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弐拾三つ目の記録 覚めた後の現実での調査 ③

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

「ここは、川切りよ」

「まあ、立地的にはそうだけど……けど、あれって繁昌しないと言われているだけでしょ?」

「それはそうだけど……何か関係はありそうよ」

「……あんまりそう言うのは信じてないのよね。何かの境と言う訳でも無いし」

「全てに疑いを掛けるのが科学者って人種だと思わない?」

「……まあ、それは確かに」


 ディーデリックさんは未だに警戒心を見せびらかしながら口を開いた。


「何のことかは分かりませんが、繁盛しないと言うことは、それ相応の理由があるはずです。何かが寄って来たり、何者かが故意的に呪っていたり」


 ……だが、特にそう言う存在は見当たらなかった。


 つまり、この場所がPoP発生地域だったりするのだろうか。……いやー……それにしては、何かおかしい。PoP発生地域でも白い靄は見えるはず。


 つまり、全くの不明。一つ、分かるのは――。


「……ひぇー……こんなことに……」


 狛犬は録画されている映像を見ながら怯えきった子犬の様に震えていた。


 狛犬に何かが取り憑いた可能性が高い。恐らく幽霊存在。幽霊存在は他の存在に比べて遭遇率が低い気がする。


 何か理由があるのか、偶然にも出会わないだけなのか。


 ……神仏妖魔存在は、ある意味幽霊存在の集合体と言うか、幽霊存在の上くらいの存在と言うべきか。私が作り上げた定義なら、一応そうなる。


「……一旦お祓い行った方が良いッスかね?」

「多分大丈夫でしょう。取り憑かれている訳では無いので」


 夕真さんは、意外にも安堵させる言葉を言っていた。根底には善性があるのだろうか。


「で、どんな感覚だったのよ狛犬」

「何と言うか……こー、寝てるのに目が開いて、なーんかそれが当たり前の様な感覚になってて、今見返せば怖いのに、その間も自分の意思で動いてたみたいな、そんな感覚ッス」


