二重進
死んでしまったあなたの元に天使が。
でも現れたのは、願いを叶える為ではなく、自分のミスの後始末…。
人間だって天使だって万能じゃない。
でも、そんな人達もいていい理由。
思い悩んでいる人に、もう少しリラックスして生きてほしい、この作品がそんな手助けになれたら嬉しいと思います。
ちょっと古い作品なのでスマホの時代に追いついていませんが、言いたい事が伝わってくれればそれでいいと思ってます。
ドッペルゲンガー、もし出会ってしまった場合、あなたの反応は?
表紙イラストは活動報告に掲載中。
突然だが、俺は死んでしまったらしい。
まだ十八才だとかいう若さへの執着はさておき、幽霊になるのはこんな気分なのか、などと反芻する間もなく、今、俺の目の前で天使が平謝りをしていた。
「ごめんなさいっ!」
古い絵画に出てくるような豪壮さのある天使ではない。なんというか近代的な恰好。裾の膨らんだつなぎの背中にはちゃんと翼が突き出ていて、ベレー帽には羽飾り。その羽の先に小さな天使の輪っかが引っかかっている。肩までのストレートな栗色の髪を振り乱し、何度も何度も頭を下げていた。天使は中性と聞いた事があるが、この天使の容姿は同世代くらいの女の子の物だ。
「えーと……、天使さん?」
「ごめんなさいーっ!!」
「いや、あのね……」
まず事情がよく飲み込めない。だが思い返してみると、確かに俺には現状への心当たりがあった。志望の大学に落ちたのだ。友人と予備校の下見へ行く約束をし、待ち合わせの橋の欄干から川を見下ろして今後の浪人生活を嘆いていたのは覚えている。遊ぶ事も控えて夜も猛勉強の一年間、その結果がこれだ。これから家族にかける負担とか、自分の価値とは何なのか、そんな事をぐるぐる考えていたら、いっそここから飛び下りれば楽になれるだろうか……。そんな思いが過ぎった。だからここにこうしている事よりも、謝られている事の方に妙な疑問を感じてしまう。慌てふためきながら天使が案を出す。
「あのですねー、えっとぉ……じゃ、じゃあとりあえず……」
風景が変わった。考え込む俺の表情に気づいた天使が、現在の状況を飲み込ませようと俺を病院に運んだようだ。そこでは両親と友人の聖が俺の遺体を前に泣きはらしていた。
「この子、大学落ちてからずっと元気がなかったの……。まさか、ここまで思い詰めていたなんて……」
母さんが泣いている。ずっと気を遣って明るく振る舞っていてくれたのを知っている。聖が途切れ途切れに口を開いた。
「俺……、予備校の下見に行く約束してて……、俺が声をかけたら笑ったんだ。笑ったのに……なのにいきなり飛び下りて……!」
同じく浪人組の聖が待ち合わせに来たところまでは俺も覚えている。その後の記憶があやふやだ。まあ死ぬ時ってのはそんなもんなのかもしれないが。
「ああ、やっぱり俺自殺したの。なあ?」
逃げを取った自分の情け無さで冷静に確認の質問をしてしまう。ところが天使の口から出たのは意外な返答だった。
「……突き落とされたんです」
「突き落と……はあ!?誰に!?」
「あっ、あたしじゃないですよぉっ!」
詰め寄る俺に天使があたふたと言い訳を始めた。
「悪魔ですっ、ア・ク・マ!」
一文字ずつ指を振って上目遣いに言い含める。天使がいるなら悪魔も信じられよう。しかしちょっと待て、自分の意思でないなら、また事情が変わってくるぞ!?
「そのー、あたしのミスではあるんですけどー。あの時、捕まえた筈の悪魔を逃がしちゃって。追いかけたら、悪魔は欄干にいたあなたを突き飛ばして逃走を計ったんです~」
確かに俺は死の妄想に取りつかれていたが、そこまで思い詰めていたかどうかはいささか疑問が残っていた。突き落とされたという方が合点がいく。しかし……!
