弐拾七つ目の記録 仏が死んだ日 ③
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
腐卵臭が頭の奥に不快感を残す。締め付けられる感覚は更に強まって行く。
抵抗しようと首を掻き毟っても、私の肌を削るだけ。爪に剥がれた皮膚の角質が溜まるだけ。
呼吸が出来ないことも、締め付けられる痛みも、鏡に映る不可解さから来る恐怖も、不安感も、その他諸々の不快感の全てに嫌悪を抱いた。
じんわりと瞼の裏に涙が溜まり、一滴か二滴程涙の粒が落ちた。
涙に揺れる視界に映る鏡には、私の首を締め付ける手が見えた。皮膚は腐り落ち筋繊維が見えており、虫が集っている汚い腕。
鏡に映る誰か。私の背中に立っている見窄らしく痩せこけて皮膚が腐っている誰かが立っている。
すると、突然鏡に映る、その誰かの頭に焼けた様な真っ黒い点が付いた。直後に私の背後からこの世の物とは思えない絶叫と悲鳴が聞こえた。
瞬間、隣にいた斎が一歩踏み出し、隠し持っていた脇差しを鏡に突き刺した。それとほぼ同時に、何時の間にか入っていた狛犬が鏡に握り拳を叩き込んでいた。
ぱりんと割れると、鏡の細かな破片を散らしながら、呻き叫ぶ絶叫と同時に私の首を締め付けていた感覚は消え去った。
半ば無理矢理入り込んだ新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込むと、咳き込んでしまった。
嫌な汗と目に浮かぶ涙を拭い、落ち着いて呼吸をすれば、先程まで感じていた嫌悪感も失くなってきた。
「……ふぅ……二人共ありがとう……」
……鏡に映り、鏡を割ると私の背中から悲鳴を発して消えてしまう。一体何が起こったのか。
「……あ、鏡、どうしよ……」
斎と狛犬は顔を合わせると、急に青ざめた。斎は急いで突き刺した脇差しを抜こうと四苦八苦し、狛犬はその場で頭を抱えた。
「一切考えて無かったッス! あーどうしよどうしよ……今月金欠なんすよね……」
すると、斎が脇差しが抜けた反動の所為で尻餅をついてしまった。
一旦女子トイレから出て、狛犬に色々な仮説を話した。
「それならサニタリーボックスとか探ってそうッスけどね」
「……気持ち悪……」
「……もう何も喋りませんッス……」
「ああそうじゃなくてね! 狛犬が気持ち悪いってことじゃ無くて! 餓鬼のそう言う情景を思い浮かべると生理的に気持ち悪く思っただけであって! 狛犬のその発言に嫌悪感を抱いたとかじゃ無いの! 日本語って難しいね! 主語の省略当たり前だもんね!」
危ない危ない。まさかそんな勘違いをするとは。
しかし、確かにそうだ。私の仮説が正しいとするならば、サニタリーボックスでも探って付着した経血でも舐めていそうだ。だが個室内にあったサニタリーボックスには特に荒らされた形跡は無かった。
……こうなった場合、私の仮説が間違っていたと考えた方が良い。もしや女子トイレに出現したのも偶然?
まず私の首を締め付けたのは何だったのだろうか。……ひょっとして餓鬼では無い?
なら襲って来たのは何だと言う話になるけど……まず餓鬼は鏡関連の話は聞いたことが無い。そうなると本当に分からなくなって――うーん? もしや、怪異存在? 鏡に映ったのは怪異存在の可能性がある……かな?
