拾二つ目の記録 慈悲深い柘榴
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
「ひぃお婆様」
ある貴船神社の拝殿にて、巫女の女性はそう呟いた。
「何じゃ斎」
弓弦齋は頭を下げている斎の方を向いた。
「……この神社はお母様が継ぐと思うのですが……」
「そうじゃな。それが何か?」
「……つまり私がこの神社にいなくても良い時期があると思うのです。私が継ぐまでの期間、東京にて研鑽を積もうと思ったのです」
「……別に継がずとも良いのじゃが、そうか。……何か別の理由が見えるのじゃが」
「気のせいですよひぃお婆様」
「……昴」
「……いえ決してそう言う意味では無くてですね。特にあの人は既に恋人がいるのでまずそう言う対象として見てしまえば光さんに睨まれるでしょうし。決して昴さんに出会いたいため東京に行くのでは無く、正鹿火之目一箇日大御神が東京には1000人の魂が重なった存在が溢れる可能性を危惧していたためその退治も兼ねて行くのであって、決して昴さんに出会いたいため東京に行くのでは無いのです。それにまずまずとして東京は広いですし絶対に昴さんと出会える訳ではありませんし分かりましたか分かりましたよね分かったはずですひぃお婆様」
「お、おお……そうか」
あまりに饒舌に話し始めた斎に驚き、それでいて色恋沙汰とは程遠い位置にいた斎に関心のような感情が弓弦齋の中に広がった。
「……まあ、そうじゃな。くれぐれも、東京の地で悪霊に殺されると言う悲報だけは届けんでくれると助かるのじゃが」
「分かっております。自分の実力が如何様な物なのかは十二分に理解しているつもりです」
「なら良いじゃろう。それに、もしものことがあったとしても東京の品川には高龗大神と言う名で祀られておるらしい。そこに助けを求めるのも良いじゃろう。そこの宮司に話せばきっと分かるじゃろう」
「事前に調べております」
「……行動力が高くなっているような?」
「事前に調べることくらい私でもやります」
……昴の居場所を必死で探した副産物じゃろうな……。
「それで、何時行くのじゃ」
「明日です」
「そうかそう……あっ明日っ!? 通りで最近整理をしておったのじゃな……。急過ぎて色々気持ちが追い付かんのじゃが……まあ、良いじゃろう」
「それでは私はこれで」
そのまま斎は拝殿を後にした。
弓弦齋は心が未だに追い付かず、だが明日にはもう斎は東京へ発つと何とか納得しようとした。
「……正鹿火之目一箇日大御神、高龗神よ。明日には斎が東京へ行きます。どうか……私の夫のような不幸に見舞われないよう守って下さい」
「いえ、元よりそのつもりですが」
「……高龗神よ。後ろで話すのは辞めて下さい」
「ごめんなさい弓弦齋。少し急ぎの用がありまして」
「何でしょうか」
弓弦齋は後ろを向きながら綺麗な正座で高龗神を見た。
高龗神は鬼瓦のような物を顔を隠すように持ち上げていた。だが、良く見る鬼の顔では無く、禍鬼の顔だった。
「……何をやっておられるのですか」
「昴が作ったんです。厄除けのために本物の鬼を使えば絶大な効力があるのでは無いかと言って半日で完成させました。がおー!」
「性格が明るくなりましたか?」
「恋とは人を変える物ですね。弓弦齋、貴方もそうだったでしょう? 正鹿火之目一箇日大御神も性格に変化が見えます。恐らく姉君の存在も大きいのでしょうが」
「それで、急ぎの用とは」
高龗神は禍鬼の鬼瓦、名付けて禍鬼瓦を畳の上に置き、真剣な顔を弓弦齋に見せた。
「……実は、獣狩りが活動しているのです」
「あの獣狩りでしょうか」
「はい。……しかし、何やらおかしい。確かに前の獣狩りの活動は何百年も前の話。あの者達に変化があってもおかしくは無いのですが……それにしては姿形が異なる。何か別の……」
「こちらも十二分に注意を致しましょう」
「……話を遮るのは貴方の悪い癖ですよ」
「……申し訳有りません」
「ですがそうですね。十二分に注意を。一人で対処はせずにきちんと正鹿火之目一箇日大御神や私に助けを求めるように。難しければあの海に。人魚も、もしかすればあの海の主も深き海の児も協力はするしか無いはずです。それに桜雅も透緒子もこの地にいますし」
弓弦齋は獣狩りを良く知っていた。知っている、と言うより正鹿火之目一箇日大御神と高龗神から小さな時から言い聞かされた話であるからこそ良く知っている。
その二柱が言う獣狩りとは、現代の日本語に翻訳した場合最も適切な語だと思われる物である。
「それでは私は昴の下へ帰ります」
「帰ると言う表現は適切では無いように思いますが」
「それはそうですが……あ、今日一日私はここにいないので、何かあれば祈って下さい」
「……分かりました」
神が人に恋するとは……。……いや、あれを人と表現するにはあまりにも規格外。妖と言われた方がまだ幾らか納得が出来る存在。
そうは言っても神が恋するのは現代では中々聞かない事柄。悪いことでは無い。悪いことでは無いが、本来立場は違い、人は時間の流れで死す存在。故に人と神の恋物語は神の想い人が何れ死すことで終わる。
それは高龗神も分かって……いや、待て。まさかこの方……!?
