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拾八つ目の記録 2649、1989、64の九月十一日 ②

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

 斎は気が付けば、一人で木造の小学校の校門の前に立っていた。自分の経験に無い出来事に、頭はすぐに困惑した。


 その困惑を何とか払拭するように、黒恵に及ばない頭で何とか思考を回していた。


 やがて斎は、ある結論に辿り着いた。


「ここは、別の世界ですね。……この空間その物に力が蔓延している……何処か……歪なような?」


 斎は考えることを一旦止めた。これ以上考えたとしても無意味だと分かったからだ。


 私は辺りを見渡し、他の人達を探した。どうやら誰もいないようだ。異界に迷い込んだのならどんな不可解な現象もある程度は受け入れなければならないのでしょうが……。


 それでも、納得出来るようなことでは無かった。何故ならここは、あまりにも異質。


 異界と言っても物理法則はある程度通じるはず。そこに霊力と言うか、妖力と言うか、その力の影響で理解が難しいことは起こる。


 ですが、ここは見た目では、昭和で時が止まっている。それが、ありえない。


 人の声が聞こえる。生きている人がいる。……疑問に思わず、ここで過ごし続けているのなら……。


「……神……? ……いえ、何か違う……? 継ぎ接ぎなような……?」


 感じ取れる力の違和感は未だに払拭出来ない。それを確かめようと、私は何処に向かうでも無く足を動かした。


 力の受け取り方は千差万別。黒恵さんは靄のように視界的に感じることが出来るようだが、私は触覚的に感じることが出来る。


 人によって受け取り方が変わる。ミューレンさんが黒恵さんと同じ様に視界的に受け取ることが出来ることからもそれは簡単に納得出来るはず。


 私が言いたいことは、視覚的に力を感じ取れることは出来ない為、それを見付けるのは少し難しい。


 ふと、動かしていた足元を見た。落ちていたのは、茶色のコインのような物だった。


 見覚えが無いそのコインを拾い上げ、まじまじと見た。


 コインの周囲はギザギザとしている。


 大きく10と書かれており、その下に昭和三十一年と書かれており、その数字の周りに植物の葉が書かれている。裏には何か建物が、その上に日本国、その下に十円と書かれており、その周りにまた別の植物が描かれている。


 この裏面の建物に見覚えがある。何処かが思い出せない。必死に記憶を遡ると、似ている場所は知っている。平等院の鳳凰堂だ。見た目からして当時の十円玉だろうか。


 私が生きている時代とは相当掛け離れている硬貨だ。故に真新しく、それでいて新鮮な感覚に陥る。


 辺りを見ても特に落とし主がいるようには思えない。今は一旦持っておこう。


 それにしても、ここは妙な気配を身近に感じる。恐らくこの世界を作り上げている何かがいるのだろう。それが何かは未だに未知数ではあるが。


「……ただの神とは……とても思えない。ただの神ならこの地にいる複数の神が未だに鎮座している理由が……見当たらない。こんな歪な世界を望んで入るとは思わないのですが……」


 私はもう一度歩みを進めた。それくらいしかすることは無いからだ。それなら原因究明を第一に考えた方が良い。その原因と思われる異様な力は感じ取っている。


 何やら異質な雰囲気を持つそれは、草叢の中に隠されるように鎮座していた。


 耳障りな音がずっとそこから聞こえる。それが何なのかは分からないが、とにかく悪い物であるのは確かだ。破壊は少し心苦しいが、封印したとしても意味があるのか分からない以上、やはり壊した方が良いのだろう。


 隠し持っていた正鹿火之目一箇日大御神が打った脇差しを逆手に握り、その銀色の箱のような物を突き刺した。


「……これで、大丈夫でしょうか。何個かこの世界にあることは分かりますが……」


 一人で全てを壊すことが出来るとはとても……。……一旦は誰かと集合した方が良いのでしょう。出来れば、あの狛犬と言う人を。このような出来事に現状は一番弱い人ですから。