 取り憑かれた経験は無いから何とも言えないが、確実に体の自由が他人に操られていることだけは分かる。幽霊存在の皆さん。是非一度私に取り憑いて下さい。


「……今、取り憑かれてみたいって思ったわね?」


 ミューレンがやれやれと言わんばかりのため息を混じらせてそう言った。


「何で分かったのよ」

「貴方の考えることは丸分かりよ。もう二年は貴方の親友何だから」

「流石ミューレン」


 ……おっと、親友との友情を再度確認する場合では無い。何せ狛犬が相当な危篤だったのだ。親友以下の友人が取り憑かれていたのだ。


 取り敢えず、狛犬はこれ以上ここにいてはいけないと判断し、一旦家に帰らせた。


「……さて、ようやく邪魔者がいなくなりましたね」


 相変わらず夕真さんは口が悪い。


「で、半魔」

「半魔と呼ぶのを辞めてくれませんか?」

「何を言っている半魔」

「……白人の友人を呼ぶ時に白人とは呼ばないでしょう? 黒人の友人を呼ぶ時に黒人とは呼ばないでしょう? 名前で呼ぶでしょう?」

「友人では無いが、そうか。分かりました半人」

「……もうそろそろ拳を振るっても許される気がしますね」

「そんなことはどうでも良いんです。あの男が取り憑かれた原因が一切不明。こんな場所に一般人を住まわせるのは出来ません」


 ああ、確かに。狛犬が一日泊まっただけであんなことになったのだ。


 長い期間この家に住んでいるあの女性が無事でいるのは、少しおかしい。何かしらの耐性があるのか、狛犬にはそう言う何かを引き寄せる体質なのか。


 まあ、これを解明する為には、まず狛犬が何に取り憑かれていたのか。神仏妖魔存在か幽霊存在か、将又二つに類似した特徴を持つ怪異存在か。


 だが、靄は一切見えない。夕真さんもディーデリックさんもここには何もいなかったと言っているのだ。


 ならば、ここには、何が潜んでいるのか。


「好奇心が滾るわね」


 結局、今夜は何も分からなかった。


 夕真さんとディーデリックさんを送り、ミューレンも家に送り、私は赤い軽自動車を運転しながら今夜の事象のことを思い出していた。


 私の予想、と言うか殆ど勘だが、今回の事象の原因は幽霊存在だと思っている。幽霊存在は未だに謎が多い。


 神仏妖魔存在は強大な力を持つ存在。物理的干渉を受ける体を持つ場合もあれば無い場合もある。


 怪異存在は19Hz以下の低周波領域の音源を発生させ、物理的干渉を受ける存在。本来無から産まれた存在であり、怪談話等の共通した認識から産まれる場合が多い。


 そして、幽霊存在。生物の死後の霊魂の状態と言うのは分かるが、これは神仏妖魔存在の一部も同じ。


 つまり、私の狐の目なら物理的干渉を受けなくとも、見えるはず。実際、私が確認した幽霊存在は狐の目で見ることが出来た。


 つまり、狐の目を使って姿が見えないだけでは無く、力も見えないのはおかしいのだ。新しい存在の可能性も捨て切れない。いや、その可能性の方が高い。


 だが、そうなると定義が難しいのだ。これが一体、場所による現象なのか、私達でも認識出来ない別の存在なのか。まずそれを導き出さなくては。


 ……これこれぇ! この考察と実証を交えた結果生み出される新たな仮説と予想が入り混じるこの瞬間こそが! 私の好奇心を滾らせるのよ!


 これをずっと続けられるのなら、私はこの命を差し出す。……いややっぱり嫌だ。死んだらもう調査が出来なくなる。心が二つあるー。


 家に帰り、久し振りの自分の家のべっどに飛び込んだ。


 ああ、懐かしきべっど……。


 そのまま、私は気絶した様に眠りに落ちた。


 そして、次に目覚めたのは、昼前。


「……寝過ぎた……」


 ……朝食、では無く昼食になってしまうが、ご飯作らないと……。


 さてと……何作ろ。あ、そうだそうだ。


 私はピクルスを粗みじん切りにして、胡麻を煎りながらあの家のことを考えていた。


 新たな存在だとすると、夕真さんやディーデリックさんが無知なことが違和感だ。あの人達は私達よりも長い期間そう言う存在達と触れ合って来た。何も知らないことが不自然だ。


 炊いておいた白米に粗みじん切りにしたピクルスと胡麻を混ぜ、お握りを何個か作った。そのお握りに牛肉を巻き、小鍋で作っておいて私特製の垂れを刷毛で塗る。それをオーブンシートを敷いた天板に乗せ、200℃のオーブンで、途中で垂れを刷毛で塗りながら十分くらい焼きながら、私は考えていた。


 やはり神仏妖魔存在、怪異存在、幽霊存在の何れかの可能性が高い……かも? ただ、そうだとするとやっぱり不自然なことが多い。


 つまり、一番怪しいのは、()()()()()()


「完成。肉巻きお握り」


 茶色い丸い肉の塊にしか見えないが、私の口内に涎が増えていることが良く分かる。


「うーん、足りない。天麩羅でも作ろうかしら」


 薩摩芋に人参に蓮根に茸がある。野菜天麩羅……良いわね。ばらんすが良い。


 そして作り置きしておいた大根と人参の甘酢和えを出して、簡単に作った茸の味噌汁を並べて、これにて昼食完成。


 肉巻きお握り、野菜天麩羅、大根と人参の甘酢和え、茸の味噌汁。うーん、何処かの料亭に出せるくらいの完成度。大学を卒業したら板前になるのも良いわね。


 ま、そんなことしていれば調査に支障が出るからしないだろうけど。


「……まだ眠い……」


 どうにか目を擦りながら、体を動かし事務所へ向かった。


 事務所の中では、光と昴がいた。そふぁーに座っている光の膝の上に昴が頭を置いて寝転んでおり、その長い脚をそふぁーの外に放り投げていた。


 目元を腕で隠し、時偶に呻いている。


 それにしても……相変わらず変なTシャツを着ている。黒く大文字で、「ウインナーウィナー」と書かれている。何でそんなおかしなTシャツを……昴のふぁっしょんせんすを心から疑う。あの時は存分に発揮していたと言うのに。