鏡越しではあるのだが、私にも見えた。それはつまり物理的干渉を受けると言うことだ。……まあ、そんなことを言ったら餓鬼の腕が見えたのは何故かと言う話ではあるのだが。
餓鬼の腕だけが飛び出して来た理由は……不明。一応水面と言う"境"ではあるのだが、いきなりと言うのが不可解だ。
そしてまた私が、襲われた。偶然だろうか。やはり何か人為的な、それこそ誰かの何かしらの意思があってやっている様にしか見えない。
すると、今まで話したがってそわそわとしていた斎が口を開いた。
「あ、あのぉ……多分ですけど……光さんを襲った存在は多分、誰かの式神だと思うのですが……」
「式神? じゃあ神仏妖魔存在?」
「いえ……何と言うか、誰かが学校に呼び寄せた怪異の様な……? 黒恵さんが執筆している調査記録に、カナエさんと言う物がありますよね? あれに近しいと、思います……はい……」
あれに近い……人間が頼んで動かしている怪異ってことかな? それだとやっぱりこの学校に……。
「トイレから出て来たのは少財餓鬼で確定?」
「はい……」
「そして、鏡にいたのはまた別の怪異存在……なーんか裏がありそうだね」
故意的に私を殺そうとした。餓鬼は偶然だとしても怪異存在は意図的なのだろう。解決されると困る事情がある?
それはそれで意味が分からない。
すると、少し煩いチャイムが響いた。その直後にこの学校の校長である宣之さんの声が響いた。
『えー、現在、旧館三階の女子トイレに、霊能力者の方々が調査及び解決をしている最中なので、生徒は迂闊に立ち寄らない様に。もう一度繰り返します。現在――』
嫌味に聞こえるのは何故だろうか。
「……逆に人が集まりそうですね」
「ねー。思春期の子達がこんな非日常的なイベントに首を突っ込まない訳が無いよね」
そこら辺を理解出来なかったのだろうか宣之さん。まあ、実際そこは問題では無いのだろう。宣之さんが私達に求めているのは安全だと宣言すること。ならば見られても、問題は無い。むしろ好都合。
……死にかけたのにこの仕打ちはあんまりだ。ならばやるべきことは一つ……ふっふっふ……! 理不尽な復讐をしてやる……!
それ以降何かが起こるはずも無く、その代わりに人が多く集まり、観客として押し入ろうとしている人もいた。そう言う人達は狛犬が止めてくれたけど。
結果として、昼になってしまった。
私達は明香さんと夏日ちゃんと一緒に昼食を食べていた。学食と言うのは良い物だ。昴君の料理程では無いが。
「誰か変な呪いとかやっている人がいないか……ですか……? さあ……? 私は特に聞いたことも無いですね」
「そうですか……。……それなら、何か祀られている神か、何かは?」
「あー……それは無いですけど、慰霊碑なら。東京はそう言う物が多いですから……この学校は世界大戦中に避難した人が集まって、死んでしまった、特に多かった餓死者を弔う慰霊碑と、十体のお地蔵さんがあります」
斎と明香はそんな会話をしていた。成程、餓死者を弔う慰霊碑。
餓鬼と言うのは仏教の言葉だが、民間信仰的には、専ら餓死者の怨霊や死霊を指す言葉として用いられる。この学校に餓鬼が出て来たのはそう言う理由だろう。
……だとすると、何故今なのか。
「あーあのその年の卒業生が肝試しとして使うあれ?」
「そう、それ。偶に黙祷するでしょ?」
「私あれが何なのか良く知らなくて」
「入学した時に説明されたよ?」
「私多分その時怪我が治り掛けで意識が曖昧な状態で学校通ってたから」
「それはそれで心配だよ夏日ちゃん……」