 私はまた歩き始めた。出来る限り人目を避けて。


 その理由はとても簡単。私が考える限り、この異界が生まれたのは人間が原因だ。更に詳しく言うと、人間の意志が介入している。この世界その物がそうとしか思えない程に歪で不愉快な世界だ。


 だとしても、どうやってその力を扱える神を……。謎は深まるばかりで、それを理解出来る程私の経験は蓄積されていない。ひぃお婆様ならもしかしたら分かるのかも知れませんが……。


 とにかく、生き残ることが必要。ここでは何が起こるのか分からないのですから。


 ……私が出来ることを、精一杯にやれば、少しはあの人に褒められるでしょうか……。……ふぇぇ……あぁぁ……良い匂いを思い出してしまう……。


 ……って、何で褒められようとしているんですか……! 私はあくまで人の為に! そう! 昴さんの為に動く訳がありません! うん!


 それにあの人は恋人がいるんです! にも関わらずそんな感情を抱く方が駄目なのです!


「あぁ……うぅ……あうぉぅあんぅー……」


 顔を思い出すだけで胸が高鳴り、声を思い出すだけで体が火照り、匂いを思い出すだけで体の奥から何かが溢れ出す。その何かを説明するには……少し品が無いのであまり言いたくないですね……。


 ……ああ、こんなことを思っている暇は無い。とにかく誰かを探さなくては……。


 しかし、この世界の敷地は私が想像しているよりかも広い。無闇矢鱈に探しても、恐らく見付けることは困難だろう。


 今出来ることを精一杯に。それをすればきっと、事態は好機に運ばれるはずだから。


 この世界のことを知るには……。……こんなに大規模に異界にこの地を丸ごと隠すには、事前に大きな変化があったはずだ。それこそ怪しい人物が村中を跋扈するようになった等。あの銀色の箱を置いた人が必ずいるはずで、それを訝しむ人達が必ずいたはず。どうにかそれを聞ける人がいれば……。


 考えた末に出した答えは、神社仏閣にいる人物。この異界に違和感を持っているかは分からないが、それでもその前の記憶はあるはず。それにある程度呪いの力は理解出来るはずだ。


 何か……こう……良い感じの嘘を言って納得させれば、何とか情報を聞き出せる可能性がある。


 日を見れば恐らく時刻は十二時程。何か起こるとすれば夜。その間に何とか見付かれば……。


 幸いにも、目当ては付いている。神社仏閣と言うのは大体は山の中に建てられている。後はそこに人がいるかどうかだけである。


 その目測は正しかった。入った山には寺があり、掃き掃除に精を出している老爺が見えた。


 その老爺はこちらに気付くと、優しい笑みを浮かべた。


「どうされましたか。見ない方ですが……」

「そのっ……! えーと……ここで、何やら怪しい人物がいると通報を受けて……調査に乗り出しています……」


 ごめんなさい……。……これも仕方が無いことなのです……。


 老爺は納得したような顔をした。そのまま何度も頷き、中に案内してくれた。


「……確かにここ数ヶ月、何やら怪しい団体が村の中を何度も行き来しているらしく、村人達が不安がっているのです。ですが……」

「……何でしょうか……?」

「村長は村の外に行くことを禁じました。それに、通信も遮断しました。ここは正に陸の孤島となっています」

「そんなことが……村長の一存で?」

「……都会ではありえないのかも知れませんが、皆一様にして村八分を恐れているのです。それともう一つ理由はありますが……これは話している内に語りましょう」


 ……団体……。村長も何枚か噛んでいると思えば……これは村長の意志?


「あの方達がやって来たのは……何時でしょうね……。陛下が崩御したすぐ後でしょうか。それこそ崩御の次の日。村長が呼び寄せたと村中で騒ぎになりまして」

「村長の目的は分かりますか?」

「残念ながら。幾ら聞いても『大丈夫だ』、『心配ない』、『この村は安泰だ』と口ずさんでおりました。それこそ狐が憑いたような……何やら異質な雰囲気でした。……ただ……やはり不満を持つ方達もおられるのです」