 その胸の上には、飛寧の頭が二つ飛び跳ねていた。


 そして、二人の向かいには事務仕事をしている魔魅大隠神がいた。


「……どうしたの?」

「あ、黒恵。……ちょっと色々あってね。疲れてるみたい」

「また過激なとれーにんぐでもしてたの? 初対面の時はそれが原因で筋肉痛になって全力出せてなかったみたいだけど」

「体の疲労じゃ無くて、精神的な物。昴君は繊細だからね」


 光は昴の頭を撫でながらそう語っていた。


「これでも五年前よりは良くなってるんだよ? 五年前はもっと酷くて、人の顔の判別も出来なくなったりしてたから」

「相貌失認?」

「ちょっと違うかな? 相貌失認は脳機能の障害が原因だから。昴君の場合は精神的な物。色覚異常も引き起こしてたし、一人称も『僕』で、誰にでも敬語を使って……良く、泣いてた」


 ……暗い話になってしまった。


 ……嫌でも思い出す。夢の中での昴の様子を。


「……光」


 昴はぼそっと呟いた。


「……お腹も撫でてくれ……」

「こう?」

「……そうそう……」


 何だか光がお母さんみたいだ。少し羨ましい。


「ミャク……」

「おお、何じゃ昴殿」

「……尻尾……モフらせて……」

「全く、仕方無いのぉ」


 魔魅大隠神はため息を吐きながらも、昴の傍に駆け寄り、背を向け二本の大きな尻尾を昴の体の上に乗せた。


 尻尾の横から飛寧の頭が飛び出すと、もふもふの茶色い尻尾に頬を擦り付けていた。


「もふもふだよ!」


 昴はそのまま尻尾に抱き着いた。


「……もふもふ」


 何だか光が怖い顔をしている気がするが、まあ気の所為だとしておこう。


「あら、ミューレンは?」

「大学だって。……知らないの?」

「……良く見ればスマホに着信があったわ」


 まだ私の体は寝惚けている様だ。


「で、狛犬は?」

「同じく大学。昨日の夜は色々連れ回したみたいだね?」

「ちょーっと色々あったわ。動画見てみる?」

「お願い」


 使い古したタブレットを昴がもふっている魔魅大隠神の尻尾の上に置き、録画しておいた映像を光に見せた。


 光は何処か子供の様に目を輝かせながら、しかし怯えているのか目を逸らそうと手で目を隠していた。


「ちゃんとホラーになった!?」

「そうなのよ。ちゃんとホラー展開になったわ」

「しかも原因不明?」

「そう。何かしら予想は付く?」

「全然。ミューレンは何か言ってた?」

「川切りだったとか」

「川切り……禁忌習俗語彙にはこんなことが起こるなんて……あ、川が原因かな?」

「……すぐにそれを導き出すのは複雑な気分ね……私がそれに気付いたの今日の昼よ?」

「それは申し訳無いことをしちゃったかな?」


 光はクスクスと笑っていた。


「……のう、黒恵殿。これは一体何じゃ? 儂の尻尾に乗せられておる薄いテレビの様な物は」

「あーぎりぎりタブレットが販売された年で止まってたわね。スマホはもう知ってる? それの大きい物だと思って」

「成程……技術の進歩は速いのぅ……。もうもが・もぼも伝わらんのじゃろう?」

「も……もが……?」

「もしや、くりすたる族と呼ばれる女子大生は最早おらんのか?」

「……光、くりすたる族って?」


 光は自信満々で答えた。


「田中康夫が1980年に発表した『なんとなく、クリスタル』って言う日本におけるポストモダン小説の始まりとも言われている小説があってね。この作品の影響を受けてカタログ文化に被れたブランド信仰の女子大生とか若者をクリスタル族って言ってたの」