……あの時は本当に、昴君にとっても夏日ちゃんにとっても最悪な一日だっただろうなぁ……。
私にとっても最悪で、昴君にとってみれば更に最悪で、夏日ちゃんも昴君と同じくらい最悪だったはず。……思い出すのは辞めよう。私が泣いてしまう。
さて、向かう場所は決まった。問題は、未だに犯人の素性も目的も何もかもさっぱり分からないことだ。それが何よりも不気味だ。
未知と言うのはこんなにも恐ろしいとは。故に私は、その未知を解き明かそうと全てを隠している神秘のヴェールを剥ぎ取りその先を見詰めようとしているのだ。
見えれば、恐ろしさは半減するのだか。
昼食を終えて、私達はその慰霊碑へ向かった。この学校の敷地は相当広い。東京の土地とは言え、やはり都心部を離れると土地も余ってしまうらしい。
校舎の裏、そこに隠されている様に、ひっそりと、それはある。一枚岩が立て掛けられ、人名があいうえお順でずらりと刻まれて並んでいる。その右に苔生した地蔵が、何個か並んでいる。
地蔵と言っても私の腕の長さと大体同じ大きさで、少しだけ小さい物だ。
全員穏やかな笑顔を浮かべながら、手を合わせている。
すると、影に隠れている、と言うか影に隠れてしまっている所為で気付かなかったが、宣之さんが地蔵に手を合わせていた。
宣之さんは私達に気付くと、小馬鹿にした様な笑みを浮かべた。
「ああ、君達。……まあ、確かに、怪しいならここだな」
まだ信頼し切っていないらしい。怪しげなオカルト調査員を信じ切ることの方が難しいのは確かだが。
「だがここは死者を弔う場、軽率に荒らすのは辞めてくれよ?」
「分かってますよ。そこら辺の良識はきちんとあるので」
……この慰霊碑に刻まれている名前の中に、宣之さんと同じ苗字の人が一人だけいる。つまりまあ……そう言うことなのだろう。宣之さんがここにいる理由は。
さて、それはどうでも良いのだ。ここにある違和感の一つの方が重要だ。地蔵が九体だ。明香さんは十体と言っていたのに関わらず。
「宣之さん、一つ聞いても良いですか?」
「何だね立花光さん」
「何で地蔵が一つ減ってるんですか?」
「特に何かがあった訳では無い。先週、修理に出しただけだ。悪質な悪戯でな、頭部を叩き壊されていた。全く、最近この学校の品くらいを下げる様な学生が多くて困る」
0から2に増えて多いって言うのは……まあ、増えたと言えば増えたけど。
「……まさか地蔵が失くなったからだとは言わんだろうね」
「さあ? まだ分かりません」
「早くしてくれよ。生徒の多くが心配しているのだ」
「分かりました。明後日までには多分解決出来ます!」
恐らく明日、より正確に言うなら仏滅の日。何かが積極的に起こるのならそこだろう。
ふと隣にいる斎を見ると、何だか顔が青い。息も荒く辛そうで、妙に前傾姿勢だ。視線も何処を向いているのか、虚ろでぐるぐると目を回している。
「……斎、ちょっと休もうか」
「……ありがとうございます……」
学校の中に戻れば、徐々に斎の顔色が良くなって来た。案外簡単に戻って驚いた。
斎は僅かに息を吐き出すと、それ以上に空気を吸い込んだ。
「……ああ……あそこだけは、無理です。本当に……。……むしろ何であの人は大丈夫なんでしょうか……」
「そんなに?」
「……全員、全員です。全員残っているんです。……慰霊碑に刻まれた方々が、全員あそこにいるんです。……全員が、溶け合って、重なり合い、そして大きな物に……あぁ……むしろ何故今まで何も起こらなかったのか……」
そんなに強大な幽霊存在が……?
