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3話 転生物で魔力チートはお約束です

「お嬢様~ 朝食ですよ~」


「分かった 今行く」


 昨日まで幼いながらに頑張って、少々受け入れがたい真実にぶち当たって放心していたらしい。


「お嬢様失礼しまーす」


 ノックをして寝室に入ってきたのは私の専属メイドのニーファだ、栗色の髪をおさげにした可愛らしい子でメイド長の娘だ、私の3才年上付き合いは私が2才頃からかれこれ三年になる、

一応私の従者ではあるが姉のようにおもっているじぶんがいる。


「もう皆様食堂にあつまってますよ」


「そうか しこし急ぐぞ!」


 我が家の朝食は家族そろって食べる決まりがあるため、皆食べずに待っているはずだ、あまり待たせるのは良くないし何より後が怖い。

 食堂にいるはずの母様とメイド長の視線が絶対零度になっていたら要注意だ、母様たちが怒るときは怒鳴りはしないんだが、坦々と正論で説教してくるので、申し訳ないやら、なんやらで精神的ダメージがつよい、アイタタ、思い出したらお腹がキリキリしだした。


 そんなかんじに自身のトラウマと向き合っている間に食堂に到着した。

 恐る恐る扉を開けるが、よかった、母様の視線は穏やかだ、どうやら間に合ったらしい。


「ミリシア やっときたか さあ皆食べようじゃないか」


 今声を掛けてきたのがこのグラン伯爵当主、グラン伯爵その人であり私の父様だ、ちなみに見た目はボサボサの黒髪、伸び放題の髭、でっかい鼻とぎょろっとした目、おまけに長身にモリモリの筋肉、貴族というより山賊といった風貌だ、こんな見た目には訳がある。


 このフロスティア王国は5つの諸領に大きく分かれている。

 王都があり街道の集約地点がある物流と権力の中心、中央領。

 広大で肥沃な農地を抱え、更に長大な大河を擁する国内の食の要、南方領。

 岩山が列なり農地には向かないが、良質な鉱石が採れ、国内最大規模の工廠群を誇る職人の都、

北方領。

 領地こそ比較的小規模だが王国で唯一海に面しており外国との海運を牛耳る商業の街、南方領。

 険しい山々と原生林のなかに砦が点在し、巨大な魔物の生息域から領地と国民を守る王国の盾、

東方領。


 我がグラン伯爵家は、王国の盾たる東方領の砦の一つを預かる家の一つである。

 我が家だけではなく、東方領の貴族全般に言えることだが、社交や政治よりも日々魔物相手にどう王国を守るか心血を注いでいる。

 もっとも武力で撃退するしかないのだが。

 代々そんなのことを続けているせいか、顔面世紀末な貴族が量産する事態にあるのだが。


 そんな外見山賊貴族達であるが、常に守ることを第一に行動していたからか、高潔な精神を持つ方が多く、護国の騎士として領民からは慕われている。

 もちろん父様もその例に漏れず、家族と領民を大切にする私が尊敬する自慢の父である。


「あら ミリシア 朝食に遅れるのは珍しいわね 大丈夫? どこか具合が悪くない?」


 そう優しく問い掛けるのはグラン伯爵婦人である母様だ、母様は黒目黒髪のオットリ系の美人で端から見れば完全に美女と野獣のカップルだ。


 ちなみに私の容姿は母様に似て、黒目黒髪の将来美人になるであろう思わせる容姿に、父様の血の影響かどこか凜とした雰囲気も持ち合わせている、まあ要するにゲーム本編の私をそのまま幼くしたかんじだ。


 伯爵婦人として敏腕を振るっている母様だが、実は貴族の出ではなく平民の生まれである。

 これは東方領の貴族全般に言えることだが、婚姻において政略云々よりも円満な家庭を築けるかどうか、また砦内に不和を持ち込まないを重視している。


 どんな強力な戦力を持とうと、不和が原因であっさり崩れる場合があると今までの歴史で学んでいる。

 ある意味庶民らしいと言えるし、社交会に精を出す貴族とは違った意味で貴族らしい考えかもしれない。


 そんな美女と野獣カップルの出会いは魔物との戦闘中であるらしい、何でも魔物相手に暴れる母様に父様が一目惚れしたらしい、それ以来父様は母様に頭が上がらないとのこと。

 私達姉弟を生んでからは頻度こそ減ったものの両親そろって未だに魔物相手に暴れまわってるそうな。


「姉さん 遅いですよ」


「アイ おしょいてすお」


「ごめんごめん さっさと食べちゃいましょ」


 このちょっとツンツンしているのが1才年下の弟フロール・グラン。

 言葉足らずな声まねをしているのは今年1才の妹ネエレ・グラン。

 二人とも黒目黒髪の可愛い弟妹である。


 ちなみに弟のフロールはゲームの主人公の旅の仲間である。主人公は私と同い年なのだが、弟は

いわゆる天才というやつで、一年飛び級で学園に入学し私と同学年になるという、ゲームにありがちなモリモリ設定である、いや、最終的にラスボスになる私が言えることじゃないか。