「1980年……百年以上前ね……」

「バブル時代の前だね」

「あら? バブル時代は1980年代じゃ無かった?」

「バブル時代と言われているのは、色々な解釈はあるけど西暦1985年か1986年に始まったって言われているから、まだギリギリ違うよ。片鱗は見せた頃かな?」


 すると、飛寧が飛び跳ねながら声を出した。


「昭和なら僕も知ってることがあるんだよ!」

「おお、何を知っておるのじゃ。この時代になると伝わる者も少なくてのぉ」

「みじかびの、キャップてとれば、すぎちょびれ、やれかきすらのー!」

「はっぱふみふみ」

「おー! 凄いんだよこれが伝わる人がいるんだよ!」

「えすけっとのわんたっち」

「お風呂に入ってアッチッチ!」


 二人で盛り上がっている所悪いが、一切話が通じない。日本語と認識出来るのに日本語として理解することを脳が拒んでいる。


 別の宇宙に存在する言語の様にしか聞こえない。


「そうか……もう激まぶも使われなくなったのか……。必死に若者言葉を覚えたと思えば、もう死語になってしまうとはな……」

「流行はすぐに過ぎ去ってしまう物なんだよ……」

「本当にそうじゃのう。まあ、会話が成立出来る程に大きな変化が起こっていないのが幸いじゃ」


 言葉は文化だ。文化の保持に力を入れる日本国と言う国家では、流行語等の自由はあるが根本的な言葉遣いは一切変えてはならない。二人はそれ以前の時代を生きているからこそ、この一般論である認識が無いのだろう。


 すると、昴が小さな声で呟いた。


「……あっしには関わりの無いことでござんす……」

「昴の旦那、何で知ってるんだな?」

「……復元された映像を見たことがある……もうそれ高額転売したけど……プレミア価格で状態も良くてコアなファンが買い取ってくれたお陰で……三百万にまで膨れ上がった……」

「木枯し紋次郎も懐かしいんだよ。あっしにゃぁ関わりのねぇこって……」


 ……話に省かれている所為で、疎外感と孤独感がある。理解しようとしても、意味も分からない単語の羅列で頭が混乱する。私は、近代の歴史の勉強を深くしている訳では無いのだ。


 そして、ようやくミューレンが帰って来た。


「ミューレーンー!」

「どうしたのよ急に」

「訳も分からない話で頭がぐっちゃぐちゃに掻き乱されて納豆の粘り気に負けず劣らずの糸を引く様になったのよー!」

「……どう言うこと?」

「昭和の言葉分からない!」

「昭和の言葉……チョベリグとか?」


 すると、光がまた言葉を発した。


「チョベリグは平成六年だね」

「あら、そうだったのね」

「良くそんな殆ど古語みたいな言葉知ってるね」

「最近の若者の流行はレトロなのよ。だってそうでしょう? 流行に疎い科学者も、過去の技術の虜よ」


 ミューレンは私を横目で見ると、微笑を浮かべながら言葉を続けた。


「私の親友は流行に疎いみたい」


 厭味ったらしく聞こえるのは気の所為だろうか。


「それにしても、貴方も真面目ね、ミューレン。もう大学の講義に出るなんて」

「貴方が特殊なだけよ。それに今回も講義じゃ無いわ。ヘブライ語聖書の原文に何千回も出て来る主の読み方の復元に呼ばれたのよ。まあ、結局可能性が高いのはヤハウェとかヤーウェだけど」

「そんなに神の名前が分からないの?」

「ヘブライ語は母音の表記をしないの。子音文字だけで構成されるから正確な発音を求めるのが難しいのよ。ラテン語に翻訳しても『YHVH』『YHWH』『JHVH』とかなのよ」

「そこまで来ると正確に発音させることを避けてる気もするわね」

「それは案外的を射ているかも知れないわ。けど、現在はユダヤ人はヤハウェと表現せずに我が主を意味するアドナイに読み替えたの。ヘブライ語聖書の言葉が死語になったのも重なって失われたとするのが主流よ」


