったわ」
「……もう一人、不倫相手はいませんでしたか?」
「ああ、あれは二人目。これが一人目だとね。一人目がテーミスで、二人目はムネー」
「名前があるんですか」
魅白は小さく何度も啜り泣く声が聞こえるが、ジョヴァンナは何も聞かなかった。
「そう、名前があるの。掟の女神の名前が付いてるなんて、何とも皮肉ね。掟の女神はたった一人の悪魔に不倫中よ」
「……あまり詳しくはありませんが、テミスはゼウスがヘーラーと結婚したいが為に離婚しませんでしたか?」
「ヘーラーは嫉妬深い。故にゼウスはテミスと別れた。その前の妻もいたけど、ゼウスは父親と同じ様に丸呑みにしてしまった」
「……詳しいですね」
「宗教に関しては子供の頃に勉強したから」
昴は灰皿に煙草を押し付けると、啜り泣いている魅白の大きな手を撫でていた。
ジョヴァンナは何も言わなかった。それと同じ様に、昴も何も言わなかった。
「……本当に、楽で良いですね。貴方との会話は」
ジョヴァンナがそう言うと、昴はくしゃりと笑った。
昴はふらりと立ち上がり、もう一本の煙草を咥えて何処かへ去って行った。ジョヴァンナは無闇矢鱈に昴を追い掛けようとはしなかった。結局意味が無いのだから、合理主義に近しい彼女の判断である。
昴は密入国して来た身だ。帰国の為には様々な手段を有する。技術の向上と捜査能力の強固さに、昴も骨が折れるのだ。
故に今すぐ帰国は出来ない。昴は、魅白と共に歩いていた。
「……なあ魅白。何も言わずに、話を聞いてくれ」
「……ぽぽ? ぽーぽ」
「……本当に、何も言わなくて良いんだ」
二人は路地の石階段に座り込んだ。昴は何時買ったのか分からないスイーツを魅白に手渡した。
その後は、実に長い沈黙が響いた。人々の流れと魅白には理解も出来ない言語に溢れていても、妙に静かに感じるのだ。
「……十五年前、僕は――」
昴が語った自らの過去は、魅白にとっては取るに足りない物だった。彼女にとってその過去は、何も悪いことだとは思っていないのだ。
だからこそ昴は語ったのだろう。魅白だから昴は語ったのだろう。
所詮それは悪魔の懺悔。誰にも許されない悪魔の懺悔。誰も許さない悪魔の懺悔。神に愛されない悪魔の懺悔。
魅白は何も言えなかった。言いたくても何を言えば良いのか分からなかった。魅白はそれを悪いことだとも思っておらず、それで昴が苦しんでいることに疑問さえも抱いていた。
魅白は何も言わずに、ただ昴を抱き締めた。昴はそれを拒絶する。
「……もう、光に会いたくない」
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
ちょっと読み返して分かり辛いと思ったので、昴とジョヴァンナの会話の解説を。……自分の作品の解説って非常にアレな気がしますが……。
昴はジョヴァンナのことを「自分勝手で我儘」だと評しています。それに対してジョヴァンナは「嫌な言い方」と嫌悪を顕にしていますが否定はしていません。
だから昴は「何も言わないのね」と聞いて、「何か言う必要がありますか?」と聞き返しました。
これは、まだ出逢って日が浅いジョヴァンナは、まだ自分を見せていないと思い、昴がその心の内にある本当の性格を聞き出そうとしているんです。
ですがジョヴァンナは否定せず、それに驚いた昴はもう一度探って、外側だと思っていた性格はジョヴァンナの中身だと言うことに気付きました。
昴がジョヴァンナの心情を理解しようとしたのは、その方が扱い易く、同時に作戦を立てる中で個人間の性格に大きく作用される可能性があるので初めから知った方が良いからです。純粋に、他人に警戒しているって言うのもありますが。
昴は嘘を見抜くことが得意です。ジョヴァンナの「罪人に容赦はしない」と言う発言の中に自分が入っていないことに気付きました。つまりその後の昴の言葉は、意訳すると「俺は罪人だ。だからそんな慰めは意味が無い」と言っているんです。
勿論ジョヴァンナもこの真意には気付いています。だから「罪人にも救いの手を」と言いました。
ここで昴は一つ目の勘違いに気付きます。「罪人に容赦しないから、罪人を恨んでいる」では無く、「罪人に容赦はしないが、罪人にも救いの手を」と言うのがジョヴァンナの真意だと言うことを。
自分の予想と、心の中にあったジョヴァンナの人物像が間違っていることに気付いた昴は、そのまま濁さずに「慰めているつもり?」と聞きました。驚愕の余りに産まれた純粋な疑問が声として出てしまったんですね。
そしてジョヴァンナはこう返しました。「慰めている訳ではありません」と。
ここで昴は二つ目の勘違いに気付きました。ジョヴァンナはキリスト教の信者として、獣狩りのトップとして昴と話していました。ずっとジョヴァンナ個人と話していた昴にとっては鉛玉が首を貫通した程の衝撃でした。最初からジョヴァンナは「敬虔なる信者」と言っていたので、これには昴もびっくり。
キリスト教、いえ、イエス・キリストは罪人にさえも優しく接し、その罪を許しました。故にキリスト教の信者に求められるのは罪人さえも許す慈愛と差し伸べる手。
ですが、許されない罪人と言うのもあるんです。昴はその、「許してはならない罪人」だと思っていましたが、ジョヴァンナから見れば「罪を告白し懺悔するのなら許すべき哀れな罪人」だったのです。だからジョヴァンナは言葉の尻尾にこう付けました。「勘違いも甚だしい」と。
だから昴は驚き、そして慰めている訳では無いと言う真意も気付いたのです。昴は出来の良い頭でどんどんジョヴァンナの言動の真意に気付きます。
「慰めていない」→「ならば何故救いの手を?」→「ジョヴァンナは俺を許してはならない罪人だとは思っていない?」→「今までずっとキリスト教の信者として話していた?」→「なんて自分勝手で我儘なんだ!」つまりこう言う流れです。そこから更に、「とても身勝手で我儘ですが、私は貴方を許します」と言っているのだと理解しました。
そして、慰めている訳では無いと言うことはつまり、「許すと言っているんだからさっさとそれを受け止めろばーか。まあ、悩んでても良いんじゃ無いですか?」と言うツンデレみたいな心情にも気付きました。更に簡単に言うのなら「悩むのは別に良いが、私が許すと言ったら許す」と言う意味です。これは、獣狩りの教会としての言葉では無く、ジョヴァンナ個人として昴に掛けている「慈愛と柔和」の言葉です。
それでもやっぱり自分の予想が外れたからか、ちょっと苛ついています。
その後の発言で、ジョヴァンナが自分に対して「自分勝手で我儘な理由」に気付いて、それにずっと気付かなかったから、さらーに不機嫌になっています。
この二人は話を端折るので訳が分かりません。何なら私も分かっていません。多分これも完璧な説明ではありません。
ですが、良くこの二人は話を端折ることがあると言うことで、解説を致しました。勿論この解釈も正解と言う訳ではありません。あくまで作者が言っている考察の一つだと思って下さい。
いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……




