?????存在しない記録???猫を探す金色の子②?????????????????
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大学のオープンキャンパスの日のことだった。
私は友人と一緒に大学内を闊歩していた。
すると、その私に偶然にも打つかって来た人がいた。その所為で持っていた色々な資料を落としてしまい、その人も何だか小難しい論文の束を落としていた。
「ああ! ごめんなさい!」
その女性は、黒い帽子を被っていた。黒い服装で、本当に真っ黒だった。この夏の日だと、とても暑いだろうと思ってしまった。
その女性は素早く資料を拾い上げ、もう一度謝罪の言葉を述べると早急に向こうへ走った。
「あれ、白神さんじゃ無い?」
友人の一人がそう呟いた。
「白神?」
「あ、知らない? 結構有名。白神黒恵、物理学で相当な功績残した天才高校生。今は……えーと、紐の研究? をやってるとか。確かこの大学に特例も特例な、優遇措置も含めて入学することがもう決まってたはず」
「そんなに? ここは相当な難関なのに」
「だから天才なのよ。ただ、ちょーっとね。変人なのよ。高校もサボって心霊スポットに入り浸ってるらしいし」
……変な人だ。
私はその後、大学内で行われていた宗教学の研究発表会を見学していた。このオープンキャンパスは研究発表会も見れる。
ある民族宗教の研究を発表している。青森にある巨石信仰と、その衰退の原因だ。
中々に興味深い。
私は発表会の予定表を見ると、少し後に物理学の研究発表があった。
……白神黒恵……。
あの時から、頭の片隅に彼女の顔がある。妙に離れない。
私は、その物理学の研究発表も見学することにした。
物理学の研究発表は、私の頭ではあまり理解出来ない単語が多い。まず大統一理論と言うのも初めて聞いた単語だ。
頭を傷ませた頃、私の前の席にいた黒い影が立ち上がった。
「あー済みません」
その声は、聞いたことがあった。白神黒恵さんだ。
「その参考文献の著者の白神黒恵です。その意見だと参考文献として取り上げられた私の意見と大きく掛け離れているのですが――」
白神黒恵さんはそのまま言葉を続けた。何だか小難しい話の所為で、私の頭は痛くなった。
発表している人は地獄でも見ているかの様な表情で、何とか言葉を紡いでいるが、やがて諦めた様に俯いた。
「……済みません……。……研究不足でした」
「そうですか。分かりました」
白神黒恵さんは、そのまま着席した。
研究発表が終わった後、私はフルマラソンを走った後よりも疲労していた。帰ろうと思った時、大学内を出入りする為のカードが失くなっていた。
失くさない様にずっと手に持ってたのに……。……あ、まさか。白神黒恵さんと打つかった時に……!?
見渡して見ると、もう白神黒恵さんの姿は無かった。大学内を走り回り、何とか白神黒恵さんを探した。
探し回り、聞き込みをしてみると、大学の物理学の教授の女性が何処に白神黒恵さんがいるのかを知っていると言った。
私は場所を聞き、その空いている大教室へ入った。
そこに一人で椅子に座っている白神黒恵さんがいた。
「……ん? ああ、ごめんなさい。今出ていくわね」
「貴方を、探してたんです。白神黒恵さん」
「私を? 何で? 何処かで会った?」
「ほら! 打つかった! 私がこんなこと言うのもあれだけど目立つでしょ!?」
「えーと……あー! はいはい。思い出したわ。それで何? 復讐?」
「違うわ。私のカードを持ってない?」
「カード……あー、そう言えば誰のか分からないカードが有ったわね。貴方のだったのね」
白神黒恵さんは資料の束の隙間に挟まっている私のカードを手渡した。
「私は白神黒恵、貴方は?」
「ミューレン・エルディー。フルネームはミューレン・ルミエール・エルディー」
「ミューレン? 日本人じゃ無いの?」
「フランス人のクォーターよ」
「ああ、道理で。さて、ミューレン。貴方はオカルトに興味はある?」
白神黒恵さんは、にやりと笑っていた。
私が黒恵と出会った一番最初の記憶――。
――私は、冷たさで目を開けた。
凍える様な冷たさだ。このままだと凍死してしまう程の。
私は急いで体を起こし、辺りの様子を見渡した。
そこは、一面雪景色だった。私はその雪の中で眠っていた。それを理解すると、突然体が震えて来た。
「寒い!! 寒いわ!! 何で冥界の河の底に行くとこんな雪が降る場所に出るのよ!」
降り積もっている雪を赤くなっている指先で掻き分け、何とか黒恵の黒い帽子を見付けて抱き締めた。
もう少し広く見渡すと、ここはビルに囲まれた大通りだった。だが、あまりにも深く雪が降り積もり、そのビルは植物に包まれていた。
もう一度見渡すと、白い雪の上に白い經津櫻境尊が佇んでいた。
「まさかここに来るとは……。大丈夫ですかミューレン」
「はい……さぶい……」
「やはりそうですか。それでは、先へ進みましょう」