「えーと、柚木航平さん。あなたの寿命は実はまだまだあったんです。それがあたしのミスで不名誉な死を~」
泣いて詫びられても、はいそうですかと納得はできない。俺は上から怒鳴りつけた。
「じゃあ何!?俺はあんたのミスで死んだわけ!?」
「すみませんーっ!」
「そんな理不尽な死に方認められるかあっ!」
「お詫びはさせていただきますー、この通り!」
「死んでから詫びられたってなあー!」
天使は謝辞の代わりにベレー帽の羽を抜き出した。その根元を軸に、羽を時計と逆回しする。
「お……おおお?」
景色が忙しなくブレた。朝日が沈んで月が浮かび、夕焼けから昼間、そして朝の橋のたもと。
「と、いうわけで。時間を戻させていただきました。今は事故の二十四時間前です」
「お、おおー……」
ふと見るとぼやけ気味だった自分の姿もはっきりしていた。体中叩いて確認する。
「生身の体だ!」
「はい!」
「そうか、あとはこれで俺が橋に行かなければ……」
悪魔にぶつかる事もなく、突き落とされて幽霊になる事もなく、つつがない日常が戻ってくる。なあんだ、簡単なんじゃないか。
「いいええ、あなたがじゃありません」
喜ぶ俺の後ろから、天使が楽観思考を困惑させる。
「へ……?じゃ誰が??」
「『昨日のあなた』が、です!」
「…………昨日の、俺……?」
聞き返す俺に天使がにっこりと笑顔を向けた。俺には何だかそれが小悪魔の微笑みに見えてしまった。
とりあえず俺達は『昨日の俺』の様子を見に、家へと向かう事にした。道中説明を受ける。
「つまり、自分で自分を止めりゃあいい訳ね。つっても混乱させずに伝える自信ないなあ。まずそっくりさんだと俺なら疑うだろうしさ」
「うーん、直接伝えるつもりだったんですね。でもそれにはちょっと問題がありましてー。ドッペルゲンガーってご存知ですかあ?」
「あー知ってる。もう一人の自分が出てきて悪さするっていうアレだろ?」
「はい」
「んで、そいつに合っちまうと死ぬっていう……」
「はい」
「…………」
和やかに返事をされても困るぞ?
「つまり……『俺』に会ったら…」
「ご名答ー!この世から存在を排除され、死が確実となります。同じ次元に同じ人物は存在できませんので。もしもお互いが出会って認識してしまったら、時空のバランスが崩れる為に、三次元から強制排除となります。それがいわゆるドッペルゲンガーの仕組みなんです」
「な・る・ほ・どー……」
噂はあながち嘘ではなかったという訳か。確かに今の俺は天使のご厚意で生身に復活させられているのだから、三次元体の俺が二人いる事になってしまう。
「……て」
リアクションの準備に、大きく息を吸った。
「それじゃどうやって止めろってんだよ!あんた天使なんだから他の方法いくらでもあるだろー!?なんでわざわざこんな危ないやり方選ぶんだ!!あんたのミスならちょちょいのちょーいでなんとかしろー!」
「あ、あたしにはこれが精一杯なんですぅー」
「そーねー、このドジ加減見りゃ分かる事だなあっ!気がつきませんですいませんねー!」
「天使は基本的に民事不介入が原則だからなのーっ!これだって特例なんだからあ!」
「そりゃあんたのミスなんだから当たり前……」
「一人で何騒いでんだ航平?」
「わーーーっ!!」
突然の聖の登場に、俺は大慌てで近くにあったポリバケツの陰に身をひそめた。蓋で頭を隠し「まーだだよ」と恐る恐る言ってはみたが、聖は必死のかくれんぼにつき合ってくれはしなかった。
「……何やってんだよ、お前」
「落ち着いて、お願いだから落ち着いてくださいー」
上から天使が笑いをこらえながらなだめる。
「お、落ち着いてられるかあっ。接触したらアウトなんだろ!?」
「いつも通りでいいんですよ。本人にさえ会わなければ大丈夫なんだから」
「……そ、そうか」
さっき聖は『一人で』と言った。天使は見えていないのか。
「いよーっ聖、元気ー!?」
「よー、朝からテンション高えなあ……」
持っていたポリバケツの蓋を思い切り振りながらの挨拶だから、そう思われても仕方がない。ウケを取りたい訳ではないのだが、焦りによってどうしても行動がおかしくなってしまう。
「あ、そうだ航平、お前明日暇だろ?だったら……」
次にくるセリフにピンときた俺は、続きを聞いてはいけないと瞬時に悟った。何とか誤魔化そうとしてまた奇行に走ってしまう。
「明日一緒に予備校の下見に……」
「わーははははははっ!ほーら聖!行くぞ、楽しくフリスビーだあっ!」
「えっ、えっ……!?」
持っていた蓋を力の限りブン投げた。聖は律儀に拾いに行く。
「あ、危ねえなあ、いきなり!どこ投げて……」
振り返った時、俺達の姿はかき消えていた。
「まあ……元気でなにより……」
ちょうどやってきたゴミ収集者に怪訝そうな顔で見守られつつ彼は呟いた。
「かなり落ち込んでたからなあ、あいつ」
柚木宅は古いアパートの二階にある。2DKに親子三人住まい。卒業式も間近なこの時期は、航平にとっても短い休息の時間となっていた。四月になれば、大学受験合格者は大学生に、不合格者は……。
昼近くに起き出してきた航平は、予備校が始まるまではしばらくゆっくりするつもりだった。しかし体は休めても、頭の中まではそうはいかない。現状の心中を表せば、家族に対する罪悪感、というのがぴったりだった。
「かーさーん、飯残ってるー?」