 ……うーん、難しい。


 YHVH……や、やーはーゔぇーはー……? やーはーゔぇーはーって何処かで聞いたことがあるわね……。


「……名の無い神は名を作る。名の有る神は名を消し去る」

「何か言った?」

「ん? あぁ、私何か言った?」

「何か呟いていた気がするけど」

「……そう?」


 すると、急いでこのびるの階段を駆け上がって来る足音が聞こえた。


 そして、事務所の扉が開かれる音が聞こえた。


「あーのー!」


 男性の声が大きく響いた。


 見た目的に、恐らく私と同い年か少し年上かの男性が煩く入って来た。何やら焦っている様子だ。こんなに寒い昼なのに、汗をかいている。


 それに、何処かで見覚えがある。初対面のはずなのに。


「ここ! ここに俺のねぇちゃん来ませんでした!?」


 その声に反応してか、昴がむくりと起き上がった。


「昨日の依頼人の弟さんですか?」


 昴はそう言った。ああ、道理で見覚えがあると思った。


「はい! 神埼狛犬の紹介でここを紹介して……昨日から連絡が付かなくて……」


 ……昨日?


「昨日は弟の家に泊まるって言ってましたけど?」

「いえ、そんな連絡は特に……姉がそう言っていたんですか?」

「はい。確かそう言っていたはずですけど……」


 漠然とした嫌な気配が、私の首筋をなぞった。


 嫌な気配に従い、私はスマホの液晶をなぞった。


 狛犬に、電話を掛けた。


 待機音がずっと鳴り響く。何時も聞いている無機質な待機音が、今だけ不穏な不協和音を奏でる趣味の悪い音楽の様に聞こえてしまう。


「……昴」

「もう始めてる」

「さっすが。で、どう?」

「時間が掛かる。一旦話を纏めるぞ」


 やって来た男性を座らせ、昴はスマホをなぞりながら話を進めた。


「まず、姉との連絡が出来なくなったのは?」

「え……と、多分、昨日の夜です。昼には昼食の写真送って来てたので」

「じゃあその後にここに寄った……その後に、連絡も入れずに行方不明。弟の家に泊まると私達には言ったはず何ですけどね。行方不明届けは?」

「まだです」

「……じゃあ今すぐ交番に全速力で行方不明届けを出しに行って下さい。こう言う案件は警察の方が優秀ですし。そして、次いでに狛犬の行方不明届けも同じく。……あーそうだった……狛犬一人暮らしか……。……一旦狛犬は様子を見るとして、貴方は姉の行方不明届けを出して下さい」

「は、はい!」


 そのまま男性は走り去って行った。


「……さて、光」

「今日の八時二十五分に狛犬が来て、私達に今日は大学の講義だから遅れると言って外出。今はまだ講義中だから出れないとしても……」

「スマホくらいは弄れるよな。すぐには無理だとしてもメールくらいは送れるはず」


 相変わらず狛犬からの着信は無い。


「こう言う時に一真は便利だな。もう調べてくれてる。『神埼狛犬、大学校内に入校したデータは見当たらない』だってよ」


 本格的に不味い事態になった。


 私の責任だ。ああ言う存在の危険性を軽んじていた。今まで命の危機には瀕していたが、最後にはどうとでもなった。


 だが、それはあくまで私達に抵抗出来る手段があったと言うだけだ。彼にはその手段が無い。只の人間だ。何かの力を持っている訳でも無く、神仏妖魔存在等からの加護や……うん?