私達はその雪の道をただ一歩ずつ歩いた。
私達は、ただそこを歩いていた。足跡一つも無いその雪景色を歩いていた。
少しだけ歩いていると、ある枯木を見付けた。
焼け爛れた様相をしている枯木だった。ただ金色と銀色が混ざっている輝きも見える。何だか不思議な木だ。ここだけ少し温かい。
私達はその先へ歩いた。
どれだけ進んでも、変わらず白銀の雪景色。長袖とは言え、雪が降る外の気温には耐えられない。速くここを抜けないと、私の体が凍り付いてしまう。
「……大丈夫ですかミューレン」
「……無理です……」
「そうですね。……少し待っていて下さい。何か布を探して来ます」
その一言を残すと、經津櫻境尊はその場から消えてしまった。その次の一瞬でまた經津櫻境尊が目の前に現れた。
その手には毛布に近い物があった。それを私に手渡した。
毛布に包まり、私達は更に前へ進んだ。黒恵を探して、私達は更に前へ進んだ。
經津櫻境尊は歩きながら、世間話の様に会話を始めた。
「ここは滅びた世界。そして化け物が跋扈する世界。まさかまたここに来るとは」
「一回ここに来たんですか?」
「はい。ここは言わば死……いえ、これも、旅を続ければ、分かります」
それは残念だ。教えてくれそうだったのに。
私達は先へ進んだ。
經津櫻境尊が雪をその刀の一振りで吹き飛ばし、そのビルの中に入った。經津櫻境尊がその中で手を四回叩くと、そこに鳥居が現れた。
私達はその鳥居を潜った。
すると、視界はまた変わった。また別の世界に来たのだろう。
そこは見た目だけなら様々な建築物が建ち並ぶ普通の世界だ。それこそ私が生きている世界に良く似ている。ただ、周りの人々が少しおかしい。
きちんと人の姿をしている人も多いが、時折人の大きさの四足歩行動物が人間の様に服を着て人間の様に振る舞っている姿が見える。
意外と仮面を付けている人も多い。ここだと經津櫻境尊が自然に見える。
それにここだと様々な人種が入り混じっている。だが辺りに見える言語は確かに日本語だ。と、なるとここは日本なのだろうか?
明らかにおかしい部分はあるが、一応日本ではあるのだろうか。
「……まさかここに出るとは思いませんでしたね」
「そんなに偏狭な場所なんですか?」
「いえ、そう言う訳ではありませんが……」
私達は先へ進んだ。
すると、この人混みのずっと向こうに、彼女がいた。また私に背を向けて、歩いている。
「黒恵!」
その叫び声で、周りの人達は一斉に私を見詰めた。その視線を私は無視して、あの黒い彼女を追い掛けた。
ようやく黒恵は私の声を耳に入れたのか、振り返った。その顔は、まるで黒い靄に隠れている様に見えなかった。表情は分からない。
彼女はまた私から顔を背け、前へ歩いていた。
人混みを掻き分けながら、彼女を追い掛けた。どれだけ追い掛けても一向に追い付ける気がしない。
すると、風が強く吹き荒れた。
私の頭の奥が、痛くなる。それは勢い良く痛みを増し、私の中で何かが切れた様な激しい痛みが襲って来た。その痛みに耐えること無く、私はその場で膝を地面に付けてしまった。
絶叫にも近い声を出しながら、あまりの痛みに溢れ出した涙で歪んでしまって見えない黒恵の姿に向けて腕を伸ばした。
「黒恵!! 行かないで!! 辞めて!! 嫌だ!! 一人にしないで!! 嫌なの!! 貴方がいないと私の世界に色が失くなるの!! 貴方がいないと私の調査は終わらないの!! だから辞めて!! 行かないで!! ああああぁぁぁぁああああぁぁああぁああぁぁあああぅぅ!!」
あまりの痛さに頭を抑えながら、私は叫んでいた。その絶叫を彼女は、無視してその先へ歩いている。この涙は痛みの理由もあるだろう。それ以上に、彼女が離れようとしているその事実に、私は泣き喚いてしまっていた。
經津櫻境尊は、そんな私を抱き締めていた。とても優しく、とても温かく。
私が欲しいのはこれじゃ無いの。この時抱き締めて欲しいのは、經津櫻境尊じゃ無いの。私は黒い、彼女に抱き締められたいの。
黒恵は増えていく人の集まりに紛れて、姿を消してしまった。
すると、私の涙に濡れた視界に、建造物の天井に立っている男性の姿が写った。その男性は、何処かで見たことがある。
「そこの二人、動くな。お前達は何者だ」
その一瞬で、私の周りに十三人の男女が囲んだ。その一人に見覚えがある。
赤髪の女性、この人は、見覚えがある。極楽下温泉街のあの時、私達を殺そうとして来たあの女性だ。それに建造物の上にいるあの男性は、あの時の隻腕の男性だ。
……いや、違う。確かに体型や顔は全く同じだが、隻腕では無い。そっくりさんにしては似過ぎている。
「明らかに異常な波長を察知した。それこそ、世界間の移動をしなければまず出ることの無い程の異常な波長だ。一応聞こう。何をしに来た。異世界からの来訪者よ」
その男性は、私に向けて敵意を向けていた。この頭痛で、それが良く分かる。
「■□■よ。今回は見逃して貰いたい」