「高龗神! もしや……!?」
「それでは私はこれで」
そのまま本殿にある御神体から高龗神の魂を感じなくなった。
「……この鬼瓦を持って帰って下さい高龗神よ……――」
――……結局これは何なのだろうか。
私は机の上に置かれている少し湿った羊膜を見ながらそう思っていた。
今回の調査で何かおかしな女性がいるので中断して事務所に帰ったが、結局この羊膜は何なのかが分かっていない。
「……狛犬」
「もう嫌ッスよ。あの教会に行くのは。それに今は夜ッス」
「……仕方無いわね……まあ多分あそこには何もいないわ。だって狐の目で何も見えなかったし」
「狐の目ッスか。狐の窓みたいッスね」
「なにそれ」
「あれ? 小学生の頃習わなかったすか? 狐の窓って言って、覗けば色々見えるって言う。詳しくは覚えて無いッスけど」
「ちょっと調べてみるわね」
……あ、多分これね。
簡単に説明すると化けた妖怪やら狐やらを見破る術、と言った所だろうか。場合によっては狐の嫁入りも見えるらしい。
確かに気になる。だが、流石にもう夜遅い。光は帰りに寝落ちしているし、私もそろそろお腹が空いた。
一旦私達は家に帰った。狐の窓をやるのはまた明日にしよう。
私が夕食の準備をしていると、急に着信音がリビングに置いたスマホから鳴り始めた。
まだ下準備さえもしていなかったから良い物を、調理中だったら面倒臭いことこの上無い。
画面を見てみると、ミューレンからの連絡だった。
「もしもし?」
『あ、黒恵。大丈夫?』
まず出て来る言葉がそれだとは思わなかった。
私は今日一日のミューレンを思い出した。
「大丈夫って……貴方こそ大丈夫なの? 今日一日何か変だったけど」
何かは分からない。だが、確かに何かが変だった。
『……私は大丈夫よ』
「心配なのよ。親友だし」
『……そう。そうね。うん。親友……そうよね』
やはり何かおかしい。
『……もう大丈夫。貴方の声が聞きたかっただけだから』
その言葉は、付き合いたてのイチャイチャカップルの言葉と言うより、何かの理由で亡くなった人と久し振りに会い、そして話している言葉のような印象を受ける。……それだと私が死んだことになるから違うわね。
そのままミューレンは『また明日』と呟いて通話を終わらせた。何だったのだろうか。
やはり心配だ。何かおかしい。
おかしいと思ったのは昨日だ。昨日、廃墟が一部崩れて危なかったため一旦帰った後からおかしい気がする。……いや、もう少し前だ。崩れたすぐ後からおかしい気がする。
頭をぶつけたのだろうか。そうだとすれば何かしらの外傷はあると思うが……。
私は必死に記憶を遡った。すると、勘違いと思い忘れかけた記憶を思い出した。
崩れた直後、確かに見えたはずの姿。瞬きをしたあの時、一瞬だけ見えたミューレンの姿は、長く白い髪を、無垢銀色に輝く瞳を持つ姿。
あの現世と常世の間の世界で迷い人に襲われた時に見せた姿と酷似しているが、瞳の色が若干違う。より純粋に近い色に見えた。
あくまで私の主観なので確信は無いが、確かに若干違うように見えた。
……あれは……何なのだろうか。
「……夕食早く食べよ」
最近は鮭を良く買っている。魚が思ったより美味しくてびっくりした。
じゃが芋の皮を剥き、舞茸の石突を切り落としながら今日は神仏妖魔存在や幽霊存在が見える仮定を考え直して見た。
まず私達が構築した仮定は力を持っているか否か。それは確定だと思うけど……何かが引っかかる。私の記憶の何処かにそれを否定する何かがある。
じゃが芋を柏木切りをして、舞茸を手で解しながら私は考えていた。
そうだ。思い出した。桜雅さんだ。あの人は確か鬼の姿が見えずに鬼の首を切り落としていた。
どうやって見えずに首を正確に切り落としたのかは昴の親族と言うことで納得しよう。
透緒子さんは力を持っているし見える。だが桜雅さんは発言から考えるに見えるどころか聞くことも出来ないようだ。明らかに力を持っているとしか思えないのに。
鮭を一口分に切り手頃なボウルに入れ、片栗粉を入れて混ぜて全体的にまぶしながら私は考えていた。
それとも力があったとしても必ずしも見える、と言う訳では無いのだろうか。
もしくは桜雅さんに力が無いのか。そうとはあまり考えられない。八重さんは見える、透緒子さんは見える、何なら昴のお姉さんも。この家系で見えないとは思えない。
確かに昴と言う前例はあるが、あれは五常の血が特殊なのだろう。あまりに大きな力を無意識的に抑え付ける本能のような物が原因だと思う。
鮭を油を挽いたフライパンに乗せ、中火で6分程炒めながら私は考えていた。
……いや、少し違うのかも知れない。必ず何かを感じ取らないと正確に首を切り落とす芸当は不可能だ。つまり、視覚、それに聴覚も感じずに触覚、つまり気配だけで切っていると言うのだろうか。
フライパンにじゃが芋と舞茸を入れ、火が通るまで炒めながら私は更に考えていた。
人によって感じ方が違う、もしくは力の大きさによって変わる、この何方かだろう。
