弐拾七つ目の記録 仏が死んだ日 ①
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
黒恵とミューレンがいないと言うのは、何だか寂しく感じてしまう。
どうやら和歌山県に行っているらしい。それに昴君も死屍たる赤子の教会の信奉者の対処の為に出払ってしまった。
……大丈夫だろうか。特に昴君は最近精神面が不安だ。今回で更に酷く、PTSDとかフラッシュバックが起こらないと良いけど……。
……いや、確実にそうなる。絶対に今日は帰って来ない。何でもかんでも苦しいことも全部一人で抱えて一人で吐き出すから絶対に泣いてる。でも今回ばかりは同行したいって言っても無理だっただろうし……。
色々昴君に言いたいことはあるが、昴君も自分が精神的に酷いことになることを知っていながらなのかは分からないが、連絡出来ない。
「……はぁー……明日帰って来れば早い方かな……。……早く、帰って来てよ」
事務所のソファーで横になりながら、私はそんなことを呟いた。
向かいではミャクが黙々と仕事をしている。ミャクは税理士が出来ることは粗方出来る。流石狸。
「何じゃ光殿。先程からじろじろ見おって」
ミャクは二本の太い狸の尻尾を揺らしながらそう話し掛けた。
「んー……昴君が帰って来るとすぐに甘えて来そうだなーって」
「確かにのう。すぐに儂の尻尾に飛び込んで来そうじゃ」
「違うよすぐに私に泣き付いて来るよ」
「……まあ、そうじゃのう。初対面のあの圧倒っぷりと威圧感は何処へやら」
「それも含めて昴君だから」
彼には強さがある。それこそ他の追随を許さない程強烈で褪せることの無い絶対的な強さが。それに反比例する様に精神的な脆さがある。
故に彼の肉体的な強さはその時の精神面で上下する。まあ、昴君はそう言う人だ。だからこそ沢山甘やかす様に口を酸っぱくしているのだが、昴君は余り弱い自分を見せたく無い様だ。
すると、事務所の扉が開く音が聞こえた。やって来たのは斎と狛犬だった。
「あれ、光さんだけなんすか。師匠は?」
「ちょっと用事があってね」
「へー。光さんから離れるなんて、珍しいこともあるんすねぇ」
……妙な所で勘が良い。何時もはぼけーっと過ごしてるのに。
せめて今日は平穏で特に何の面白みも無い平凡な日常が過ごせる様に、願っておこう。
だが、どうやら世界はそんなことを許してくれないらしい。この世界の唯一で絶対的な神は相当性格が悪いらしい。
事務所の扉が開く音が聞こえた。今度は依頼人だろう。せめて勘違いか、あの中学生なことを祈ろう。
すると、快活で明るい声が聞こえた。
「やっほー光さーん! おっはよー! あれ、おにぃはいないんだ」
やって来たのは昴君の弟、夏日ちゃんだった。髪型も髪色もがらりと変わっている。それに、あんなに外は寒いのにミニスカートだ。寒くないのかな。
「いやーおにぃがこんな怪しい場所で働いてるって聞いてびっくりしたけど、覚えてて良かったー!」
髪は金髪に染め、肩に流しウェーブを作っている。見た目だけなら……うん。美人局みたい……と、思うのはちょっと失礼だろうか。
だが、自前の人当たりの良さと、気持ちの良い笑顔と、昴君とそっくりの聞くだけで心が安らぐ清流のせせらぎの様な声のお陰でそんなイメージは一切無いが。
「……光さん、この方は……? もしや……?」
斎が少しだけおどおどしながら私にそう聞いた。
「そう、昴君の妹」
「あの人妹いたんですね……。そんな話は一度も……」
「まあ、ちょっと色々あったからね。ああ、兄妹関係は良好だよ。色々あったのは両親の方」
……まあ、本当にクソッタレで、この世界で生きていたと言うだけで不愉快極まりない昴君の両親は、もう誰かに殺されてしまったが。
多分、私達の前に現れたあの人。救ってくれたあの人だろう。今だから分かる。あの人は、多分神仏妖魔存在だ。
