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超常的組織 聖母マリア討魔騎士団

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

 夕真は変わらぬ笑顔のまま、不愉快な感情を顕にしていた。


 今回、昴に頼まれ自身の母が所属していた聖母マリア討魔騎士団の仲介役として彼女は立った。だが、どうだろうか。やって来たのは昴では無く、光と、まだ関係も然程深く無いミューレンであった。


「……何故、昴では無く二人が?」

「私を呼んだのは夕真だよね?」

「あたしはあくまで昴から来れないと言う連絡を受けて光を呼んだのです。昴は来れない理由を言いませんでしたから、知っていると思ったのですが……? 成程、最近関係が悪い様ですね」

「……まあ、ちょっとね」


 光は目頭を抑えてそう答えた。


 夕真は、光から未だに困惑している表情のミューレンに視線を向けた。


「で、何故貴方まで?」

「いやー……何ででしょうか……? 光から無理矢理連れて行かれてここに来たって言うか……」

「……まあ、良いでしょう。……貴方の容姿に、少々興味を持った方もおられますので、何時か招待しようと思っていましたので」


 夕真の後に二人が着いて行くと、一つの教会に辿り着いた。その教会は不自然と男性が見当たらず、シスターだけが散見される。


「……神父さんとかは?」


 ミューレンが夕真にそう聞いた。


「……ここ、カトリックかプロテスタントか、どっちだと思いますか?」

「……カトリックです。カトリックだと思ったから()()は何処かと聞いたんですが……」

「そう、ここはカトリック教会です。そしてカトリック教派では女性の神父を認めておりません。故に、女性の神父を認めるカトリック教派は異端と言えるでしょう」

「……夕真さんが所属している団体は、女性の神父を認めているカトリック教派、と言うことですか?」

「まあ、正式にはカトリック教派では無いのですがね。そして私はこの組織に所属しておりません。あくまで私の母が所属し、その繋がりで懇意にしてくれているだけです」


 その会話に光は僅かな疑問を抱いた。そして彼女は科学者の一端なのだ。その疑問を解消する為に、ついつい言葉を出した。


「何で所属しないの?」

「……組織の名は聖母マリア討魔騎士団。所属出来るのは女性だけ、そして聖母マリアの崇拝をその子よりも優先する。……ここまで言えば、貴方なら答えを導き出せるのでは?」

「……ああ、成程。そう言うことね」


 光は、ある程度の夕真の過去を知っている。だからこそすぐに納得した。


 夕真は周辺にいるシスターに話し掛けると、その奥へと案内された。そして中世頃に使われていたであろう石造りの一室に入り込むと、夕真は唯一の出入り口である鉄扉に鍵を閉めた。


「これから見る光景は、決して一般人に他言しない様に」


 そう言って夕真は東に位置する石壁に右手を開けた。そしてこう呟いた。


「Ave Maria. Maiden mild. Oh listen to a maiden's prayer; For thou canst hear tho' from the wild, And Thou canst save amid despair」


 ミューレンはその歌は覚えがあった。


 これは……聖母賛歌?


 すると、夕真さんが右手で触っている石壁が、音を立てながら生物の様に動き、その場から離れ始めた。そして暗い暗い階段が現れ、地下へと続いていた。


 光源の一つも無い。あるとすれば地下に仄かに輝く灯りと、この部屋に差し込む陽の光だけだろう。


 私達はその階段の下を目指し、足を動かした。


 しかし、何故だろう。一歩ずつ進めば、首の裏辺りを舐められる様な嫌な感触が触れる。


 ……それに、何だか、懐かしく思える匂いも感じる。その不可思議な私の感情に、僅かな恐怖心を覚えた。自分でも理屈が分からない感情と言うのは、恐怖を齎すのだと初めて知った。……かも知れない。


 階段を下り終え、長く続く廊下を進み、両開きの扉を開けると、何とも厳かに扉の蝶番が軋む音を発した。


 その地下室は、想像とは乖離していた。現代的で、例えるなら博物館の展示室と言った雰囲気の方が近そうだ。


 ……誰かが、私を呼んでいる声が聞こえる。……いや、まさか、そんなはずが無い。鼓膜は震えていない。脳にも声を受信していない。


 なら、この声無き声は誰が言っているの?