確かに良く聞く胡散臭い霊能者にも色々種類があった。見える人、聞こえる人、感じる人、偶に心霊写真で良く映っている人の顔と目が合うと言う少し興味深い感じ取りかたをしている人もいる。多種多様な感じ方なのか、それとも力の大きさなのか。
だが、少なくとも見える人の方が多い。これが私の周りだけなのかは分からないが。
醤油を大さじ1杯、酒を大さじ1杯、みりんを小さじ2杯、にんにくを小さじ1杯に、バター12……いや、13gで良いだろう。少し味をまろやかに。
まあ後は簡単。味が染み込むまで炒めれば良い。
「良し。完成。鮭と舞茸とじゃが芋のガーリックバター醤油炒め。……緑が足りない気がする。……余った胡瓜のぬか漬けで良いや」
夕食を食べながら、色々考えていると少し気になったことがあった。
極楽下温泉のあの山で映した神仏妖魔存在、あれは正常に映像に映らなかった。
……怪異存在も同じだ。
……つまり神仏妖魔存在と怪異存在の見分け方は意味をなしていない。……いや、何か違うのかも知れないが……。
……うん? そう言えば校門にいたあの存在は砂嵐で映っていない。もしやあれは怪異存在だったのだろうか。
まあとにかく19Hz以下の音が聞こえれば怪異存在確定にしておこう。
「……やっぱり難しいわね」
テレビを見てみると、柘榴のミルクプリンが紹介されている。
柘榴……宗教的にも色々な意味を持たれる身だ。鬼子母神によると柘榴を人肉の味がするらしいが……まあ、元々子孫繁栄などの意味が仏教で持たれていたため持っているのだろう。
……柘榴のミルクプリンは昴に頼んで作ってもらおうかしら――。
――斎は東京に来ていた。
斎がいた貴船神社は参拝客が少ない訳では無い。だが、それよりも何倍も人が溢れている場所に目を回し、それでいて高層の建造物を見上げて首を痛めていた。
あ、頭がクラクラする……。何処か……人が少ない場所に……ああ、でも一旦今後の住居に行かなければ……ここは何処……。
斎は東京で迷っていた。
ただふらふらと頭が回りながら都心から離れて、何とかこれからの住居に辿り着き、玄関で倒れた。
「……人が多い……」
何でこんなに人が多いんですか……。しかし……それ以上に怪異が多いような気が……。
ああ……荷物をまとめなければ……。しかし体が……それより調子が悪い……。ああでも……せめてお隣さんに挨拶をしなければ……。引っ越し蕎麦は何処にあったでしょうか……。
何とか重い体を引きずりながら荷物の整理をある程度していると少しずつ体調が回復してきました。恐らくあまりの人の多さに気分が悪くなってしまったのでしょう。
ようやく引っ越し蕎麦を見付け、左隣の部屋の住人に挨拶をしようとインターホンを鳴らした。
「……あれ、住んでいないのでしょうか」
右隣の部屋は空き部屋とは聞いていましたが……ここには住んでいると聞いていたのですが……。
ふと金属製のプレートの表札を見てみると、「白神」と書かれていた。
……白神……何処かで、と言うか、まさか……!?
眠たそうに目を擦りながら出て来たのはスレンダーな女性だった。
私よりも背が高く、それでいて美しいと形容出来る顔立ちの女性。ただ私は知っている。この人は変人だ。変人と言うか自分が死ぬ可能性がある程の危険な場所にも本当に死ぬ直前まで臆さず進んでしまう狂人と表現するべきでしょう。
「はーい……眠い。んー……あれ? 何処かで……」
「黒恵さん!? ここに住んでたんですか!?」
「……えーとあーと? ……あーえーと難しい名字してた斎さん」
ようやく思い出したのか黒恵さんは何度も頷いていた。そして何故か何時も見る黒い帽子を被った。
「牟田神東です。今の私の見た目が違いますから印象も変わるのでしょうか……しかしまさかこんなことがあるとは……」
「あれ、だとすれば弓弦齋さんも?」
「ひぃお婆様は流石に……ここは私だけ住んでいます」
「引っ越してきたのね。じゃあ今後ともよろしく」
「よろしくお願いします。あ、これ引っ越し蕎麦です」
「どーもどーもありがとうございます」
ふーむ丁度良かった。今日の昼食が決まった。
しかし、まさか斎さんが東京に来るとは……。
「あの……つかぬことをお聞きしますが……」
斎さんの様子が少し変わった。ほんのり頬が赤くなっており、それでいて両手の指をもじもじと絡めている。
「……その……昴さんと出会うこととか出来るでしょうか……」
……あーはいはい。成程成程? はいはいはい。うん、無意識フェロモン男め。何も言わずにこの家に招いてやろうか。その後に光に報告してやろうか。
「……呼ぶ?」
「いえいえいえいえいえ! それは流石に……昴さんにも用事と言う物があるでしょうし……それにそこまで迷惑になる訳には……」
「……一応言っておくけど彼女いるわよ」
「そう言う目で見ている訳ではありません! 本当に違います! そのーえーと……そう! そうです! 昴さんの呪いは危険なのできちんと定期的に見なければ危ないので! そうです! はい!」
……何なの、昴には女性を惚れさせる魔力でも持ってるの?