声をかけたが返事はない。母は外出中のようだ。食卓にナプキンがかけられている。食事の用意はされているらしい。
「へへ、豪勢……」
ナプキンの下は、朝食には多すぎる程の料理が並べられていた。元気を出せとのエールであろうが、気遣いが更に痛い。感謝の念から笑ってはみても、力は出なかった。
「あーっ、びびったあ!心臓に悪いな、もー」
勢いづいて聖からかなり離れた場所に来ても走り続けてしまっている。姿は見えないし空は飛べる。俺も天使になりたいぞ。
「大丈夫ですよ、もう止まってるようなもんですからあ」
「さらっと言うなよ。しかし思わず逃げて来ちゃったけど、あそこで断っとけば解決だったんじゃないか?」
「じゃあ戻ります?もしかしたらもう本人に連絡しちゃってるかもですけど」
「そうだなあ、昨日は確かこの時間帯くらいに電話が来たような……」
よそ見走行は事故の元。空を見上げて思い出そうとした拍子に、通りすがりの女性とぶつかってしまった。
「きゃっ」
「あ、ご、ごめん!」
かなり勢い良くスッ飛ばしてしまい、転んでしまった彼女に手を差し伸べる。
「大丈夫だった?」
「は、はい」
俺と同年代くらいのその女の子は笑顔で答えてくれた。しかし他人と接触する事でまた問題が発生してもまずい。早々に切り上げる事にする。
「ほんっとにごめんねー!それじゃあ!」
「あ、あの……」
「ドジですねー」
「うるさいっての!」
彼女のか細い声はばたばたとした足音と、天使とのやりとりにかき消されて届かなかった。
「どうしよう、これ……」
落とした財布に俺が気づくのはしばらくあとの事になる。
「とにかく、もし自分に会ってしまっても目さえ合わせなければ大丈夫ですから」
「ほ、ほんとかよ」
流石に息切れして止まった商店街で、天使がのんびりとした声を出す。
「今の内に作戦を立てましょう!昨日の今頃、あなたは何をしていましたかー?」
天使がそばにあったカツ丼屋の看板を引きずってきた。それを抱きかかえつつ輝いた天使の輪をこちらに向け取り調べごっこを始める。人の人生で遊んでないか、コイツ?ノリは無視して質問だけに答えてやる。
「んーとそうね、確か家で寝てたらー、母さんが買い物からー……」
「あら、航平。ちょうど良かった。荷物半分持ってちょうだいよ」
「帰ってきてーぇえ……?」
示し合わせたようなタイミングで、背中に母親の声がかけられた。意図して接触しようとしている訳じゃないのに、何々だこの偶然の連発は!?神のみぞ知るってヤツか?だったら神の産物の天使め、予測くらいしろってんだ。
「か、母さん……」
一瞬振り返るのをためらったが、下手に断って『俺』と喧嘩でもされたらあとあと面倒だ。というより突然の事で思考が硬直して、その隙にあっさり荷物を持たされてしまい、従者のごとく荷物持ちに徹するしか道はなくなっていた。実の母親に「人違いです」は通用しそうにない。厳密に言えば人違いではあるのだが。半分騙しているような感覚に後ろめたさを覚えたが、俺の遺体を前に泣いていた姿を思い出して、何も言えなくなった。孝行したい時に自分はなし。この作戦が失敗すれば、あの光景が現実になってしまう。母の気遣いが無に帰してしまうのも嫌だった。
柚木宅で携帯の着メロが響く。
「もしもーし?」
「よおーハイテンション航平、さっきはよくもやってくれたなあ」
「な、何がだ??」
親友の聖からであった。のっけから突飛な挨拶で、航平は驚いて聞き返す。
「さっきって何だよ、俺今起きたばっかだぜ?」
「ほー、じゃあ俺が会ったのはドッペルゲンガーかっての!」
一体誰と間違えたのか。はたまた自分に夢遊病の気があったかなどと疑ってしまう。しかし実際本日の航平はまだ外には出ていない。それは確かだ。
「ははは、そりゃスゲーなあ。また貴重な体験したもんだ」
「もういい。んでさ、明日なんだけどさー……」
「あー本当に航平が家にいてくれると助かるわあ。学校行っちゃうとほとんど家にいないから。久し振りだねえ、こうやって歩くの」
一生懸命気遣ってくれる母さんが何とも照れ臭くて、俺は無言で横を歩いていた。天使が穏やかな笑顔で話しかける。
「優しいお母さんですねー」
「……まあな」
「この方なら死んでも天国行きねー」
「だからそういう事をさらっと言うんじゃねーよ。親まで殺すなっ」
「えー、あたしだって別にあなたを殺そうとしてた訳じゃないですようー」
ぼそぼそと言い合いしている間に、荷物持ちの手が増えた母さんは、他の店にも足を伸ばしていた。いいけどな別に。ただ、家には今『俺』がいる筈。だから途中で何とか誤魔化して逃げる手段を絞り出さねば。そうなると最終的には母さんが全部持たなければならない羽目になるんだけれど。
「航平、何か食べたい物あるかい?」
「んーじゃあ……あれ?」
買い物袋の異変に気づく。
「今日のおかず、きんぴらじゃないの?」
「きんぴらかい?じゃあごぼう買ってかなきゃね」
あ、だから夕べのおかずはきんぴらだったのか。
柚木宅で、今度はチャイムが鳴った。
「はい……?」
億劫そうに航平がドア
を開けると、そこには見知らぬ女性が柔らかな笑顔で立っていた。なかなか可愛らしい娘だ。
「あ、あの……先程の赤い服の方、ですよね!?」
「は……?」
航平は怪訝そうに聞き返す。赤いトレーナーなら持っていてよく着るが、先程、とは?