あ、でも元々斎が東京に来た目的はそう言う数百体重なった幽霊存在の退治だと言っていた。珍しくはあるがいるのだろう。
「……互いに共通した恨みか……それとも……後悔か。兎に角共通したそれがあれば……集まり易いのでしょう……」
「……飢餓、かな」
「恐らく……姿も餓鬼のそれと非常に似ていましたので……」
原因は分かった。だが何故今なのかがまだ分からない。地蔵が失くなった時からだろうか? それならば現象は前週から始まっているはずだ。
そして、斎が呟いた一言。「むしろ何であの人は大丈夫なんでしょうか」
宣之さんはあの場にいて襲われていない。……ふーむ、怪しい。何か怪しい。
まさか? 私を殺そうとしたのは宣之さん? ……いや、証拠が揃っていない。余りにも早計で軽率な仮説だろう。……一応容疑者として、頭の隅の隅の片隅に入れておこう。
「どうするッスか? これ以上調べる所が無いッス 行き止まりに直撃しちゃいましたッスけど」
「……一応、まだ残ってる。ほら、女子トイレに入って落書きしたって濡れ衣を着せられた男子生徒が」
「あー、そう言えばいたッスね。つまり明香さんに聞いてくれば良いんすね! 行って来るっす!」
そう言って狛犬は全速力で走り始めた。その姿は飼い主を引き摺る速度で走る大型犬に似ていた。
大丈夫かな……まあ大丈夫か……いややっぱり大丈夫じゃ無いかも……。
だが、思っていた以上にすぐ戻って来た。話によれば今現在停学処分らしい。しかも狛犬はその生徒の担任にまで行って、住所まで聞き出したらしい。こう言う裏方作業なら狛犬は非常に有用だ。
無論すぐにバスを使いその住所へ向かった。
「……斎さん。ちょっと思ったんすけど、あそこにいた幽霊存在って人を襲う奴なんすか?」
「……どうでしょう。しかし被害が出ているので……それにしては穏やかな……しかし、光さんを襲ったあれは確かに……悪意がありました」
「なーんか理由がありそうッスね」
私は狛犬と同じ意見だ。何か理由がある。腑に落ちない点も多くあるのだ。
やって来たのは東京都中野区の一軒の住宅。特に特筆すべき点も無い一般的な住宅だ。狛犬はすぐにインターホンを鳴らした。行動力が素晴らしい。
『……誰ですか。保護者はいません』
「あ、どうもッス。"尚村真"さんッスか?」
『……そうですけど……』
「学校の、あの文字についてッス」
『……警察の人には全部話しましたけど。……と言うかそんなチャラそうな見た目の人が警察とは到底……』
うーん、至極真っ当な感性……。
「ちょっと変わって狛犬」
「あ、はいッス」
カメラには私の姿が映るだろう。まだ通話を切らないと言うことは、疑心暗鬼ながらに自分の冤罪を証明したいのだろう。
「五常夏日は知ってます?」
『……ええ、そうですけど』
声色が若干変わった。流石昴君の妹。人誑しの才能が充分にある。この場合は初恋ハンターだろうか?
「夏日ちゃんに頼まれたんですよ。話をしてくれませんか?」
僅かな沈黙が流れると、家の中からどたどたと足音が聞こえた。かちゃりと鍵が開く音も聞こえると、ゆっくりと扉が開いた。
「初めまして、真さん」
「……初めまして」
「ああ、立花光です。夏日ちゃんの、兄の、恋人です」
「……はぁ、成程」
やはりまだ疑心暗鬼らしい。唐突に押し寄せて来た謎の三人組と言えば、新手の強盗にしか見えない。もしくは美人局。
「……お兄さんは婚約者と一緒に駆け落ちしたと聞きましたが」
「伝え方に語弊があり過ぎるよ夏日ちゃん! 一部分合ってるけど誤解だよ夏日ちゃん!」
まあ、確かに、掠っている部分もあるにはあるけども……言い方が酷い!