私は昴に惚れる要素は無いしミューレンはまず同性愛者だし狛犬は男性だし忘れかけていた。深華さんが言っていた通り女誑しなのが昴だ。しかも面倒臭いでは無く光のためならその心を掌握して色々する結婚詐欺師みたいなこともやっていそうだ。
「……斎、悪い人には付いて行ったら駄目よ」
「昴さんはそこまで悪い人では無いと思うのですが……」
「いーや性格悪いわよ。光を助けることに関係するなら他の人も助けるけど、他の人を助ける時はお金を払わないと絶対動かないわよ」
「なら何故親しくしているんですか?」
「友人だからよ」
性格が悪いのは良く分かっている。だがそれが昴だ。私はその部分も含めて友人だと思っている。
まあ多分暇だろう。連絡したみた。もちろん斎さんがいることは伏せてとにかく来いと言っている。
恐らく光も連れて来るだろう。斎さんは私の家でそわそわしている。
恋い焦がれている女性を見るのは少し面白い。だがその恋は一生叶うことは無いから諦めた方が良いだろう。
すると、意外と早くインターホンが鳴った。見てみると、恐らく昴だ。
恐らく昴なのだが、体型と服装のせいで女性にしか見えない。
紺色のショートパンツと、白の変なTシャツだ。
扉を開けると、昴からは考えられない程明るい笑顔で挨拶をしてきた。
「おはよ! 黒恵!」
「……また夏日の真似でもしてるの?」
「少し用事があってね。それを済まして来たんだ。それで? 何で私を呼んだの?」
何時もと違う明るい女性の声が私の頭を混乱させる。
一波乱ありそうだが、一応中に通してみた。
斎さんは一瞬頭が混乱したようだ。動きが止まっている。昴も一瞬頭が混乱したようだ。動きが止まっている斎さんを凝視していた。
「……あの、黒恵さん? こちらの方は……?」
「一応昴。一応」
斎さんは一度目を手で隠し、そしてまた昴を見た。目を擦り、そしてまた昴を見た。
「……女装趣味か何かが? いえ、良いとは思いますよ。とてもお似合いですし……元々女性的な体型ですし」
「……何で斎さんがいるんだ黒恵」
女性の明るい声で何時もの昴の口調は更に頭が混乱する。
「……あの、昴さん。ごめんなさい。私が呼んで欲しいと頼んで……」
昴はため息を大きく一回吐いた。
「何かあれば呼んでも良いけどさ。……つまり何も無いってことだね黒恵」
「そうよ」
「……いや何時呼んでも良いけどさ。私は光にすぐにでも会いたいの。それに今日みたいに仕事帰りの時もあるからあまり突然呼ばないでね」
「分かったわよ」
昴は斎さんのおでこを中指で弾いた。
「いてっ!?」
「一応罰。それと少し口開けて」
言われるがまま斎さんは少しだけ口を開けた。その唇に何処からか取り出した少しだけ溶けた黒いチョコを入れた。
「どう? 美味しい?」
斎さんは顔が真っ赤になりながらも一度頷いた。
「なら良かった。光に食べさせられるよ。それじゃあばいばい。私は帰るね。お姫様が待ってるし」
そのまま昴は帰ってしまった。
……最後の行動だけ良く分からなかったが、斎さんは今まさに机の上で顔をぶつけて唸っている。
「あぁぁぁぁぁぁぁ……あぁぁぁ……良い匂いがしたぁぁぁ……」
色々大丈夫だろうか。引き返せない場所まで行かないか心配だ。
「……ありがとうございます黒恵さん」
「大丈夫よ斎さん」
「斎で良いですよ黒恵さん」
「じゃあ黒恵で良いわよ」
「はい黒恵さん」
何が「はい」なのだろうか。
まあそんなことで怒る黒恵さんでは無い。今日はミューレンと一緒に……。
すると、ミューレンから連絡が来た。私は即座に出た。
「私、黒恵さん」
『……私の後ろにいるの?』
「今、私の家にいるの」
『……教授に呼ばれて今日行けなくなったの』
「何かあったの?」
『私が出した脊髄小脳変性症の治療法に関する論文がちょっと色々あったのよ。経験あるでしょ? 科学者さん』
「そう……残念だわ」
『今日はファミレスでも奢ってあげるから許して』
「焼肉でお願い」
『貴方は遠慮を知らないの!?』
「人のお金で食べる焼肉が一番美味しいのはどの世代でも同じよ」
『まあ分かったわ。今日は本当にごめんなさい』
今日はミューレンと一緒に心霊スポットに行く予定だったが、こうなっては仕方無い。
通話を終え、私は斎の目を見詰めた。
「……あの」
「斎、貴方霊感は?」
「黒恵さんは知っているはずですが……」
「心霊スポットいかない?」
少しだけ焦った顔になった。
「心霊スポット……ですか。……いえ、丁度良いのでしょうか。分かりました。一旦私の部屋の整理を出来たら行きましょう」
丁度良い人材がとても良いたいみんぐで来た物だ。やはり私は運だけは良いらしい――。