「……この様子を見る限り、説得は無理だったと」

「……残念ながら。あの方達が村を跋扈して、その後に二人の子供の行方を晦ましたようで。すぐにあの方達のせいだと騒ぎになりました。……あの日は、暑かった」


 老爺はおどろおどろしい出来事を思い出すように、ぽつりぽつりと言葉を漏らした。


「……子供を家に隠し、村の男衆が集まって村長に話をつけようと役所まで押し入って会いに行きました。勿論……私も。……ただ……あれは、恐ろしかった。あれは妖怪では無かった。ただそれは決して人間と言う訳でも無かった。あれは……分からなかったのです。私でも……あれが何者なのか……」

「姿は覚えていますか」

「それは勿論。あれを忘れることなど出来ない程に、脳裏に焼き付いたのですから。……あれは、確かに人の形をしていました。ただ……猫のような瞳孔でした。そこにいる、村長以外の方達が、全員。押し入った方達を、一人ずつその眼で見ていたのです。必ず一人に二人見ることは無く。……あの方達は、()()から来たと……申していました。その威圧感が恐ろしく……皆怯えてしまって何も言えずに帰ってしまったのです」

 語ってくれた老爺の体は震えていた。だが、もう一つ聞きたいことがある。

「あの……その結社の人達が何かを置いたりとかは?」

「……ああ、その後に、何かを持って来て隠れて何かをやっていると言う話は聞きましたが……。……あんな出来事があったのです。誰も関わろうとしませんでした」

「……ありがとうございます。教えて下さって」

「良いのです。この村に住んでいない貴方だからこそ……外に教えることが出来るのです。お願いします……この村を……救って下さい」

「……私は、私のことで精一杯です。……申し訳御座いません。貴方のその願いは……もう叶わないのかも知れません」

「……そう言って下さるだけでも良いのです。あれは……それ程までに恐ろしい何かなのですから」


 私はその場を後にした。


 行く所が出来た。この村にある、役所だ。


 そこにはもうあの老爺が言っていた結社の人達はいないのだろう。何故ならここは昭和の時間が永遠に繰り返しているだろうから。そんな場所にわざわざいる理由も無い。


 だが、何かしらの資料は残っているかも知れない。それを何とか盗めれば少しは分かるかも……。


 あまりこのようなことはしたくは無いですが……この異界に住まう人は、歪な形で現世に縛られている。それは少し話せばすぐに分かってしまった。


 もう昔話になってしまう程に昔の住人だ。解放されることは既に無く、あの依頼人のように僅かに記憶している人ももういない。それを救うことは、例え神だとしても出来ない。


 それならせめて、もう囚われることが無いように、この異界を壊す。


 役場の場所を聞いていはいなかったが、私の式神を使えば……恐らくは。


 私の式神は大蛇の他に本当に小さな蛇もいる。蛇の式神は扱いやすい。これくらい小さな蛇ならある程度の隙間は簡単に抜けられるからだ。


 その他にも自分で作り上げた式神もいる。蛇の式神は何方かと言うと高龗神の助けがあって作られた式神。一から全て作り出した式神は二体いる。


 ……あれ? ……式神が出せない。蛇もそれ以外の式神も。


 まさかこの異界では力が使えない……? 事態は思っていた以上に深刻みたいですね……。


 仕方無い。私の足で役所を探すしか無い。何かいれば……逃げるしか無い。それしか今の私に出来ることが無いのだから。


 何時も私の中にあったある一定の安心感は無くなってしまったが、それでも私は歩みを進めるしか無い。


 だが、やはりここは広い。運良くこの方向に役所があることを祈るしか無い。


 山に日が隠れた頃、私の苦労はようやく報われた。


 もう足が動かない程に歩いて歩いて、ようやく見付けた。辺りの様子から少しだけ異質な様相の建造物。これが、村役場だろう。


 家屋の影に隠れながら、その役場から人がいなくなった頃に侵入した。


 後ろめたい気持ちで一杯だが、この非常事態では仕方無い。


 裏口に鍵は掛かっていなかった。田舎は鍵を掛けないと良く言われていますが、こんな大事な所でそれをするのはどうかと思いますが……。


「……失礼しまーす……誰もいないですよねー……?」


 歩く度に激痛が走る程の疲労が脚に溜まっているせいで、何度も休憩しながら資料室を探した。見付かれば、それこそ結社と名乗った人達がこちらに襲い掛かってくるかも知れないと言う不安感にも押し潰され、精神的な疲労感も溜まっていってしまう。