「……ミューレン」


 私の友人である光が小声で私の名を呼んだ。元々最近、目の下の隈が酷くなって窶れた様子を見せていたが、ここに入ってからそれがより酷くなっている様に見える。


「……誰かが、貴方を呼んでる」

「光も聞こえるの?」

「いや、聞こえないけど……聞こえる。いや、えーと、どう言う意味? ……ああ、私にも分からないの」


 見れば、光の右目の虹彩が銀色に輝いていた。……まるで、私の左目の様に。


「どうされました?」


 夕真さんの問い掛けに答える前に、前から女性が歩いて来た。私よりも長身で、そして目を黒い布で隠している女性だ。目視計測だけで180cmは超えていると分かる。大体深華と同じくらいだろうか?


「初めまして、子供達よ」


 その女性はフランス語を流暢に使っていた。


「夕真からある程度の話は聞いています。どうぞ、こちらへ」


 案内されたのは簡素ではあるが最低限の人間らしさを感じる休憩室の様な場所だった。


 女性はせっせと客人を持て成す準備をしていた。温かいお茶を私達の前に出すと、その向かいの席に座り、どうやって見ているのか私達の方を見詰めた。


 出されたお茶はハーブティーだろう。……香りから考えるに、ラベンダーとオレンジブロッサムだろうか。


「……まず、諸々の事実確認をしようと思っているのですが。……本当に、死屍たる赤子の教会が復活したと?」

「……ええ、ついこの間もケファが現れました」


 今回の交渉は、基本的に光が話をする。私はIOSPの詳しい情報を知らないからでもある。


 フランス語で交わされる会話は、どうやら夕真さんにとっては翻訳が難しいらしい。こう言う時には日仏三世で良かったと思える。


 光はある程度の事情を話すと、高身の女性は何度か頷いた。


「……十二使徒の再興、そしてケファの復活……。……いや、ケファは死んでいなかった、と言う方が正確なのでしょう」

「死屍たる赤子の教会は一度壊滅したと言うことですか? ……えーと、お名前は……?」

「ああ、申し訳御座いません。"()()()()()()()()()()()()()()"と申します」

「立花光です。こちらはミューレン・ルミエール・エルディー」

「……それで、死屍たる赤子の教会が壊滅したことがあるかどうか、でしたね」


 マルグリットさんはお茶を飲み干し、饒舌に語り始めた。


「聖母マリア討魔騎士団、その役目はただ一つ。討魔です。始まりは十字軍設立よりも前、イルデブランド、つまりグレゴリウス七世、第百五十七代ローマ教皇が、世俗権力が介入し易い時代であるにも関わらず、秘密裏に設立させた団体です。当初の目的は黙示録の女の為に動くことを誓った女性達の集まりです」

「……だから、聖母マリア討魔騎士団……」

「ええ、黙示録の女は基本的に聖母マリアと言われていますから。……まあ、その役目も少しずつ変わり、今の様に聖母マリア崇拝の団体になってしまいましたが。そして、死屍たる赤子の教会とは長い間、それこそ十世紀以上に渡り長い戦争を続けていました。……ようやく、ようやく終わったのが、第二次世界大戦後の混乱中です。白銀の誰彼と呼ばれる団体と、先程出て来た獣狩りと協力し、その全ての蛆虫を踏み潰した……はずだったのですが、ね」


 マルグリットさんは大きく顔を歪ませた。


「……彼等は、残っていた。……まだ根気強く、そして無様にも生き残っていた。……また数を増やし、そして今度こそ偽の救世主を完全な存在として復活させようとしているのでしょう」

「……まあ、そうでしょうね。ただ、彼等の動きはキリスト教徒としては異質です。キリストは、無原罪。無原罪であったマリアの処女懐胎の奇跡で生まれた神の子。知恵の実を食べたアダムとイヴの罪が生まれた時から無いイエス・キリストに、わざわざ彼等が知恵の実を食べているかの様に扱う女性を取り込もうとするのは理解に苦しみます。最後のアダムであるイエス・キリストが知恵の実を食べれば、また原罪を犯すことになると分からないとは思えません。正しい方が悪い人々の身代わりとなったと言う言葉を、知らないとは思えません」