――埼玉県のある心霊スポットに私達はいる。
今はもう使われていないが、昔公民館だったらしい。だが、20年前にこの場で大量殺人が起こった。
簡単に事件の概要を説明すると、この公民館で夜子供が集まってある恒例行事の仕込みをやっていたらしい。
その時間、不幸なことに気でも狂っていたのかは分からないが新型銃を持っていた女性がその中に入り職員を殺害。公民館で立て籠もり、警察への要求が中々通らないことに腹を立てて全員殺害。
この事件は死亡者38名と言う悲惨な事件として語り継がれるようになった。
「ここよ」
斎を見てみると、少しだけ震えている。
「……何ですかここ……明らかに……」
「幽霊でもいるの?」
「……そうでは無く……いえそれもいるのですが……もっと、それこそ神の御方がおられるような気配を感じます」
「神? 何で神がこんな場所に?」
「……そればかりは。すみません役立たずで……」
「それが分かるだけで充分よ。さあ、調査を始めましょう」
一応狐の目を使ってみたが、白い靄がこの廃れた公民館から溢れている。危ないことは無いだろう。
しかし……心霊スポットに着ているのに時間は昼と言うのはどうなのだろうか。まあ午前と午後の"境"でもきっと何かが起こるだろう。
だが、すぐに異常が起こった。溢れる白い靄が更に濃くなっている。
私の視界に広がる白い靄は、更に濃く広がった。やがて前さえも見えない程白に支配された視界の隙間に見えたのは、血に染まった室内の様子。
誰かが人の頭を撃った。
確かに感じる。この悲鳴が。
確かに感じる。この恐怖が。
見える。確かに見える。子供が隅で震え、それでいて一人ずつ殺される情景。
好奇心はただ溢れる。好奇心はこの情景を理解しようとする。
視界は戻ったが、私の手は震えていた。あれは、恐らくあの事件の情景だ。
興味はあるが、今は気持ちが悪い感覚が私の頭を襲った。くらくらとして、その場で立つことが出来なくなった。
「大丈夫ですか!?」
「……ちょっと気持ち悪い……少し休憩したら入るわよ……」
休憩をして、だいぶ体調が戻った。ようやく調査を始められる。
扉を開けて中に入ろうとするが、どうも開かない。何かに引っかかっているようだ。
どうにか別の場所から入ろうと公民館を周ってみると、少しだけ大きい窓が丁度開いている。
そこから上半身で身を乗り出し中を見てみた。中々に清潔だ。ただ土足の痕が床にある。心霊スポットとなって私のような人が出入りしたのだろう。
そこから入って辺りを見渡しても、何かが砕けたような物が散乱しているだけであってこの部屋には何も無い。
だが、何か変な匂いがする。これは……
「……柘榴の匂い?」
流石に20年で種が入って柘榴の実が付くとは思えない。だがそうじゃ無ければここに柘榴の匂いが満たされるはずが無い。
それに、何か……うーん。説明が難しい。
「あの……大丈夫でしょうか。これ不法侵入じゃ……」
「不法侵入にびびってたらオカルトは探求出来ないわよ! 調査はまだ始まったばかりよ!」
見付かれば尻尾を巻いて全力で逃げれば良い。最悪斎を犠牲にする。
だが、そこまでの悲惨な事件があったようには見えない程綺麗だ。20年放置されているため埃や汚れがあるのはそうだが、それ以外の物が全て綺麗だ。血痕も綺麗に無くなっている。少しだけ残念に思った。
だが斎の顔を見れば分かる。ここには何かがいるのだろう。
私は幽霊を見るために狐の目を使った。日が差し込む廊下を歩きながら見ていると、誰かが見えた。
斎では無い。こんな公民館に私達以外の人がいるはずが無い。
もう一度その場所を見ようとすると、斎が私の手を押さえた。
「黒恵さん、貴方はその目の怖ろしさを分かっていません。その目は本来見えない何かを見る目です。彼等は普通では見えません。だからこそ見えない人には興味を抱きません。ですが、彼等が、貴方が自分達が見えると思えば興味を持たれ、取り憑かれる危険性を孕んでいます」
「そんなに幽霊って危険なの?」
「危険です。何故なら幽霊になっているのですから」
「どう言う意味?」
「幽霊とは簡単に言えば魂の姿。ですが目撃情報が極端に少ないと言うことは、死んだ人は必ずしも幽霊にはならないと言うことです。ならばどうすればなるのか、それは……」
「魂の力の強さ……」
「そうです。感情は怖ろしい物です。人間を簡単に凌駕する怨霊にもなれるのですから。魂だけの存在ならそれはより顕著に現れます」
……本物の神様と良く会話をする式神使いの巫女の話だと説得力が凄い。
「あれ? でも幽霊って自我が無いんじゃ?」