住宅に入り、遠慮気味に椅子に座って、話を始めた。
「……さて、何処から話すべきか……まず一つ、貴方の所為では無い、これは確かですよね?」
「勿論です」
……嘘は吐いてない。仕草も不自然さは無く、むしろ自分の家だからかリラックスしている。嘘を吐く場合、余程の虚言癖持ちか昴君みたいな嘘を吐くのに慣れた人以外は、集中力を滾らせ緊張してしまう物だ。だが、この人からは緊張を感じない。
……けれど隠してることはある。ちっぽけな物かも知れないけど、後ろめたい何か。
「何かそれ以前に、不思議なこととか、不気味なこととか、そう言うのはありませんでしたか?」
「……あの、本当に……その」
「……あの女子トイレには侵入したんですね」
「……はい。……済みません……」
あの文字を書いたことの否定、それは通常、同時に女子トイレの侵入を否定することである。まあ、あくまで通常で、一般的な場合のみである。
今の警察は優秀である。指紋認証はどれだけ軽い事件だとしても多用される程に量産、そして簡易化、そして有益さを保証されている。
そこに一つだけあった男子の指紋。学生特有の悪巫山戯か、将又強要か。恐らく警察と学校は悪巫山戯として認識しているのだろう。まあ、実際侵入まではそうなのだろう。
「……なんて言うか、悪巫山戯なんです。悪ノリって言うか、その……」
「警察には言いました?」
「……言えなくて……済みません」
「じゃあ警察には言わないでおきます。勿論先生達にも」
これが心理学の正しい使い方である。
「友達との悪ノリで、勝手に入りました……。……あそこは人が入ることは中々無いので……」
「……何かありませんでしたか? 些細なことでも何でも」
「些細な……ああ、でも、確か妙に臭かったです」
……うん、まあ、それは仕方無い。男子とは違うが女子もまた違う臭さがある物だ。
いや、そうじゃ無いかも。まさか?
「腐卵臭とかですか?」
「腐卵臭?」
「理科の授業で習いませんでしたか? ほら、硫化水素とかの、腐った卵みたいな匂い」
「あー……確かにそう言われてみれば……」
彼は頭を捻っていた。どうやら当たっているらしい。
流石に腐卵臭まではしない。……もしかしたら体質的にキツイ匂いをしている子がいるかも知れないが、元々余り使われない女子トイレ。腐卵臭の異質さだけが残る。
つまり……真さんが原因で、何かが発生した訳では無い。やはり原因は地蔵が失くなったこと。……いや、それだとまたおかしい。
斎が感じた幽霊存在、それが動かずにじっとあそこに鎮座しているのは、斎の証言で分かる。なら襲ったのはあれでは無い。いや、もしかしたら超常的な現象で可能ではあるのかも知れないが、少し考え難い。
無論まだ良く分かっていない存在、一般的な感性で語るのは駄目だと言うのは理解している。だがやはり違和感を感じる。
その他にも気になっていることを聞き出してみたが、何も進展は無かった。
学校へ戻るバスに乗り込み、私は深い思考の海へと漂った。勿論浮き輪を付けている。
まず一つの不可解な点。誰かが故意的に私を、より正確に言うなら私達かも知れないが、殺そうとしている人物がいること。
二つ、校舎裏の慰霊碑にいる巨大な幽霊存在。斎が恐れて顔が青ざめていると言うことは、余程強い存在なのだろう。だが犯人とは到底思えない。
三つ、私としてはこれが一番謎だ。何故窓に、あんな文字を書いたのか。
殺そうとしている人物と同じ人? それならその人の指紋も残っていそうだ。いや、私の首を締めたあの存在が、鏡の中にいて、写っている景色に何か干渉出来るのなら、女子トイレに侵入した後に手鏡か何かで窓を写せば簡単に……。
いや、それなら監視カメラに映りそうだ。つまり容疑者は二人になる。だが、口振りからして容疑者は真さんだけ、二人目はいない。
……あの怪異存在、いや、類似的神仏妖魔存在とでも名付けようか。その類似的神仏妖魔存在は鏡の中を行き来出来ると言う仮説を立てよう。
鏡、現在の鏡は基本的に硝子に銀を吹付け、斯々然々紆余曲折あって鏡になる。つまり硝子も鏡だと認識すれば……?