目的も、パンドラと戦闘していた昴君の前にもう一度現れた理由も、詩気御さんがその正体を知っていそうな口振りをしていたのも、全てが分からないが……まあ、今は考えないでおこう。
「黒恵さんはいないんですね。良かった」
「珍しいことを言うね。そんなに黒恵が苦手?」
「苦手って訳じゃ無いんですけど……あの人はとても優しいですけど、怖い人ですから」
何だか珍しく感じる。黒恵に怖い印象を受けるなんて。
「ああ、こんな話する暇は無いんだった。ほらー! 早く入って来てよかいちょー!」
すると、恐る恐る事務所の扉から顔を出す眼鏡の女の子が出て来た。生真面目そうな性格が滲み出ている。
ロングスカート、制服もきっちり着こなしている。皺の一つも無ければ、髪の手入れもばっちり。入って来る時の挨拶も完璧。出来過ぎる子で逆に心配になってしまう。
「……ねぇ夏日ちゃん、本当にここ大丈夫?」
「まあ大丈夫じゃ無い? おにぃだからまた悪どい商売を始めたって思ったけど、立案者はおにぃじゃ無いみたいだし」
「夏日ちゃんのお兄さんって何やってるの……?」
「んー……人には言えない様なこと?」
マフィアの頭領をやってるなんて、確かに人には言えない様なことだ。
「それに私、お金も持ってないし、こんなことに学校の予算が下りる訳も……」
「だいじょーぶっちゃ! お金ならおにぃの仕送りがある! その額何と七桁超え!」
シスコンもそこまで来ると恐ろしい。まあ昴君にとっては端金……かな? それでも相当な額だとは思うけど……。
「わざわざあんなことに……それに悪いよ」
「だって、そうしないと本当に解決しないよ? 一度信じてみよ? ね?」
夏日ちゃんの説得に折れてしまったのか、諦めた顔で会長と呼ばれた女の子はため息を吐いた。
すると、何時の間にか温めておいたお茶の用意をしていた狛犬が、人数分のコップにお茶を注いで、二人に座る様に促した。
「いやー師匠の妹さんって言うなら、聞かない訳にはいかないッスよ。まあ今お兄さんいないんですけど、多分大丈夫ッス。呪いに怨霊、将又妖怪に怪談、調査し出来るなら解決致しましょうッス!」
こう言う時に狛犬は便利だ。明るい顔と雰囲気を無意識的に出せる。不安な心を癒やし、その奥にある話を引き摺り出す。対話の手法としては完璧だ。
「……あ、忘れてた。私、"波多野明香"と言います。都立第三教育高等学校の生徒会長で……えーと、そのー……何と、言うか」
都立第三教育高等学校、第一と第二は大昔に爆撃で失くなったが、何故か未だに根気強く第三高等学校と名乗っているちょっとへんてこな高校だ。
確か夏日ちゃんは普通科だったっけ?
「それで、何か……そう言う類の何かが起こってここに来たと、思うのですが……」
斎が相変わらず弱気で猫背になりながらそう言った。
「いえ、まだ起こってないと言うか、これから起きると言うか、何と言うか……」
「……どう言うことでしょうか? 占い師でもいるのですか?」
「……多分誰かの悪戯だとは思うんですけどね。……これ、見て下さい」
明香さんはそう言いながらスマホの画面を見せて来た。女子トイレの中の写真だろうか。その硝子の窓に赤い文字で、何だか綺麗な字体でこう書かれていた。
「『餓鬼共が仏を滅してやって来る』……ですか。……警察に通報は……?」
「しました。調べによると、これは単なる赤い塗料ですし、犯人の指紋も見付かりました。厳重注意で終わりです」
「……それでも来たと言うことは、そうじゃ無かった、そうですね?」
明香さんは一度だけ頷いた。
「犯人の子は違うってずっと言っていますし、実際監視カメラにも写っていませんでしたし、それに男子です。色々おかしいんです」
……写真を見る限り、この文字は窓の内側に書かれている。この写真が何回のトイレかは分からないが、少なとも外から書かれている様には思えない。
仏を滅してやって来る……仏を滅して……うーん。仏滅の日かな? 次の仏滅って何時だったっけ。えーと……先負が明日だから、明後日かな。