「少し別けるとこうなります。『自我が無い幽霊』、これは生前の動きをずっと繰り返します。これが一番多いですね。『自我が無く、それでいて最後の感情で固定されている幽霊』、これは少し珍しいですが、大抵は泣いているか苦しんでいるかの何方かです」
そう言えばあのビルにいた幽霊存在は苦しんでいるような様子を見せていた。
「そして、『自我が有る幽霊』、これがとても厄介です。何故なら死後を楽しんでいる方が多いです。それにまだあの二つの幽霊は積極的に人に干渉はしませんが、自我が有ると言うことは悪意もあると言うことです。大抵呪われる、人に憑かれるのは『自我が無く、それでいて最後の感情で固定されている幽霊』と『自我が有る幽霊』ですね」
「つまり自我が有る幽霊の可能性があるから見えていないふりをする必要があるのね」
「はい。見えていると表現するのはそれこそ幽霊を祓う時です」
「成程……」
意外と有益な話を聞けた。
だとするとあのビルにいた幽霊存在は恐らく自我が無く、それでいて最後の感情で固定されている幽霊存在だろう。
恐らく最後の感情は……逃げたい、そして逃げた先で助けてもらいたかったのだろう。だからこそあの幽霊存在はビルの中を歩いた。だからこそあの幽霊存在はミューレンに縋った。
そう考えるとやはり悲しい存在だ。まあ、知ったことでは無いが。
あれはもう死んだ人達だ。生きている私にとってはもういない人達だ。いなくなった人の過去は余程のことが無ければ知りたいとは思えない。もういないのだから意味の無い情報だからだ。
同じ理由で偉人には然程興味が無い。現代を作り上げた偉業を成し遂げたのは感謝するが、正直言って興味があるのはその人が作った物や、理論だけ。過去の人に教わることはそれくらいで良いのだ。
「そう言えばこの公民館には神様がいるのよね?」
「恐らく……ですが。神棚があるにしては……愛を感じます」
「この場所に?」
「この場所……と言うよりかは、この場所で死んだ子供……でしょうか。大人は苦しんでいて、子供は穏やかに見えるのです……」
「子供好きの神様とか?」
「そればかりは話してみなければ……」
斎は神の位置が何となく分かるらしい。多分だが元々牟田神東の家系は力を持っているのだろう。そんな家系が神社に住み込みで宮司をやっているのなら神の居場所くらい分かるのだろう。
……今更ながら思ったが、良吉さんは蛇の式神のような物を使っていた。それにあの時言っていた「管狐を飛ばしておきましょうか?」。
そして、透緒子さんは管狐を使っていた。
何故か牟田神東の家の式神と、安倍の家の管狐を使えている。
……まあ、使える物なのだろう。今は調査をしていよう。
和室に入ると、少しだけ血痕が残っていた。
本当に良く観察して埃を払わないと見付からないが、それでも残っている。それがこの場所で悲惨な事件が起こったことを証明している。
だが、より観察していると、何か小さい白い物が落ちていた。
良く見てみると、恐らく骨だ。指だろうか。子供のような骨にも見える。
狐の目を使った。白い靄が見える。
何故ここにあるのかは分からない。もっと探索してみると、更に色々見付かった。
小さな爪が無数に畳の裏に落ちていた。
不気味な感覚が背筋から落ちた。何かおかしい。これは無理矢理剥がしたように血が付着している。
だが、それはありえない。何故ならあくまでここでは殺害だけが起こったのだ。こんなに拷問のようなことをしていたとは思えない。
つまりこれは少なくとも最近剥がされた爪が畳の裏に何故かあると言うことだ。
更に探してみると、赤い液体が未だに滴っている場所があった。だが、血のような赤黒さは無い。むしろ果実のような匂いがする。
更に私の頭は混乱した。それでいて好奇心が湧き上がった。
まず何故かここには柘榴の匂いがする。そうだとするとこれは柘榴の実の果汁で良いのだろうか。
何故柘榴があるのか。しかも子供の指の骨と爪があるような場所でだ。
血が柘榴の果実のようになっている? そんな訳は無い。つまりここで柘榴の果汁と子供の指の骨と爪が放置される出来事があったと言うことだ。
それはつまり……何があったのだろうか。やはり分からない。
だが、狐の目を使うとここに別の力が見える。赤い靄だ。
つまり何かにここで襲われたと言うことなのかも知れない。結局何故指の骨と爪があるのかは分からないし、柘榴の果汁があるのが更に分からない。
ただ不気味な謎だけを残して、私達はここを去った。
色々な場所を探してみると、何処かしら必ず柘榴の真っ赤な果汁と思われる物がある。
ますます謎が深まる。
公民館の廊下を歩いていると、突然幼い笑い声が聞こえた。それは私の死角で聞こえる物で、振り返っても当たり前のように誰もいない。