 遂には壁に寄り掛かりながら役所の中を闊歩した。暗さからもう日が沈んだ頃だと分かる。


 ようやく、資料室に入った。


 偶然にも人はいなかった。だからこそ楽に調べられますが。


 あくまで村の資料室だからか、特に資料が多い訳では無かった。ゆっくりと見れば何れ結社と名乗った人達のことが少しでも見付かるだろう。


 数十分程資料を漁ると、眠気が襲って来た。代わり映えの無い景色に退屈で単純な作業。それが簡単に私の瞼を重くする。


 だが、ここで眠る訳にはいかない。せめて結社の目的が分かれば……。


 ……ようやくそれらしい記述が見付かった。


「えーと……」


 それを読もうとした直後に、辺りから悲鳴が聞こえた。それと同時に感じるのは、神でも妖でも怪異でも怨霊でも無い、もっと異質で恐ろしい気配。


 外で何が起こっているのか、それはあまり考えたく無い。今の私は自分のことしか考えられない。


 私がここにいることがバレていないことを願い、記述を読み上げた。


「……昭和六十四年一月十日、()()()()()()()()()()()の構成員が……帝国特別宗教学研究結社……?」


 聞き覚えの無い結社ですね。確かに結社の自由があるので好きに作っても良いとは思うのですが……。


「……村民の反発が強く、帝国特別宗教学研究結社の構成員に撤退を求める声が大きくなり……」


 この後の言葉は黒塗りになっている。なら別の資料を……。


 そう思い、手に取った資料には「帝国特別宗教学研究結社活動報告書」と書かれている。


 恐らくこれには確信に迫った物が書かれているはずだ。私は資料を一枚捲った。


「……村長の要望に沿った物品を作成……。VHSビデオデッキに……元()()()()()()()()()()()()()()()によって生成された……」


 その次に書かれている言葉に、私は疑問を残した。


「……生成された第壱の醜女……。人を作った……?」


 また新たに聞き慣れない部隊の「大日本帝国陸海軍特別研究部隊」と言う単語に、私の頭は更に困惑した。謎が謎を呼んでもう何も分からない……。


 だが、その疑問もすぐに大きな音に掻き消された。


 資料室の扉が力強く、殴られるような音が中に響いた。


 感じる。あの扉の向こうに、何かがいる。何故ここまで接近を許したのか分からない程に近くまで来てしまっていた。


 幸い扉を開ける方法は分からないらしい。扉を破るまでに、何とか情報を知らなくては……。


 その焦燥感は私の頭を更に速く回した。手に持っている資料の文字列を高速で読み漁った。


「元大日本帝国陸海軍特別研究部隊によって生成された第壱の醜女の声を編集した音をVHSビデオテープに録音した物を入れ……!」


 私の体は震えていた。殴るような音は更に強くなり、感じる気配は更に多くなっている。出れば死ぬ。見付かれば死ぬ。その恐怖のせいで、体が思うように動かない。


「各地点に安置し……! ……違う……! これはこの世界を作った方法……! ……あった! 設置が終了した直後から帝国特別宗教学研究結社の管轄となり、永劫に皇紀2649年の九月十一日が繰り返されるように……!? 零時零々分から始まり……夕暮れに染まる時間に差し掛かれば……帝国特別宗教学研究結社所属の元大日本帝国陸海軍特別研究部隊の元タケミナカタ部隊に所属していた構成員が……村民を……()()()()()()……。……つまり……あぁ……」