仏滅の日に餓鬼共がやって来ると解釈すればおかしくは無いのかな? 別に仏滅は餓鬼が来る日じゃ無いけど……。
「もーこんな件があって校長もぷんぷん! 文化祭も辞めた方が良いって言う意見もあるの! 流石にそうなるとヤバい! と、言う訳で、生徒会主導で先生達にも黙ってここに相談しに来たの!」
夏日ちゃんは恐怖の一欠片も無いのか、変わらずの明るい声で話を続けた。確かに文化祭が無くなるのは、青春を謳歌する高校生達にとっては死活問題。
問題は一応解決している体になっているが、やはり不安なのだろう。悪戯だと思えない程の威圧が、この綺麗な文字から分かる。
ふともう一度スマホの画面を見ると、狛犬が虫眼鏡を取り出し、その写真を覗いていた。
「……赤い靄が見えるッス」
「赤い靄って言ったら――」
「ええ、敵意がある危ない靄ッス」
黒恵とミューレンには少し申し訳無いが、調査が進みそうだ。私達の、昴君を助けてくれたあの人も、調査を進めれば出会えるかも知れない。それ以上に探究心が勝っているのもあるが。科学者と言う人種の最大の特徴だろう。
「……どう? 斎、受けてみる?」
「……ええ、何やら嫌な予感もするので……」
「じゃあそう言うことで」
しかし……色々問題がある。純粋に、私達を学校に入れてくれるのか……許可が無いと敷地内にも入れない。記録を見る限り黒恵とミューレンは学校に容赦無く侵入してたけど。
うーん、やっぱり校長に連絡してカードを貰うしか……どう言えば……「お宅の学校霊現象が起こるので調査させて下さい!」なんて言ったら永久着信拒否されてしまう。
永久着信拒否、略してエイキ。……ふふっ……。
「まあ、今日は何時も通り登校して、学校側からも調査の許可が出たら行くってことで。もう八時近いよ?」
「ヤッバ! かいちょー行くよ! 遅刻する! 一回も叱られたこと無いかも知れないけど生徒指導の田中マジで煩いんだからね!」
そのまま夏日ちゃんは明香さんの手を引いて事務所から出て行った。
「優しくして夏日ちゃーん!」
……まあ、友達もいそうで良かった。昴君に伝えれば喜びそうだ。
さて、どうしようか。今高校に連絡するのも迷惑そうだ。なら生徒が下校した時間、五時とか六時とかに連絡しよう。
……ああ! そうだ! 忘れてた!
「狛犬、昴君からのプレゼントがあります」
「何すか急に。師匠からのプレゼントって」
「何と昴君が身銭を叩いて狛犬に新型銃をプレゼントしてくれたのです! 今日はちょっと用事があるけど、代わりに手紙を貰ってるよ!」
締まっておいた手紙と、昴君が手ずから包装してリボンを巻いている小さめの箱を手渡した。せめてクリスマスにでも渡せば良かっただろうか?
狛犬は早速手紙を読み始めた。
「えーと、『Hello Hello Mr.狛犬』……巫山戯てるッスね」
「昴君はそう言う性格だからねぇ」
「『流石の旧型銃だと金が掛かり過ぎるので、安価で扱いやすい新型銃を君に授けよう。使い方はグリップの下の部分にあるコネクタに充電器を差し込んで充電を完了させればOKだ。Bluetooth接続でスマホの画面から銃口の下にあるカメラに写った映像が見えるし、風向きと温度と湿度も表示される。正しく人類の技術の到達点だな』……やっぱり巫山戯てるッスよね?」
「まあまあ、昴君だし」
「『気に入ってくれると嬉しいよ。親愛なる君の師匠より』。最後にキスマーク付いてるんすけど」
それは予想出来なかった。見てみると、華やかな朱色のキスマークが確かに付いている。唇の大きさから昴君の物なのは確実だろう。
「まあ昴君だし。良くするよ、そう言う悪巫山戯」
「色々どうかと思うんすけど……まあありがたく受け取るッス」
狛犬はリボンを解き、包装を丁寧に剥がし、綺麗にそれを畳み、箱を開けた。緩衝材と何故か入っている昴君の数枚の自撮り写真の下から、新型銃が顔を出した。
大体の形は旧型銃と大差無い。内部構造は大違いで、レーザーを出す分の電力はスマホ用の充電ケーブルでも代用可能だ。