「……います」
斎が突然そう呟いた。
何かを感じているのだろうか。ここにいる神仏妖魔存在の場所が分かったのだろうか。
斎に連れられるがまま歩いていると、調理場のような場所で突然止まった。
ここは何故か足音のような物が良く聞こえる。はしゃいでいるようなそんな足音だ。
「……もしや、何処にも祀られておらぬ神でございましょうか」
斎は何も無い所に向けて頭を下げて丁寧に言っていた。
私には何も見えない。魅白がまだ八尺様の時は見えたのに。……いや、あの時は昴と会話した正鹿火之目一箇日大御神の「姿が見えぬのは仕方が無いことだ。あの女子は儂のように体を持たぬ。だがあの女子はお主に見られたいと思っているからこそ近くにいれば見えるのだ」と言う言葉から見える理由が分かる。
なら、この神は人に見られようとはしていないのだろう。先程の斎の言葉から祀られていない神の理由も分かる。
……柘榴の匂いが良く感じる。だが、それ以上に優しい匂いだ。精神的にとても暖く感じる。
まるで母親に抱き締められているような、そんな安心感と暖かみがここに感じる。
だが、それ以上に何かがおかしい。調理場はまるで何かと争ったように散乱しており、使いようによっては凶器となる物には血が付着している。
明らかに20年前の事件による物では無い。もしそうだとするとそれにしては新しいと感じてしまう。
ここで起こった私の想像出来ない悲惨な出来事を根拠の無い妄想をして、好奇心と少々の怯えがやって来た。
「貴方さえ良ければ、何処かの社で子供を守る神として祀るように頼み込むこともこちらで致しますが……。……はい。より多くを助けられると思います。……ご安心を。きちんと慰霊碑もお作り致しますのでここの場に漂う子供の霊も貴方の加護の下に」
何も知らない人から見ると、独り言が激しい人に見えるのだろう。だが私は分かっている。今、この目の前には神仏妖魔存在がいる。
私は狐の目を使った。確かに見えた。
赤子をお腹に孕んでいるのか、大きく膨らんでいる穏やかそうな女性だった。だが、やはり人間では無いのだろう。三対の腕を持っている。
その手で抱えているのは恐らく赤子の小さな骨だ。それを何個も抱えている。ただ大事そうに。
『……そこの人も、見えるのですか』
私に向けてそう言った。声はやはり頭に響いている。
『……再度名乗りましょう。"豊柘榴姫命"と申します』
更に狐の目で辺りを見渡すと、その豊柘榴姫命に抱き着いている子供が何人かいる。
『お姉ちゃん、羨ましいね』
『凄い凄い! 良いなーお姉ちゃんたちばっかり』
どうやら自我が有る幽霊存在らしい。それともこの豊柘榴姫命の加護の下にいるからだろうか。
子供達はただはしゃいでいた。
『……この子達も、救われるのですか?』
斎にそう聞いた。
「はい」
『……あぁ……良かった。……もうこの場にいるのはこの子達だけなのです……。皆襲われて……食べられる前で良かった……』
食べられる……食べられるって……。
……そう言えば、明らかに子供の数は少ない。全員が幽霊存在になったとは思えないが、二人しかいないのは少しだけ違和感を感じる。
……何だか嫌な予感がした。私のこう言う予感はあまり当てにならないが、ミューレンなら当てになる。
恐怖では無い、もっと別の感情がある。不安……ともまた違う。何だろうか。
あまりにも嫌な予感が頭の片隅にあるだけで、空気の感じ方が変わった。
すると、調理室に誰かが入って来た。
「誰かいるのか? あ、おい! お前ら何やってる!」
恐らく不動産の人だろう。逃げようとしたが出口はその人が入って来た所だ。逃げられない。
さーてどうやって逃げようか。"扉"は使えるが……。
……うん? 何かおかしい。何かあの人から違和感がある。
狐の目を使った。その人からは確かに赤い靄が見えた。
この人は、恐らく人間じゃ無い。それは斎を見れば良く分かる。
……私は両手で狐の形を作った。
右手を引っ繰り返し、右手の小指を左手の人差し指に重ね、左手の小指を右手の人差し指に重ねた。
指を全部開くと、右手と左手の中指と薬指と人差し指から隙間が出来ている。
これが、"狐の窓"。本来「けしやうのものか、ましやうのものか正体をあらわせ」と言う呪文が必要だが、何故か分かる。この窓から覗いて見るこの人は、人間じゃ無い。
「……ナンだ。ばれたノか」
その言葉と共に斎が動いた。
その人の顔は口が喉にもう一つあった。その喉の口はただ涎を垂らしている。
瞳の中に瞳孔が三つある。それぞれが独立しているように動き、子供の幽霊存在を見ている。