「これ、落とされて行ったから……。中に住所が書いてあるカードが入っていたので」
そう言いながら女の子は航平に財布を渡した。中を確認する。確かに彼の物だった。
「……そりゃ、わざわざどうも。すみませんでした」
得心がいかぬまま彼女を帰す。昨日コンビニで使ったきりなのでその時落としたのかもしれない。ならば今のはコンビニ店員だろうか。財布はいつもジーンズのポケットに入れっぱなしだった。
「っかしーな、いつ落としたんだろ……」
航平は一人ダイニングテーブルにつきながら、財布をポケットに再度入れ直そうとした。が、失敗してしまった。先住民がいたのだ。
「……あれ?」
ポケットにはいつもの感触。取り出して正体を知った時、ようやく不穏な日常の始まりに気づいたかもしれない。
「……何だ、これ……?」
テーブルの上では、中身も外見も全く同じ二つの財布が揃っていた。
アパートの門までたどり着いた俺達。母さんを先に階段へ上らせる。
「どうするんですかー?」
天使がのんきな声で切り抜け方を尋ねてくる。
「上まで荷物を運ぶのは無理があるな……」
片手で鍵を開けている母さんに、俺は階段下に荷物を置いて階下から呼びかけた。
「母さんちょっと!下で山下さんが呼んでる!」
「ええー、何だい?」
一階の山下さんは奥の部屋だ。一度は玄関を開けたものの、自分の分の荷物だけを家に入れ、すぐに母さんが階段を下りてくる。
「奥さーん?」
一階の奥へと入り込んだ隙に、俺達は脱兎の如くアパートからの逃走を計った。何だか走ってばかりだな俺。
「毎度ギリな切り抜け方ですねー」
「仕方ねえだろ!よし、次はこの方法でいくぞ!聖の家にゴー!!」
「おお、何か名案が浮かびましたか」
「人事みたいにいうな、元凶ー!お前も少しは考えろよなあ!」
何だかこのドジ天使のお守り役の為に復活したみたいな気分になってきた。俺の生死がかかった必死の努力をのらりくらりと傍観しやがって。頭をハリセンでもって思い切り叩けたらさぞや気持ち良かろうて。
「まあ人生なるようにしかならないのでー。あたし何だか飽きてきちゃったんでここで待ってていいですかー?」
「お前はーっ!!少しは慈愛に満ちろ、バカ天使ー!!」
古紙回収の場を一度通り過ぎて急ブレーキ。速攻山折り谷折りで思いの丈を実行してやった。
「何するんですかー!このーっ!」
案の定逆上した天使は、天罰とばかりの羽マシンガン攻撃で俺を蜂の巣にする。痛い痛い、刺さって痛い!ドジなくせに全能とはこれいかにー!
ブランチとなった食事を済ませ、ダイニングテーブルに置いた二つの財布を前に、航平は思案に暮れていた。
「俺の……だよなあ、どっちも。何だ、これ……」
中に入っていた自分を証明するカード類も、全てダブっているのだ。誰かが偽造したという事だろうか。一体何の為に?
「俺なんかに成り代わったところで、いい事なんてねえのに。コレ作った奴は何考えてこんな事したんだろな」
とりあえず自分の手元に来たなら悪用される事もないだろう。ぼんやりとしながら眺めていた。成り代われるものなら他人になりたい、自分を消してしまいたい。そんな思いが繰り返し繰り返し頭の中を支配する。
ところが、両の財布を持ち上げたところで、奇妙に捻れた現実感に航平は鳥肌を立ててしまった。よくよく見ると、財布の小さな傷一つ一つまで全く同じである事が判明したのだ。柚木航平の財布をコピーしたかったとしても、そんなところまで複製する必要はない。というより不可能ではないのか。
不可能を覆す何かが自分の身に起こっている。違和感はじりじりと不安の種を芽吹かせていった。
突如悪寒が走った気がした。まるで背中にもう一人の自分が張りついているかのような錯覚を起こし、即座に振り返る。誰もいない。いる筈がない。代わりに背筋を得も言われぬ見えない砂利が冷たく通り過ぎていく。
二つの財布。この不気味な現象にどう説明をつけるべきだろうか。自分は今、何を試されている?未来は恐怖の行方という形で未知の存在となった。
「なんだい、山下さん呼んでなんかいないって言うじゃないか。もう、どうせなら二階まで持ってきとくれよ」
ダイニングと玄関の境にある扉が開いて母親が帰ってきた。我に返り張り詰めた神経がほぐれる。いつもの日常だ。
精神的にかなり追い詰められているようだ。何に対しての恐怖かも分からないのに、脅える必要はない。ほっと溜め息をついた。財布はまた別の解釈があるかもしれない。
「あ、おかえりー」
思わず作り笑いをしてしまう。母の気遣いに少し過敏になっているかもしれない。辛いのは自分だけではなく回りもなのだ、そんな事をおのれに言い聞かせていると、何やら浮かれた母親が楽しげな声をあげる。
「おや、もう着替えたのかい?さっきの赤い服の方が良かったのにさ」
「へ……?」