先進国レベルのエネルギー大国じゃ無いと絶対に使えない大変高価な銃だが、何せ日本はエネルギー大国。アメリカの40%のエネルギーは日本産であり、それでも余りあるエネルギーを持つ。故に世界で一番新型兵器の開発が進んでいる。
狛犬は新型銃をまじまじとまるで子供が戦隊物を見る様な輝かしい眼差しで見詰めていた。
「いやー旧型銃も良いッスけど、やっぱり新型銃ッスよ! 正に男のロマン! いやーカッコいいッス……! ……けど見付かれば俺捕まるッスよね」
「一応隠してね。見付かれば簡単に捕まるよ」
「……それにしても、何すかこの自撮り写真。全部師匠のッスね」
自撮り写真は頬にピースをくっ付けているあざとい物から、指でハートまで作っている写真まである。うーん、流石昴君、自分の強さを知っている。
斎が何枚かの写真を目を林檎みたいに充血させながら見ていた。目力が怖い……。
「……斎、そんなに昴君の写真が見たい?」
「へぇっ!? いえそんなことは決してでもちょっとだけ興味が無いと言えば嘘になると言うかけどやっぱりけどけどあぁぁぁぁぁああぁ…………!!」
斎からは考えられない程にとても早口で動きが機敏だ。これぞ正しく無駄に洗練された無駄の無い無駄な動きだろうか。
「仕方無いなぁ斎。私秘蔵の『☆☆☆隠し撮り昴君フォルダ☆☆☆』を見せてあげよう」
「か、隠し撮り……」
「隠し撮りだけじゃ無くてちゃんと許可を取って撮った物もあるから気にしないで。余り過激な物は見せられないけど……うーんそうだなぁ……あ、ここ等辺なら、大丈夫かな」
そう言って二人に見せたのは、昴君のメイド服姿。勿論あの時の。
ミニスカメイドの昴君、一般的な性癖持ちの人類なら忽ち虜になるであろう。余り人に見せる物では無いが、まあ良いや、自慢してやる。
「で、これがスカート捲りの昴君。下着がキュートだね」
「……きゅぅぅぅ……」
変な声を出しながら、斎は李の様に真っ赤に顔を染めながら床に倒れてしまった。流石に刺激が強過ぎただろうか。
「そして、これがバニースーツ姿の昴君。うさ耳が可愛いね。実は昴君女性ホルモンが多い所為か、ちょっとだけ小振りのおっぱいがあるの。それでも胸の部分すっかすかだね。ちょっと下の辺りが膨らんでるのは……まあまあ、気にしないで。逆もあるけど流石に……ねぇ? これはその姿のまましゃがみながらのがに股ポーズ。小指も立てててエッチだね。で、これが純白ドレス姿。このドレスは昴君の持ち物だよ。これは特に意味は無いけどその格好のままベッドに寝かせて顔が赤らんでる写真。そしてこれは特に意味は無いけど下腹部辺りでハートを作って貰った写真。特に意味は無いけど目隠しもされてるね。これは目隠しがされたまましゃがみながらのがに股で特に他意は無いけど顔を赤らめながら舌を出しているポーズ」
「光さん! もうそれ以上は辞めて下さいッス! 斎さん死んじゃってるッス!!」
「で、これが一番健全。だって服も着てるし露出も一切無いからね! ちょっと汗かきながら顔を赤らめながらロングスカートの上から、股間辺りを両手で抑えて若干蹲ってるだけだからね!!」
「光さん! そこまで来るともう色々狙ってるッスよね!?」
「他意は無いし特に深い意味は無いよ! そう、全く!! スカート捲らせたのもちゃんと下着を着てるかのチェックだからね!!!」
ふぅ、充分だ。斎は余りの刺激に気絶してしまっている。満足満足。
「流石にこれ以上は見せられないよ。だって普通に性器とか写ってるし」
「なんて物保存してるんすか光さぁん!?」
「だから人前で見せられない物ばっかりなんだよね」
三分の一くらいがそんな写真で埋まっている。もう三分の一は咄嗟に撮った昴君のクールもしくはキュートなお顔を撮っている。もう三分の一は先程見せたあれみたいな物。
そうして、時間が過ぎ、五時半。その間に他の依頼人が二名程やって来たが、肩が重い女性は只の肩凝り、誰かに見られている気がする男性には特に何かに取り憑かれている感じも無かったので精神科医への通院をおすすめした。