認識、正しく言うなら信仰、悪く言うなら思い込みか、それとも思い違いか、考え過ぎ。ああ言う存在にとって、それは力の根源である。
神は人が作った、それはある意味において正しいと証明出来る。
つまり侵入せずとも、鏡に文字を書ける……かも知れない。
「斎、あの式神は術者から離れても行動出来る?」
「……分かりません。まずあれは、黒恵さんを参考にするなら怪異存在。一般的な式神ではありません。ただ……元となっている儀式の詳細に、もしかしたら記載があるかも知れません」
「……次はそれの調査かな」
遠回り、遠回りだ。だが、遠回りは最短の道と、死刑執行人の家系の長男も言っていた。
「一筋縄では行かなさそうだね」
「やる気に満ち溢れてすッスよ俺! 何せ今日の俺はテンションマックス! 多分明日もッスゥー!!」
……声が大きい……。元気なのは良いことだけど……。
「と、なると今度は図書館とかッスかね?」
「図書館にそう言う物があるかなぁ?」
やっぱり明香さんに聞いた方が良いだろう。あの人が知っているかは別として。
戻った頃にはもう下校時間に近い。今やっている授業で最後らしい。都合が良いと思うべきか、将又これからが本番だと思うべきか。
図書館に勝手に入るのも少々忍びないが、行動力の化身である狛犬は容赦無く入り、すぐに怪談系の本を読み漁り始めた。
やはりこう言う時に黒恵とミューレンがいればすぐに分かりそうだ。それとも買い被り過ぎだろうか?
分かっていたことではあるが、特に似た様な記述は見付からない。もし学校の生徒があれを従わせているのなら、図書館にある本の記述にある都市伝説とかの怪物とかだと思ったのに。それとも個人的に所有している本に記述があるとか?
「……無い、ですね。それに、こう言うのは余程のことが無ければ現れません」
「黒恵の調査記録だと現れたよ?」
「あれは何と言うか……黒恵さんが特殊と言いますか、やはり力があると言うのが大きいのでしょうか……?」
「只の一般人がやっても意味が無いってこと?」
「複数人がやるならその分成功確率は上がるでしょうが……どうでしょうか……私の経験談なので、確かなことは言えません」
斎の経験談程有用な情報は無い。もっと色々話して欲しいのだが……まあ、今は良いや。
「……見付からないッスねぇ。鏡の中にいる奴はあるんすけど、それを呼び出すとかは全然無いッス」
「うーん……やっぱり明香さんに聞いた方が良さそうだよ」
それにこの学校には……恐らく明香さんもそこをおすすめするだろう。
すると、授業終了のチャイムが鳴った。後もう少し経てば、下校の時間になるだろう。つまり部活動が活発になる。
少し待っていると、ちらほらと下校を始める生徒が現れ始めた。
すると、何時の間にやら夏日ちゃんが斎の背後に忍び寄っていた。そのまま斎の耳元で大声を出すと、斎はちょっと人間では思えない悲鳴を喉から出しながら腰が抜けて倒れてしまった。
「あ、ちょっとやり過ぎちゃった。だいじょーぶですか?」
「……あたまがくらくらするぅー……」
「あーこれは本当にやり過ぎちゃったね」
あんまりそう言う悪戯は程々に……私が言えることじゃ無いけど。
「夏日ちゃん、この学校に、オカルト系の部活があるよね? 案内してくれる?」
「オカ研? またまたどうして?」
「ちょっと聞きたいことがあってね」
「うーん……いるかな。あの人達みーんなすぐに帰っちゃうし。あ、でもあんなことがあったから活動してるかも! じゃあ着いて来て!」
夏日ちゃんは私の手を引いて、元気良く走り始めた。相変わらず明るい性格だ。
一つの空き教室の扉を開け、夏日ちゃんはその教室の中を覗いた。三人、あ、端っこにもう一人いる。四人の姿を確認すると、打って変わって礼儀正しく会釈をした。
「失礼しまーす」
「……ああ、えーと、二年の……?」
「二年の五常夏日です。ああ、用事があるのは私じゃ無くて、こっちの――」
一斉に彼等の視線は私の方に向いた。
「おにぃと駆け落ちした婚約者の光さんです」
「一部分合ってるけど誤解だよ夏日ちゃん!」
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
ぐだぐだと長くなってしまい大変申し訳御座いません……。
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