9話 新入生の魔力測定2
さっきまで浮かれていた空気が、一気に凍り付いた。
まあそうだろうな、さっき王子が演説で闇を追い出す(属性のことじゃ無いだろうが)みたいなこと言ってたし。そもそも闇属性は、色々危険な能力を持っていることも関係していると思う。例えば対象を洗脳・隷属する能力だ。
高レベルの闇属性の使い手は、洗脳・隷属の魔法を操る。この魔法は主に盗賊やマフィアなどに好まれ、数々の事件や犯罪に使われてきた。その被害が特に多いのは、人口の多いこの王都だ、恐らく新入生の中にも身内が洗脳・隷属の魔法の被害にあっている者も居るのだろう。彼らからすれば、高い闇の属性値を持つ私は恐ろしい存在なのだろう。
だが私は闇属性を悪事に使うつもりは無い、だって悪いことしたら勇者にバッサリやられそうな気がするし。
つまり堂々と貴族の責務、家の場合は魔物からの国防、などの善良な仕事さえしていれば(根拠は無いが)勇者に討たれる心配は多分ない、だって勇者は正義の味方だから、というかそうで有ってほしい、むしろそうでなくちゃ困る。
‥‥‥少々脱線したが私の魔力測定は終わった。
大人しく新入生の群れに戻るとしよう。
私が振り返ると周囲がザワッとした、教師陣は少々驚いている程度だが、新入生は明らかに恐怖の色が混ざっている、東方領出身者を除いて。
まあ、私は地元じゃ有名人だからな、魔法の訓練ついでに色々やらかした記憶もあるし、東方領の有力者とも顔見知りだし、なんか“このくらいの騒ぎは当然だよね”という謎の信頼がある。
多少のハプニングはあったが、魔力測定は構わず進んでいく。少なくとも教師陣にとっては中断するに価しない出来事のようだ。
「エレノア・ケルトル、前へ」
「!」
いくらかの人数を捌いた後、私にとっての要注意人物が出てきた。エレノア・ケルトル、彼女はケルトル伯爵家の次女で、美しいウェーブのかかった金髪と気の強そうな赤い目が特徴の美少女だ、だがケルトル家は特に有力な貴族というわけではない。
だがゲームでは私の友人を殺し、私が暴走する切っ掛けになった人物だ。なのだが。
「ひゃっ、ひゃい!」
なんか妙にキョドっている、しかも私の方を見てビクビクしている、ゲームで気が強かったのが嘘のようだ。まるで中身が変わっているようだ、いやまさか。
ちなみにエレノア・ケルトルの属性値は光が3だ、これはゲームと同じなので彼女が別人というわけではないようだ。
「セレス・ユーラル前へ」
次に呼ばれたのは銀髪をボブカットにした紫の目これまた美少女、ゲームでの私の友人役、セレス・ユーラルだ、ちなみに子爵家の長女だ。
「属性値は闇が4、風が3、その他が1」
私の時ほどではないが、会場がざわついた、彼女は私の次に高い闇の属性値を持っている。
この闇属性が原因で彼女は苛められる。だがゲームではミリシアは苛められた描写が無い、闇属性が標的ならミリシアの方が苛めの対象になりそうなものだが。
ファンからの考察では、ミリシアの方が爵位が高く、また、高い属性値を持っているため報復が恐ろしく、セレスの方が“丁度いい”のではなかったのではと考えられている。
もしそれが本当なら、胸糞悪い話だ。
「アーシャ・ハエル前へ」
貴族の子女の分が終わり、平民の順番になり幾人かの後、とうとう最大の要注意人物、勇者の番が回ってきた。