母親のセリフに頬杖をついていた航平は顔を浮かせた。
着替えるも何も今日は朝からこの青いシャツのままだった。どうにもまた勘違いされているようだが、話がよく見えない。赤い服……。そういえば、先程の女の子も同じ事を言っていなかったか。
「母さんこれからまた伯母さん家に行ってくるからね。夕飯までには帰ってくるけど……ああそうだ、荷物持ちありがとうね。助かったよ」
それだけ言うと、母は慌ただしくまた出かけて行ってしまった。
「荷物持ち……?」
奇妙な言葉と共にダイニングに残された航平は、買い物袋を見やってから再度財布に視線を落とす。また新たな疑問が湧き上がる。が、一旦落ち着く事にする。落ち着け。混乱しているのは自分一人だ。冷静に考えれば、見落としから謎は解決するのではないか。とりあえず分析の努力を試みた。
届けてくれた女の子。これはまだ人違いとも言える。だが、自分は朝からここにいた。母親はその自分に、身に覚えのない荷物持ちの礼を言った。
「まさか記憶が飛んでる……?いや、見てたテレビの内容覚えてるからそれはないな」
念の為新聞で確認する。起きてからずっとつけっ放しだった番組の記憶は、新聞と合致していた。母は何かの冗談を言ったのだろうか。じゃああの女の子も?しかしどれもこれも二つの財布に結びつかない。それとも、母親が間違える程のそっくりな誰かが荷物を持った……?
その可能性を否定できない事はないが。しかし自分のふりをして?
……誰が…………何の為に……?
「コピー、いや、重複……」
財布をもう一度両の手に持つ。まずこちらから解決していこう。同じ物は二つもいらない。トラブルの元になる。これは片方を処分するべきだろうか。
その提案に至った時、思考も誰かと重複してしまったような感覚にとらわれた。
誰が、何の為に。
その誰かが例えば自分であった場合ならどうするか。重複する相手を排除しようと躍起にならないだろうか。現に今恐怖から逃れようと、航平はその可能性を否定し続けているではないか。もし仮定が事実だとして、その現実を受け入れた次は……?
確固たる自分の存在を支える足元が、崩れ去るような気分を味わう。
あり得る筈がない。ある筈がない。考え過ぎだ。非現実的な妄想に取りつかれる程疲れているのだ。
航平は笑顔を作ってそういう結論に達した。だがなぜかそれは完璧な理論としては成り立ってくれなかった。
「よお」
天使との喧嘩のせいで、聖の家に着いたのは夕刻を回った頃だった。
「よお……なんだお前、鶏小屋にでも突っ込んだのか?」
羽攻撃の弾痕が数枚残っていて今回は聖の目にも見えていたらしい。鶏扱いされた天使が横でブーたれ出す。ざまをみろと笑っている場合ではないので、早速本題に入る事にした。
「何だよ今日は忙しないなあ」
「いやーあははは。あのさ、明日の予定の事だけど」
「ああ、何か都合悪いのか?」
「んー、ちょっと一時間くらい遅らせてくんねえ?十一時!」
「いーよ別に」
「んで更に申し訳ないんだけど……」
ここからが演技の見せどころ、なんて大層なもんじゃないが、肝心要のストッパー。
「俺すぐ忘れちまうから、お前から俺に待ち合わせは十一時ってメール入れてくんねえ?できれば今」
ちょっと苦しい理由だが、俺の頭じゃこれが精一杯。
「は、何それ?自分でメモりゃいいだろう?」
「いや、自分のメモよりお前からのメール見た方が忘れねえから」
「んな、何ワケ分からん事言ってんだ。しょうがねえなあ」
渋々といった対応だがまんざらでもない様子。そこで照れられると罪悪感が募る上にこちらも照れる。聖はメールを打ち始めた。一応こじれないように文面チェック。
『明日待ち合わせ一時間遅らせて十一時。よろしく』
送信後俺は携帯を取り出してメールが来たような素振りをする。俺はメールが来るとすぐ返す質だ。まだ夕飯や風呂の時間ではないし、昨日の俺はどこにも出かけてはいない。
「中入ればー?」
「おかまいなくっ!」
不自然さを隠す為、知らず知らずの内に門まで後ずさっていた。それが一番不自然だ。
「なるほど、『ご自分』にもメールして時間をずらすんですね」
「あいつのアドレスじゃないとヤバいからな。よっしゃ、俺の受信履歴に聖からのメールが増えた。よし、送信メールも増えろ!来てくれ、早く来てくれ!」
メールやり取りの過去が発生すれば解決だ。焦りの中今頃気づくが最初から聖にも話して協力してもらえば良かったんじゃないだろうか。だが今からだと一日では解決できなくなりそうだし。聖には非常に申し訳ないが、ともあれ今はできる事をするのだ。
程なくすると『俺』から了解の返信が来たようだ。飛んで行って確認させてもらうと、別段疑問はもたなかったらしい。なぜと聞かれたらまたややこしくなっていただろう。良かった、本当に良かった!素直な俺最高!