「そう言えば ミリシア 今日はお前の誕生日だっな」


「はい そうですね 父様」


「うむ 朝食が終わったら俺の部屋へこい ちょっとしたプレゼントがあるぞ」


「!ハイ すぐ行きます!」


 誕生日のこの日に声が掛けられるとは、ゲームでは描写は無かったけどおそらく“あのイベント”私は急いで朝食を流し込む。


「あっ 姉さんだけずるい」


「しゅるい」


 弟と妹が抗議の声を上げる、フロールは姉だけプレゼントがもらえて妬ましいのかな?ネエレはただの物まねだろうが。


(言いくるめることもできるけど)


「父様 フロール達にもプレゼントをみせていいですか?」


「うん? あーまあいいか よしこの後全員俺の部屋に集合だ」


 あっさり許可が下りた、まあ私の予想が正しければ隠すことじゃないからね。

 その後朝食を終えた家族は父様の仕事、執務室に移動した。

 執務室に到着すると父様は部屋の戸棚の奥からら何やら手鏡程の大きさの六角形で半透明の道具を取り出した。


「5才の誕生日おめでとう ミリシア 5才のお祝いというか儀式みたいなもんだか 今日はお前の魔力属性を調べるぞ」


「!」


 やはり魔力属性のことだったか、確かゲームでは5才になると魔力属性を調べる風習があるとあったが、まさか私が受けることができるとは、

いかにもファンタジーなイベントでオタク心がくすぐられる。


 魔力属性とは魔法の才能測る一つの指標である。

 ちなみに魔力の属性は全部で、火、水、地、風、光そして闇の6つある。

 火、水、地、風は基本属性とされ王族から貴族、平民まで全員が持っている属性とされている。

 まあ、属性を持っていても扱えるかは別問題だが。

 光と闇は上位属性とされ、属性を持っている者が稀な属性だ、その割合は百人に一人とも千人に一人とも言われている。

 主に戦闘での話になるが、属性には相性があり、火は風に強く、風は地に強く、地は水に強く、水は火に強い、といった相関図ができる。

 この相関図に入らないのが光と闇の2属性である。

 闇属性は基本属性に強く光に弱いというなかなか理不尽な相関を持っている、そもそも光と闇の双方が希少な属性であるため直接対峙する機会は少ない、つまり闇属性の使い手にとっては大多数の相手に弱点を突けるということである。

 光属性はひと味違い弱点を突けるのは闇属性だけだが、光属性以外からの攻撃に耐性を持つという強力な特性を持っている。

 このことから光属性は神力といわれている。


 また属性にはその属性に対する親和性、またの名を属性値がある。

 属性を調べると言うのはどちらかというと、この属性値を調べることを言う、この属性値が高ければ高いほど、複数の属性に適正が有るほど強力な魔法が使えたり、高い魔力を持つことが出来る。

 戦う力を求められる東方領の貴族にとっては割と重要な儀式である。


「さあ ミリシア この測定器を持ってごらん」


 私は無言で測定器を受け取る。


「手に持つと魔力属性に対応した色の光が測定器の中央から外側に向かっ伸びていく 長く伸びるほど高い属性値を持っていることになる」


 ちなみに、火は赤、水は青、地は黄、風は緑、火は白、闇は黒といったぐあい。


 手に取った測定器をジッと見つめる、直ぐに変化は現れた、父様の言うととうり測定器の中央から光が漏れてきた、色は5色赤、青、黄、緑、黒だその5色の光はあっという間に測定器の縁に到達した、中でも黒の光は測定器を飛び出し1㍍ほどの光の帯をつくっている。


「こ....これは....!」 


 父様が驚愕で目を見開いている。

 私を含めた他の家族も同じようなリアクションだ。


(流石ラスボス とんでもない才能だ)


 私はぼんやりと現実逃避するのだった。

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