 私の緊張感は一気に解れてしまった。もう危険が無いからでは無い。私は、今から、殺されることが分かってしまったからこその、小さな小さな慟哭を呟いただけ。


 扉は破られた。


 せめて抗うことが出来れば、どれだけ楽なのだろうか。私の心はもう、諦めていた。


 見た目は人だった。ただ、あの老爺が言っていた特徴と一致している。


 何が起こっているのかは理解出来ない。理解したくも無かった。


 私はその場で寝ていた。妙に視界ははっきりとしている。


 頭を動かすことが出来ない。力を抜いて、横に倒れている頭の先の視界には、床に広がる私の血が見える。


 ……私は、大きな苦しみを両手に抱えて目を閉ざした――。


 ――次に目を覚ましたのは、既視感のある木造の小学校の校門の前。


 分かっていたことだが、生きていることに歓喜した。だが、その悦びも先程まで感じていた苦痛を思い出せばすぐに消え去った。


 体の中に残っているのは、死の淵に立たされた痛みと苦痛。それが未だに私の体を蝕んだ。


 それを紛らわせようと、私は地面に頭を打ち付けていた。


「忘れろ……! 忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ! ……忘れて下さい……。……あぁ……嫌だ……怖い……」


 何も考えたくない……。……怖い……。ここから……もう動きたく無い……。


 深くに刻まれた恐怖は、私の体を動かさない。痛みは未だに覚えたままで、苦痛は未だに揺らいだまま。何も考えたくないと思ったまま、それを実行するように地面に座り込んだ。


 何度も治そうと頑張ってきた私の性格。泣き虫な斎は昔のように哭いてしまった――。


 ――黒恵は目を覚ました。


「……あああぁぁぁぁぁっ!?」


 首を貫かれた痛みが、未だに陽炎のように残っている。


 それも、体に傷が無いことを理解すれば痛みも引いていった。


 混乱したまま辺りを見渡すと、とても見覚えのある景色だった。確かに数時間前にもこの景色を見ていた。昼下がりの日差しに照らされ、私は整備されていない土の地面の上に寝転んでいた。


 だが、それはありえない。私は死んだはずだ。何かに殺されたはずだ。


 その疑問よりも先に、私の心は、好奇心に溢れた。


「殺されるってあんな感覚なのね! とても痛くて滲んで怖くて……あぁぁぁ!! あははは!! あははははははは!!」


 溢れ出す好奇心は、死と言う初めての体験に心を踊らせた。死とは一度しか体験出来ないはずだからこそ、体験するとは思えなかった。


 にも関わらず、私は、一度。


「殺された! そう! 殺されたのよ!」


 私は歓喜に包まれた。


 少しだけ冷静になると、私は状況整理の為に思考を回した。


 ……まず、私は死んだ。それは変わらない事実のはず。だとすれば……何故生きているのだろうか。


 ここは死後の世界だとでも言うのだろうか。それにしては殺風景だ。


 私は同じような道をまた歩いた。


 やはり同じだ。全く同じ。何故なら駄菓子屋が見えて来たからだ。


 あの新幹線ゲームも全く同じだ。つまり、これは、エンドレス昭和と言うことだ。……少し巫山戯た。


 ……ああ、まずそうだ。ここは西暦1989年昭和六十四年の九月十一日で時間が止まっている……と言うか永遠に繰り返している。だが、まずそれはありえない。


 昭和六十四年は、一月九日で平成に変わったと聞いている。にも関わらずここは、九月十一日。明らかにおかしい。


 しかもそれを不思議にも思っていないようだった。この異世界の影響なのか、それとも……。


「……取り敢えず、誰かと合流しないと。死ぬ体験はこれからの人生で後一回だけで良いわ」


 そのまま探索するように私は走り始めた。


 駄菓子屋はもう無視で良い。何かしらの敵対存在がいるのなら、やはり一人で行動するのは危険過ぎる。出来れば昴と合流すれば、身の危険は全て振り払える。それ程の強さを何度も目の当たりにしたから信頼出来る。それ以上に狛犬の回収だろうか。それは出来ればで良いか。死んでも生き返るのなら。