「サンキューサンキュー!すげー助かったよ。んじゃまた明日な」
「おう。遅刻すんなよ」
『俺』が遅刻してくれたらなおありがたい。門を出る間際こそりと天使に勝ち誇る。
「どうだ、これなら悪魔があの橋を通る時間とぶつからないだろ」
「じゃあこれで完全解決!ですね」
「そゆ事。あー結構疲れたけど、これで安心したあ」
「おーい、これで羽取ってけー」
聖の家のコロコロ君にお世話になって、悩みがなくなった俺は満足顔でその場を立ち去った。
『俺』の心理状態に気づく事のないまま……。
父親の帰宅は七時過ぎだった。
「母さん遅いなあ。どこまで行ったって?」
「目白の伯母さんの所」
キッチンに入った父は買い物袋を見て笑い声を上げた。
「はは、凄い量の買い物だなあ。これ母さん一人で持ってきたのかあ?」
航平も笑顔は崩さなかったものの、父のセリフに相槌までは打てなかった。
「父さん先に風呂入るからな。今日はきっとご馳走だぞ」
そしてまた航平はダイニングに一人残される。明るい父の表情が、陰鬱な自分との差を明確に浮き彫りさせていた。聖の言葉が蘇る。
(よお、ハイテンション航平)
元気で明るい自分、母親の手伝いをする自分、可愛い女の子とお知り合いの自分……。
「……ドッペル、ゲンガー……?」
目的はと問われれば、やはり入れ替わる事だろうか。つまり今のこんな自分は必要ないとの全否定。もし今そいつが目の前に現れたら?否定を覆す力が自分にはあるだろうか。誰もが今の自分ではなく、コピーの方を受け入れるのではなかろうか……。
航平は自分の価値が崩れてゆくのを感じた。こんなにも薄っぺらな人間だったと今更ながらに思い知らされる。存在を脅かされて恐怖している自分の方が偽物のような気がしてならなかった。
「ふいー、これでやっと生き返る訳だ。今日一日で寿命がかなり縮んだ気がするぜ」
今日は早く寝てしまおう。階段を上がりながら、投げやり気味にそう考えていた。
「大丈夫ですよ。これが成功すれば、明日には何事もなかったような日常が帰ってきますから。あたしも神様に怒られなくてすむ訳でえー」
「帳尻合わせのクイーンと呼んであげよう」
ドアを開け、疲れ切った声を絞り出して叫んだ。
「たっだいまー!」
声が聞こえた。誰でもない、『自分』の声が。この家にただいまと言って帰ってくるのはもう母親だけの筈だ。椅子を蹴倒し、叫び返した。
「だっ…………、誰だあーっ!!」
ダイニングと玄関を隔てる扉に突進する。外のドアが勢い良く壁に叩きつけられる音がした。扉を開けると、誰かが階段を二段飛びで下りてゆく。外まで顔を覗かせてキャッチした映像は、走り去る後ろ姿。……自分の……。
「おい、どうした航平?」
風呂上がりの父が驚いて声をかける。
「今の……、俺の声だったぞ。もう家の中にまで上がり込もうとしてたってのか……?」
それは自分の存在をかき消す者、自分の死を意味する事。刻一刻とおののきが近づいてくる。その時が来るのを、ただ待っているしかないのか。なればいっそ……。
「あっあっ……あっぶねえー!!普通ーにいつも通り帰っちまったぜ」
「もおー、おまぬけですねえっ!」
「つーかあんただって気がつかなかっただろー!?ちょっと待て、俺今夜宿無し!?」
「どーでもいいですよそんな事。会ったらジ・エンドなんだから気をつけてくださいよねー」
「よかねえよ。とりあえずファミレスでも……」
ジーンズのポケットに手をやってやっと気づく。
「……財布がねえ。落とした」
「あーあもう、踏んだり蹴ったりですね」
「一番の不幸はあんたのドジにつき合わされてる事だっつーの」
「劇団員かい、にーちゃん」
ふいに後ろから浮浪者風のおじちゃんに声をかけられた。そうだった、傍目に見たら一人で騒いでるようにしか見えないんだっけな。
「は、えーと……」
「それとも家出か?どうだ、知り合いのばあさんから握り飯貰ったんだが。こっちゃ来い。ほらダンボールもあるからあったけえぞ」
行き場もない俺は結局公園でおじちゃんの世話になる事にした。
「耐えましょう、今晩は耐えましょう」
「耐えてんのはあんたのドジになんだけどな」
「明日になれば全て解決!私の名前が証明します!」
「名前……、そういやあんたの名前聞いてないな」