「……ねえ昴」

「何だ。今調べてるんだが」

「狛犬の舌ぴあすと耳ぴあすは貴方が作った物よね?」

「ああ、確かにそうだが」

「じゃあ、貴方なら場所が分かるはずよ?」

「……あ」


 昴は頭を抱えて蹲った。


「忘れてたー!! そうだよ俺そんな力があった!!」

「今すぐ狛犬の居場所を探るのよ!」

「えーと……どうやるんだったっけ」


 昴は左手で前髪を掻き上げると、左目が赤く炎の様に輝いた。


 手を前に出し、指を広げると、手の中から炎が吹き出した。炎が消え去ると、昴の手の上には鉄で出来た方くらい磁石の様な物があった。


 その方くらい磁石を覗き込むと、磁針はぐるぐると回っていた。一向にその回転が緩まることは無く、右に回り左に回りを繰り返している。


「……これは、どうなの?」

「おかしいな……前はもっとしっかりと指してたはず何だか……」


 すると、磁針は突然ぴたりと止まった。止まったと思えば、ゆっくりと左に動いている。


 そのまま、事務所の扉の方を向いた。


 事務所の扉が開かれる音が聞こえた。だが、入ったのは狛犬では無かった。


 斎だ。


「……あのー、カステラ買って来ましたけど、皆さんで食べましょう」

「そんな呑気なことを言ってる暇は無いのよ!!」

「ひぃっ!?」


 斎から出るとは思えない程に大きな悲鳴が聞こえた。


「な、何かあったのですか……?」


 昴は方くらい磁石を持ちながら、斎に歩みを寄せた。


 磁針は、斎に向いている。


「……あの、昴さん……!」

「……斎」

「は、はいぃ……」

「正鹿火之目一箇日大御神の鉄で作った何かを持ってるか?」

「え、えぇ……脇差しを……。……あぁ匂いが……」


 斎はくらりと蹌踉めくと、そのまま後ろに倒れかけた。昴に受け止められると、顔を赤面させながら目を回していた。


「あぁぁ……いいにおいぃぃ……あたまがおかしくなるぅぅ……」


 ……何だか幸せそうだ。


 昴の体臭には麻薬物質でも混ざっているのだろうか。


 すると、ミューレンが昴のTシャツを引っ張り、自分の鼻に押し付けた。


「……無臭」

「いや、そんなことしてる暇は――」


 すると、光が想像も出来ない程に素早い身の熟しで走ったと思えば、すぐにミューレンの手を払い昴の背に抱き着いた。


 大袈裟に息を吸う音が何回か聞こえると、光は昴の服に顔を包みながら叫んだ。


「昴君の匂いも私の物だぁ!」

「別に取る気も無いわよ!?」

「誰にも渡さない! スーハースーハースーハースーハー!!」


 ……いや、こんなことをしている暇は無い。狛犬が危険な可能性があるのだ。


「まあ、とにかく! 狛犬の居場所が分からない以上! 昴と氷室さんの捜索能力を頼るしか無いわ!」

「……心当たりは無いのか?」

「あると言えばあるわ」

「ならそこに行くか」

「あるけど何処かは分からないわ」

「……は?」

「ある程度の予想は付いてるのよ。けどその場所の、何処にいるのかは分からないわ」

「……これは俺の読解力が悪いだけなのか? それとも黒恵の日本語が下手なだけなのか?」


 私は再度タブレットに録画されている映像を流した。


 そして、私のスマホでこの映像の家の周辺の地図を見せた。


「この家の近くに川が流れてるの。恐らく狛犬はこの川にいるわ。ただ、範囲が広過ぎるのよ。この川の上流は埼玉にあって、山梨を流れて東京湾に流れるわ。水路としても活用されているこの川を、三つの都県に流れるこの川の広範囲を隅々まで調べろって言うの? だから、ある程度予想は付いているけど何処にいるのかは分からない」


 光は僅かに考える素振りを見せた。こう言う時は頼りになる。


「……多分、上流?」

「やっぱりそうよね。何かあるとしたら上流。目的は一切分からないけど」

「ただそうなると、四人が心配だよ。だって狛犬と同じく家に入ったんでしょ?」

「……あ」


 ま、まあ、大丈夫だろう。狛犬よりかも入っていた時間は短い。


 多分、きっと、恐らく、大丈夫だろう。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


個人的な話ですが、狛犬が少しずつお気に入りになって来ました。

ディーデリックは……もう少し、ですかね。夕真には罵倒されたいです。お気に入りかと言われれば……プライド壊されて急にしおらしくなるのは大好きです。黒恵と圧倒的な知能の差を分からされた所とか。

オリヴィアは、もう少しすれば必ずお気に入りになります。


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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