都立第三教育高等学校に連絡し、校長先生に変わって貰った。……さて、どう伝えようか。
『変わりました。……それで、ご要件は何でしょうか』
初老の低い声が聞こえた。
「……あのー……そちらの学校に、波多野明香さんと、五常夏日さんがいらっしゃると思うんですけど……」
『ええ、生徒会長と副会長です。何か粗末を?』
「いえ、そうでは無くてですね……何と言えば良いのか……」
正直に言ってしまおうか。うん、嘘を付く理由も無いし。
「……赤い塗料で女子トイレに落書きをされた件、ありますよね。その事件の相談に二人がこの事務所に来たんです」
『探偵か何かで?』
「違います。霊媒師……とは少し違うんですけど……うーん、でもそうとも言えますし……何でしょう、近い言葉だと、怪奇現象限定の現場調査員? みたいな……」
流石に駄目だろうか。このままではエイキされてしまう、そう思っていると、予想外の言葉が飛んで来た。
『分かりました。明日、ご予定は空いていますか?』
「うぇぇ!?」
『……どうされましたか』
「いや、怪しさ満点の非通知の番号の話を良く信じてくれたなって思いまして……」
『そう言う類のスペシャリスト、その解釈で合っていますかな?』
「ええ、まあ、そうですね」
『なら是非一度いらっしゃって下さい。生徒も、一部の教員も心配していますので』
大丈夫だろうかこの校長先生。こんな、こーんな怪しい事務所を学校に招き入れるなんて。
だが、話はとんとん拍子で進む。あっという間に予定と許可が作れた。本当に大丈夫だろうか。いや私が思うことじゃ無いけど!
そう、明日にはもう行くことになってしまった。恐らく明後日も調査をすることになるだろうから、狛犬と斎の二人に予定を開けておく様に言っておいた。
狛犬は大学の単位も充分な余裕が出来たらしいから大丈夫らしい。こんな活動をしながら大学に通える時点で相当頭が良いと思うのは私だけだろうか。
大学に通う人は遊ぶ余裕なんて無く、必死に勉強しているはず。黒恵とミューレンが何かおかしいだけだ。今の日本だと入るのも難しいし留年しないのも難しい……らしい。ちょっとそこら辺は分からない。
大学は勉学の場。故に資料と研究者が集まり、その研究者が学生に教える。それを通じて学生達の研究が更に進む。故に最低限の知識が無ければ一発で篩い落とされる。
大学進学率が日本だとどれくらいだっけ? 記憶だと大体27.23%だったっけ?
他の先進国が軒並み50%超えだから、それの約半分。日本だと入るのが難しくて出るのも難しいらしい。まあ、この国の高等学校って他の先進国の大学の学習内容の半分以上を習うから、結局殆ど同じだけど。
そんなことを、一人の帰り道で思いながら歩いていた。多分一人じゃ無いんだろうなぁ……。
無事に、あの屋敷に着いた。一応この森の中にもIOSPの人が潜んで随時監視している。誰かが入ればすぐに連絡が私に入る。何故か黒恵とミューレンは見付からずにここまで入り込んだけど。何かに導かれたのかな。それこそ、運命に。
……やはり一人は寂しい。昴君が作っておいた冷凍食品を温めながらそんなことを思っていた。
ちょくちょく昴君がいなくなることはある。だが今回は、どうしても胸騒ぎがする。彼は休もうとしない。いや、体の休息は充分に取るが、精神的な話だ。
その解消の為に私がいると言うことを忘れないで欲しい。大好きな昴君が傷付く姿は見たくない。……最近は、青夜と出会ってから弱さを見せることが失くなった。
絶対に、確実に、泣きたいはずなのに。
……大丈夫、では無いだろう。この心配は確実に的中する。私は昴君のことを一番理解している。
だからこそ嫌だ。彼が泣いてしまうのが。もう、消えることは無い。まるで赤錆の様に、彼の罪は彼の心の奥底まで侵食し、そして蝕み、誰かが触れようとするだけで脆く崩れ去ってしまう。
それは私も例外では無い。いや、彼は私以外に心を触らせようとしない。決して。