 だが、少しだけ違いはあった。耳障りな音が聞こえる銀色の箱が無かった。それなら……やはりあの箱はこの異世界の構築に関係がある物なのだろう。


 あれが何個あるのか。全て壊せば簡単に崩壊するならそれで解決だが……いや、依頼がまだあった。


 うん。諦めよう。ここで永遠に囚われる可能性がある時点でもう他人のことなんて気にかけてられない。私が伸ばせる腕の長さには限界がある。知っている人しか私は助ける気にはならない程に切羽詰まっている。


 まず周りの様子を見ている限り、昭和六十四年から今まで何度も死に続けたのだろう。確かにこれなら永遠に一日が繰り返される。何時も通りの一日を過ごして、最後に死ぬ。そしてまた何時も通りの一日を過ごして、最後に死ぬ。これを繰り返している。


 何故かは分からない。覚えていないと言うことは記憶もこの一日を繰り返しているのだろう。


 私が記憶を持っているのは、外から来たせいなのか、それともここで過ごし続けると何時か一日の記憶しか持てなくなるのか。何方にしてもすぐに全員を見付けて脱出した方が良いだろう。


 殺戮が始まるのは恐らく日が落ちた頃だろうか。それが分かれば何とかなるかも知れない。


 今は……誰かを見付けないと。


 そう思い誰かを見付ける為の方法を何とか考えていると、あることを思い出した。


「そうよ! あれがある!」


 私は魔法道具専門店で貰った鈴を取り出した。


「これを使えばもしかしたら誰かの場所が分かるかも知れないわ! 何で思い付かなかったの!」


 進むべき道を見失った時に鳴らせば導いてくれる、つまり今の状況なら誰かの場所に連れて行ってくれる!


 ミューレンとは光球が見えたと言うことは、もしかしたら狐の目を使えばその光球が見えるかも知れない。


「謎があれば実験! 失敗しても失敗する方法が分かるから儲け物! さあ運命のちりんちりーん!」


 貰った鈴を乱暴に強く振った。その直後に狐の目を使い、辺りを見渡した。


 確かに光球が見えた。これを追えば多分……誰かと出会えるはずだ。


 そんな一抹の望みを胸に抱えながら、私は素早く動き回る光球を走りながら追い掛けた。中々に疲れる。何故なら狐の目を使う為に、走ることに適していない腕をしないといけないからだ。


 見えることはとても便利で、魅力的で、私の好奇心を湧き出させる術ではあるが、それはそれとして不便だ。この意見が贅沢な物だと言うことはきちんと理解していることで言っている。狐の目は、少しだけ不便だ。


 大体二時間半程だろうか。走り続けて、ようやく見知った姿があった。


 小学校らしき場所の校門の前の地面に、座り込んでいた。


「斎! ようやく一人見付けた!」


 斎に駆け寄ると、僅かに啜り泣く声が聞こえた。


「……黒恵さん……?」


 そう呟いて斎は顔を上げた。その顔は、泣いていた。


 涙のせいか目が赤くなっており、僅かに唇が震えていた。必死に出した声も唇のせいか震えていた。


「……ああ……良かった。……生きていたんですね……」

「その言い草からして、私と同じね。一回死んで戻ったってことよね」

「……少し……違うと思います……。……一度だけ、私は幽体離脱の経験があるのですが……。その時に感じた肉体から魂が抜ける感覚が無かったので……恐らく死の一歩寸前の状態にされ……術に組み込まれ傷が治り……また戻ったと言うことだと思われます……」