彼女はようやく天使らしい笑顔を向けて自己紹介をした。
「私の名はウィッシェル。希望の天使やってたりするんです」
「ウィッシュ……望みか。ふーん」
「えへへー」
「あ、俺か?俺は陽ちゃんて呼ばれとるよ?」
浮浪者のおじちゃんが会話に加わるように割り込んできた。なので俺も乗ってやる。
「陽ちゃん陽ちゃん、絶望って英語でなんてったっけ?」
「そんな事俺に聞くない」
「名前は断固変えませんからねっ!希望の天使がドジ天なのは、ドジは新たなエピソードの始まりだからなの!」
「ふーん、っそ……」
俺は素っ気なく答えた。何となく、気がかりな事もあったのだ。黙りこくった俺を、天使が宙から訝しげに覗き込んでいた。
翌日、航平は早めに起き出した。と、いうよりあまり眠る事ができなかったのだ。寝ている間にもう一人の自分が支配力を高めていそうで、気が気ではなかった。しかし起き出して何事もないのを確かめると、今度は母の気遣いに罪悪感が湧いてきて逃げるように外出した。
「聖のあほ、時間余ってしょうがねえや」
足取りは何気なく待ち合わせの橋に向かっていた。
と、その背後から知らない男が声をかけてきた。
「よお兄ちゃん、昨日は楽しかったなあ。今朝起きたらもういねえから夢かと思ったぞ」
振り返るがやはり見た事もない人物である。
「何だ何だ、その服着てるって事はまだ家に帰ってないのか?」
箪笥のひきだし、一番上にあった赤いトレーナー。
「あんまり親を心配させるんじゃねえぞ。じゃあな」
徐々に、徐々に自分の存在が不確かになってゆく。浸食されそうになり、航平は慌てて聖に電話した。
「おーっす、どうした航平?……ああ?早く来てくれって、お前が時間遅らせたんじゃねえかよ」
「俺が……俺が遅らせたって……?」
ごくりと唾を飲んで、航平は訪ねた。
「……そいつ、何色の服着てた……?」
「そいつって……お前がか?赤だろ」
航平はもう泣き叫びたい一心だった。
「俺じゃない、そいつは俺じゃない!頼むから今すぐ来てくれ、聖ー!!」
「……で、何でいるかなあ」
天使が溜め息をつく。午前十時前、反対側の橋の欄干に『航平』がスタンバっていた。表情には余裕がなく、挙動不審とも言える程震えて目をむいている。多分俺を探しているのだろう。
「ふむ。服は変わったかな。今の俺と同じ色だ」
「そんなに死にたいのかなあ。君って時間守らない人だねー」
「すまん」
「あとは悪魔をふんじばるしかないかなあ」
「ふんじばっても意味ないんじゃないの?」
「どうしてさ」
「…………」
「航平君、君夕べから少し変だよ?」
「親がね、優しいんだよね……」
俺は今までの環境に思いを馳せていた。昨日の『俺』の脅え方を見てからだ。
「俺自身気にしないように先の事考えなきゃって思ってたんだけど、一緒に大学落ちた聖にまで気ぃ遣われる程態度に出てたみたいでさ。親切にされる分だけ惨めになって、周りの人が遠くなってく気がしてさ……結構参ってたんだよな、俺」
足元の石を蹴る。天使の表情が曇っていくのが分かった。
「なあ、これってあんたのドジじゃないかもよ?あんたが悪魔を逃がさなくても、俺はあの橋の欄干から……」
だってそうだろう。あの時の俺は本当にそんな考えに取りつかれていたんだから。何もかも捨て去って、楽になれたら。いまだって、向こう側の『俺』は、あんなに脅えているじゃないか。徐々に、徐々に自分の存在の価値が、意味が、不確かになっていった。飛び下りてお終い。これが一番手っ取り早くて正しい解決法だったんじゃないだろうか。
「航平君……」
天使がそっと頬を撫でる。
……と、思わせて力一杯顔面をグーで殴られた。
「そうよ、その通りよ!あたしドジ天使なんかじゃないもんっ!君が死んだのはあたしのドジなんかじゃない、君の意志だよ!だから……」
天使の指差した先に、何かが人混みをすり抜けて行くのが見えた。黒くて素早い生き物。悪魔だ!
「そうまで言うならあれ、止めて証明してみなさいよ!悪魔に突き落とされなくても君が飛び込んだら、それはあたしのドジじゃないわ。まさに君の、希望よ!」
天使が言い終わる前に、俺は走り出していた。本当の俺の希望は、一体何だった?俺の存在は?俺の価値は?そんな物、今分からなくたって、これからの希望がなくなった訳じゃない……!