「……□□□□□□□か。そっちの金髪は何者だ。□□□□□□□はまだ良い。世界を跨ぐ存在なのは気配で分かる。だがその金髪は駄目だ。どう見ても――」
「■■■を探しているだけなのです」
その一言に、男性は目を見開いた。
「……■■■……。……成程。□□□□□□□の■■■か?」
「いえ、違います。私は□□□□□□□です」
「……そうか。……波長を察知したのは二回だ。一度目は一瞬で消え去ったがな」
「感謝します。□■□よ」
私の頭から、痛みが消え去った。もう敵意を持っていない様だ。
何とか足を動かし、私達はその先へ向かった。
黒恵が何処にいるかは、未だに方向だけは分かる。その気配と言う頼り無い物を辿って、私は黒恵を探している。
近付いている。近付いているはずだ。あの時から、黒恵を何度も見付けている。だからきっと、近付いているはずなの。
私達は日が傾くまで、歩き続けた。夕暮れに染まりながら、私は鉄橋の上に立った。
遠い下で揺れている赤色に染まる水面に向けて、私は飛び込んだ。
水面に写る私の姿は、金色の髪と金色の瞳を持つ私では無かった。白色の髪と銀色の瞳を持つ私だった。
水面を突き破り、私の体は黒恵の帽子と一緒に底へ向かった。
何処か遠くで、黒恵の声が聞こえる。何処か遠くで、黒恵が私を呼ぶ声が聞こえる。
目を開けると、そこは桜が咲き誇る美しい場所だった。桜の木が無数に、そして桜のピンク色の花弁が地面に満たしていた。
そこに、彼女は座り込んでいた。
黒い髪に黒い服。彼女だ。私が愛して止まない白神黒恵だ。
だが、顔が黒い靄に隠れて見えない。その黒い靄に隠れている頭を傾けていた。
「……黒恵、ようやく、見付けたわ」
黒恵は、桜が咲き誇るこの地で、正座で座り込んでいた。ここから動こうともしない。
私はその黒恵の顔に優しく触れた。そのまま、口がある場所に唇を重ねた。
私がどれだけ愛しく思っているのか、彼女は知らない。
私がどれだけこれをしたかったのか、彼女は知らない。
私は目を瞑った。
「ねえ黒恵、覚えてる? 私と貴方が出会ったその日のこと」
「勿論。忘れる方がおかしいわ」
「私と打つかった時は忘れてたじゃない」
私は黒恵に向けてクスクスと笑った。
目の前にいる黒恵は、コーヒーを飲んでいた。私は紅茶を飲んでいた。
「コーヒーは、好き?」
「ええ。紅茶と違ってね」
「紅茶の良さが分からないなんて、貴方は損してるわね」
「コーヒーの良さが分からないなんて、貴方は損してるわね」
「確かにそうね」
私は黒恵に向けてクスクスと笑った。
「私は貴方を探してたの。どれだけ頑張ったのか、貴方は知らないでしょうけど」
「知ってるわよ。私は全てを見たから」
「そう。なら良かったわ」
私と黒恵は手を繋いで、星空の下を歩いていた。
「貴方の隣に、私がいるわ。だから私の隣に、貴方がいて欲しいの」
「私が手を出したら手を繋いで。だから貴方が手を出したら手を繋ぐわ」
私は黒恵に向けてクスクスと笑った。
「どうして、貴方は私のことを信じてくれたの? 私の奇妙な力を、何で信じてくれたの?」
「どうして、貴方の言うことを信じない理由があると思ったの?」
「貴方は、星よりも魅力的よ」
「今日は月が綺麗ね」
私と黒恵は薔薇に囲まれた花園の中心で、紅茶を飲んでいた。
「また私と一緒に、森へ、そこにあった大きなお屋敷に。一緒に走ったり。温泉で温まったり。陰謀に首を突っ込んだり。日記を見たり。呪いの怖さを知ったり。海に潜ったり。霧の街に行ったり。幽霊を見たり。延々と続く畦道を歩いたり。トンネルへ行ったり。柘榴を食べたり。お酒を飲んだり。事件の真相を探したり。星を見上げたり。幽霊を呼んだり。龍を眺めたり。異世界を探索したり。そんな調査を、続けましょう?」
「ええ。貴方と一緒なら――」
黒恵は私に向けて、にっこりと微笑んでくれた。
「――答えを見付けられるわ」
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嘘吐き。嘘吐きだらけ。
皆、変化を求めている。それこそが、絶え間ない変化こそが、進化である。
答え合わせ。
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黒恵 → イチジクの実を食べた。
□□□ → 楽園を追放された。
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ウラエブスト=ナルギウ → Ulaevest-Nargiu
旅を続けて下さい。そうすれば答えに辿り着く。
私達人間は自由なのだから。
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無垢金色と無垢銀色。無垢金色と無垢銀色。
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