「成程……さて、こんな所にいる訳にはいかなくなったわね。立って、すぐに全員を見付けるわよ」

「……何で……」


 斎はぽつりと呟いた。


「……何で……。……怖く無いんですか……?」

「怖いわよ? 何言ってるのよ。私は心臓が剛毛って訳じゃ無いわ」


 斎は驚愕した顔をしていた。とても失礼だ。


「死ぬのは怖いわよ。ただ、それ以上に私は好奇心が上回るだけ。それに……」


 私は斎に手を差し伸べた。


「止まってたら何も出来ないのよ。せめて立って何かを見ないと」

「……私に……何が出来るのでしょうか」

「それを私に決めて欲しいの?」

「……いえ」

「私に何が出来るかなんて、正直言って私にも分からないわ。ただ私は目の前に出来るであろうことを片っ端からやり尽くそうと思っているだけ」


 差し伸ばした私の手に、斎は手を伸ばした。


「……目の前にある出来ることが、どうでも良い物だったら……」

「歩くことしか出来ないなら歩くだけ。だって地球は丸いから、前に行っても後ろに行っても目的地には着くのよ」

「逃げることしか出来ないなら……」

「精一杯逃げる。逃げて機会を伺うわね」

「……その先に、絶望しか無かったら」

「頭を回す。人類が地球の支配者になったのは、この頭脳のおかげよ? それを使わなかったら人間とは言えないわ。もし逃げた先に絶望しか無かったら、地獄の景色が広がっているのなら、私はミューレンと一緒にそこを走り抜けるだけよ」

「……何故……ミューレンさんが……?」

「……私はミューレンと一緒なら何処へでも行けるわ。天国、極楽、地獄、冥界、そして、異世界。何処へでも、何処にでも」


 ミューレンさえいれば、きっと私は何処でも笑顔でいられるだろう。私の親友は、それ程までに私の中で大きな人物になってしまっている。


 斎は私の手を握り、立ち上がった。両腕で流れている涙を拭い、きりっとした顔付きに変わった。


「行きましょう。皆を助ける為に」

「その調子よ。貴方の式神は頼りになるんだし」

「……その件なのですが……」


 斎は何処か申し訳無さそうな顔になっていた。


「……どうやらこの世界は、力が封じられているらしく」

「え? 狐の目は使えるわよ?」

「え? それも出来ないとは思うのですが……?」

「まあとにかく、私の力が使えるのなら万々歳よ。今はまだそれを考える時じゃ無いわ」

「……それもそうですね」

「それにこの鈴も使えるし」

「それは恐らく呪具に近しい物なので……。呪具の力も封じれば、それこそこの世界は即座に崩壊するはずですから」

「……何か、分かったのね」


 斎は小さく頷いた。


「これは……村役場で手に入れた情報ですが……」


 斎は私にとって興味深い単語を何度も呟いていた。それに聞き入って、更なる思考を巡らせた。


「帝国特別宗教学研究結社……それに大日本帝国陸海軍特別研究部隊……。さーて、ここに来て全く分からない団体名が出て来たわね」

「大日本帝国陸海軍特別研究部隊と言う名前からして大日本帝国の時代に結成された軍の部隊だとは思うのですが……」

「私達を襲ったのはタケミナカタ部隊……。大日本帝国陸海軍特別研究部隊所属のタケミナカタ部隊ね……。教えてくれたことから考えてそれはもう解体されているらしいけど……。あ、でもタケミナカタ部隊の構成員が帝国特別宗教学研究結社の中に入っているってことは多分大日本帝国陸海軍特別研究部隊を帝国特別宗教学研究結社が吸収したのね」

「……良く噛まずに言えますね」

「滑舌は良いのよ」


 私達は歩きながら話を続けた。


「大日本帝国陸海軍特別研究部隊が解体された理由は分からないけれど、多分GHQの大日本帝国軍の解散と同時に解体、かしら。それなら簡単に説明は付くし」

「大日本帝国陸海軍特別研究部隊は一体何を……第一の醜女とは……」

「……さあ……? まあ、あの銀色の箱、VHSビデオデッキだっけ? それを壊すのは間違いじゃ無いわね」

「……何故このような異質な世界を作り上げたのか……。……昭和と平成の転換期にも関わらず……」

「……ひょっとしたら、それが原因かも」

「原因……ですか」

「まあ、あくまで私の予想よ。あまり気にしないで」


 そう。これは私の予想だ。ただ、その予想はある程度的を射ている気がする。


 ……この世界が作られた理由、つまり言い換えれば村長がこんな異質な世界を帝国特別宗教学研究結社に作って貰うことにした理由。それは――。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


あー……漢字の羅列で頭が痛い……。何ですか帝国特別宗教学研究結社とか、大日本帝国陸海軍特別研究部隊とかって……。

最近家で飼っているペンギンが必死に文字を打っている姿に非常に萌えています。


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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