……せめて傷痕を隠そう。……やはり私は、神様が嫌いだ。ラプラスの悪魔が完全に否定されたこの時代でも、彼の境遇は何処か意図的な物を感じる。それともこれは私の身勝手な思い違いだろうか。
責任を全て運命と言う不確定で完全に否定された理想論に丸投げしたいだけなのだろうか。それとも、神様を恨む為に口実だろうか。
……神さえも彼を救わないのなら、私が彼を救う。どれだけ彼がその身を傷付け涙を流し、吐瀉物を吐き出したとしても、色を失くし、顔の判別が出来なくなったとしても、その全てを救ってみせる。
無謀だと嘲笑っていろ。出来っこないと鼻を鳴らせ。私は何れ、お前を見付けてその場に這い上がってみせる。その全てをこの頭の中に入れてやり、お前の全てを理解し、その全てを超越してやる。
私は傲慢で強欲で、罪を犯し楽園を追放された二人の子孫だ。
一眠り、そうすればもう次の日になる。
何せ私は寝起きが悪い。事前にコーヒーは準備しているが、頭は正常に働かない。何処にもいないはずの昴君を手探りで探している。
「……いない……どこにもいない……どーこー……」
寝ぼけた状態で屋敷の中を闊歩していると、私の中に焦りが滲み出した。
「どこっ……! いない……! いないいないいない…………!! うぁ……すばるくん…………!! いないいないいないいないいないいないいないいない!!」
咄嗟にやって来たキッチンで、それこそ咄嗟に用意しておいたブラックコーヒーを飲み干すと、その拷問と大差無い苦みによって意識がはっきり目覚めた。
「あー!! 苦いー!! あー!! ……はぁ……泣き疲れた」
やはり昴君は帰って来ていない。帰って来た痕跡も無い。
作り置きの朝食を一人で食べる。楽しく無い。この食事は生きる為では無く、精神的な豊かさを保証する食事だと言うのに。
食事は楽しく心豊かにならなければ。昴君がいないとやはりつまらない。
「……あ、ヤバい。私昴君好き過ぎる。あーヤバいヤバい。昴君大好き過ぎる。あー! 昴君大好きだー!! ……はぁ」
あーもう昴君が好き過ぎる。一日いないだけでこれだ。気が狂ってしまう。
電車に揺られながら第三高等学校に向かっていると、当たり前だが行き先が同じだからかその制服の子がちらほらと見える。
……予想しよう。次の駅で夏日ちゃんがやって来る。
次の駅に到着すると、やはりその制服を着ている高校生がやって来た。……何故だろう。高校を卒業してまだ二年ちょっとなのに、何故か高校生達が眩しい……!
「あ、光さんだ!」
そんな明るい声が私の左耳から右耳にすんなりと擦り抜けた。透き通っている声は昴君似だろうか。
予想通り、夏日ちゃんが電車に乗って来た。早朝だと言うのにとても明るい表情だ。
「やっちゃ!」
「……え?」
「あ、知らない?」
若者の流行りが分からない……!! ま、不味い……最近昴君が同じ様に「やっちゃ!!」とか言ってたのもしかしてそう言うことだった!?
「まあおはようって意味だから特に気にしないで」
「あ、うん……」
夏日ちゃん、貴方が思っている以上に、私はショックなんだよ……。
「おにぃは?」
「まだ帰ってないよ」
「流石にそれは怒った方が良いよ。おにぃは帰らない時はとことん帰らないんだから。酷い時なんて二週間は帰らないの」
そんな雑談を交わしながら、夏日ちゃんとその友達にてんやわんやされながら、件の学校に行った。
……最近私は、俗に言う霊感と言う物が付いてきたのかも知れない。この学校に近付くだけで、背筋にぞわぞわと妙に不気味な感覚が走る。
やはり、何かが起こっている。それだけははっきりと分かる。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
ギャル可愛い。つまりギャルは最強ってことですね。
いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……