「だからでしょう」

「……つまり?」

「貴方は非常に賢い。この会話を交わすとそう思います。もう、分かっているのでしょう?」


 光は少しだけ押し黙った後に、喋り始めた。


「……彼等は、イエス・キリストの磔刑の後だからこそ、もう原罪は失くなったと思っている。そして、彼等は無原罪を『今後一切の罪を受け付けない状態』と定義している……ですか?」


 マルグリットさんはにこやかに微笑んだ。


「ええ、その通り。流石です。もし、そうだとするなら更に目的の予想が深まります。知恵の実の解釈の一つに、それを食べれば命の実の場所を知ることが出来ると言う物があります。……貴方の話を元に考えるのなら、楽園を追放された男が、その生命の木の実を象徴する者なのでしょう。そしてまだ彼等は楽園を追放された男の行方を知らない。こう考えるのが自然でしょう」

「だから彼等は、イチジクの実を食らった女を狙う……と。永遠に生き、もう悪魔に殺されない、完全な神となる為に」

「しかし、やはりキリスト教にとって異端なのは確かでしょう。神の子は死ぬ。それは何度も記され、教徒なら絶対に知っている事柄です。死ぬからこそ、三日後の復活が全ての聖書に記載される最も重要で最も印象的な奇跡となるのです。死、そして復活。これこそが誰もが認めるイエス・キリストの奇跡なのですから」

「……もし、もしも、彼等がその復活を後世の創作だと定義したら?」

「……成程、確かにそれならば、もう二度と死ぬことは無い完全な存在を作り出そうとする理由にも頷ける。しかし……どうにも信じ難い。神の子の復活は、自身こそ唯一の救い主であることを示した奇跡でもあります。それを後世の創作と定義するのは、些か彼等の行動原理と外れている様に感じます。……貴方は、一体何処まで見ているのですか?」

「……多分、貴方よりも、より深く、より広く。……これは、私の悪癖の様です」

「……ふふ、成程。夕真が嫌う訳ですね。……そして、私が好きな印象を持ちます」


 ……あれ? これって……IOSPを中心に死屍たる赤子の教会の撲滅の為に超常的組織の協力を促す交渉だったわよね?


「あのー……光? 協力の話は……?」

「あ! 忘れてた!」


 頭は良いけどこう言う所は抜けてるわよねぇ……。可愛らしい部分ではあるけれど。


「ああ、その話に関しては快く協力しましょう。今度こそ、死屍たる赤子の蛆虫共を踏み鳴らしてみせましょう。もう、我々聖母マリア討魔騎士団の戦力は減ってしまい、もう百人しか残っていません。それでも、出来ることはあるでしょう。……ああ、そうだ。一つ、貴方方に見せたい物があるのです。嘗て死屍たる赤子の教会との戦いで彼等から奪い取った、()()()()()()()()()()()を。貴方ならば、何か分かることもあるかも知れませんね」


 そう言ってマルグリットさんは私達を、より深くより奥の場所へ案内した。


 より多くの女性が聖母マリア像に祈りを捧げる場所であったり、本棚に仕舞われた埃を被っている本を引き出し、読み進める人もいたりした。


 最も暗い場所に、それはあった。ただただ広い部屋に安置されている死者が入るべきの棺には、鎖が巻き付けられ、決して開かない様に厳重に管理されていた。


 ここに入ると、四人程の女性が旧型銃を構えて一緒に着いて来たことから、これの危険度が高いのか、はたまた死屍たる赤子の教会の報復を恐れているのか。


 しかしそんな厳重そうな鎖を、マルグリットさんは素手で紐の様に千切り、その棺を片手で抉じ開けた。


「え、えぇぇ……!? 素手……!?」

「マルグリットさんは怪力ですから」


 夕真さんがそう自慢気に語った。


「いやっ……あれは怪力とかそう言う話じゃ無いでしょう!? 鎖をぶちって!! ぶちぶちって!!」


 マルグリットさんが棺の中を覗き込み、その後に私達に顔を向けると、何度か手招きした。


 私と光はその棺の中を覗き込むと、そこには安らかに目を閉じている女性が眠っていた。話を聞く限り、これはもう千年以上経っている死体だ。にも関わらず、腐敗が見られない。ミイラだとしても劣化を一切発見出来ない。