恐らく神仏妖魔存在。あくまで恐らくだが。
すると、私も斎も目もくれずに子供の方へ向かっていた。
私は狐の目を使わなければ幽霊存在は見えない。そのせいで片手が使えない。
喉の口は大きく口を開き、ほとんど首が千切れているようにも見える。
そこからもう一つの口のような物が飛び出し、捕まえた子供の首に伸びていた。
そのまえに調理場にある包丁をその口に突き刺した。そのまま狐の目を辞め、空いた片手でその喉の口の奥にまで手を入れた。
喉の奥の舌を掴み、そのまま思い切り引っ張った。悶えるように動かした腕は、何処からか出た白い大蛇に喰われていた。
刺した包丁を抜き、その顔に突き刺した。
肉を突き破る感触はあまり良い物では無かった。だが、これは人間では無い。殺すべき怪物だ。
そのまま包丁を下に動かし、頬を切り裂いた。悶えた瞬間に押し倒し、その腹に抜いた包丁を突き刺した。
斎に体を引かれ、その怪物から距離を離された。
その直後に怪物は白い大蛇に頭から喰われた。
「黒恵さん! 無茶はしないで下さい!」
「死んでないからせーふよ!」
「そう言う問題ではありません! 貴方は人間です! 力があるとはいえ無闇矢鱈に妖と戦う訳にはいかないのです!」
だが、私は死んでいない。それに運良く傷も無い。それなら良いと思うのは私だけだろうか。
「……運が良かったから良かったですが……今後出逢えばすぐに逃げて下さい。本来そうしなければ死んでしまう方達なのです」
「……分かったわ」
納得はしないけど。
すると、白い大蛇はその体の中から何かを吐き出した。
それは子供の骨だった。頭蓋ももちろんある。良く見れば内蔵もあり、未だに鼓動をしそうな心臓の一部もあり、赤い血液に塗られている腸もある。
「あの妖が今まで食べた物でしょう。恐らくこの辺りの生きた子供も……」
「あんな妖は良くいる物なの?」
「いえ、そのような方々は長い歴史の末にほとんど討伐されました。だからこそ最近の人々は神々の恩恵を感じずに信仰が薄れているのですが……」
すると、狐の目を使わなくても豊柘榴姫命が見えるようになった。豊柘榴姫命はその身籠った体では辛いはずなのにも関わらず、しゃがみながらその遺骨や内蔵を拾い集めていた。
周りにいた子供の幽霊存在も、その遺骨や内蔵を集めるのを手伝っていた。
『……ありがとうございます。あの怪物を倒してくれて。あの者は子供だけを食らい……あぁ……』
慟哭のような声が僅かに溢れた。この人……人? は子供が好きなのだろう。
『……せめて、もう母親には会えないでしょうが、私が貴方達を愛します。だから、せめて苦しみも無く……』
そう呟いて遺骨や内蔵を集めていた。ただずっと、離さずその腕で抱き抱えていた。
顔も知らない子供の遺骨や内蔵を、自分が母親では無くても、ただその魂も宿っていない物を慈愛で、慈悲深く愛していた。
『ありがとう子供達。これを……』
そう言って手渡したのは、柘榴の実だった。何処から取り出したのかは分からない。
だが、子供達は嬉しそうに生で齧っていた。豊柘榴姫命は嬉しそうに微笑んでおり、それでいて子供達を抱き締めていた。
慈悲深い豊柘榴姫命と言う神は、こんな私でも安心を感じる程優しい空気を出している。
表現は出来ないが、妊婦から感じる優しい匂いがこの神から感じる――。
――豊柘榴姫命は斎と一緒に何処かへ行った。恐らく何処かに祀るためだろう。
……祀られておらず、それでいて子供が死んだ場所に立ち竦む神様。
そう言う神も現代に残っていると言うことは、恐らく最近生まれた神だろう。
柘榴は仏教において子育てや出産の鬼子母神が持っている物だ。それを分かって名乗っているのならやはり最近の神なのだろう。
……神仏妖魔存在、私はまだその全てを分かっていない。だが、何れ全てを理解してみせる。
だが、今はお腹が空いた。私は斎に貰った引っ越し蕎麦を思い出しながら家に帰った。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
これは斎の物語みたいでしたね。もう少し書けたと思います。
(……うーん……どうでも良い設定でも出そ……)
牟田神東斎(20)
身長159cm
好きな食べ物匂いが良い物。
「そうですね……果物……とか」
嫌いな食べ物青大将(昔弓弦齋に食べさせられそれから苦手になった&高龗神が蛇みたいな見た目だから)。
狂人オカルトマニアと関わってしまった可哀想な子。それでいて叶わぬ恋を持ってしまった哀れな子。
いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……