勢いのまま悪魔に体当たりを食らわせた。そこへ横から出没した『過去の天使』がそれを捕らえ、『過去の俺』は悪魔と接触せずに難を逃れる事ができた。
「やった!はは、やったぞ!これで俺は……」
喜び勇んで叫んだ背後から悲鳴に近い男の声が上がった。何事かと顔を向けそうになるのを天使が制する。
「振り向いちゃだめっ!」
一瞬で事態を把握する。橋の反対側まで来てしまっていたのだ。
「だ、誰だよお前!誰なんだよ!?一体……、一体何の目的で……!」
橋のたもとから聖が現れ声をかけてきた。だが『俺達』はそれどころじゃない。
親友に引きつった笑いを見せ、震える声でまたこちらを見据える。
「お、お前、本当におれの、ドッ……」
欄干の奥に声が移動した。後ずさる上半身が目測を誤ったのだ。体を支え損なった『俺』が川へと真っ逆さまに落ちてゆくのが視界の端に入った。
「危ねえ!」
「目を合わせちゃ……だめっ!」
「うわ、人が落ちたぞー!」
一斉にどよめきが走って、俺は目を固く瞑りながら体に力を入れた。
「……もう目を開けて大丈夫だよ」
音が消えている。しっかりと握った手はもう一人の俺へと続いている。ゆっくりと目を開いた。真っ白な世界。時が止まった中で、痛烈な表情が目に入った。橋の欄干から落とすまいと必死の形相で目を瞑って命を掴んでいる『俺』。ぶら下がっているのは自分の方になっていた。
「ほうらね、やっぱりあたしのドジだったでしょ?」
嬉しそうにそれだけ言うと、希望の天使は満足そうにかき消えていった。
ざわめきが戻ってくる。俺は引き上げられ、集団の真ん中で座り込んでいた。
「おい、君大丈夫か?」
「危ないなあ」
「航平、航平ー!お前、本気で落ちたかと思ったじゃねえかよー!驚かすなよな!」
掴みかかる聖を前に、呆然としながら、俺は小さく呟く。
「ウィッシェル……」
悪魔を倒し、死に物狂いで自分を支えた『俺』は、今一つになった。
数週間後、俺達は予備校を決め通い出した。通学途中で聖に会う。
「よお航平。……って、勉強してんのかと思えば。何それ、聖書?辞典?」
「んー、天使のドジ録」
図書館で数冊選んだ天使に関する資料。歩き読みをしていたら電柱にぶつかりそうになってしまった。
ウィッシェル。あいつの残した最後のドジ。もしかしたら単にできなかっただけかもしれない、あるいはわざとなのかもしれないが、俺の記憶を消さなかった事。橋から落ちるのを食い止めた、あの時の『俺』の表情。決して忘れてはならない。あれが俺の本当の気持ち、願いなのだから。そしてこの記憶を絶望とするか希望の道へと転化するかは、今後の俺次第となる。
「よし、決めた」
聖の家のコロコロから譲り受けた一枚は、しおりに使っている。勢い良く本を閉じて決意も新たに進み出す。
「俺はこの一年をエンジョイするぞ!俺の命の存在と価値を証明してやるぜい!」
「……勉強しろよ勉強」
「ははは、それもそうね」
「まあでも希望的な観測だな。安心しろ、来年も落ちたら俺が慰めてやっから」
「いやいや、結構。天使様がおっしゃるにはぁ、ドジは新たなエピソードの始まりなんだとさ!」
もう会う事はないかもしれないが、希望を持つ限りいつでもドジ天使はそばにいるのだろう。
それこそ、誰のそばにも。
《了》
『BANG01』
ご精読ありがとうございました。
こちらも漫画で描く予定だったものを小説に直したものなのですが、前作『のDOUBLE!!』とネームの段階ではページ数は同じだったのに、文章にしたらここまで長さに差が…。
まあ確かにあちらはテーマが大量な上に重すぎたから(^o^;)
こちらはライトな感じで書かせていただきました。
この話を書こうと思ったきっかけの、1番最初に思いついたシーンって、どこだと思います?
正解:航平がドアバーンで階段かけ降りずだだだだー!
私の漫画の別のキャラがこういう動きを普段からしまくる奴で、実は最初そっちの漫画のネタを考えていたんですね。
で、このシーンをなんとなく思いついて出そうとしたんだけど、
「これってどういう状況だ?」
と考えて。
『帰ろうとしたら家にヤバい奴が!で、ソッコー逃走』
そこから、
『会ったらヤバい奴→ドッペルゲンガー』
になって、なんか新しいストーリーが出来上がっていった訳です。
奇妙な作り方しますね私。
以前別のブログに細切れ連載で載せたところ(ガラケーで投稿していた為掲載文字数に制限があった)、ドッペル航平の話の時は閲覧数が上がり、昨日の航平の話になると下がる、という顕著な反応がありました。
落差が激しく全く違う道を行く2人の航平。
皆さんにはどのように映っていたのか、ぜひお聞きしてみたいです。
私はウィッシェルちゃん好きです。
辛い事があった時、彼女がそばにいる事を思い出してください。
何が希望に変わるか分かりません。
別の次元から違う角度であなたを見つめるあなたが、ウィッシェルと共に接触を試みています。
人生落ちそうになった時、あなたがいつも橋の上から自分に向けて差しのべている手を離さないで。