 死にたてなんて言葉も適切では無い。まだ皮膚は血色が良く、青い血管の筋まで見える。そう、生きているとしか思えないのだ。ただ安らかに眠っているとしか思えないのだ。


 その白く腰までの長さがある神秘的な髪さえも艶が残っている。その細い指は、何に祈っているのか組んで胸元に置かれていた。左手の薬指には指輪が嵌められており、くすんで良く見えないが宝石の宝飾が付いていた。


 その腹部には、服に隠されているが多量の出血の黒い痕が見える。これだけは非常に腐敗し、嫌な匂いが立ち込めている。


 ……そして、何よりも、声が聞こえる。この人だ。この人が、声無き声で私を呼んでいるんだ。


「これは、彼等にとっての聖母マリアなのでしょう。見ての通り、千年以上の間、一切の腐敗を見せません。何か……科学的に解明出来る現象なのでしょうか?」

「……コールドスリープとからな説明は付きますけど……触ってみても?」

「ええ、どうぞ」


 光はその女性の頬に触れた。傍から見てもその柔らかさが分かり、本当に死んでいるのか疑わしい。


「……温かい。……何で、だろ」


 すると、突然光の両目の虹彩が銀色に輝いた。その輝きは無垢銀色になり、光の髪の一束は白く染まった。


 それに呼応する様に、声無き声は更に私を呼び始めた。


「な、何が……!?」


 マルグリットさんがそう叫ぶと同時に、私の胸の奥が熱くなった。直後に四つの四隅から風が吹き荒れ、光と死屍たる赤子の母を包み込んだ。


「光! 今すぐ離れて! 何かおかしいわ!!」


 そう叫んでも、彼女はその場から動かない。それどころか、その女性の前髪を優しく撫でていた。


「光!! 立花光!!」


 吹き荒れる風が、光へ近付く私の足を止めている。これ以上の歩みを認めようとしない。


 どれだけ手を伸ばしても、その手を光が握る様子は見られない。


 直後、突然風が吹き止んだ。そして、私は信じられない物を見た。


 女性が、起き上がっていた。その白い髪を靡かせながら、二つの足で確かに立っていた。そして腹部から血を流し、ゆっくりとその瞼を開いた。


 見せたその瞳の色は、銀色であった。その銀色の瞳から大粒の涙を何滴も零し、まるで恋い焦がれた少女の様な目で天を仰いだ。そこには黒い天井があるだけなのに。


「まさか……!? 確かに死んでいたはず……!!」


 マルグリットさんの困惑は確かな物だ。だが、私が何よりも興味を持ったのは、その、銀色の瞳だ。私と、そして、光と、あの時、そして時偶輝くあの瞳と、全く同じ瞳。


 まるでトランペットが何十にもあり、一斉に吹き鳴らした様な爆音が響くと、その一瞬で女性は姿を消していた。光は棺の横で倒れ、声無き声は鳴りを潜めた。


 すぐに光に駆け寄り、少しの診察をしたが、どうやら眠っているだけの様だ。銀色の瞳は黒に戻り、その髪も艷やかな漆黒へと戻っている。


 ああ、良かった。……だが、彼女は、一体誰なのか。


 ……何故、私を呼んでいたの……?

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


一体あれは誰なんだッ!? (迫真)


……えー……。……はい。


聖母マリア討魔騎士団はガチ強です。全盛期の死屍たる赤子の教会に単独戦争仕掛けて互角に渡り合ってあの死屍たる赤子の母を奪い取ったので、全盛期なら出て来た超常的組織の中で一番強そうですね。流石に今の結社の方が技術力は上か……?


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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